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【応急処置あり】ダストキャップを閉め忘れるとどうなるの?

器材について

ダイビング器材を扱う上で、非常に重要なのが洗い方です。

正しく洗うことで、器材を長持ちさせることができます。
正しく洗う、といっても難しいことは無いのですが、絶対に守らなくてはいけないオキテがふたつ。

それは、ダストキャップをつけることと、パージボタンを押さない事です。

万が一ダストキャップを閉め忘れたまま器材洗い水槽にレギュレーターを入れようとしようものなら……

ダメーーーーーー!!!!!

とスタッフや他のダイバーがすかさず飛んでくるはずです。(笑)

そもそもダストキャップって?

百聞は一見にしかず。
これ、です。

 ダストキャップ、ダストから守るためのキャップ。
つまり、レギュレーター内部にダスト=ゴミが入らない様にするためのキャップですね。

 ゴミの侵入を防ぐこともダストキャップの重要な役割ですが、もっと重要な役割が、レギュレーター内部への水の侵入を防ぐことです。

閉め忘れるとどうなる?

講習で器材の洗い方を教わる際

  • ダストキャップの閉め忘れ
  • タンクから外したレギュレーターのパージボタンを水中で押す

これをやってしまうと、レギュレーター内部に水が入って壊れてしまう、と教わったと思います。
天下り式に、そういう物、と思うのも良いのですが、もう少し踏み込んで考えてみましょう。

万が一ダストキャップを閉め忘れて水槽につけてしまうと何が起きるのか。
実は、つけた瞬間に壊れる、なんてことはありません。 

そもそもレギュレーター、精密機械でもなんでもなく、器械仕掛けの器材です。

機械やら器械やら、その辺りの文字の使い分けやレギュレーターの仕組みは以下の記事からどうぞ。

実は、水に浸かること自体がレギュレーターを壊してしまうことは無いのです。
とはいえ、だからといって浸けて良いはずもありません。

レギュレーター内部に水が浸入することによって起きる不具合としては、以下のものが考えられます。

  • レギュレーター自体の故障
  • ホースの腐食
  • 残圧計の故障

それぞれ見て行きましょう。

レギュレーター自体の故障

少し水に浸けてしまったぐらいではレギュレーターの奥深くまで水が浸入する可能性は低く、必要以上に神経質になる必要はありません。

しかし、万一水が深部まで侵入してしまうと、その水分が部品の錆びや腐食を促進してしまう可能性があります。
その結果として、フリーフローなどを引き起こしてしまう可能性があります。

フリーフロー:レギュレーターのセカンドステージから空気が出続けてしまうこと

ホースの腐食

ファーストステージにわずかに入り込んでしまった水分の多くは、レギュレーター深部では無く、次にエアを通した時、空気と共にホースに送り込まれます。
その際に、ホース内部に付着した水分が、ホース内部を腐食させてしまう可能性があります。 

ホース内部が腐食してしまうと、ホースを破裂させてしまう可能性があるほか、そもそも腐食したホースを通って来た空気を吸いたくは無いですよね……。

残圧計の故障

実は最も心配されるのがこちら。
次にエアを通した時、レギュレーターから高圧ホースに送り出された水分が、残圧計にまで到達することです。

これによって、残圧計内部で錆びや腐食を生んでしまい、残圧計が正常に動かなくなってしまったり、残圧計の針を折ってしまったりします。 

応急処置は?

ダストキャップを閉め忘れて水槽に浸けてしまった場合、もちろん最善はオーバーホールに出すことです。
あくまでオーバーホールが最善と前置きさせて頂いた上で、応急処置もあるにはあります。 

先ほどもご紹介した通り、短時間の水没であれば、心配されるのはレギュレーター深部への水没よりも、ファーストステージ内に残った水分が、次にエアを通した時に高圧ホースを通して残圧計に送り込まれてしまうことです。

これを防ぐために、ファーストステージ内に残った水分を取り除く。

こいつが活躍します!
モンキーレンチ! 

