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須江の冬季限定ポイント・内浦ビーチへ伊豆ダイバー視点で初潜入!

海のレポート

みなさん、こんにちは。
UnderWaterCreatorの茂野です。

突然ですが、和歌山県に冬の時期しか潜れないスーパービーチと呼ばれるポイントがあることを知っていますか?
関西在住のダイバーの方からすると「はいはい。須江・内浦ビーチのことでしょ」と当たり前のように知っているかもしれませんね。

これは逆もまた然りで関西ダイバーの方は伊豆の海をあまり知らないことも。
関東と関西ダイバーで意外と情報って分断しちゃってますよね。

確かに遠出するなら沖縄や伊豆諸島など南国にという気持ちもわかります。
しかし日本全国を見渡すと無数のダイビングスポットがあります。そして、それぞれに異なる魅力を持っていて面白いんです!

普段は僕も伊豆をホームグラウンドにしています。そして、関西の海ははじめて!

ということで、関東、特に伊豆ダイバー目線で和歌山県紀伊大島・須江の内浦ビーチに潜ってきました!

左:茂野、右:SO BLUE DIVERS 須磨 カズマさん

今回ガイドは、兵庫県のSO BLUE DIVERS 須磨・代表のカズマ(松井一真)さんにお願いしました!

カズマさんは大瀬崎の老舗ダイビングサービス・はごろもマリンサービスで5年現地ガイドを務めたのちに独立した方なので、伊豆の海も知り尽くしているため、今回の趣旨にピッタリな方。(しかも僕が学生アルバイト時代の大瀬崎の先輩でもあるので頼もしい!)

※内浦ビーチのオープンしてる期間は10月1日〜3月31日までの期間限定ポイント!!

大瀬崎のよう!?だけど何か違う須江の魅力

須江の内浦ビーチを潜って1番最初に思ったことは、”なんだか初めて潜ったような気がしない海”でした。

それは穏やかな内湾性のビーチポイントで滅多にクローズしないポイントであること。
水中の移動距離が少なくじっくり潜れることに関係しているかもしれません。

短期の取材にありがちな、そのポイントの見所を回って撮影をしていくというスタイルよりは、自分の表現をこの海にのせて撮ってみたい、そう思える海でした。

エントリーすると水深約3m付近からゴロタが広がり、さらに潜降していくと水深約15m付近からは砂地が広がっています。

ゴロタ:大きめの岩や石のこと。ビーチの砂利止めなどに利用されることも多い。

その先は沖に進めば進むほど水底は泥質になり、水深約25m付近までいくと完全な泥地になります。

これだけ聞くと、めちゃくちゃ大瀬崎に似てません!?

深海性の生き物が浅い水深までやってくることもあり、マトウダイは冬の時期ならほぼ確実に見られるといいます。
過去にはタカアシガニがあがってきて長く観察されたことも。

こうやって深海性の生物が見られるのも大瀬崎っぽくありませんか?

穏やかなビーチで、ゴロタがあって、水底は砂泥質で、深海魚や驚くようなレア生物など、何が出るかわからないドキドキ感もあるって、もはや大瀬崎そのもの!?

砂地にひっそりと隠れていたハナイカ

しかし!

内浦ビーチの雰囲気は大瀬崎に似ているのですが、やっぱり全然違う!

観察できる生物の種類は違ったり、サンゴがあったり確実に伊豆よりも南の海であることを感じさせてくれます。
そして冬にも関わらず、生物の量が圧倒的に多いんです。

こうやって、地形は似ててもポイントごとに生物層が違ったり海の様子が違ったりするのは、南北に長い日本の海の魅力の1つだと思います。

マクロ生物がとにかく豊富!被写体が多すぎて忙しい

内浦ビーチは本当にたくさんの生物を見ることができ、被写体に困ることはありません。
エントリーして開始1分でこんなカワイイ、ハナゴンベの幼魚に会えちゃいます。

さきほどのハナイカも含めやはり伊豆には出現する可能性の低い南方種が普通に見られるのも面白いですね。

ちなみに、今回は紹介しませんが取材時にはクマドリカエルアンコウやカミソリウオなどの伊豆でもお馴染みのアイドルたちもいました。

浅場はサンゴが多く、サンゴの中に隠れるチョウチョウウオやハギの仲間、ヤリカタギやゴマハギなどの幼魚が多いんです。

サンゴというと南の島のイメージがありますが、黒潮が当たる紀伊半島の海には、豊かなサンゴ礁が広がっています。
これも伊豆では、一部のダイビングスポットでしか見られない光景ですね。

猫目が特徴のヒレグロスズメダイにも出会えました!沖縄ではよく見られるけれど、伊豆では滅多に見られない生き物ですよね。
 
こんな風に伊豆では珍しいけど沖縄などの南の海では普通に見られるの生き物が、内浦ビーチにもたくさんいるんです。

伊豆と沖縄の中間のような感じ……?伊豆ダイバーはダイビング中、ずーーーっと楽しめると思います!

こんな白化したイソギンチャクに棲むクマノミなんかもめちゃくちゃカワイイ!
クマノミはなんでこんなにカワイイのだろうか!?

今年の内浦ビーチでは、高水温で白化してしまったイソギンチャクが多いそうです。
白化については考えさせられる一方、写真を撮る僕からすると、美しさも感じてしまうわけで。こんなシチュエーションが安全停止ラインにたくさんあるんだから本当に撮り甲斐がある!

