ボートダイビングのエントリー方法〜ダイビングスキル詳細解説〜
ダイビングスタイルには大きく分けてビーチダイビングとボートダイビングの2つがあります。
そのスタイルによって、ダイビングポイントもビーチポイント、ボートポイントと呼び分けられますね。
それぞれに魅力があるのですが、ボートダイビングの魅力はなんといっても岸から泳いでは到底たどり着けない場所で潜れること。
また、日本を、そして世界を代表するダイビングエリアである沖縄では、大半のダイビングポイントがボートポイントです。
慣れてしまえばビーチダイビングよりも楽なボートダイビングですが、エントリー時にはボートから海に飛び込む必要があるため、初心者の方は少し物怖じしてしまうかもしれませんね。
しかし、正しいエントリー方法と闇雲に飛び込むのは別物。
正しいエントリー方法を身に着けていれば、何も心配する必要はありません。
ということで、ここでは安全に船からエントリーを行う方法を、詳しく解説していきます。
まず、ボートからのエントリー方法には主に、ジャイアントストライドエントリーとバックロールエントリーの2つがあります。
この2つの方法について詳しく、そして、番外編としてその他のエントリー方法について見ていきましょう。
ジャイアントストライドエントリー
比較的大きな船からエントリーする場合に用いる方法です。
正面を向いてエントリーをするので、バックロールエントリーよりも恐怖感は少ないかもしれません。
また、ビーチダイビングであっても、桟橋や岸壁などからジャイアントストライドエントリーを行う場合もあり、特にこの様なダイビングはジェッティダイビングと呼ばれることもあります。
ジャイアントストライドエントリーのやり方
STEP1:BCに給気します。
STEP2:水面・水中の安全を確認します。
STEP3:マスクとレギュレーターを押さえる。
片手でマスクとレギュレーター、片手でマスクストラップを押さえます。
STEP4:へりに立つ。
できるだけ船べり(桟橋などの場合は桟橋のへり)ギリギリの所に立ちます。
STEP5:大きく1歩前に足を踏み出す。
大きな(ジャイアント)歩幅(ストライド)でエントリーするということですね。
STEP6:水面に向けてOKサインを出す。
尚、コンパクトデジタルカメラやアクションカメラを持ってエントリーする場合、カメラを頭よりも高いところに上げてエントリーすることで、エントリー中にカメラが顔などに当たってしまうことを防ぐことができます。
その場合、片手でマスクとレギュレーターを抑えることになるため、よりしっかりと押さえましょう。
ジャイアントストライドエントリーの注意点
前にエントリーしたダイバーの上に落ちて行ってしまわない様、エントリー前に必ず水面の確認を行う様にしましょう。
また、エントリー後は速やかにボートから離れ、次にエントリーするダイバーにOKサインを出してあげましょう。
船や桟橋のへりに立つ際は、フィン先をへりに合わせるのではなく、フィンの中の足先がへりに来るようにしましょう。
そして、このエントリーはジャンピングエントリーではなくジャイアントストライドエントリー。
飛んで入ることがないようにしましょう。
特に真上にジャンプをしてしまうと、その瞬間にタンクの重みで身体が後ろに傾いてしまい、後頭部をボートに打ち付けることになりかねません……。
デモンストレーション動画
では、ジャイアントストライドエントリーを動画で見てみましょう。
バックロールエントリー
シッティングバックロールエントリーとも呼ばれます。
比較的小さな船からエントリーする場合に用いる方法です。
後ろ向きなので慣れないうちは少し恐怖感があるかもしれませんが、座った状態でエントリーをすることができるため、ジャイアントストライドエントリーに比べて安全かつ身体への負担も少ない方法です。
バックロールエントリーのやり方
STEP1:BCに給気します。
STEP2:水面・水中の安全を確認します。
STEP3:ホース類が引っ掛からない様にする。
ホース類は、足の間に入れるか、予め船の外に出しておきます。
STEP4:マスクとレギュレーターを押さえる。
片手でマスクとレギュレーター、片手でマスクストラップを押さえます。
STEP5:後ろに倒れる。
回ろうとするのではなく、タンクの重みで後ろに倒れます。
STEP6:水面に向けてOKサインを出す。
コンパクトデジタルカメラやアクションカメラを持ってエントリーする場合、先にカメラを持った手を船の外に出してエントリーすると良いでしょう。
バックロールエントリーの注意点
バックロールという名前は付いていますが、ロール(回転)しないことがこの方法の大きな注意点です。
回ろうとしてしまうと、必要以上に回りすぎてしまい、入水後に水中で船の下に入り込んでしまい、船のそこに頭を打ち付けてしまう可能性があります。
あくまでタンクの重みで後ろに倒れるだけというイメージで行うと良いでしょう。
また、残圧計などのホース類が船べりに引っ掛かってしまわないように注意しましょう。
ホース類は、足の間に入れるか、予め船の外に出しておきます。
後ろを向いているため、ジャイアントストライドエントリーに比べて水面の確認が行いづらいですが、しっかりと確認も怠らない様にしましょう。
そして、後ろを振り返った時に落ちてしまわない様にも気を付けましょう。
流れが強いダイビングポイントでは、船べりに一定間隔でチーム全員がならび、「せーの」で同時にバックロールエントリーをする場合があります。
当然、少しでもタイミングがずれると、先にエントリーしたダイバーの上から別のダイバーが降ってくることになってしまいます。
その様なスタイルでエントリーを行う場合、少しでもタイミングが遅れた場合や、早すぎる人がいると思った場合には、即座にエントリーを中止し、仕切り直しましょう。
