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ビーチダイビングで転ばぬ先の杖をあなたに

基礎知識

海が穏やかな日のビーチダイビングは、どんなに初心者のダイバーであっても苦労せずにエントリー、エキジットを行うことができる、最も簡単なダイビング方法だと言って良いでしょう。
一方で、波が出てしまった日のビーチダイビングは、ボートダイビング以上に難しいダイビングとなってしまいます。

なにごとも無理をするのが最も危険なので、波がある日に無理に潜る必要はありません。
しかし、貴重な休みの日を使って訪れるダイビング、波のないべた凪なら潜る、少しでも波があれば帰る……
というわけにも行きませんよね。
ある程度の波であれば、上手くお付き合いしていかなくてはなりません。

初めて波のあるビーチダイビングを行う時は誰でも少し怖い物ですが、ベテランダイバーともなると、何事もなかったかのように海へ出入りします。
波がある日のビーチからのエントリー、エキジットも、スキルのひとつ。
コツを掴めば必要以上に怖がる必要はありません。

今回は、波がある日でもビーチダイビングを楽しむことができる様になるため、エントリー、エキジットのコツと注意点を解説して行きたいと思います。

もちろん、波がない日でも使えるテクニックばかりなので、参考にしてみてくださいね。

生命線の3つを確保

水に入る前に視界、呼吸、浮力、この3つを確保しましょう。
つまり、マスクの曇り止めを行い装着、レギュレーターをくわえる、BCに給気する、ということです。

どんなダイビングでも水に入る時には必ずこの3つを確保することが鉄則ですが、穏やかな海に慣れてしまっていると、意外と忘れがちなもの。
特に、エキジット時は水から顔を出した瞬間にマスクとレギュレーターを外すことがクセになってしまっている方を時々見かけるので、波がある日は特に注意しましょう。

ロープは張らなきゃ意味がない

鉄パイプなどで作られた手すりが用意されているダイビングポイントであれば、何も気にせずに掴めばOKです。
しかし、支柱にロープが張られている場合や、そもそもただロープが用意されているだけの場合などは、注意が必要です。

よほどピンと張られたロープであれば鉄パイプの手すり同様に掴むだけでも問題ありませんが、大抵の場合はたわみがあります。
たわみのあるをロープをただ掴んでいるだけだと、いざ波が来た時、ロープと共に倒されてしまうことになります。

支柱にロープがたわんで張られている場合や、そもそもロープだけを利用してエントリー、エキジットを行う場合は、しっかりと自分の体重をロープに預けましょう。
こうすることによって、初めて効果を発揮します。

立っているから倒される

波があってもなくても、立っているから倒されるんです。
エントリーの際は発想を転換し、なるべく早く倒れてしまいましょう。

もちろん水深が膝下程度の様な場所で倒れてしまっては、地面にぶつかって怪我をしてしまうだけです。
目安としては、腿ぐらいの水深のところが良いでしょう。

腿ぐらいの水深までは慎重に歩き、この水深まで来たら、顔をつけてしまいます。

手すりがあるポイントであれば、陸上にいるうちにフィンを履いてしまい、腿ぐらいの水深で泳ぎ出すというのが基本です。

波がある場合には、波が押し寄せるタイミングで泳ぎ始めてしまうと、波の力で打ち上げられてしまいます。
自分の身体に波がぶつかった直後、引き波と共に泳ぎ始めると、スムーズに沖に出られますよ。

尚、フィンを履いた状態で歩く際は、陸上でも水中でも、エントリーでもエキジットでも、横歩きか後ろ歩きで歩く様にしましょう。

手すりがないポイントの場合、フィンを履いたまま歩くことはかえって危険なので、フィン無しで歩いて行きましょう。
そして、腿ぐらいの水深の場所で顔をつけたら、その場でフィンを履くのではなく、地面を蹴って沖に出ましょう。
沖に出てから慌てずにフィンを履けばOKです。

手すりがなく、波がある場合には、腿ぐらいの水深よりも深い場所で、サーフゾーンにあたらない水深を選びましょう。

フィンを履く時は岸を見る

足が立つところでも立たない所でも、フィンを履いているうちにいつのまにか岸に近付いてしまい、打ち上げられてしまった経験がある方もいるのではないでしょうか。

フィンを履く際、多くの方は海へ歩いて入ったままの向き、沖を見て履いています。
これだと、足の立つところで片足立ちになった時、どうしてもタンクの重みでバランスを崩し、トントンと後ろに、つまり岸の方向に移動してしまうんですね。
水面に浮かんだ状態の場合でも、フィンを履く際に水を掻いてしまい、岸に近付いてしまいます。

