知床・ウトロで流氷ダイビングに挑戦!極限の海で見た造形美とマクロ生物たち
水温-1.6度、気温-8度。
風が吹けばドライスーツまで凍り、水滴がつけばカメラも凍結して動かなくなる極限の世界。
初めての知床半島・ウトロで行った流氷ダイビングは、ここ最近での一番の大冒険でした!
極寒の地で、自分の持ち得た全スキルと万全のプロダイバーの万全の協力を得て潜るーー僕にとっては、未知の世界への挑戦でもありました。
いや僕、水温が-1.6℃の氷の世界と聞いて、無色で無機質な感じを想像していたんですが、実際に潜ってみたら……たくさんの生物に出会える海だったんです。
本来、人間がいるべき世界ではない“流氷の下の世界”を覗いてきました。
みなさん、こんにちは。
UnderWaterCreator茂野です。
今回、僕は世界自然遺産に登録されている知床半島のウトロという町に来ています。
ここでは、毎年2月の上旬から3月の上旬という限られた期間ではありますが流氷ダイビングを楽しむことができます。
流氷は、全盛期になるとオホーツク海の海岸線が真っ白に埋まるほどの量になります。
ここが海の上だなんて信じられない!
ましてや、この流氷を渡って樺太まで行けるというのだから驚きです。
今年2021年は流氷の接岸している量が例年に比べて多いらしく、このまま安定して流氷ダイビングを楽しめるのではないかと予想されています。
流氷ダイビングとは
流氷ダイビングとはその名の通り、流氷に穴を空けて、そこからエントリーをして流氷の下を潜るダイビングのことを言います。
日本国内では僕が今回行った知床半島のウトロと、同じく知床半島の反対側の羅臼という場所で行うことができます。
流氷の量はウトロ側の方が多く安定しているため確実に流氷ダイビングをしたい人はウトロ側がオススメです。
流氷ダイビングはマイナスの水温のため器材の凍結の恐れがあります。
寒冷地用のレギュレーターをレンタルするか、もしくは普段使っているレギュレーターが寒冷地でも使えるもならオーバーホールをして万全の準備をしておく方がよいでしょう。
グローブやフードは5mmの厚さでフィットしたものが必要です!
実は、ドライスーツやインナーよりも、とにかく水に直接当たる頭や手を保温できるかが大事です。
僕はシェルドライに高機能インナー、ヒートベスト、ドライ用のダウンのインナーだけで潜り寒さを感じることはありませんでしたが、40分くらい潜っていると指先がキンキンに冷えてくるのでグローブは厚いものにした方がいいと思います。
スキルとしてはアドバンス以上になっていますが、ある程度のダイビング経験は必要だと思います。
慣れない器材にマイナスの水温、そして頭上が閉鎖された環境で、僕も1本目は少しテンパってしまいました。
現在、ウトロでの流氷ダイビングをやっているのは札幌にあるロビンソンダイビングサービスさんだけ。
毎年2月上旬〜3月上旬の1ヶ月間ウトロに滞在して流氷ダイビングを開催しているので詳しくはロビンソンダイビングサービスさんの開催情報を調べてみると良いと思います。
自然が作り出した造形美。光と影のコントラスト
水温-1.6度の海へエントリー。
初めて流氷の下に入ってみて感じたのは“圧倒的な美”でした。
大きさも形も厚みも不揃い。
決して誰かが作ったわけではない、自然の作り出す造形に息を飲みました。
その流氷に差し込む太陽光が光と影のコントラストを生み出す様は、本当に美しかったです。
確かに自然の造形美は地形ポイントでも感じることができます。
しかし流氷の作り出すこの景色は、今この瞬間、今この場所でしか見られません。
どんなに美しくても、普遍ではなく時の流れとともに変わっていく。
まさに諸行無常そのもの。
潮の流れや太陽の出かた、流氷の溶けかたなど常に同じ光景は2度とあり得ない。
そんな儚さも美しさを後押ししているのかもしれません。
ちなみに、水に触れる頭はキーンと冷えますが、装備を整えているため、水中、陸上ともに寒さを感じることは一度もありませんでした。
(とにかく、指先や足先などを温めておくことが大事!)
THE流氷というような大きな氷塊になっている部分もあれば、光が差し込むほど氷の薄い部分もある。
(薄いと言っても人が歩けるほどの厚さはあります)
刻一刻と姿形を変えていきます。
ひとえに流氷といっても、こんなに様々な表情を魅せてくれるとは!
寒さなんて忘れて、時間が許す限りずっと撮影していたくなる海でした。
まさに自然の作り出した芸術というのにふさわしい景観!!!
