器材セッティングの手順とコツ〜ダイビングスキル連載〜
ダイビングライセンスを取ったばかりの方や久々のダイビングの方は、ダイビングに訪れる前に、様々なことを復習したいと思うことでしょう。
その中でも、ダイビングスキル以上に復習しておきたいと思うのが、器材セッティングなのではないでしょうか。
脅かすわけではありませんが、器材セッティングの時点であなたのスキルチェックは始まっています。
器材セッティングがおぼつかないと、ダイビングスキルもおぼつかないのでは?と思われてしまうということですね。
もちろん、ダイビングスキルに全く問題が無ければ良いのですが、人の先入観と言うのはなかなか取れないもの。
問題は無さそうだけど、初心者(ブランクダイバー)だから、いつも以上に控えめにしておこう、なんて過小評価をされることになるかもしれません。
※もちろん常に控えめな判断をすべきですが。
器材セッティングをスムーズに行うことができれば、ファーストインプレッションは上々、海の中の様子にも問題が無ければ、あなたの本当のスキルに合わせたコース取りをしてくれるはずです。
ということで、今回は器材セッティングについて、細かくご紹介して行きたいと思います!
もちろん、これからライセンスを取得するという方も、予習として読んでみてくださいね!
目次
セッティング時の格好
器材のセッティングを始める前に、その日の気候を鑑みて、セッティング時の格好を考えましょう。
寒いなと感じる日は、ウェットスーツを着てしまってからでも良いでしょうし、暑いと感じる日は、ウェットスーツは腰まで。
もしくは、ウェットスーツを着る前にセッティングしてしまうのが良いですね。
セッティングは炎天下で行うことも多く、日焼けを気にして真夏でもウエットスーツを着てセッティングを行っている方を見かけることがありますが、熱中症にはお気を付けを!
日焼けが気になる方は、セッティングの時に羽織れるものなどを持って行きましょう。
タンクについて
ひとくちにタンク(シリンダー)といっても様々な種類があります。
材質や大きさによって必要なウエイト量が変わるので、今セッティングのために持って行こうとしているタンクの材質、大きさを確認しましょう。
特に大きさについては、値段が変わることがほとんどなので、勝手に大きなタンクを使用すると現地ダイビングサービスやダイビングショップのスタッフに怒られてしまいますよ!(笑)
エア持ちが不安なので大きなタンクを使いたいという場合、必ず事前にダイビングサービスやダイビングショップに相談し、許可を得てから使用しましょう。
また、大きさや材質だけでなく、タンクの中身についても注意が必要です。
タンクに緑色と黄色のラベルが貼ってある場合、それはエンリッチド・エア(ナイトロックス)といって、通常の空気よりも酸素濃度が濃いガスが充填されています。
こちらは値段が変わるだけでなく、正しい使用方法の講習を受けてからでないと使用できません。
灰色一色のタンクを持って行く様にしましょうね。(稀に通常の空気であっても、カラフルな塗装が施されている場合もあります。)
バルブのカバーやシールを外す
満タンのタンクには目印としてバルブにカバーがかかっていたり、シールが貼られていたりします。
特にシールの場合は、はがし忘れてセッティングしてしまうことがあるので、注意しましょう。
また、はがしたシールをバルブやタンクに貼って潜ってしまうと、ダイビング中にはがれて海に流れ出てしまう可能性があります。
はがしたシールはちゃんとゴミ箱に捨てましょうね。
エアチェック
正しいタンクを持ってきても、まだセッティングは始めません。
まずは、タンク内のエアチェックを行います。
空気は本来、「無臭・無味・無着色」です。
タンク内の空気は、大気中の空気を圧縮したものですから、タンク内の空気も無臭のはず。
油っぽい匂いやガスっぽい匂いがしないかチェックしてください。
もしそんな匂いがしたら、充てん設備のメンテナンス不良や、不適切な充てん作業が原因です。
近くのインストラクターや、ダイビングサービスに伝えましょう。
エアチェックはタンクの空気の匂いを嗅いで行いますが、この時、勢いよくバルブを開けない様にしましょう。
猛烈な勢いでエアが噴出し、匂いを嗅ぐどころではないですし、エアももったいないですし、何よりうるさいです。(笑)
エアはこの小さな穴から出てきます。
