【冬の必需品】ドライスーツとは?~種類と取り扱い注意点~
水温が低くなってくると、さすがにウエットスーツでは寒くて潜れなくなってきます。
もちろん6.5mmツーピース(ロクハン)や、7.5mm(ナナハン)といった分厚い生地のウエットスーツで冬の海を楽しんでいる方もいらっしゃいますが、レンタルとして準備されていることはまず無いということもあり、一般的とまでは言えないでしょう。
冬の海に潜るならドライスーツ。
濡れないスーツとも紹介され、ご存知の方も多いと思いますが、改めてドライスーツについて、種類から取り扱いの注意点まで、ご説明していきたいと思います!
目次
ドライスーツって?
ウエットスーツに対してドライスーツ。
濡れるスーツに対して乾いたスーツ。
そう。濡れないスーツです。
まず、ファスナーがウエットスーツとは異なり、水を通さない特殊な構造のものです。
さらに、足先はブーツ(またはソックス)が一体化しており、水には触れません。
そして、首と手首には肌にぴったりと張り付く特殊な素材が使用されているため、ここから水が入ることもありません。
お気づきの通り、濡れないと言っても手先と頭は濡れることになるのですが、身体の大半が濡れません。
ただし、首や手首を回すように動かしてしまうと、そこにシワが寄ってしまい、わずかながら浸水しますが……。
濡れないスーツなので、中に着るのは水着ではなく洋服でOK!
とはいってもジーパンやベルトでは動きづらいので、専用のインナーや、市販のスウェット、ジャージなどを着用します。
ドライスーツのメリット
よく聞かれるのですが、ドライスーツは暖かいか、というと、そうとも言い切れません。
ウエットスーツに比べて寒くなりづらい。
これがドライスーツ最大のメリットです。なぜウエットスーツよりも寒くなりづらいのか?
それは、水と空気の性質の違い、具体的には熱伝導率の差が関係しています。
ウエットスーツの場合、身体とスーツの間に水が存在しています。
その水が体温で暖められ、水温よりも高くなることで保温をしています。
一方でドライスーツの場合、身体とスーツの間には空気が存在しています。
その空気の熱伝導率が水よりも低いために熱を伝えない=寒さも伝えない、という仕組みで保温をしています。
熱伝導率についてさらに詳しくはこちらから!
デメリット
ウエットスーツに比べて動きづらいです。
近年やファスナーの素材の改良や、位置の改良によって、一昔前に比べるとずいぶんと動きやすいドライスーツも増えてきました。
ただ、ウエットスーツと同じように機敏に(?)動けるかというと、それはまた別問題となります。
また、どんなに動きやすいドライスーツだとしても、先にも少しお話したとおり、気をつけて動かないと首や手首から浸水します。
そして、使い方もウエットスーツよりもやや複雑です。
複雑と言ってもそう難しいわけでは無いのですが、ウエットスーツはそもそも使い方もなにもありませんでしたよね。笑
使い方については後ほど触れますが、ドライスーツは正しく使用しないと、そもそも水の中に潜ることさえできなくなってしまいます。
さらに、ウエットスーツよりも取り扱いに注意が必要です。
ドライスーツの種類
タイプ
ドライスーツには大きく分けてネオプレンとシェルという2つのタイプがあります。
\QUEEN CRUISE DRY/
— モビーズ🐳ウェットスーツメーカー (@mobbys_jp) November 17, 2021
女性ダイバーを美しく見せるスタンダードモデル
落ち着きのある「アッシュカラー」と定番のボーダー柄が選択可能な、あらゆる年代の女性にマッチする女性向けドライ⚓
バスト、ウエスト、ヒップの各部分にメリハリをつけ、ボディラインを美しく見せるデザインに仕上げました😊 pic.twitter.com/FDyrOWWQBv
ネオプレンドライはウエットスーツと同じような見た目で、実際、ウエットスーツにも使用される素材が利用されています。
スーツ自体にも保温性があり、モコモコとインナーを着る必要がありません。
また、スーツ内の空気が動きづらいため、シェルドライよりも違和感なく使用できるとされています。
そのため、日本国内ではまだまだこのネオプレンドライが主流です。
シェルドライに比べると圧倒的にデザインの幅が広いことも人気の理由のひとつでしょう。
一方で、どうしてもウエットスーツより動きづらいことも特徴です。
\一切の妥協を排除したMOBBY’Sスーツの最高峰/
— モビーズ🐳ウェットスーツメーカー (@mobbys_jp) May 17, 2022
T4 SHELL PRIMEは、「ブチルゴム」の両面に「リップストップナイロン」を貼り合わせた、3層構造の素材を全面に採用したシェルドライスーツです!
