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大半の人はオーバーウエイト!?適正ウエイトの調整方法とは

スキルについて

みなさんは、突然自分のウエイトの量を尋ねられた時、即答できますか?

即答できる方は頻繁に潜っている方ですね!
今、ログブックを探そうとした人も、キッチリ記録しているということなので素晴らしいですね!

把握していないしログブックも見当たらない……、ログブックはあってもウエイトは記録していない……と言う方もいらっしゃるかもしれません。
まずはログブックに記録するところからはじめましょう!

では、把握しているという方、最後にウエイトの量を変えたのはいつですか?
ライセンス取得時から変えていないという方も多いのではないでしょうか?

意外に思うかもしれませんが、驚くほど多くの人、大半と言っても過言では無いぐらいの人々がオーバーウエイトの状態で潜っています。

カメラが好きで、着底したときに重めの方が安定するから敢えて1kg増やしている、などとしっかり理由があってのオーバーウエイトなら良いのですが、ほとんどの人は自分がオーバーウエイトであることにすら気づいていません……。

なぜライセンス取得時からウエイト量を変えていないと、オーバーウエイトになっている可能性があるのでしょうか?

オーバーウエイトになる原因

ライセンス講習では、着底してマスククリアレギュレーターリカバリーなどスキルの練習をしますよね。
この時、浅い所で練習する段階では、適正ウエイトジャストよりも、少し重めの方が安定するのでやりやすいんです。

さらに、適正ウエイトだと、完璧にBCの空気を排気し、フィンキックを止めて息を吐き切らないと潜降することが出来ません。
これが初心者には意外と難しい。

もちろん講習なんだから完璧に出来るまで練習をすべき、という正論ド直球な意見もあります。
とはいえ時間は限られており、講習延長戦に入ることは講習生にとって、体力的、精神的、金銭的に負荷をかけることになってしまいます。

そういった理由から、やむを得ず潜降する際、上手く潜れない講習生ににウエイトを足す、というケースも少なくありません。(中にはやりすぎなケースもありますが……)
そして、その様な理由から、講習が終わった段階でもウエイトを減らすことを忘れ、オーバーウエイトのまま終了してしまい、そのままのウエイトで潜ってしまっている、という人も多いんですね。

さて、みなさん自分が潜降する時のことを思い出してみましょう。
BCに空気を入れないと、どんどん沈んでいくという人はいませんか?
潜降を開始するときに、特に意識して息を吐かなくても潜れてしまう人はいませんか?

思い当たる節がある人は、オーバーウエイトですよ!

前置きが長くなってしまいましたが、ここまでの話で自分もオーバーウエイトかもしれない、と感じた方は、是非この先の解説を読んで、改めて適正ウエイトを確認してみてくださいね。

適正ウエイトの見積もり方

このあとご紹介する適正ウエイトのチェックを行うためにも、まずはおおまかにウエイトを見積もる必要があります。
よくウエイトの見積もり方として、5mmワンピースウエットスーツの場合、アルミタンクでは体重の10分の1、またはそこから1kgないし2kg引いた重さ、と言われることがあります。
スチールタンクの場合はそこからさらに2kg程度減らすとも言われます。

つまり、体重60kgで5mmワンピースウエットスーツなら、アルミタンクの場合は4〜5kg、スチールタンクの場合は2〜3kgという計算になります。

しかし、ここでは身長による見積りを提案したいと思います。
様々なところで体重を元にした適正ウエイトの見積もり方が提案されていますが、人間の比重は体重によって大きく変化することはありません。

詳しくは後段でご説明しますが、浮力に最も影響を与えているのはスーツです。
そして、スーツは他の要素に比べて圧倒的に浮力が大きく、また、体格によっても生地の量が大きく変わります。
よほどの肥満体形は別として、標準体重±10kg程度の痩せ方、太り方、であれば体重によるスーツの生地使用量は大きく変わらず、身長による生地使用量の影響が大きいでしょう。

それを踏まえた目安としては以下の通りです。

男性

165cm標準体型→1kg~2kg

175cm標準体型→2kg~3kg

185cm標準体型→3kg~4kg

女性

155cm標準体型→0kg~1kg

165cm標準体型→1kg~2kg

175cm標準体型→2kg~3kg

適正ウエイトの調べ方

おおよそのウエイトを見積もったら、適正ウエイトになっているかの確認を行ってみましょう。

①BCの空気を全部抜く

ドライスーツの場合はドライスーツの空気もすべて抜きましょう。
もちろんこの際、万が一オーバーウエイトでも一気に沈んで行かないように、あまり深くないところでやりましょうね!

