実はアルミタンクの方が重い!?タンク材質によるウエイトの差
普段はビーチダイビング、夏休みには離島でボートダイビング
こんなスタイルでダイビングを楽しんでいる人も多いのでは無いでしょうか??
そんな夏休み、離島でのボートダイビングの際、普段通りのウエイトなのに、沈まなかったという経験がある人はいませんか??
こちらの記事でも触れたとおり、ウエイトの見直しが必要なタイミングというのがいくつかあります。
夏休みのボートダイビングで…となると、最も疑わしいのはタンク(シリンダー。以後タンクで統一)の材質による違いでしょう。
前述の記事内で
アルミタンクとスチールタンクではスチールタンクの方が重いことは想像出来ると思います。
従って、アルミタンクの場合は、スチールタンクの際に比べて+2kg程度のウエイトが必要になります。
と触れました。
普段のビーチダイビングではスチールタンクを使用することが多いことでしょう。
それに対してリゾートでのボートダイビングの場合、アルミタンクを使用することが多いです。
従って、スチールタンク時のウエイトのまま行ってしまうと、沈めなくなってしまうんですね…
ざっくり+2kgと覚えておいても良いのですが、今回はもう少し掘り下げて考えてみようと思います。
スチールタンクとアルミタンクの重さ
アルミタンクとスチールタンクではスチールタンクの方が重いことは想像出来ると思います。
このひとこと。
容易に想像でき…実は嘘です(笑)
厳密にいうと
同じ量のアルミとスチールであれば、スチールの方が重い
ですよね。
では、タンクになるとどうでしょう?
同じ10Lのタンクでも、使われるアルミやスチールの量は異なり、タンクの大きさも違います。
そして、実際に量ってみると…
アルミタンク約17kg、スチールタンク約16kg
なんと!
スチールタンクの方が軽いんですね!
スチールタンクの方が重いからウエイトが少なくて済む、というよくある説明は嘘だったわけです…
(感覚的に理解できるので、これはこれで良いと思いますが)
スチールタンクは重くて腰に負担がかかるから、アルミタンクが良い、なんて声も聞いたことがあるような無いような。
まあ、人間の感覚なんて、思い込みの方が強いので仕方ありません(笑)
スチールタンクとアルミタンクの浮力
ではなぜ、アルミタンクの方が余計にウエイトが必要になるのでしょうか。
もちろん、その答えは浮力の違いにあります。
それぞれの体積
実は、タンクそのものの重さは、タンクに刻印されています。
10Lのアルミタンクで13.9kg、スチールタンクで13.0kgです。
先ほどの総重量よりも軽いのはバルブ部分の重さと空気の重さ。
空気は1Lで1.293g(0℃・1気圧)とされています。
10Lで200気圧だと…
1.293×10×200=2586g=2.586kg
2kg以上あるんですね!
少し脱線すると、満タンのタンクと、50気圧まで使った残タン、空気が減ったことで約1.94kgも軽くなっています。
そのため、熟練してくると、タンクを持つだけで満タンか残タンか、おおよそ当たる様になるんですよ!
話を戻します。
アルミの比重(水の重さとの比)は2.7、スチール(クロムモリブデン鋼)は7.85です。
従って、ここから逆算すると10Lタンク1本あたり
アルミ:5.15L(5150㎤)
スチール:1.66L(1660㎤)
となります。
それぞれの浮力
バルブの体積は一旦無視をするとして…
体積の単位も便宜上リットルで統一するとして…
海水中での浮力は、体積に海水の比重である1.03を掛けます。
アルミタンク
タンクの体積:5.15L
→タンクの浮力:5.3kg
空気の体積:10L
→空気の浮力:10.3kg
タンクの重さ:▲13.9kg
空気の重さ:▲2.59kg
⇒5.3+10.3-13.9-2.59=-0.89kg
つまり、アルミタンク自体が0.89kgのウエイトと同じと言えます。
スチールタンク
タンクの体積:1.66L
→タンクの浮力:1.71kg
空気の体積:10L
→空気の浮力:10.3kg
タンクの重さ:▲13.0kg
空気の重さ:▲2.59kg
⇒1.71+10.3-13.0-2.59=-3.58kg
アルミタンクの0.89kgに比べて2.69kg余計にウエイトを付けているのと同じと言うこと。
スチールタンクからアルミタンクに変わるときはウエイトを+2kg。
あながち間違っていなさそうですね!
ちなみに…
タンクバルブを無視したのはどうする!と細かいことが気になってしまったあなた!
実際にはタンクバルブの重さと浮力もあるので、それぞれの浮力は若干異なりますが、同じ浮力がそれぞれに乗っかるだけなので、アルミタンクとスチールタンクを比較した差であれば、結果は同じになるはずですよ♪
アルミタンクは浮く?
アルミタンクで潜っていると、タンクに引っ張られるような感覚を覚えたことはありませんか?
これ絶対タンクが浮いてるだろ、って。
でも、アルミタンクの浮力は-0.89kgなのでわずかに沈むはず…
お分かりかも知れませんが、これは満タンだからですね。
浮上直前、残圧が50気圧として考えてみましょう。
先ほど
少し脱線すると、満タンのタンクと、50気圧まで使った残タン、空気が減ったことで約1.94kgも軽くなっています。
と言いました。
つまり…
アルミタンク:0.89-1.94=-1.05kg⇒1.05kgの浮力で浮く
スチールタンク:3.58-1.94=1.64kg⇒尚1.64kgの重しとなり沈む
ということです。
ということで、アルミタンクが浮く感覚は、気のせいではなく、本当に浮いていたんですね!
アルミタンクではウエイトが多く必要。正しい説明とは
まとめとして今までの
『スチールとアルミだとアルミの方が軽いからウエイトが多く必要』
を正しましょう(笑)
ここまで読んでくださった方ならもうお分かりかと思いますが
『スチールタンクとアルミタンクだとアルミタンクの方が浮力が大きいので、ウエイトが多く必要』
となります。
じゃあなんでアルミタンクの方が浮力が大きいの?
と返って来たらこうですね。
『アルミの方が弱い材質なので、1本のタンクに使う金属の量が多い。だからタンクの体積がスチールよりも大きくなる。しかもアルミの方が軽い。だからアルミタンクの方が浮力が大きい』
うーん。。。
なかなか長ったらしくて面倒なので、明日からも感覚的に理解しやすい
『アルミは軽い。スチールは重い。だからアルミタンクの時はウエイト増やしてね』
で行こうと思います(笑)
余計な混乱を生まないための嘘は優しさだと信じて…(笑)
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