これらを3層に重ねたトライラミネート素材を採用しているのは、国内では本モデルのみ🔥🔥🔥 pic.twitter.com/esdHnERB5t
シェルドライは見た目からウエットスーツとはまったくことなり、どちらかというとスキーやスノーボードのウエアに近い見た目でしょうか。
スーツ自体に保温性が全く無く、ちゃんとインナーを着込まないとウエットスーツよりも寒いです。
一方で、たっぷりとインナーを着込むことができるので、水温に応じて柔軟に対応できるというメリットがあります。
そして、ネオプレンよりも動きやすいということもメリットのひとつです。
ただし、その見た目からもわかる通り、たくさんのインナーを着こむことができる様にするため、身体に対してダボっとしたシルエットということもあり、スーツ内の空気がとにかく動きます。
この空気の動きを上手くコントロールするのにはある程度の経験が必要になるでしょう。
シェルドライに比べてデザインに幅は少なく、真っ黒なロクハンの様に、玄人感あふれたデザインの物がほとんどです。
生地(ネオプレンタイプの場合)
特にネオプレンドライでは、各メーカー様々な生地の物を販売しています。
大きく分けるといわゆる一般的なネオプレンのほか、ラジアルという素材を使用している物が挙げられます。
ネオプレンは伸びが良く比較的安価である一方、ラジアルは耐久性、断熱性に優れるため生地を薄くすることができ、ウエイトが少なく済みますが、どうしても硬く、高価な素材です。
ファスナー位置
日本で主流のネオプレンドライの場合、スタンダードは背中の両肩を真横に横切る様にファスナーがあるものです。
なので、レンタルドライなどで初めてドライスーツに触れる際は、この場所にファスナーがある場合がほとんどでしょう。
手の届かない位置にファスナーがあるので、必ず誰かに開け閉めをしてもらわなければなりません。
また、背中に一本の太い針金がある様に感じ、動きづらさを感じることと思います。
しかし、そんな太い針金が身体の前側にあってはより動きづらくなってしまうため、背中側に配置されているわけですね。
逆に言うと、硬い防水ファスナーだからこそ背中にファスナーを配置しなければならないわけで、柔らかい防水ファスナーが様々に開発されている近年では、従来のファスナー位置にこだわらないものが増えてきています。
また、シェルドライの場合は以前から身体の前面にファスナーが配置されている物が多いですね。
身体の前面で胸の位置にファスナーがあるもの、肩から腰に向かって斜めに配置されているもの、背中側で腰の付近に配置されているものなど様々。
身体の前面にファスナーがあると、自分自身で開け閉めできることが大きなメリットのひとつです。
使い方と注意点
~給気~スーツスクイズ
ドライスーツのメリットの部分でもお伝えしたように、身体とスーツの間には空気が存在しています。
さて、同じく内部に空気が存在する器材にBCが挙げられますが、潜降していくと何が起きるでしょうか?
そう、BC内部の空気が収縮しますね。
BCであれば内部の空気が収縮したところで浮力が無くなるだけで済みます。
だけ、と言っても大問題ですが。(笑)
なぜ空気が収縮するのか、という方はこちらから復習してみてくださいね。
ドライスーツの場合、スーツ内部の空気が収縮することで、スーツが身体に押し付けられ、人間真空パックの様な状態になります。
これがいわゆるスーツスクイズです。
水深2,3m程度であれば我慢も出来ますが、給気をせずに5mも潜れば、エキジット後にはミミズ腫れの様に全身にくっきりと跡が……。
給気せずに10mも行こうものなら我慢できない程の痛みを伴います。
とはいっても、解決策は簡単。
ドライスーツ内部に空気を補充してあげればOKです。
そして、その補充もBCと同じようにボタンを押すだけという簡単な作業なので、難しく考える必要はありませんよ。
ほとんどのドライスーツは胸に給気バルブがついています。
このバルブを使って、BC同様少しずつ、給気を行うことでスクイズを防ぐことができます!
