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波の観察、どこを見る!?特にビーチエントリーで把握すべきポイント

基礎知識

波がある場合のダイビング、特にビーチダイビングでは波をよく見てエントリー、エキジットを行うことが重要です。
実際に海に足を踏み入れた際、次の波はどの程度の大きさなのか、どこで崩れるのかを絶えず観察することで、波に押し流されてしまう可能性を大幅に下げることが出来ます。

突然ですが、みなさんは子どもの頃、大縄跳びで遊んだことはありますか?
大縄跳びの縄に入る際、何も考えずに突っ込んでいく方はいないことでしょう。

大袈裟かもしれませんが、回っている縄を観察し、回る周期を把握して、そのタイミングに合わせる準備を行った上で飛び込んでいくはずです。

ダイビングのエントリーでも同じことが言えます。

エントリー前にどんな波が来ているのかをじっくりと観察して準備をすることで、より安全にエントリーを行うことができます。
もちろん波をただ眺めるだけではなく、様々な要素を吟味する必要があります。

では、具体的にどの様な要素を観察すれば良いのでしょうか。

砕波帯を把握しよう

どんなに大きな波でも、波が波らしい形を保っている場所であれば、大きな危険はありません。
危険なのは波が崩れる瞬間。

大きな水の塊となってダイバーにぶつかり、押し倒されてしまう可能性があります。
この波が崩れる瞬間のことを砕波(さいは)と言います。

どこで砕波を起こすのかは、水深の変化率や波の形(波長、周期、波高)によりますが、同じ場所で、同じ時間帯であれば、概ね同じ場所で砕波を起こします。
そのため、この砕波を起こすエリアの事を砕波帯(さいはたい)と呼びます。

砕波についてくわしくはこちらから!

砕波の瞬間に砕波帯に居なければ波に押し倒される可能性はほとんどありません。
つまり、砕波帯を、砕波が起きていないタイミングで素早く通り抜けることが重要です。

どの辺りが砕波帯なのかを観察し、素早く通り抜けるべき場所を把握しておきましょう。

波のパワーを把握しよう

同じ高さの波であっても、パワーのある波とパワーのない波が存在します。

パワーのある波の場合は「うねりが入ってる」と表現されます。
この「うねり」とは具体的に言うと、波の波長が長いことを指しており、波長が長いほど1波の水量が多くパワーがあります。

このうねりに関しても、観察することで把握することができます。

ひとつは波の周期です。

海の波の速度は水深によってほぼ決まります。
つまり、同じ場所では基本的に波の速度は一定。

すると、周期の長い波≒波長の長い波となります。

波を観察する際、何秒ごとに波が崩れているのかを観察してみましょう。
この周期が概ね6秒を超える様であれば、比較的波長の長い波で、うねりと呼ばれる状況の可能性があります。

また、波が崩れたあと、どれだけ遡上しているかもよく観察してみましょう。
波が崩れたあとも数mに渡って遡上している様であれば、それはうねりです。

強いうねりが入っている場合、波の高さがそれほど高くない場合でも注意が必要です。
踏ん張ったり、フィンキックの力で立ち向かっても勝てない場合が多いため、必ず手すり等に捕まる様にしましょう。

波の周期性を見よう

波は一定の波高、波長、周期でエネルギーが伝播する現象です。
しかし、当たり前ですが、自然界の波は模式図の様な綺麗な波ではありません。

自然界では無数の波が重ね合わさった状態で存在しています。
例えば以下の様な3つの波が重ね合わさると……

以下の様な波形となります。

3波に1波、大きな波が訪れている事がわかりますね。
この様に、自然界の波は常に一定の波高で訪れるわけではないのですが、ある周期(波の周期という意味ではなく)をもって訪れます。

数秒間観察するだけではなく、数十秒間じっくりと観察することで、何波に1波、大きな波が来るのかを、予め把握できると良いでしょう。

また、じっくりと観察していると、ほとんど同じ間隔で、波が弱まる時間帯が訪れる事に気づくかもしれません。
このタイミングでエントリー、エキジットを行うことが出来れば、より安全にエントリー、エキジットを行うことが可能になるので、併せて把握できると良いでしょう。

ちなみに、波の予報でよく見かける波高は、有義波高と呼ばれるものです。

この有義波高というのは、体感値、つまり見たままの波を最も良く表している値だと言われています。

一方で、波の予報の見方の記事でもご紹介した通り、時折有義波高の2倍もの高さを持つ波が訪れることもあります。
つまり、今見ている波の2倍の高さの波が突然やってくる可能性があるということですね。

具体的には100波に1波は有義波高の1.6倍程度、1000波に1波は有義波高の2倍程度の波が訪れると言われています。

仮に波の周期が5秒だとすると、1000波訪れるのには必要な時間は5000秒≒1時間20分。
つまり、1時間20分に1回は今の見た目の波高の倍の高さの波が訪れるので注意が必要です。

おわりに

バディ潜水であれば海況判断は当然自身の判断ですが、ガイド付きダイビングの場合は海況判断はガイドの方が行うことでしょう。
しかし、いざ潜るとなった場合、自分の目で波を観察しているか、していないかで、波への対応が容易になるかどうかが大きく変わってくると考えています。

しっかりと自分の目で見て、自分の頭で考えて、ダイビングを行う癖をつけましょうね!

なお……

ガイドの海況判断については参加者それぞれのレベルや、潜れたとして楽しめるのかどうかなども考慮した上で、総合的に判断しています。

インターネットやSNSが発達し、参加者の方でも手軽に海の状況を把握できる様になって来ました。
楽しみにしていたスポットへ行く予定だったのに、ガイドの判断で別のスポットに変更になった……
SNSで見る限り、このぐらいの波なら問題無さそうなのに……

そんな場面もあるかもしれませんが、自然を相手にみんなで楽しむダイビングのためには、安全側の判断に関しては協調性を持って行きましょうね!

細谷 拓

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合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

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