MAGAZINE

スクイズとは?仕組みと対処法

基礎知識

スクイズ。

違います。

真っ先にスクイズプレイ(スクイズバント)を思い浮かべてしまった野球好きの方!
スクイズが考えられる場面での、手に汗を握る様な両チームの駆け引きは、野球の中でも最も見ごたえのあるシーンのひとつですよね。

とはいえ今回は、野球のスクイズとは一切関係ありません。
ダイビングのスクイズについてお話ししていきます。

さて、ダイバーならほとんどの人が1度は経験したことのある耳の痛み。
簡単に言うと、それがスクイズです。

ダイビングを行ったことがない人でも、海やプールで素潜りをした時に耳の痛みを感じた経験があるかもしれませんね。
また、飛行機に乗った際、着陸前に耳の痛みを感じたことがあるかもしれません。
これらもスクイズと言う事ができます。

もちろん無理に我慢したりすれば、鼓膜が破れてしまうなどの問題が発生します。

スクイズの仕組み

まず、スクイズの仕組みについて考えてみましょう。

水深の変化によって水圧が変化し、それに伴って空気の体積が変化することはご説明しました。

通常、体内の空間は出入り口が閉じています。
そうでなければ、水に入った瞬間に色々なところから体内に水が入ってきてしまいますもんね。

周囲の水圧が変化しても、何もしなければ体内空間内の圧力は変わりません。
すると、周囲の圧力との差によって、体内空間が押されることで痛みや違和感が生じます。
この痛みや違和感のことをスクイズと言います。

スクイズへの対処法

圧力の差が原因なので、スクイズを解消するためには体内空間の圧力を上げてあげる、つまり、空気を送り込んであげる必要があります。
このことを圧平衡と言い、ダイビング中には必要に応じて圧平衡を行う必要があります。
そして、耳の圧平衡のことを、耳抜きと言うわけです。

大抵は耳の話ばかりになりますが、体内には耳以外にも幾つか空間があります。
副鼻腔(サイナス)が有名ですがそれだけではなく、虫歯の治療で被せ物をした後に、その中で虫歯が進行して空間となってしまうこともあります。

また、体内ではありませんが、マスクと顔との間の空間もスクイズを起こす部分となります。
冬場にドライスーツで潜る場合は、ドライスーツ内の空間もスクイズを起こす部分になりますね。

副鼻腔は鼻の穴と繋がっているため、耳の圧平衡(耳抜き)を行うことで自然と副鼻腔の圧平衡も行われ、スクイズを起こすことはありません。
しかし、風邪などで炎症を起こしてしまうと、鼻の穴に繋がる出入り口が閉じてしまうので、スクイズを起こすことがあります。
風邪の時は無理して潜らないことですね!

虫歯はあまり無い話ですが、被せ物と歯の間でスクイズを起こしてしまうと、一番痛いらしいです……。
これを防ぐにはしっかりした歯医者を受診するしかありませんね(笑)
なんせコンビニよりも歯医者の方が多い時代なので……。

そしてマスク。
ダイビング用のマスクには必ず鼻が入るようになっていますよね?
無意識のうちにマスク内に鼻から空気を出しているのでスクイズになることはあまりありません。

しかし、意識的に鼻からの呼吸を完全にやめればスクイズを起こします。
試しに水泳用のゴーグルで潜って見てください。
3mも潜ると目がえぐれそうになると思います。(笑)

ドライスーツに関しては、給気バルブからスーツ内に空気を送り込んであげればOKです。

ちなみに、肺は常に呼吸をしているのでスクイズは起こしませんよ!

スクイズを起こさないためには、水深と圧力の関係でもご説明した通りこまめに、痛くなる前に圧平衡(耳抜き)を、特に浅いところで意識して行うことが重要です。

ではスクイズを起こしてしまったら?
仕組みを理解した皆さんならおわかりかと思いますが、水深を上げればスクイズによる痛みは無くなります。

耳やサイナスなどに痛みを感じたら、痛みを感じない水深まで戻り、改めて圧平衡(耳抜き)をしましょう。
それ以降はこれまで以上にこまめに圧平衡を行うと良いでしょう。

それでもダメな場合、無理は禁物です!
実はスクイズに関しては、多少強引に潜ることも可能です。

身体の内側の圧力が周囲より低いだけなので、だましだまし空気を送ってあげれば、なんとか潜ることは可能です。

しかし!

その先にはもっと恐ろしい問題が待っています。
それについてはこちら……。

ちなみに、冒頭で野球のスクイズとは関係ないと言いましたが、squeezeという英語には押しつぶす、絞りだす、という意味があります。
野球のスクイズは3塁ランナーを絞りだすプレイ、ダイビングのスクイズは体内空間が押しつぶされること、というわけですね。

細谷 拓

963,910 views

合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。