②通常の呼吸を続けてみる

この時、すぐに沈んだ場合はオーバーウエイトです。
逆に、首から上すべてが浮く場合は軽すぎます。

水面が目線と同じぐらいになるのが丁度良いウエイトの量です。

ちなみに、この段階でウエイトをつけなくても沈んでしまう人も居ると思うので、もし自分がそうだとしても焦らないでくださいね!笑(身長167cm、体重57kg男性の筆者もこれに該当します。)

そういう人は、次のステップ③は飛ばしてOKです。

③大きく息を吐いてみる

②で丁度良いウエイトの量になっていれば、ゆっくりと沈み始めるはずです。
まだ終わりではないのでそのままファンダイビングに出かけないでくださいね!

④+1~2kg

空気にも重さはあります。
1気圧の時、1Lで約1.3gです。

例えば200気圧の10Lタンクを50気圧まで使うと、理論上は1.95kgもの空気が無くなる計算になります。

なので、③が終了した段階のウエイトで潜ってしまうと、ダイビング終了時にウエイト不足になってしまいますよね。
その分のウエイトを余分に持って行きます。

通常、講習などで教わるウエイト調整は④までなので、ここからはオリジナルの方法です。

⑤ファンダイビング終了直前、ウエイトを減らしてみる

BCにウエイトポケットがあれば、④で追加するウエイトをウエイトポケットに入れてダイビングを行いましょう。
そして、ダイビング終了直前、足が立つか立たないかの場所で、ウエイトポケットを1kg分ずつ外して地面に置いてみます。
この時、ウエイトを地面に置いて減らしても浮かないのであれば、その量で潜ってもOKですよね!

もちろん、1kg減ることで浮いて行ってしまわない様、すぐにウエイトを掴めるようにしておいてくださいね。

①~④までのステップが理想的な適正ウエイトの調整方法ですが、ファンダイビングで時間をかけてこれらの作業を行うことは難しいもの。
そういった場合は、この⑤の方法で適正ウエイトを探ってみてくださいね。

ウエイトの見直しが必要なタイミング

一度適正ウエイトを把握できたとしても、様々な条件が変わる時にはウエイトの見直しが必要です。

タンクの種類

タンクの材質

アルミタンクとスチールタンクでは、必要なウエイトの量が異なります。

スチールタンクの方が重いので、アルミタンクではウエイトが沢山必要……というのは実は嘘なのですが、結論としてはアルミタンクの方がウエイトが沢山必要です。

アルミタンクの場合は、スチールタンクの際に比べて+2kg程度のウエイトを用意しましょう。

タンクの容量

タンクの容量も、8ℓ、10ℓ、12ℓ、14ℓと変われば、タンク自体の重さが変わります。
スチールタンクの場合、2ℓごとに2kg程度重くなるため、ウエイトを減らしたくなりますが……。

計算してみると2ℓごとに浮力は200g程度の差となります。
普段から適正ギリギリのウエイト量で潜っている場合、ヘタに1kgや2kgウエイトを減らしてしまうと、浮いてしまうことになりますね。

10ℓと14ℓでは400g程度変わるため、影響は小さくないと言えるかもしれませんが、一般的に考えるとタンクの容量に関しては、ウエイトの調整を行う必要は無いと言っても良いでしょう。

ただし、タンクの容量だけであれば考慮に入れる必要はなくとも、他の要素との組み合わせでこの数百グラムが効いてくる場合もあるので、頭の片隅に入れる必要はありますね。

スーツの種類

ウエットスーツはウエットスーツでも、3mmなのか、5mmなのか、ワンピースなのか、ツーピースなのか、などでもウエイト量は変化します。

また、ウエットスーツとドライスーツでは浮力が違います。
目安としてドライスーツの場合、5mmウエットスーツの時のウエイト+2〜4kg程度です。

クロロプレンドライなのかシェルドライなのかによってももちろん変わりますし、同じクロロプレンドライにカテゴライズされる物でも、ネオプレンの生地なのか、ラジアルと言う生地を使っているのかによっても変わってきます。

ちなみに、最も一般的なのはネオプレンを使ったドライスーツですが、筆者がダイビングインストラクターになったころである2010年頃と最近(2023年)では、各スーツメーカー共に使用しているネオプレン素材が異なっている様に感じています。
具体的には、昔は+2kg程度で適正ウエイトになったのが、現在は+4kg程度必要であるように感じています。

