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サーモクラインとは?

海について

ダイビング用語には横文字が多く、初見では意味が理解できない言葉も多いですよね。

そんな言葉に限ってライセンス講習のテストに出てくることもしばしば。

ライセンス:正式名称はCカード(certification card)ですが、一般的に通りが良いライセンスという表現を使用しています

今回ご紹介するサーモクラインも、そんな単語の中のひとつでしょう。

サーモクラインとは

さて、みなさんの家のお風呂には、追い炊き機能はついていますか?

追い炊きをした直後のお風呂に入ると、バスタブの底の方だけ冷たくなっていたという経験はありませんでしょうか?

なにも、追い炊き機能が故障しているわけではありません。

冷えた浴槽の水に暖かいお湯を注ぐことで追い炊きを行っているのですが、温度の異なる水は、意図的に混ぜてあげないと、水と油の様に、冷たい水と暖かい水が層を作ってしまうのです。

そして、この層のことをサーモクラインと呼びます。

ちなみに、日本語では水温躍層(すいおんやくそう)と呼びます。

ダイビングに置き換えると、エントリー直後は暖かく快適な水温だったのに、ある水深を境に突然水温が下がることがあります。

海の中でも、追い炊き直後の様な状況が発生し、サーモクラインが形成されているということですね。

サーモクラインが形成される理由

暖かいコーヒーに冷たいコーヒーを注げば、全体がぬるいコーヒーができます。

カップの表面ではホットコーヒーを楽しみ、底の方ではアイスコーヒーを楽しむなんてことは出来ません。

ではなぜ海ではこのような現象が起きるのでしょうか?

水の重さは一般的に1リットルで1kgですが、実は水温によって微妙に変化します。

水の重さは4℃(厳密には3.984℃)の時に最大になり、1リットルで0.999974kgになります。(実は1kgというのもアバウトなんですね)

そして、4℃よりも温度が高ければ高いほど軽くなり、4℃よりも低ければ低いほど軽くなります。

海水も成分のほとんどは水。

海水の場合は水に塩分などが混ざっている影響で、シンプルに冷たい海水の方が重く、温かい海水の方が軽くなります。

水面付近の海水は太陽の日差しで温められ、水温はどんどん上昇します。

温められた海水は軽くなるので、下層の冷たい水とは混ざりにくくなります。

すると、その海水はさらに温められ、さらに軽くなり、さらに混ざりにくくなります。

こうして水温の差が大きな層に分かれて行くということですね。

お気づきの方もいるかもしれませんが、太陽の力で強く温められる必要があるので、基本的には夏に発生する現象です。

上記は季節水温躍層(シーズナルサーモクライン)の話で、他に、季節かかわらず深海で形成されている主水温躍層(メインサーモクライン)がありますが、ダイビングに関連があるものとして季節水温躍層のことだけを取り上げています。

また、攪拌(かくはん。何らかの理由でかき混ぜられること)が起きれば境界は崩れてしまうので、波や流れの影響が少ない水深で起きることが多い現象です。

サーモクラインの影響と注意点

水温

気温の高い季節に発生する現象で、水面付近が温かいからと言ってシーガルやスプリング、ロングジョンなど保温性の低いウエットスーツや水着だけで潜ると、サーモクラインで痛い目を見ることになります。

シーガルなどウエットスーツ用語についてはこちらから!

水面付近は水温28℃、サーモクラインを経て水深18mでは水温19℃、なんてことも珍しくないので注意しましょう。

なお、ウエットスーツは保温だけではなく保護という意味もあるので、極力肌は露出しない様にすることが原則ですよ!

視界

水は温度によって光の屈折率も変化します。

そのため、サーモクライン付近では異なる屈折率が「もやもや」「ゆらゆら」と陽炎(かげろう)の様に見えることがあります。

ちなみに陽炎も発生する原因は同じです。

この「もやもや」の中にずっととどまっていると、めまいを起こしたような感覚になってしまう場合があるので、すぐに境界を抜ける様にしましょう。

また、水温の高い層では透明度が低く、水温の低い層では透明度が高いということもよく見られます。

厳密には水平方向の視野は透視度と言いますが、一般的に用いられる透明度としています。

特に透明度の高いところから透明度の低いところに移動する時にはロストしてしまわない様に気を付けましょう。

その他

ダイバーに関係のある話ではありませんが、バス釣りをする人達にとってもサーモクラインは重要だそうです。

サーモクライン付近を狙って針を落とすことで、釣果が期待できるのだとか…

また、水温によって音の伝わる速さにも変化があります。

ダイビングとは別の分野なので細かい説明は割愛しますが、水温による音の伝播速度の変化は、サーモクラインによってレンズの様な役割を果たします。

周囲の状況を音の反射、ソナーを利用して活動する潜水艦では、このサーモクラインのレンズによって状況を把握できなくなってしまうエリアが生まれるため、そのエリアから攻撃されてしまうことに…

逆に言うと、そのエリアに潜んでいれば攻撃もしやすくなるということで、攻防どちらもサーモクラインの場所を正しく把握することが重要なんだとか。

様々な「クライン」

サーモクラインに比べると使用頻度や遭遇頻度は低い物の、他にも様々な「クライン」が存在します。

ハロクライン

サーモクライン以外で使用される頻度が最も高い物はハロクライン(塩分躍層)でしょう。

大雨のあとの水面付近や、水中から水が湧き出る場所、河口付近など、何らかの理由で塩分濃度の異なる水が接している場所に発生します。

国内でもっとも有名な場所は宮古島(厳密には下地島)の通り池でしょう。

水中で海に繋がっている池なのですが、池側では塩分濃度が低くなっており、ハロクラインが発生しています。

異なる塩分濃度が創り出すグラデーションは非常に美しく、日によって様々な色合いとなるため、一度は見て欲しい、そして何度見てもそれぞれに美しい光景です。

このハロクラインでも陽炎の様な現象が発生しやすいので、注意が必要です。

ケモクライン

日本語では(化学躍層)と言います。

多くは海水中の硫化水素量による層の事を指しますが、時々ハロクラインのことをケモクラインと呼んでいる人もいますね。

塩分濃度の違いも化学的な違いで間違いではないので、間違った使い方とまでは言えません。

ケモクラインの中の一種がハロクライン、ということですね。

ピクノクライン

日本語では密度躍層と言います。

水温や塩分濃度、もちろん他の化学的な違いによって海水の密度は変化し、層を形成します。

つまり、サーモクラインもハロクラインもケモクラインも全てピクノクラインの一種ということになりますね。

おわりに

冷たい水ほど透明度が良い場合が多く、サーモクラインの先は物凄く綺麗だけど、寒い!という状況に陥ることもしばしば。

綺麗さを優先したい人はサーモクラインの下、温かさを優先したい人はサーモクラインの上、なんてことをしてしまうと間違いなくロストの原因となってしまいます。

サーモクラインが発生していても、常にバディやガイドと同じ水深を保ちましょうね!

細谷 拓

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合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

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