デモンストレーション動画
では、バックロールエントリーを動画で見てみましょう。
ジャイアントストライドとバックロールの使い分け
それぞれの方法の所でも少し触れましたが、基本的には船の大きさや形状で使い分けます。
ジャイアントストライドエントリーは、正面を向いてエントリーできる一方で、エントリー後に船を大きく揺らしてしまうことになります。
そのため、小さい船の場合にはバックロールエントリーを用います。
一方で、大きな船の場合には船べりから水面までの距離が遠いため、バックロールは適しません。
エントリー後に船が受ける影響も小さいため、ジャイアントストライドエントリーを用います。
とはいえ、どちらを使用するかはガイドの人に尋ねればOK。
仮にバディ潜水でガイドダイバーが存在しないとしても、必ず船長がいますよね。
乗船時に予め、ガイドや船長にエントリー方法を訪ねておくと、エントリー時に焦らなくて済みますよ。
番外編
ボートダイビングのエントリー方法としては、ここまでご紹介したジャイアントストライドエントリーとバックロールエントリーの2つをマスターしていれば、基本的にはOKです。
ここからは、一眼レフカメラの様な大きなカメラを持っている場合に便利なエントリー方法や、より簡単にエントリーをすることができる方法など、少しマイナーなエントリー方法を番外編としてご紹介していきます。
フロントロールエントリー
海に正対して、頭から回転する様にエントリーを行う方法です。
一眼レフカメラやストロボなどを装着して大きくなったカメラを持ってエントリーする際などに利用する場合があります。
また、ゲストから目を切る瞬間を最小限にするために、この方法を好むガイドダイバーもいます。
エントリー直前まで自分が着水する場所の安全を確認でき、船べりに掴まっていることができるので、ある意味理想的なエントリー方法ではありますが、失敗すると足や身体を強く船に打ち付けてしまったり、顔面からエントリーしてしまってマスクが外れてしまったり、レギュレーターで歯を折ってしまったり……。
実践する場合は、ダイビング器材を装着した状態でもある程度自由に動くことができ、入水の恐怖心なども完全に取れているレベルになった上で、必ずプールなどで練習を行ってから実践するようにしましょう。
フロントロールエントリーのやり方
片方の膝を船にかけ、その膝を支点にして前向きに回ります。
この時、強く回るという意識よりは、頭をお腹側に潜りこませる様なイメージです。
ギリギリまで船べりを掴んでいたいので、エントリー開始直後、即座にマスクとレギュレーター、マスクストラップを押さえます。
デモンストレーション動画
では、フロントロールエントリーを動画で見てみましょう。
サイドロールエントリー
こちらも、一眼レフカメラやストロボなどを装着して大きくなったカメラを持ってエントリーする際などに利用します。
サイドロールエントリーのやり方
フロントロールエントリーと同じ様に、片膝を船べりにかけ、頭からではなく肩から水に入る様なイメージで、横向きに回ります。
フィートトゥギャザーエントリー
ジャイアントストライドエントリーの変形です。
ジャイアントストライドエントリーでエントリーした直後に両足を閉じ、気を付けの姿勢で着水します。
船べりや岸壁から水面までの距離がある場合、通常のジャイアントストライドエントリーの様に足を前後に開いたままだと、着水の衝撃で後ろ足が持って行かれてしまい、怪我をしてしまうため、両足で着水します。
非常に大きな船や、時にはヘリコプターからエントリーを行う必要がある海上保安庁や自衛隊、消防などのダイバーがよく利用します。
コントロールドシーテッドエントリー
シッティングフロントエントリーとも呼ばれます。
水面までほとんど距離が無い場合に使用することができます。
海に正対して座った状態から滑り落ちる様に水に入ろうとすると、タンクが邪魔になったり、頭を打ってしまう可能性があるため、片方の手をもう片方の手の近くに持って行き、半回転しながらエントリーします。
プールサイドに座った状態から水に入る様子をイメージすると良いでしょう。
漁船などの場合にはコントロールドシーテッドエントリーを行えるスペースが無いことがほとんどですが、ダイビング専用ボートの場合、船尾からこの方法でエントリーできる可能性があります。
ジャイアントストライドエントリーやバックロールエントリーに自信が無い場合、相談してみると良いでしょう。
尚、コントロールドシーテッドエントリーという用語を用いなくても「座ってエントリーしても良いですか?」と言えば通じるはずです。(笑)
自動昇降機
例外中の例外で、もはやエントリー”方法”でもありませんが、ご紹介します。
ごくまれに、ダイビングボートの船尾に自動昇降機が付いている場合があります。
通常はエキジット時に利用するのですが、もちろんエントリーに使用してはいけないということもありません。
自動昇降機に載せてもらって、降ろしてもらい、そのまま泳ぎ始めればOK!
筆者が知る限り、西伊豆の雲見、南伊豆の神子元島に自動昇降機付きのボートを保有しているダイビングサービスがあるほか、三重県の九鬼でも保有しているダイビングサービスがある様です。(九鬼は筆者未確認)
さいごに
ジャイアントストライドエントリーもバックロールエントリーも、見た目よりも難しくはありません。
一方で、正しい方法でエントリーを行わないと、ビーチダイビング以上に危険が伴います。
自信が無い場合は、恥ずかしがらずに遠慮なくサポートをお願いしましょうね。
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