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海藻ゆらめく三浦の海〜宮川湾の魅力〜

海のレポート

こんにちは!
水中写真家、茂野です。

皆さんにとって身近な自然はどこでしょうか?
鎌倉生まれ横浜育ちと神奈川っ子な僕としては、身近な自然、海は湘南や三浦半島の海でした。

大学生になって、ダイビングを始め、できることが増えるに連れて、どんどん遠くの世界や新しい世界を求めるようになっていきました。

だけど、僕にとって身近な海が神奈川の海であることは変わらない。

また、東京に住んでいる人にとっても、距離的に最も近い海遊びできる場所が三浦や湘南だという人も多いのではないでしょうか?

今回はその中でも、三浦半島の宮川湾をご紹介します。
大自然じゃないけれど、そこに確かにある自然。
人間との距離の近い場所にある小さな自然について知っていただけたらと思います。

ゆらめくカジメの森

宮川湾で1番の見どころといえば、このゆらめくカジメの森でしょう。
宮川湾はボートポイントが2ヶ所、ビーチポイントが1ヶ所あるのですが、どのポイントにも根を一面覆うほどのカジメの群生があります。

同じ神奈川県や隣、伊豆半島でも海藻が有名なポイントはありますが、どこもホンダワラの群生が多く、カジメが見られるポイントはほとんどないと思います。

以前スクーバモンスターズでも書いた井田の海藻もホンダワラでした!
ホンダワラはトンネルや壁のように生える感じがすごく美しい。

しかし、カジメはまたホンダワラとは一味違った美しさがあるんです。

こんな感じに海藻に茎の部分がしっかりあるので、まるで木のような雰囲気。
しっかりと岩場に根をはって上に伸びている様子が、より森の中にいるような感覚にしてくれます。

さらにちょっとこのカジメの森の中にカメラを突っ込んでみると、こんな木漏れ日のように光が入ってくるシーンを写すことができます。

カジメは木のように茎の幹の部分と海藻の葉の部分があるので、根元の空間が広く空きます。
そこに入ってくる光が美しいんです。
ぜひ、海藻の隙間を縫って見ることができる木漏れ日を見て欲しいです。

三浦半島でカジメは通年見ることができますが、やっぱり1番美しいのは冬から春にかけてです。
夏や秋はカジメの隙間にネンブツダイなど魚たちが賑やかに隠れるので、それも面白いですが……やっぱり冬から春が美しくておすすめです。

冬の陽が低い時期は水中に入ってくる光も美しいので、この光と海藻を撮影しても面白いと思います。

またカジメから少し遅れて春から夏にかけてはホンダワラ系の海藻が勢いを増していきます。

初夏は透明度が落ちやすい時期でもありますが、少しトーンを落として撮影してあげても雰囲気が出て面白い!
ホンダワラ系が見られるのはビーチポイントですが、水深5m以内でこんな景色に潜れるんだから最高ですね!

生き物の隠れ家にもなる海藻

カジメの根本を見ると、ハナタツを発見。
この写真のように、カジメなどの海藻は多くの生き物の隠れ家にもなっています。
海藻の森は、まさに海の豊かさを育む大事な環境なんですね。

このハナタツは普段はマクロで撮影していた個体だったのですが、たまたまマクロカメラのバッテリーが切れてワイドで撮影しました。
背景に海藻があると、それだけで雰囲気が出るので海藻と生き物をワイドで狙うのも面白いと思います。

なかなか他のエリアじゃ撮影できない環境ですね!

他にもカジメの中を見ると、周囲に群れるネンブツダイを狙って、アナハゼが上の方にのぼってきています。

こうやって海藻に身を隠しながら、捕食を狙うんですね!
何度もアプローチしている様子が観察していて可愛かった。

他にも三浦では季節来遊魚のハリセンボンがカジメの下で一息付いていたのが、すごく印象的でした。
まるでジブリの1シーンのような光景に、撮影していてついついニヤけちゃいました。

三浦の海に潜っていると、このカジメの森とその森の住人たちに会いに行ってるような感覚になります。
海が穏やかな上に移動範囲が少ない中で様々な生物に出会えるから、その海の中の世界に没頭できる、面白い海だと思います。

他にも冬時期には海藻に着く世界最小のイカ、ヒメイカが観察できたりします。
こんな感じに海藻の裏に隠れてるので見つけるのは一苦労。

他にも宮川湾の海は三浦半島の先端から見ても僅かに東京湾側にあるため、湘南などに比べて東京湾側からの冷たい潮の影響も受けづらい。
そのため、キヌバリやチャガラといった温帯よりは少し冷たい潮を好む生き物たちがたくさん残っています。

ハナタツが多い! 