流氷と知床らしい海底環境を見る
知床半島の名産品といえば羅臼昆布!
上品な出汁が取れることで非常に有名な高級食材です。
知床半島の反対側にあたるここウトロでも、春の訪れとともに溶ける流氷の豊富な養分をすって、一面昆布だらけの海になるそうです。
真冬なのでもちろん元気な昆布ではありませんが、海底にしっかり根を張る昆布の姿を見ることができます。
無機質に見えた海底には昆布の他にも海藻が生えている場所があるなど、意外な一面もあって面白い!
流氷の撮影をしていると少し不思議な動きをするキタユウレイクラゲに出会いました。
キタユウレイクラゲは日本海沿岸や北海道から三陸沿岸など冷たい海に生息する、かさの大きさが最大で2mの大きさにもなる大きなクラゲです。
(今回出会ったのは20センチほどのサイズ)
クラゲの傘の部分がヒトデのように分かれていて、ふわふわっと移動していく姿が独特で面白い。
南の海では見ることのできない、北の海らしい不思議な生き物との遭遇に心が躍りました。
流氷ダイビングは流氷のイメージしかないかもしれませんが、マクロだけで1本潜っても楽しめるほど、いろんな生物と出会うことができます。
ここからは流氷の下で見れるかわいい生物たちについて紹介していきます!
流氷下で見れるたくましいマクロ生物たち
流氷ダイビングで出会いたい生き物No.1は、やっぱりクリオネですよね!
もちろん僕も1ダイブ目から会えちゃいました!
羽をパタパタ動かして移動する姿は天使そのもの。
めちゃめちゃカワイイ!
ただクリオネは中層を泳いでいるし、不意にひっくり返ることもあるので返ったりと撮影するのは結構難しいんです。
淡水層とのハロクラインに入られちゃったりすると撮影は不可能。
イメージとしては、浮遊系の生物を撮影するような機材や撮り方で臨む望むと良いと思います。
僕は60ミリのマクロレンズで撮りました。
これなんか両手を広げて今にも天に羽ばたいていきそう!
ぜひみなさんも1センチの小さな天使に会いに来てみてください。
次に見られたのはテナガホンヤドカリ!
このヤドカリは水の冷たいエリアに住むヤドカリで、その名の通り非常に大きなはさみを持っていて逃げる時も体にしまうことができないそうです。
一見地味ですが、大きな右手を邪魔そうに動く姿がめちゃくちゃカワイイですよ!
目がくりくりと可愛い小型のアイカジカがいたり、
サラサガジという魚は、にょろりにょろりと小石まじりの地面を移動していました。
ほかにも擬態上手なコクチクサウオも!
ダンゴウオやスナビクニンのようにお腹に吸盤を持っていて、その吸盤で石にくっついて暮らしています。
色は石と同じ色をしているのですが、お餅みたいにプニプニしてそうな見た目がたまらなく可愛かったです。
他のウミウシも結構いて、探せば1ダイブで10個体近くでてきました。
コザクラミノウミウシなどが今回は観察されました。
北海道の海を初めて潜る僕としては、初めての経験でめちゃめちゃ面白かった。
すべて見たことない生物で、初めての出会いなので興奮しっぱなし。
過酷な環境下でもこんなに生き物がいることに感動しました。
やっぱり自然は偉大で力強いですね。
おわりに
流氷ダイビングは誰でも気軽にできるわけではない。
水温がマイナスの世界、そして頭上が閉鎖された環境でのダイビングでは準備や知識、経験が必要になります。
しかし、そのハードルを乗り越えた時に見れる圧巻の光景は一生忘れられない景色が広がっていると思います。
今、この時期にしか見ることができない自然が作り出した造形美。
ぜひ皆さんも冒険しに行ってみてください!
今回お世話になったのはROBINSOM DIVING SERVICEさんです。
代表の西村さんを含め全員が流氷下でのダイビングのプロフェッショナルで、として万全のサポートをして頂きました。
的確なアドバイスや入念な準備、そして知識や安全へのこだわり。
本当にプロフェッショナルを感じ、カッコ良かったです。
流氷シーズンは毎年2月上旬〜3月上旬まで。
それ以外の時期は札幌のショップから、積丹をはじめとする北海道各地の海へ連れて行ってくれます。
次は僕も積丹の海に潜りに行こうかな!
取材協力:ROBINSOM DIVING SERVICE(https://www.robinson.co.jp/)
■CHECK!■
今回ご紹介したウトロでの流氷ダイビングについては、茂野優太さんのブログ&Youtubeでも紹介されています。合わせて、お楽しみください。
しげのゆうたの旅ブログ:はじめての流氷ダイビング!極限の世界で感動を
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