スーツの使用度

新品のスーツは生地内に気泡がしっかりと形成されており、厚みも表記通りの厚みなので、浮力が強くなります。
逆に、使い込んだウエットスーツは気泡が無くなり、5mmのつもりで着ていても4mm、3mm場合によっては2mmぐらいしか無いんじゃないの!?と思うぐらいに使い込んでいる人も。

新品と使い込んだウエットスーツでは新品の方が1kg〜2kg程度多くのウエイトが必要になります。
自分のスーツ、だいぶ使い込んできたなーと思ったとき、逆に新品を買ったときは注意が必要です。

インナー

ドライスーツの場合は、インナーとしてどんなものを着るかによっても浮力が変化します。

また、ウエットスーツの場合、ラッシュガード程度であれば大きな変化はありませんが、フードベストを着用する場合は、1kg程度浮力が増すこともあるため、注意が必要です。

器材

見落とされがちなのが器材です。

フィンには水に浮くものと沈むものがありますが、フィンをはじめとした軽器材の影響は小さいと考えてOK。
影響が大きいのは重器材です。

まず、レギュレーターは最も重たいものと軽い物で、500g以上の差があります。
レギュレーターの体積によるプラス浮力はほとんど無く、重さ≒マイナス浮力と考えてよいでしょう。

これだけであれば影響は小さいですが、前述のタンク容量による影響と同様に、他の要因と組み合わさった時に効いてくる場合があります。

また、BCに関しても、BC自体の浮力の差が存在します。
BC自体の浮力は各社公開しておらず、素材や容積などから推定することも困難なのですが、最も沈むBCと最も浮くBCでは、経験的に1kg程度の浮力の差があるように感じています。

塩分濃度

浮力は水の塩分濃度によっても変化します。

とはいえ、普段海水で潜っている分には、さすがに地域ごとの塩分濃度による影響はほとんどありませんが……
中には紅海など、他の海域よりも塩分濃度が濃い、という特殊な環境もあるので、その時には普段より1kg程度重くする必要が出て来るかもしれませんね!

また、本栖湖をはじめとする淡水ダイビングや、講習でプールに潜る際は、淡水なので、海水に比べて浮力がありません。
目安としては、淡水の場合、1kg〜2kg程度、海水の時のウエイトから減らしましょう。

ウエイト何キロー?→2個です!はもうやめよう

ウエイト、あるある。
「ウエイト何キロ〜?」→「2個!」
これ、時々ではすまされないぐらいよく耳にします。

さて、何が言いたいか分かりますか?

一般的な物だけでも、ウエイトには

  • 1kg玉
  • 2kg玉

の2種類があり、場合によっては1.5kg玉や2.5kg玉の用意があるところもあります。

そうです、個数では正確な重さが分からないんです。
ウエイトの量は必ず重さで覚えるようにしましょう。

さらに注意が必要なのは海外でライセンスを取得した場合です。
●kg玉ではなく●ポンド玉を使用しているケースも珍しくありません。

1ポンドは453.6g。
2ポンドで約900g。
1kg玉との差はわずかに100gですが、チリが積もればなんとやら。

ここまでご紹介してきた他の要因と相まって、時々痛い目に合っている人を見ます。

適正ウエイトのメリット

オーバーウエイトには様々なデメリットがあります。
それだけ余計な重りをつけて活動しているわけで、疲労、それに伴うエア消費増、さらには腰痛まで……。
ウエイトを減らしただけでエア持ちが断然良くなることも珍しくありませんよ!

さらに、オーバーウエイトのまま中性浮力を取れずに泳いでしまうと、砂地では大量の砂を巻き上げてしまうことに……。そして、万が一、何かのトラブルで水面まで浮上、プチパニックを起こしてしまいBCに給気するのを忘れてしまった場合でも、適正ウエイトであればそんなにすぐには沈みません。

しかしオーバーウエイトだと、即座に給気を行わなければ一気に沈んで行ってしまいます。
おどろかすわけではありませんが、何らかの原因で水面まで浮上した後、オーバーウエイトが原因で沈んでしまい、悲しい結果となった事故も存在します。

快適性、安全性、両方にとってオーバーウエイトは大敵なので、自分の適正ウエイトを調整したことが無い人は、是非試してみて下さいね!

また、同じ適正ウエイトでも、ウエイトをどの様に装着するかでダイビングの快適さは大きく変わるため、ウエイトの付け方についても改めて確認することをおすすめします。

細谷 拓

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合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

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