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まるで無重力!?中性浮力をマスターするための4つのステップ

スキルについて

透き通ったコバルトブルーの海に飛び込むと、眼下に広がる美しいサンゴ。
そしてその周りに群れるカラフルな魚たち……
そんな美しい水中風景の中、中層をスーッっと泳ぐ……

ノンダイバーの方が思い描く、ダイビングのイメージはこんな感じではないでしょうか。

でも!!!!

実際にダイビングをはじめてみると、現実はそんなに甘くないことを思い知らされますよね。

イメージは中層を泳いでいるつもりなのに、地面の岩を蹴り、砂を巻き上げ……
かと思えば気づいたら水面付近をパタパタ……

「中性浮力を取って泳いでくださいね!」
ガイドの人は簡単に一言で済ませるけど、そんなに簡単な話じゃない。
中性浮力に苦手意識をお持ちの方も多いかもしれませんね。

一般に「上手なダイバー」と言えば「中性浮力が上手なダイバー」と言ってしまっても過言ではありません。

みなさんが中性浮力をマスターして、上手なダイバーの仲間入りできるよう、順を追って中性浮力についてご説明して行きたいと思います!

STEP1 その場で中性浮力を取る

そもそも中性浮力とは、浮力の状態を示しています。

浮力の状態は3種類。

  • プラス浮力:完全に浮かんでいる状態
  • マイナス浮力:完全に沈んでいる状態

この2つはイメージしやすいでしょう。

肝心の中性浮力は

浮きも沈みもしない状態

という表現がよく用いられます。

ダイビングの場合、そもそも沈まなくては始まらないので、潜降直後は必ずマイナス浮力です。

この状態から、BCに適切な量の空気を給気することで、中性浮力の状態にしようということです。

ここで重要なのは

浮きも沈みもしない状態という概念を捨てること

です。

人間は常に呼吸をしています。
したがって、肺は常に膨らんだりしぼんだり。
身体の中にある空気の量が呼吸によって変化するので、人間の身体が浮きも沈みもしない状態でいつづけることはありません。

ダイビングでの中性浮力の状態とは

呼吸によって浮きも沈みも出来る状態。息を吸えば浮く、息を吐けば沈む状態

と考える様にしましょう。

この感覚を掴むために、講習ではフィンピポットというスキルを繰り返し練習します。

その場で止まり、一度落ち着いて着底する。
その後、BCにほんの少しずつ給気をしてフィンピポットの状態を作る。

これであれば、丁寧に実施すれば出来るはず。

フィンピポットを講習でやるスキル、と考えるのではなく、ダイビング中、「なんか浮力がイマイチかな?」と思った時には落ち着いてフィンピポットを実施してみると、中性浮力の状態になることができますよ!

フィンピポットをやろうとしても、うまくバランスが取れない。
そんな時には、ウエイトのつけ方を見直してみましょう。

ウエイトのつけ方は案外盲点なので、普段からこだわってみましょうね。

STEP2 泳ぎながら中性浮力を取る

フィンピポットはできるのに、いざ泳ぎ出すと中性浮力が取れない。
そんな方も多くいらっしゃることでしょう。

泳ぎながらの中性浮力が上手く行かない原因は、泳ぐ姿勢にあります。

立ち泳ぎの姿勢で泳いでしまうと、せっかく完成した中性浮力の状態を崩してしまうことになります。
思っているよりも、お尻を上げ、頭を下げると綺麗な水平姿勢になりますよ!

意識はしているのにどうしても水平姿勢になれない……
そんな時はウエイトの量を見直してみましょう。

オーバーウエイトの状態だと、腰についたウエイトの重みで下半身が沈むので、自然と立ち泳ぎになってしまいます。

STEP3 深度変化に対応する

浮き始めてから、沈み始めてから、など対応が後手後手に回ってしまう方は、深度変化への対応を意識する様にしてみましょう。

水深と圧力、体積の関係をおさらいし、次に給気をするべきなのか、排気をするべきなのか、予め準備出来る様になれば、1本のダイビングを通して快適に潜れるようになりますよ。

イメージが湧きづらい方は、動画をご覧頂くと、水深によってBC内部の空気がどう変化するのか、一目瞭然です!

潜降、浮上時は深度変化がわかりやすいため、誰でも浮力の変化を意識することと思います。
その中で、浅いところほど素早い対応が必要になるということを知っておくと、ダイビング終了直前に浮いてしまうということを防げます。

STEP4 装備の変化に対応する

中性浮力にも慣れ、様々な場所や様々な季節にダイビングの幅を広げた時に、なぜか中性浮力が上手く行かなくなることも。

タンクの材質や大きさ、また着用するスーツや使用する器材によっても必要なウエイトの量は変化します。

アルミタンクを使用する場合、スチールタンクに比べて2kg程度、必要なウエイトの量が増えます。

タンクの大きさについては、スチールタンクの場合は大きくなればなるほど必要なウエイトの量は減り、アルミタンクの場合は大きくなればなるほど必要なウエイトの量は増えます。

なぜアルミタンクとスチールタンクとで逆になるのかは、上記の記事と併せて、浮力の仕組みを理解すると、理解できることと思います。

意外と盲点なのがBCやフィンなどの浮力の違い。
商品によってそれぞれ浮力は微妙に異なるので、普段と異なる器材を使用する場合にはウエイトの量が変化する可能性があります。

スーツに関して、ウエットスーツの中にフードベストなどを着こむ場合、その分浮力が増えるために、必要なウエイトの量が増えます。
また、ドライスーツを使用する場合、ウエットスーツに比べて2kg程度、必要なウエイトの量が増えます。

また、ドライスーツの場合は中に着るインナーによっても浮力が変化するので、必要なウエイトの量が変化します。

また、ドライスーツを使用する場合には水中での中性浮力の取りかたにもコツが必要なので、意識する様にしてみましょう。

タンクや器材、スーツなどが変わった際には、極力適正ウエイトを確認すると良いですね。

おわりに

中性浮力最大のコツは

今自分の浮力がどの様な状態なのかを感じる

という点です。

プラス浮力、中性浮力、マイナス浮力の3段階ではなく、浮き始めている、浮きそう、やや浮き気味、など細かく感じ取ることが、中性浮力上達への近道です。

感じ取った浮力の状態をもとに、息を吸うべきか、吐くべきか、呼吸での調整だけでなくBCを操作するべきか、を考えられるようになれば、中性浮力のマスターまであと少し!

ダイビング中の息ごらえは厳禁ですが、浮力に応じて一瞬息を止める、なんてことまで使いこなせるようになれば、中性浮力の免許皆伝です。

初心者のうちはダイビング中、ほとんどの意識を中性浮力の調整に持っていかれてしまうことでしょう。

中性浮力をマスターし、無意識で調整できるようになれば、その分余裕が出来た意識は自然と水中風景に向き、驚くほど豊かな世界が広がっていたことに気づかされるはずですよ!

細谷 拓

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合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

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