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浮力の仕組みを理解すればダイビングが上手になる!

スキルについて

水面ではプラス浮力で、水中では中性浮力で……
(うんうん。)

水深が浅くなるとBC内部の空気が膨張し……
(ん?うんうん。)

そのため浮力が強くなり、プラス浮力となります。
(ん?うーん。)

そもそも浮力とは、アルキメデスの原理により……
(zzz…)

ダイビングと物理の話はどうしても眠くなってしまいがちですよね。
特に法則や原理についている人の名前はどれがどれだかわからなくなるので尚更眠くなります。

でも、ダイビングにおいて、浮力は最も重要な要素のひとつ。
ではそもそも「浮力」とは何なのでしょうか?

“浮”く”力”。
読んで字のごとくです。

木の球は水に浮き、金属の球は沈む。
これは誰でもイメージできますね。

では
「全ての物体には常に浮力が働く」
と言われたらどうでしょう?

ピンと来ない方もいるのではないでしょうか?

浮力の仕組み

浮力の仕組みは

流体中の物体は、その物体が押しのけている流体の重さ(重量)と同じ大きさで上向きの浮力を受ける。

アルキメデスの原理|Wikipedia

とされています。

これがアルキメデスの原理と呼ばれています。
※一度アルキメデスという名前は忘れてOKです。(笑)

流体、物体、をそれぞれ水、身体、と読み替えてみましょう。

「水中の身体は、身体が押しのけた水の重さと同じ大きさで浮力を受ける」

いかがでしょう?
少しイメージしやすくなったのではないでしょうか。

皆さん、お風呂には入りますか?
No、と言う方は諦めましょう。嘘です。

浴槽ギリギリまでお湯を張った湯船に入ると、大量のお湯が浴槽の外に溢れます。
この時、浴槽の中の皆さんの身体は、その溢れたお湯の重さと同じだけの浮力を受けているのです。

水の重さは1000立方センチ(1リットル)あたり約1kgです。
今、お湯と水では重さが違うだろ!とつっこんだ方、きっとこの解説は不要なぐらい、物理が得意な方ですね。

話がそれました。

例えば、あなたの身体の体積が50リットルあったとしましょう。
体重は45kgだとします。

身体の半分だけお湯につかります。25リットル分ですね。

浴槽の中には体重計がおいてあります。乗ってみましょう。

体重とは、その重さが下に向かって働いている、という意味です。

今回、あなたの身体には25リットルのお湯を押しのけた分、つまり25kgの浮力が働いているので、体重計の針は45-25で20kgを指します!
これでイメージが湧いたでしょうか?

海水の浮力

さて、いよいよ話をダイビングに移します。

水は1リットルあたり1kgでした。

海水とは、水+食塩です。
嘘つけ!マグネシウムにカルシウムに……ご退室願います。(笑)

つまるところ、水に色々と混ざってるわけです。
水に余計なものが溶けているわけですから、水よりも重いことは想像がつくと思います。

海水は1リットルあたり約1.025kgと言われています。
ほんの少し、ほんの少しだけ水より重いですね。

さて、海水に入った私たちの身体に働く浮力はどうなるでしょう?

先ほどの45kg、50リットルのあなた。
話をわかりやすくするため、全裸で海に潜ってもらいましょう。

押しのけた海水は50リットル。つまり1.025kg×50で51.25kg。

さて、体重計に乗りましょう。

体重は45kg。これが下向きに働く力です。
浮力は51.25kg。これが上向きに働く力です。

なので体重計の針は45-51.25で……ん?マイナス!?

はい。つまり、この浮力が体重よりも大きい状況が「浮く」ということになります。

ダイビング中の浮力

冒頭で流体を水、物体を身体、と読み替えました。

ここで改めて考えてみると、空気も物体のひとつです。

パワーインフレ―ターの給気ボタンを押すとBC内部に空気が入ります。
つまり、その空気が押しのけた海水の重さ分だけ浮力がつく、というわけですね。

空気の重さは1リットルあたり約1g(0.001kg)です。
一方、海水は1,025kg。

空気1リットルで1.025-0.001=1.0249kg分の浮力がつくというわけですね。

呼吸も同じです。
息を吸うとタンクから肺に空気が入ります。
すると、この空気と同じ体積の海水の重さ分だけ浮力がつく、ということです。

物体には浮力が働く。
身体、ウエットスーツ、器材、全てに、です。

中性浮力というのは、このそれぞれの物体の重さと、それぞれの物体に働く浮力が等しくなっている状態のことです。

フィンピボットを思い出してみて下さい。
呼吸によって身体が上下しましたね。

つまり、何もしなければ重さと浮力が釣り合っている時に、息を吸うとその分の浮力がつき身体が浮く。息を吐くとその分の浮力が無くなり身体が沈む。というわけです。

おわりに

ダイビングで中性浮力を取るためには、練習ももちろん重要ですが、浮力の仕組みを理解し、イメージを湧かせることも非常に重要です。

具体的に言うと、プラス浮力、マイナス浮力、中性浮力の3段階ではなく、プラス浮力の中でも息を少し吐けば沈むのか、たくさん吐けば沈むのか、息だけでは足りずBCを排気するのか、排気するのであればどのくらい排気するのか……
マイナス浮力では息を吸う、BCに給気する、というのが逆になるだけで、考え方は同じです。

中性浮力が苦手という人は多くの場合、苦手なのでは無くて中性浮力に意識が行っておらず、楽しむことに意識の全てを持って行かれてしまっているように思います。
もちろん楽しむことはとても重要なのですが、とにかく自分の浮力の状態が今どうなっているのかを常に意識して潜るだけで、中性浮力は飛躍的に上手になりますよ。

うまく中性浮力がとれない、という方は是非1度、中性浮力のことだけを考えて潜ってみて下さいね!

モデル:AYA、写真:関戸紀倫

細谷 拓

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合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

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