片手でバルブを覆う様にして、そっとバルブをあけ、匂いを嗅ぎましょう。
BCの取りつけ
いよいよ器材の装着です。
まずはタンクにBCを取り付けます。
慣れるまでは、自分の前にバルブを右側にしてタンクを置くようにしましょう。
そして、BCをタンクの向こう側に取り付けます。
タンクにBCDのベルトを通す。
BCのタンクバンドをタンクに通します。
多くのBCは首元にも小さな輪っかがついているので、こちらはタンクバンドに掛けましょう。
正しい向き
タンクのバルブとBCが平行になるように取り付けます。
曲がってしまうとレギュレーターが斜めについてしまうため、咥える際にうまく咥えられず、顎に負担がかかってしまいます。
とはいえ、そこまでシビアに平行を追い求めなくてもOKです。
正しい高さ
タンクのバルブの頂点と、BCの首元の頂点が同じ高さになるようにしましょう。
バルブがBCよりも上になってしまうと、頭をタンクにぶつけてしまいます。
逆に、下過ぎると、タンクがBCから外れてしまう可能性が上がります。
慣れてくると高め、低めと自分の好みの高さができてくるようになりますが、まずは基本の高さでセッティングするようにしましょう。
また、タンクバンドがタンクの中ほどに来るようにセッティングを行っている場合がありますが、物によってはタンクバンドがタンクのかなり下の位置に来るBCもあります。
あくまで、BCの首元とタンクバルブの頂点を基準にするようにしましょう。
バックルを締める(通常のBC)
片方の手でタンクバンドをタンクに沿う方向に強く引っ張ります。
この時、タンクバンドが初めからゆるい場合、初めのうちは余っている手でBCの首元を抑え、BCの向きや高さがずれてしまわない様にしましょう。
膝でタンクを押さえ、片手でBCやタンクを押さえておいても締めやすいですよ!
次に、バックル部分を立てます。
この時、バックルを立てるまではタンクバンドを引っ張っていた手を離さない様にしましょう。
バックルを立てるとタンクバンドが緩まなくなるので、タンクバンドを引っ張っていた手を離してもOKです。
物によっては、この状態でバックルが自立するBCもあります。
次に、バックルの一番外側の穴にタンクバンドを通します。
最後に、タンクバックルを倒します。
この時、バックルではなくタンクバンドを持つことで、テコの力を十分に利用することができます。
倒すのに十分な力が無い場合は、タンクを倒し、足でタンクを抑え、両手で引っ張るという方法もあります。
バックルを締める(ワンタッチタイプ)
BCによっては、バックルを倒すだけでタンクを固定できるものもあります。
予めマジックテープやリングバックルを調整して大まかにタンクバンドの長さを決めたら、写真の様に金具を取りつけ、バックルを倒すだけでタンクを固定することができます。
レギュレーターの取りつけ
BCの装着が完了したら、レギュレーターを取り付けます。
ダストキャップを外す
まずはヨークスクリューを緩め、ダストキャップを外します。
ヨークスクリューを緩めすぎると、ヨークスクリュー自体が取れてしまうので、ダストキャップを外せる程度に緩めればOKです。
ヨークスクリューを更に緩める
ダストキャップを抑えていたヨークスクリューの先端が見えるか見えないかの所までヨークスクリューを緩めましょう。
正しい向き
ヨークスクリューが手前、メインのセカンドステージが右側に来るように持ちましょう。
写真ではダストキャップが閉まっていますが、この順番はどちらでもOK。
尚、オクトパス(予備のセカンドステージ)は右側についている場合と左側についている場合、どちらもあり得るため、あくまでメインのレギュレーターを右、と覚えておきましょう。
ヨークスクリューを締める
ダストキャップがついていた部分と、タンクバルブのエアが出る部分が合わさるように置き、後ろからヨークスクリューを締めます。
タンクバルブを開けるとタンクの空気圧によって、ヨークスクリューがさらに閉まります。
この時点であまりにも固く閉めてしまうと、外すことができなくなってしまう可能性があるため、3本指で軽く締める程度でOKです。
レギュレーターとBCの接続
最後にレギュレーターのBC接続です。
BCの左側にあるパワーインフレーターと、レギュレーターの左側にある中圧ホース(中圧用インフレーターホース)を接続します。
