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ボンベ?タンク?シリンダー?呼び方の正誤を語源から深堀り!

器材について

ダイビングを始めたばかりのダイバーやノンダイバー、またテレビからもよく耳にする「酸素ボンベ」という言葉。
酸素というのは誤りですし、ボンベという言葉もダイバーはあまり使いません。

中に入っているのは酸素ではなく空気、ボンベではなくタンク、またはシリンダーというのが正しい表現ですね。

今回は、このタンク(シリンダー)の呼び方について、少しだけ深掘りしてみたいと思います。

ボンベも正しい?ボンベの語源

諸説ありますが、ボンベというのはドイツ語を起源とする外来語だと言われています。
ただし、日本では元々の意味とは異なった用途で使われています。

ドイツ語でbombeというと、爆弾を意味します。
英語ならbombですね。

元々爆弾を意味していたはずのボンベという言葉は、明治時代に日本に入ってきた際、爆弾ではなく「鉄製の容器」という意味に変わってしまったという説が濃厚です。

この様に、外来語が本来の意味とは異なる意味で日本語に定着している例は間々あります。
例えばバイクは本来英語で「自転車」を表しますが、日本では自動二輪車の事を指しますよね。
日本でいう所のバイクは、英語ではmotorcycleやmotorbikeと言います。

日本語でパンツといえば下着ですが、英語でpantsはズボンを意味します。
ズボンは元々フランス語でペティコートを表すjuponが語源と言われておりーー。

元々の意味を深くは気にしない、日本語ってとても柔軟なんです。(笑)
そのため、ボンベは鉄の容器を意味する日本語として定着しています。

今でも、公的な文書で金属製のガス容器を指してボンベと表現されることも多く、日本国内においては、タンクの事をボンベと表現しても、間違いとまでは言い切れません。

ただし、海外のダイビングシーンで「ボンベ」と言っても確実に伝わらないので、注意しましょうね。

タンクはもう古い?タンクの語源

多くのダイバーは空気の容器を指してタンク、またはシリンダーと呼びます。
まずはタンクの語源を考えてみましょう。

ダイビングはアメリカを中心に発展してきました。
そして、ダイビングが日本に入ってきた際、様々な言葉を日本語に訳したり、外来語としてそのままカタカナで使用したりという作業が必要でした。

海に入ることをエントリー、海から出ることをエキジットというのは、日本語で適切な単語が無いために、一語で表せる英語をそのまま使用したのでしょう。
一方で、減圧不要限界は英語でNo Decompression Limitですが、ノーデコンプレッションリミットでは長いうえに意味も伝わりづらいという判断から、日本語に直訳したものと思われます。

さて、この作業のなかで、空気の容器をどうするか、という判断に迫られます。
英語ではGas cylinder(シリンダー)と呼ばれる空気の容器ですが、シリンダーという言葉は日本に馴染みがない。

実はcylinderというのは、厳密には空気を詰める円筒形の部分を指します。
これにバルブを付けた状態の物をtankと呼ぶーー。

タンクならば、既に日本でも「貯水タンク」などの様に容器としての意味が定着している。
よし、タンクと訳そう!となったわけですね。

そして、近年まで日本ではタンクという言葉がスタンダードとなりました。

今どきはシリンダー?シリンダーの語源

タンクの語源でご説明したとおり、ダイビングにおける英語でtankというのは、空気を詰める部分であるcylinderとバルブを組み合わせた状態のものを指します。

ただし、英語ではcylinderがtank全体を指す意味としても用いられていました。
これは、日本語のセカンドステージとレギュレーターでも同じ様な現象が見られますね。
本来レギュレーターというのは、ファーストステージとセカンドステージを合わせてレギュレーターと言いますが、一般的にはセカンドステージのみを指してレギュレーターと使用されることがほとんどです。

ちなみに、英語でtankと言うと、多くの人が戦車を思い浮かべるため、cylinderが用いられているという説もあります。

何はさておき、世界的にはタンクよりもシリンダーがスタンダードだったわけです。

日本のダイバーはほぼ100%がタンクと呼んでいたのですが、これからは世界的なスタンダードに合わせようーー。
ということで2016年に、最も大きな指導団体であるPADIが全ての教材でタンクという呼び方をシリンダーに変更しました。

その後、追随する指導団体もあれば、そのままタンクという呼称を使用する指導団体もあり、2023年現在では、どの指導団体でライセンスを取ったか、また、いつ頃ライセンスを取ったかによって、タンクと呼ぶ人とシリンダーと呼ぶ人が混在しています。

結論

日本国内ならボンベも間違いとは言い切れないが、レジャーダイバーで使用する人は少ない。
ただし、海外でbombe(bomb)と言うと通じない。

タンクもシリンダーも間違いではないが、世界的にはシリンダーが主流。
ただし、海外でtankと言っても通じる。

というのが実際のところです。

タンク(シリンダー)について、更に詳しいお話は以下の記事も読んでみて下さいね!

細谷 拓

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合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

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