重器材を持っている方で、自分で組み立てた方はご存知かもしれませんが、ファーストステージとホースは、このモンキーレンチひとつで簡単に取り外すことが出来ます。

本来、ホースの取り付けにはメーカー各社既定のトルク値(締め付け強さ)が定められており、自身での取り付けはあくまで自己責任でお願いします。(過度に心配する必要はありませんが、念のため)

ということで、おもむろに高圧ホースを取り外し……。

この状態でタンクに取り付け、バルブを開けます。
エアでファーストステージの水分を取り除くわけですね。

バルブを開けた瞬間に、高圧ホースの取り付け部分から水が出てくるのがわかると思いますよ! 

さらに念を入れるのであれば、セカンドステージ、オクトパスのパージボタンをある程度押し続け、中圧ホース内部を乾燥。
さらにさらに念を入れるのであれば、パワーインフレ―ター用の中圧ホースのカプラー内部を少し押して空気を出し、こちらの中圧ホース内部を乾燥。

カプラー:パワーインフレ―ターとの接続部分

こうしてタンクのエアが乾燥していることと、その空気の勢いを利用して、あらゆる部分を乾かします。

くどいようですがあくまで応急処置。
最善はオーバーホールですし、あくまで自己責任でお願いしますね! 

プシュッはやめよう

レギュレーター内部に水が入ることを防ぐダストキャップ、当たり前ですが、ダストキャップが濡れた状態でつけてしまっては元も子もありません。(笑)
ということで、閉める前にはタンクのエアでプシュッ!

……と教わった方も多いと思います。 

間違いでは無いですし、筆者もよくやってしまうのですが、出来ればエアで吹き飛ばすのではなく、タオルなどで拭き取りましょう。

海外に行くと、マナーの良さで知られる日本人ダイバーですが、海外のダイバー達は、日本人ダイバーのこの習慣だけはどうしても許せないそうです。
まぁ単純に、うるさいですからね……

周りでブリーフィングなどをしていると、どうしてもプシュッと鳴った方に意識を持って行かれてしまいますし、そもそも話している内容が聞き取れなくなることも。

特に初心者ダイバーほど、念入りに水分を飛ばしたいのか

プシューーーーーーーゥーーーーーーゥーーーーッ

とやってしまい、周りに迷惑をかけてしまいがちです。

どうしてもタオルがすぐに出せない時は、出来るだけ短く、かつ強く

バフィシュッ!(なんというか、ニュアンスで感じてください笑)

っと一発でスマートに水分を飛ばしましょうね!

閉め忘れても大丈夫な器材もある

ここまで、ダストキャップを閉め忘れてはいけない理由をご紹介してきました。
ちゃぶ台をひっくり返すようですが、そもそもダストキャップ不要のレギュレーターも存在します。 

そんな素敵な器材が、アクアラング社のレギュレーター。

2023年現在、レジェンドシリーズとヘリックスシリーズ(ヘリックス・コンパクトは除く)にはオート・クロージャー・デバイス(ACD)という機構が付いており、そもそもタンクに接続する部分から水が入らない構造になっています。
過去に発売されていたものだと、コアにもACDが搭載されています。

現在日本で発売されているレギュレーターでは、アクアラング社のレギュレーター以外に同様の機能を搭載したレギュレーターはありません。

これらのレギュレーターであれば、こんなことをしても大丈夫。

筆者も長くレジェンドシリーズのレギュレーターを使用しています。
が。
さすがになんとなく気持ち悪いので、ダストキャップは閉めています(笑) 

感覚としては、水中ハウジングの中に入っているカメラ自体も防水だとより安心、的な感じです。(笑)
ちなみに筆者はそれでもカメラを2度ほど水没させていますが……。

話が少し逸れましたが、皆さんもレギュレーターをタンクから外した際には、ダストキャップの閉め忘れが無いように気をつけてくださいね!

細谷 拓

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合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

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