もちろん、普段から見られる魚をじっくり撮るにも最高です。

砂地でロープに擬態していたアオヤガラをゆるりと撮影してみました。
砂地の被写体探しをしながらエキジットに向かえるのも、ビーチダイビングならではの魅力ですね!

驚きの出会いがたくさん!水中でハモ!?

ここからはちょっとマニアックな生物の紹介になります。内浦ビーチは泥地の生物がめちゃめちゃ面白いんです!

皆さんは野生のハモを見たことがありますか?

僕は正直、湯引きされた後の状態しか知らなくて、生きたハモがどんな様子なのか全く想像もつかなかったんです。

現代の小学生の中には、「海には魚の切り身が泳いでいる」と思っている子どももいる、というネタがありますが、まさにハモに関しては僕もそんな感じ。

この目、めちゃくちゃ怖くないですか?
まるで感情を感じさせない冷たい目をしています。

薄暗い深場の泥地を潜っている時にこの顔と出くわしたらホラーですよ……!

このギラっと光沢のあるボディ、感情のない目、そしてギザギザの歯が異様な雰囲気を漂わせています。
こんなに恐ろしい顔をしているのに、性格は臆病でダイバーが来るとすぐに引っ込んでしまいます。

他にも須江で潜っていて驚いたのは泥地に穴を掘ってそこに住むウツボがいるということ!
名前をオナガウツボというのですが、このウツボとにかく長い!

日本最大級のウツボで時に大きさは4mの長さになることもあるそう。
今回はその長さを計り知ることは出来ませんでしたが、その見た目はまるで古代魚のようですごかった!

このシワシワとした無機質な感じが図鑑でみた恐竜にそっくりですごく好き。

ハモはハモで異様な雰囲気を醸し出してましたが、オナガウツボも泥地からにょきっと顔を出していて、最初に見た時は何かと思って3度見くらいしてしまいました!

こちらは今回の取材中、水深15m付近のゴロタで偶然遭遇したオニイシモチ。

一時期話題になった激レア種で、今までダイビング中に見れたことはほとんどなかったそうです。
ビーチにも関わらずこんな激レア生物が登場するって本当にすごいですね!

ワイドも抜群!エントリーして3秒で魚影の中へ

ワイドも抜群!エントリーして3秒で魚影の中へ

ここまでマクロの話ばかりしてきましたが内浦ビーチはワイドもめちゃくちゃ面白いんです!!

エントリーした瞬間から、魚だらけの楽園のような光景が広がります
体験ダイビングやシュノーケリングでもこの魚影を楽しめちゃうくらい、エントリー口のすぐ近くです。

ビーチポイントでこんなに魚が群れている場所ってなかなかないんじゃないでしょうか?

この群れの中にはマアジやクロムツ、クロホシイシモチと様々な種類の魚が入り乱れています。

ウメイロモドキやヨスジフエダイなどのように華やかな魚影ではありませんが、日本らしい魚たちが群れていて見応えがあります!

個人的にはマアジがこんなに群れていて迫力のある写真が撮れるシチュエーションは少ないので、テンション上がりながら撮ってました。

浅場にはアイゴの幼魚が群れていたり、

タカベの群れが入ってきたりと、

エントリーからエキジットまで本当に賑やかです。
このワイドを無視しながらマクロダイビングをするなんて本当に贅沢なポイントです。

また、この魚影をめがけて捕食者たちも集まってきます。

砂地にはカスザメがうろうろとしていたり、

マトウダイが中層で群れを追っていたりします。

ここだけで1ダイブ丸々遊んでも飽きないほどの魚影と魚種!
恐るべきスーパービーチですね!

マクロもワイドも兼ね揃えた本当にすごい場所です。
魚影が薄くなる冬の時期にこれだけ魚がいるとスーパービーチと呼ばれる理由も納得です。

ぜひ関東在住のダイバーもこの群れを見に行って欲しい!

おわりに

須江に期間限定でオープンする内浦ビーチ。

非常に穏やかなポイントであるにも関わらず、エントリーした瞬間から魚影に囲まれ、探すと珍しい生き物がザクザク出てくる。
ワイドもマクロも楽しめるスーパービーチと呼ぶにふさわしいポイントです。

内湾の泥地のポイントで南国のような華やかさはないけれど、噛めば噛むほど面白い海。
1本、また1本と潜っていく度に面白さが増していく感じがします。
須江をホームグラウンドにするダイバーが多いのも納得です。

この海にはダイバーの数だけ楽しみ方があって面白い。
もちろん、僕が潜って感じたことを書いたこの記事も、あくまで楽しみ方のひとつ。
皆さんも須江の海で自分なりの楽しさや表現を見つけてみてくださいね。

今回の取材では、須江ダイビングセンターさんにお世話になりました!

店長の坂口昌司さんには毎ダイブ、須江の面白いところや感じて欲しい場所など、多くのアドバイスを頂きました。
生物の居場所なども的確で本当に頼りになりました。

ありがとうございます。

また兵庫の須磨が拠点にも関わらずガイドをしに来てくれたSO BLUE DIVERS 須磨のカズマさん本当にありがとうございました。

取材協力:SO BLUE DIVERS 須磨(https://www.soblue-divers.com/)、須江ダイビングセンター(http://www.zb.ztv.ne.jp/sue.d.c/

茂野優太

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Under Water Creator。 1991年、神奈川県生まれ。 海・ダイビングの魅力を写真、映像、文章、ガイドなど、多様なアプローチで発信する。 伊...

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