【水の抵抗と仕組み】エア持ちが良くなる姿勢とは!?
男の子の憧れと言えばなんでしょう?
トーマス?ガチャピン?仮面ライダー?ウルトラマン?
いろいろあるとは思いますが、やっぱりこれでしょう。
大人になってからも、新幹線が走っているのを見かけると、ついつい「あっ、新幹線」なんて言ってしまいますよね。
新幹線のかっこよさは、あの独特な流線型のフォルムにあるのでしょう。
もしかすると、新幹線よりもこっち、という人も多いかもしれません。
飛行機や戦闘機、流線形が美しい上に翼まで生えているからかっこ良いんですよね!
新幹線も戦闘機も、あのかっこいいフォルムは、空気抵抗を出来るだけ抑えるための工夫です。
ところでみなさん、普段生活して空気抵抗を意識したことはありますか?
空気抵抗が強くて進むのがツライ!なんてことはあまりありませんよね。
向かい風の強いときには感じるかもしれませんが、それだって台風クラスの強風が吹いた時だけ。
昔から『風吹きに遠出するな』なんて言うので台風の時はおとなしく家にいましょうね。
さてさて、普段そこまで意識することのない空気抵抗、つまり自分を取り囲む物資からの抵抗(抗力)ですが、ダイビングの様に周囲が水になると、話は変わってきます。
プールで歩くことを想像してもらえればわかりやすいと思いますが、水の抵抗は空気に比べて圧倒的に大きいです。
抵抗の大きな中で運動するには普段以上の力が必要になります。
ダイエットのためにせっせとプールでウォーキングするのも、通常のウォーキングよりも負荷をかけて運動をしたいから。
逆に言うと、出来るだけ体力を使いたくない時、つまりダイビング中はこの水の抵抗を出来るだけ少なくしたいですよね。
水の抵抗を出来るだけ少なくすることで、楽に移動することができ、エアの節約にも繋がります。
ということで、今回は水の抵抗についてひも解いていきたいと思います!
細かく見ていく前に、まずは水の抵抗、抗力を求める式を見てみましょう。
数式が出てきた瞬間にアレルギーが出る!という人は、絶対にこのままスクロールせず、ここから式をすっ飛ばしてください!(笑)
【理系向け】抗力の導出式
流体中の抗力を示す式は
- D:抗力
- ρ:流体の密度
- V:物体と流体の相対速度
- S:投影面積(進行方向の断面積、代表面積)
- CD:抗力係数
とすると以下の式で表されます。
つまり
- 流体の密度に比例
- 物体と流体の相対速度の2乗に比例
- 投影面積に比例
ということですね。
ここで抗力係数CDの存在が気になりますが、物体の形状、流体の粘性、流体の流れの速さ、マッハ数が影響するのだとか。
代表的な形状(球体や円柱など)の数値は示されているものの、最終的には実験によって導出されます。
ここからはそれぞれの要素についてダイビングでは具体的にどの様なことを示すのか、見て行きたいと思います。
水と空気の違い
空気と水には様々な違いがありますが、代表的なものとして密度の違いが挙げられます。
要は、同じ大きさなら空気より水の方が重たい、ということです。
この密度の違いは抗力(抵抗)にも影響を与え、抗力は密度に比例します。
空気の密度は1.2~1.3kg/㎥、海水の密度は1020~1035kg/㎥なので、海水は空気の約1000倍の密度です。
ということは、空気中を移動するのに比べて1000倍の抗力が働き、1000倍の力で動かなくてはいけないということですね!
ちなみに、以下の記事でご紹介した通り海水と淡水では密度が異なります。
淡水の密度は1000kg/㎥。
海水よりも小さいので、理論上は海水よりもプールや湖の方が泳ぐのに力はいらないことになります。
ただ、その差は抗力全体から見るとわずかなので、実感として感じることは無いでしょう。
まぁ、当たり前ですね(笑)。
流れに向かう面積の影響
板を想像してみましょう。
大きい板と小さい板、それぞれを流れに垂直に置いた時、大きい板の方が強く押されることは想像できますよね。
ではこの板を流れに平行に置いたらどうなるでしょう?
押される力が一気に小さくなることは想像できるかと思います。
この様に、抗力には体積や表面積では無く、流れの方向(進行方向)に対しての面積が影響します。
そして密度同様、抗力は流れの向き(進行方向)に対する面積(断面積、投影面積)に比例します。
ダイビングで考えてみましょう。
簡単に言うと、細い人よりも太い人の方が水の抵抗を強く受けるということですね。
とはいえ、体格の差による水の抵抗の違いはそこまで大きくありません。
水の抵抗が大きく変わるのは姿勢によるものです。
板の例と同じ様に、地面に対して水平な姿勢であれば水の抵抗は小さく済みますが、顔が上がるなどして地面に対して斜め、あるいは完全に立った様な姿勢になると、その分水の抵抗を受けてしまいます。
こちらの記事で、中性浮力が上手くいかない原因は立ち泳ぎにあるとご説明しました。
立ち泳ぎになってしまうと中性浮力が上手くいかないだけでなく、余計な水の抵抗も受けてしまうので、その分エアの消費も早くなってしまうということなのです!
