陸上での重器材の背負い方〜ダイビングスキル詳細解説〜
ダイビングを行う上で、最も体力を使う瞬間といえば、重器材を背負う瞬間かもしれません。
タンク(シリンダー)も含めた重器材の総重量は20kgほどあり、慣れるまではこれだけで疲れ切ってしまうことも。
慣れてしまえば自然と身体の使い方が身につくので、初めの頃よりは楽に背負えるようになりますが、重労働であることには変わりないでしょう。
最も身体に負担がかからない方法は水面に器材を浮かべて背負う方法ですが、この方法が使えるシーンは多くなく、基本的にはビーチやボート上で背負うことになります。
また、ひとくちに陸上で器材を背負うと言っても、様々な背負い方があります。
今回は、そんなダイビング器材の背負い方とそれぞれの注意点について、詳しくご紹介していきます。
器材を背負う前に
まずは器材を背負える状態にしましょう。
お腹のバックルやマジックテープを外した状態にし、ホース類の絡みが無いようにします。
肩紐の調節ができるタイプ(ショルダーアジャストタイプ。多くの場合はこれ)のBCの場合は、肩紐が締まっているケースが多いため、こちらも忘れずに緩めておきましょう。
また、バルブの開け忘れ、ウエイトのつけ忘れもよくある失敗です。
一度背負った器材を降ろし、もう一度背負うのは無駄な体力を使うことになってしまうので、必ずバルブとウエイトを確認してから背負うようにしましょう。
地面から1人で背負う
基本となる背負い方です。
細かく見て行きましょう。
まずは器材の前に片膝をつきます。
器材を背負う際はパワーインフレーターが絡むことを防ぐため、基本的には左腕から背負う形になります。
そのため、左膝をつき、身体の左側に器材が来る様にしましょう。
左腕を肩まで通したら、左手でタンクの底を掴みます。
左手の力も利用しながら背負います。
この時、身体が器材から離れてしまうと、なかなか持ち上げることができません。
身体をできるだけ器材に密着させて背負うようにしましょう。
体力がある方の場合、左腕のみを通した状態から立ち上がりながら背負うこともできるかもしれません。
この時、自然と身体を回転させながら背負う形になるため、勢いよく立ち上がると、ホース類が遠心力で振り回されてしまい、周囲の方にぶつかってしまったり、壁などにぶつかってしまうことになってしまいます。
周囲には気を付けて背負うようにしましょう。
また、肩紐の辺りを肘で持ち、腕の力のみで担ぎ上げようとしている方をよく見かけます。
この方法で担ぎ上げると、腕力が必要なだけでなく、腰に大きな負担がかかるため、必ずタンクの底を持ち、身体全体で担ぐようにしましょう。
器材を背中に乗せることができたら、右腕を通します。
この時、右手ではなく、右肘で右腕が通る場所を探すと、身体が硬い方でもスムーズに右腕を通すことができます。
両腕が通せたら、ゆっくりと立ち上がります。
器材の重みに負けてしまわない様、常に前傾姿勢を保つと良いでしょう。
ショルダーアジャストタイプの場合、立ち上がったらまずは肩紐を締めます。
タンクの重みが肩にかかっていると上手く締まりません。
前傾姿勢になり、タンクを身体の上に押し上げたら、ストラップを身体の後ろ側に引くイメージで絞めます。
おんぶしている人を背負いなおす様なイメージでタンクを身体の上に押し上げると良いでしょう。
絞める方向は、身体の前側に向かって引っ張ってしまうと絞めることができません。
器材が乾いている場合絞めづらいことがありますが、水で濡らすと締めやすくなる場合があります。
ビーチダイビングであれば、浮力によって器材が浮くことで肩回りに余裕ができ、さらにきつく絞めることもできます。
場合によっては、肩を絞める手順は後回しにしても良いでしょう。
最後に、お腹のマジックテープとバックル、胸元のバックル(商品によっては一部無い物もあります)をつけます。
段差を利用して背負う
1人で器材を背負う場合、最も身体に負担がかからない方法です。
腰をかけられる程度の段差に器材を置き、器材の前に座って背負います。
左腕からBCに腕を通し、両腕が通ったら座ったまま肩紐を絞め、バックルの取り付けを行い、完全に器材が装着できている状態になってから立ち上がりましょう。
地面から背負う場合に比べ、重たい器材が後ろにある状態から立ち上がることになるため、立ち上がろうとした直後に後ろに倒れてしまうことがない様に注意が必要です。
地面から2人で背負う
段差を利用することができない場合、バディと2人で背負うことで、身体への負担を減らすことができます。
手伝う人は、左手でタンクバルブの根元、右手でBCの右肩を持つと良いでしょう。
持ち上げるのを手伝うだけでなく、BCの右側が背中に巻き込まれてしまうことを防ぎ、右腕を通すこともスムーズに手伝うことができます。
背負う人は、手伝っているにもかかわらず、自らの力に頼って背負うことが無いようにしましょう。
激しく動いてしまうとホース類、場合によってはタンクがバディを直撃してしまいます。
器材を膝に乗せて背負う
腕力は必要ですが、かがむ必要がないため、腰への負担が少ない背負い方です。
写真のように器材に正対し、腕の力で持ち上げた器材を左腿に乗せます。
左腕を通しながら足の力で器材を持ち上げつつ、背中側に移動させます。
器材を回すのではなく自分が回るイメージです。
頭の上から背負う
海上保安庁などの背負い方として有名な方法です。
器材を振り回すことがないため、最も少ないスペースで背負うことが可能で、最も素早く背負うことが可能ですが、最も腕力が必要な背負い方でもあります。
BCの内側から両腕を通し、タンクを持って器材を抱えます。
見よう見まねで肩紐の部分を持っているケースを見かけますが、そちらは誤りです。
頭の上に持ち上げ、背中側へと器材を送ります。
この時、可能な限り後ろ側までタンクを離さずにいることで、頭に落としてしまうことを防げます。
見よう見まねで肩紐の部分も持った場合、器材を振り回すことになるため、落ちる場所を制御できずに頭に落としてしまう可能性が高くなります。
また、頭の後ろまで回ったとしても、タンクが背中に打ち付けることになるため、いずれにしても非常に危険です。
最後に
誤った方法で器材を背負うと、自分の身体に負担がかかるだけでなく、周囲の人を怪我させてしまうことにも繋がります。
周囲に十分注意し、落ち着いて背負う様にしましょう。
また、無理な方法で器材を背負っていると、ウエットスーツにも負担がかかります。
肩の部分がこすれて破れてしまうことに繋がるため、こちらも注意しましょう。
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