~排気~意図せぬ浮上(吹き上げ)
こちらもスーツスクイズ同様、考え方はBCと同じです。
水深が浅くなると、BC内部の空気が膨張しますよね。
それを放っておくと、意図に反して浮上してしまいますよね。
ドライスーツでも同様に、水深が浅くなるごとにスーツ内部の空気を排気してあげないと、浮力が強くなりすぎ、意図せず浮上してしまうことに……。
これを防ぐため、ほとんどのドライスーツで左肩に排気バルブが付いています。
BC同様、排気する場所が一番高くなる様、左肩を上げながら腕時計を見る様な格好で排気を行います。
場合によっては左肩だけでなく、左手首にもついていることも。
これだと、左手を上に伸ばすだけで排気されるので楽チンですね!
尚、BC以上に排気スピードはゆっくり、ポコポコと排気されるイメージなので、慣れないうちは早め早め、スーツ内に空気の存在を感じたら排気し、不足した浮力はBCで補う、ぐらいのつもりが良いでしょう。
また、それでも浮き始めてしまった場合、ドライに慣れていない方ほど意識がドライに行っているので、一生懸命ドライスーツを排気しようとしがちです。
しかし、排気スピードはBCの方が断然速いので、浮き始めてしまったらまずはBCの空気を排気して浮力を相殺しましょうね!
また、ドライスーツはブーツが付いているので、足の先が袋状になっています。
岩の奥のカエルアンコウに夢中になって、逆立ちの姿勢になるとスーツ内部の空気が全て足先に……。
すると、みるみるうちに宙づりの状態で浮上するハメになってしまいます。
これを防ぐために、足首にアンクルウエイトをつけたり、足首にも排気バルブがついているドライスーツもあります。
尚、排気バルブには基本的に「AUTO」と「LOCK」という2つのモードが搭載されています。(AUTOが-、LOCKが+という表記の場合もあります。)
切り替えは、ツメを動かすもの、ダイヤルの様な部分を少し回転させるもの、バルブ全体をクルクルと回すものなどがありますが、機能は全て同じです。
排気のための扉が、AUTOなら常に開いていて、LOCKなら常に閉まっていると思うと良いでしょう。
AUTOにしておくと、排気バルブ付近の空気の圧力が一定以上(といってもわずかな圧力)になると勝手に空気が排出されます。
そのため、正しい排気姿勢を取るだけでスーツ内の空気を排出することができます。
一方で、LOCKにしておくと、正しい排気姿勢を取るだけでは排気されず、排気ボタンを押す必要があります。
AUTOのまま潜っていると、排気したくないタイミングで排気されてしまうことがありますが、逆にLOCKで潜っていると咄嗟に排気したいときに排気できないことがあります。
潜降開始時はAUTO、潜降開始後はLOCK、浮上時はAUTOなどと使い分けて潜ることが理想ですが、心配な方は、まずはAUTOで潜ると良いでしょう。
取り扱い注意点
ネック・リストシール
首と手首には肌にぴったりと張り付く特殊な素材が使用されている、と言いましたが、弱点もあります。
伸びには比較的強いのですが、裂けには非常に弱いのです。
脱ぎ着する時、爪を立てて力を加えてしまうと、いとも簡単に裂けてしまいます。
特に脱ぐ時は極力誰かに手首を広げてもらう、手首や首を自分で触る場合には必ず指の腹で触る、といった注意が必要です。
ファスナー
こちらも水を通さない特殊なファスナーなのですが、折れ曲がった状態で上から力が加わると、折れてしまうことがあります。
折れているだけならまだ良いのですが、ファスナーを閉める際、その折れた部分で引っかかり、それを無理やり閉めようとすると、ファスナーのコマ(エレメント)が飛んでしまいます。
すると、そこからドボドボと水没してしまうんですね……。
これを防ぐために、ドライスーツを着用しない時には必ずどこかに掛ける、車などに積む際には重いものの下にならない様に気を付ける、といった注意が必要です。
おわりに
ドライスーツは動きづらい、とご紹介してしまいましたが、慣れの問題もありますし、最近は柔らかいファスナーが開発されていることもあり、一昔前に比べると随分と動きやすくなりました。
身体が濡れないことで奪われる体温も少なく済み、エキジット後はすぐに乾いた格好になることができるため、ドライスーツは体力の消耗を抑えることができます。
陸上が真夏日の様な日は陸上で暑くなりすぎてしまうのでおすすめできませんが、1年の大半をドライスーツで過ごすというダイバーも多くいます。
とはいえメインは冬の使用ですが、冬のダイビングは魅力がたくさん。
好んで冬ばかり潜るという方も一定数います。
ウエットスーツよりも高価なので、なかなか手が届きづらいかもしれませんが、レンタルでも良いので一度はドライスーツを着てみることをおすすめしますよ!
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