水の流れと自分自身の速度の影響
普通のプールで泳ぐ場合と流れるプールで流れに逆らって泳ぐ場合、どちらが大変でしょうか。
当たり前ですが、流れに向かって泳ぐ方が大変ですよね。
周囲の物質、ダイビングの場合、水(海水)の流れももちろん抗力に影響します。
そして、流れの速さだけでなく、自分自身の速度にも影響します。
ボクシングでカウンターパンチというテクニックがありますが、止まっている状態でパンチをもらうのと、相手に向かって行ったときにパンチをもらうの、どちらがパワーがあって痛いかというのと同じことです。
水の流れと自分の速度、両方を考慮に入れたものを相対速度と言います。
流れと同じ方向に進んでいれば(自分の速度ー水の流れの速さ)ですし、流れに逆らって進んでいれば(自分の速度+水の流れの速さ)です。
水の流れが同じであっても、自分がそれに逆らって泳げば泳ぐほど抗力は大きくなります。
そして、抗力は相対速度の2乗に比例します。
仮に全く流れの無い場所で考えると、倍の速度で泳ぐためには4倍のパワーが、3倍の速度で泳ぐためには9倍のパワーが必要ということ。
遠くにカメを見つけてダッシュで近づくために、いつもの倍の速さで泳ぎたいなら、フィンキックに必要な力は4倍になるということです。
逆に、速度を半分にすれば使うパワーは1/4、速度を1/3にすれば使うパワーは1/9になるので、一気にエアを節約することが出来ます。
流れに対する形状の影響
最後は物体の形です。
冒頭の新幹線や飛行機は、これを突き詰めて考えています。
これまでご紹介した要素は
- 密度
- 投影面積
- 相対速度
でした。
では、この場合、どちらがより強く水の抵抗を受けるでしょう?
上下の物体で投影面積は同じだとします。
感覚的に、上の円柱の方が水の抵抗は少ない気がしますよね。
その皆さんの感覚、正しいです。
なんとなく、上手く水を受け流しそうな形だと、水の抵抗は少なさそうですよね。
形状の影響を計算で導き出すことは難しく、基本的には実験によって求めます。
ただし、その結果は皆さんのイメージ通り、水を上手く受け流す形ほど抗力は小さくなります。
ここまでの3要素に比べて物体の形状に関して話し始めると、乱流とかレイノルズ数とかそれこそ流体力学の専門的な知識が必要になってしまうので、これ以上は割愛します。
様々な実験の結果、よく聞く『流線形』が最も抗力を抑えられることがわかっているとだけ思っておいてください。
補足:流線型
そもそも流線型の定義が「流れから受ける抵抗が最も小さくなる曲線」なのでなんとも言えませんが、一般的には先端が丸く、細長く徐々に広がりながら後ろに伸びる形です。
実は、理想的な流線形になると、形状以外の3要素の影響を極めて小さくすることができます。
投影面積の所で「立ち泳ぎをしてしまうと投影面積が増すために水の抵抗が増える」とご説明しました。
逆に正しい姿勢、水平姿勢で泳ぐことで投影面積を減らすだけでなく、形状を流線形に近づけることが出来るため、その意味でも正しい姿勢で泳ぐことは非常に重要です。
まとめ
水の抵抗(抗力)は…
- 水(周囲の物質)の密度に比例
- 進行方向に対する投影面積に比例
- 水(周囲の物質)と自身(物体)の相対速度の2乗に比例
- 自身(物体)の形状も影響を与える
と言えます。
数式が苦手な方もいるかもしれませんが、最後なので式を提示しておきますね。
密度は基本的に変えられませんが、泳ぐ速度は自身でコントロールすることが出来ますよね。
そして、最も重要なのが姿勢で、正しい姿勢になることで、投影面積を小さくしつつ、水の抵抗を抑える形状になることが出来ます。
つまり、水の抵抗を減らし、体力を温存し、エア持ちを良くするためには…
姿勢が最も重要な要素
ということですね!
具体的には、立ち泳ぎにならないよう、出来るだけ水平姿勢になるということ。
最初の話を思い出してみてください。
誰もがかっこいいと思う新幹線や戦闘機、そのかっこよさは流線形のフォルムにあるはずとお話ししました。
そう。
ダイビングでも一緒です。
流線形のダイバーはかっこいい!!
かっこいいダイバーを目指すためにも、泳ぐ姿勢を意識してみてくださいね!
この記事へのコメントはありません。