これも三浦半島の特徴かもしれませんが、海藻生い茂る中に隠れるハナタツの姿を確認できます。
僕も2022から2023年にかけて春夏秋冬この海に潜って撮影をしてきましたが、毎シーズン見ることができました。

様々な色の個体もいて、白色から黄色、オレンジ赤と大きさも大小あり、様々な個体を観察できます。

伊豆半島では温暖化の影響か海藻が減っているのが原因なのか、ハナタツを観察するチャンスが減ってきています。
逆にオオウミウマやイバラタツは増えてきているような印象を受けます。

まだ三浦半島の海は伊豆半島よりも北にあり、伊豆とは違った層の生き物を観察することができています。

じっくりマクロ撮影を楽しめる

三浦の海はとにかくマクロをするのに最適な海。
最大水深はボートポイントでも最大18mと浅く流れも少なく穏やかな海況です。

そして移動範囲も狭いので1つの被写体にじっくり向き合うことができます。
僕は三浦の海に潜る時には葉山のダイビングショップNANAさんの三浦支店、NANA by the seaで潜っているのですが、NANAのガイドの方はみな、フォトダイブに精通しています。

そのため1ダイブ1被写体でもいいし、どんどん様々な種類を撮ってもいいし、ゲストに合わせたガイドをしてくれるのでフォト派には本当におすすめです!

実際、僕も伊豆でのフォトセミナーに来てくれた方には1回NANAで練習してきて下さいと言ってしまうほど。

昨シーズンだけは登場しませんでしたが、冬は毎年ダンゴウオも登場します!

冬場の三浦のアイドルで大人気!
こんなに近くでも観察できるんだからいいですよね。

他にも環境が豊かなのでウミウシなども、海藻と一緒に撮影したり、

可愛らしいホヤをオレンジのカイメンと一緒に撮ったり。

また、三浦の岩は赤、ピンク系の紅藻類に覆われていることが多いため、光を当てるとピンク色になる。
それを活かしてピンクの背景で撮影なんかもしやすいんです。

ギンポは数も種類も多いので、いろんなシチュエーションで狙うことができます。
背景をピンクにできるとこもあれば、こんな感じで青で抜けるシチュエーションがあったり。

他にも夏から秋にかけては三浦にも季節来遊魚も増えるので、極小のイロカエルアンコウが登場したり、ニシキフウライウオやソメワケヤッコ、ハタタテハゼなどカラフルな子たちも登場します。

近場の海でじっくり狙えるからこそ、いつもと違った雰囲気で撮影したり、新しい技術を使ってみたり、更には日々のホームグラウンドとして写真の練習をするには最高の環境ですね!

冬はワイド撮影も楽しめる!

三浦半島の海は、伊豆半島に比べると透明度が低い傾向にはあると思います。
しかし冬の時期はスコーンと透明度が高くなることも多く、北風にも強いので冬時期のワイド撮影はおすすめです!

海藻はもちろんオススメですが、それ以外にも三浦の海にはイシダイが群れており、しかもなぜか大きくて寄れる個体が多いんです。

あまりイシダイって普段は撮影しないと思うのですが、ここまで寄れると迫力ありますし、周りの群れが良い感じでアクセントに!
砂地にある根なのでネンブツダイ系の魚影は濃いことが多いですね。

他にも繁殖シーズンになると、メバルが群れ始めます。
メバルのオスは独特のメスへのアピールをするので、そんな行動なんかも観察しながら撮影すると面白いと思います。

おわりに

カジメの森、そして、そこに息づく生物たち。
派手さはないかもしれないけれど、この身近な海は愛おしくなる営みで溢れています。

ぜひ、季節ごとに訪れて、様々なシチュエーションを味わってみてください。
なんたって新幹線に乗らなくても、東京から1時間半以内に着いちゃいますからね!

茂野優太

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Under Water Creator。 1991年、神奈川県生まれ。 海・ダイビングの魅力を写真、映像、文章、ガイドなど、多様なアプローチで発信する。 伊...

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