岸に近づいてしまうと、地面にぶつかって怪我をしたり、波を被ってしまいます。
なので、水中でフィンを履く場合は身体を反転させ、必ず岸を見て履くようにしましょう。

文字通り、自立したダイバーになろう

立っているから倒されるとは言ったものの、エキジットの際には立たなくてはいけません。
そして、エキジットの場合は水深が浅い所で立つ方が危険と言えるでしょう。
浅いところで立とうとすると、立った瞬間一気に器材の重みが身体に降りかかるため、再び転んでしまいます。

波が無い時であれば、立った時に水深が胸ぐらいに来る位置で立てばOK。
この水深で立つと、浮力の力を借りてスムーズに立ち上がることができます。

波がある時は、足が立つか立たないか、ギリギリの所で立ち姿勢になり、フィンを脱いでしまってOK。
フィンがなくても波の力で岸へと近付くことが出来ます。
ロープがある場合には、ロープ伝いに歩くことができるので、渋滞を引き起こさないためにもフィンを履いたままエキジットしてもOKです。

注意して欲しいのはしっかりと立つこと。
バランスを崩すまいという気持ちからか、慎重に、中腰や前かがみになろうとする方をよく見かけますが、これは逆効果です。
人間の身体は直立したときに、身体にかかる重みを受け止められるような構造になっています。
中腰や前かがみの姿勢の方が、かえって器材の重さが身体への負担になり、立ち上がれなくなってしまいます。

また、ロープなどがある場合、ロープに依存してしまいがちなのですが、これも逆効果。
よく、ロープを掴んだ状態で膝が曲がり、フィン先が背中側を向いてしまっているダイバーを見かけますが、これでは、今!という絶妙なタイミングでとっさに立ち上がることは出来ませんよね。

また、誰かがサポートしてあげようと引き上げても、フィン先が背中側を向いてしまっているために立ち上がれず、サポートしようがありません。

水中の段階で、エキジットの体勢に入ったら、膝をしっかりと伸ばし、フィン先をお腹側に向けましょう。
この状態であれば、立ちたいときにすぐに立ち上がれるだけでなく、誰かにサポートしてもらった時も、しっかりと立ち上がることが出来ます。

波はしっかり観察しよう

波に倒されてしまう方は、ほぼ間違いなく波を見ていません。
いつ波が来るのか、どこで波が崩れるのか、自分の目でしっかりと観察し、踏ん張る時、移動する時、のメリハリをつけましょう。

特に、エントリーの時は海側を向いて進むということもあり、多くの方がしっかりと自分の目で波を見ているのですが、エキジットの時は、岸側を向いて進むことに加え、ダイビングが終了したという安心感からなのか、波を見ていない方が多い様に思います。
水から完全に上がるまで、後ろから来る波にも注意を払いましょうね!

また、エントリー前にしっかりと波を観察しておくことで、どんな波が来るのかをある程度は予想することができます。
エントリー前の波の見方については長くなってしまうので、別の記事にまとめました!

教科書には書いてないコツとツボ

はじめの方で

  • 水に入る前に視界、呼吸、浮力、この3つを確保しましょう
  • どんなダイビングでも水に入る時には必ずこの3つを確保することが鉄則です

とお伝えしました。

しかし、波がある場合は、BCには給気しない方が良いと個人的には考えています。

エントリーの際、フィンを履かず、地面を蹴って沖に出るというテクニックをご紹介しましたが、この時にBCがパンパンの状態だと、上手く水底を蹴ることが出来ません。

比較的大きな波の中でエントリーを行う場合も、BCに給気をしてしまうと波の力で岸側に流されてしまいますが、BCに給気をしていなければ、水底で踏ん張ることができます。

波があるエキジットの際にも、BCに給気していない方が水底に足がつきやすいので、踏ん張りが効くと考えています。

セオリーには反するテクニックなので、全てのダイバーの方におすすめできるというわけではありません。

このテクニックは特殊な訓練を受けたスタッフが実施しています

と注釈を入れておきたいと思います。

細谷 拓

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合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

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