パワーインフレーターが蛇腹状のホースについているのが一般的ですが、BC本体に取り付けられている場合は、そちらと接続します。
中圧ホースを中指、薬指、小指の3本指で持ち、親指と人差し指で中圧ホース先端のカプラーを下げます。
そのままパワーインフレーターの金具に差し込み、ホースを持って押し込むと、カチッという音と共にカプラーが戻り、固定されます。
カプラーが戻りづらい場合は、親指と人差し指で押して戻してあげましょう。
カプラーが戻る際、音がしない場合もありますが、中圧ホースを引っ張っても外れなければOKです。
パワーインフレーターを固定する
BCにはパワーインフレーターを固定するための、パワーインフレーターには中圧ホースを固定するための部品がついています。
中圧ホースをパワーインフレーターの固定具に固定し、パワーインフレーター自体はBC左肩にあるマジックテープで留めましょう。
これによって、水中でパワーインフレーターが見つからなくなってしまうことを防ぎます。
バルブを開ける
タンクの後ろ側に立ち、タンクバルブを手前に回して開けましょう。
この時、残圧計は地面に向けておきます。
残圧計にのみタンク内の高圧の空気が直接流れ込み、大きな力が加わります。
万一残圧計のガラスにヒビが入っていた場合、破裂したガラスが飛び散ることを防ぐため、残圧計は下に向けておくわけですね。
ただし、その様な事故は実際に発生した例を聞いたことが無いと言っても過言ではありません。
一方で、残圧計の針がサビによって正常に動作しなくなってしまっているケースは散見されます。
そのため、残圧計の動作確認をするために、残圧計を見ながらバルブを開けた方が良いという意見もあります。
それ以上回らなくなるまでバルブを完全に解放したら、手首ひと回し分程度、バルブを閉めます。
それによって、万が一バルブを何かにぶつけてしまった場合にバルブが破損しない様、遊びを作ります。
ここに関しても、遊びを作ると開閉両側にバルブが回るため、開けた閉めたのかがわからなくなってしまう場合があります。
そこで、中途半端に開いているのを完全に開けるつもりで、完全に閉めてしまうという勘違いを防ぐため、開け切ったままの方が良いという意見もあります。
そもそもタンクバルブを強くぶつけてしまう可能性が高い様な場所に行くこと自体にリスクがあるという考え方でもあります。
動作確認
バルブを開けたら、それぞれの器材が正しく動作しているかを確認します。
順番は前後しても構いませんが、以下の通りの確認を行います。
空気が十分に充填されているか、残圧の確認をします。
メインのセカンドステージとオクトパスそれぞれ、パージボタンを押して空気が出ることを確認します。
この時、パージボタンを強く押すと、空気が出続ける状態(フリーフロー)になってしまう場合があります。
これは故障ではなく、ベンチュリー効果という物理現象によるものなので、セカンドステージの吸い口の部分を手で覆ってあげればすぐに止まります。
パワーインフレーターでBCに給気をします。
BCが完全に膨らむまで空気を入れ続け、オーバープレッシャーリリーフバルブ(BC内部の空気が過剰になった時に自動的に空気を排出するバルブ)からも空気が出ることを確認しましょう。
問題が無ければ、今度は排気ボタンを押して、空気が抜けることを確認します。
器材を倒す(潜るまで時間がある場合)
潜るまで時間がある場合や船の上の場合、器材が足の上に倒れてくるという事故を防ぐため、器材を倒しておきます。
バルブを閉め、セカンドステージのパージボタンを押してホース内の空気を抜き、BCの肩の部分を持って倒しましょう。
ホース類をBCの上に置き、左右どちらかに傾けて倒すとスマートです。
この時、残圧計に直射日光が当たってしまうと、水中で結露を引き起こす可能性が上がるため、残圧計に直射日光が当たらない様にします。
最後に
最初にも述べた通り、器材セッティングはスキルレベルを判断される最初のポイントです。
(実は、熟練したインストラクターになると、その前に、おはようございますの顔でも判断していますが…笑)
自身のスキルを先入観で過小評価されることのない様、セッティングの方法に自信が無い方は、しっかりと復習しておきましょうね!
モデル:AYA、SAYU
写真:関戸紀倫
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