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慌てず水面へ!ロストの対処法と予防法

安全について

休日のショッピングモールの風物詩といえば迷子のお知らせ。
か、どうかはわかりませんが、迷子になってしまった子どもたちは、この世の終わりの様に泣きじゃくります。

大人になるにつれ、迷子になる事はほとんどなくなります。
仮に迷子になってもとりあえずケータイで連絡をとることが出来るので、そんなに心細い思いをすることはありませんよね。

さて、もちろん今回はロストのお話。
ロストとは、水中でチームやバディからはぐれ、迷子になってしまうことを指します。

もしもロストしてしまったら…

陸上の様にとりあえずケータイで連絡、というわけにはいきません。

広大な海に自分1人、右も左もわからない…
そんな状況に置かれたら、ショッピングモールで迷子になった子どもよろしく、大泣きしたくもなりますよね。

ということで、今回はロストの対処法と予防法について、詳しく見て行きたいと思います!

ロストの対処法

まずは、万が一ロストしてしまった時の対処法から。

1分間その場で待って、戻って来てくれなければ浮上

鉄則です。

お互いに探しあってしまうと、合流できる確率は逆に下がってしまいます。

チームで潜る場合には、その場から絶対に動かない様にしましょう。
バディで潜る場合には、必ず予め、ロストした場合にはどちらが探してどちらが待っているのかを決めておきましょう。

その場で待っていてもエアが無くなってしまうだけなので、水面まで浮上します。

もちろん、浮上は安全な速度、出来る限りゆっくり浮上することを心がけましょうね。

ちょっと待って!その浮上速度、本当に安全!?

ガイドは少し探して見当たらなければ、必ず水面を見に行きます。
なので、律儀に1分間待たなくても、少し待ってもダメなら浮上、ぐらいでも良いですよ!

ちなみに、ロストして水面浮上する時、安全停止はしなくて良いんですか?といったことを聞かれることがあります。

えと…

しなくて良いです(キッパリ)

そもそも安全停止は、行わなくても良いはずのものです。

安全停止を3分間もしていたら、水面を見に行ったガイドは水面にもいないからといって、大慌てで再び水中を探すことでしょう…

減圧停止と安全停止、何が違うの??

多くのダイバーが潜るポイントの場合、他のチームが通りかることもあるでしょう。
ワラにもすがる思いでついて行きたくなる気持ちはわかりますが、絶対について行ってはダメですよ!

そのチームがエキジットに向かっているとは限りませんし、仮にエキジットに向かっていたとしても、ついて行ってる間、あなたは行方不明として捜索されているわけです。

また、自分ではロストをしたという感覚が無かったが、気づいたら別のチームについて行っていた、ということもあるでしょう。
その場合も、気づいた時点でロストとして対処をしましょう。

ロストしてしまった場合の心構え

冒頭の迷子の話で考えてみましょう。
ショッピングモールで迷子になることそのものに危険性は無いですよね。

パニックに陥った子どもが、泣きながら走り回って道路に飛び出してしまったり…
不安のあまり、見ず知らずの人について行ってしまったり…

水中も同様です。

ロスト、もちろん緊急事態ですが、それだけで大事故に直結するかというと、そうでもありません。

ロストしてしまうことで、極度の不安感に襲われ、通常では考えられない行動を起こしてしまうことが、大事故に繋がります。
焦って浮上しようとするあまり、息を止めてしまったり、闇雲にチームを探しているうち、エアの事を気にせず探してエア切れを起こしてしまったり…

ショッピングモールで迷子になっても、みなさんなら泣きじゃくらずに、冷静に対処方法を考えますよね。
それと同じように、万が一水中でロストしても、まずは落ち着き、冷静に対処方法を考えることが重要です。

水面に浮上し、浮力確保さえしてしまえば、ひとまず大事故に繋がる可能性はほぼなくなります。
流れの強い外洋のポイントの場合、今度は漂流の危機がありますが、水中よりは水面の方が遥かに安全です。

安全な浮上速度であがれるか不安…

そんな事を考えてしまうかもしれませんが、万が一減圧症になったとしても、死ぬよりはマシですよね。
勇気を出して水面まで浮上しましょう。

ちなみに…

ロストをしてしまった場合でも落ち着くことは非常に大事ですが、平常心の余り、1人でエキジットしてシャワーを浴びになんて行かないように!!

嘘の様な本当の話ですが、昔筆者が大瀬崎でダイビングを行っていた時に目にした実話です。

水中でゲストをロストしたが、見つからないと海は大騒ぎに。
海上保安庁にも連絡が行き、保安庁の方が大瀬に到着して数分後…
ロストしたゲストが鼻歌混じり、かはわかりませんがお風呂から出て来たそうです。

事故にならなかったので結果オーライですが、当然そのゲストもガイドも、保安庁にこっぴどく叱られたとか…

ロストに備えて

ロストしてしまったときは、とにかく落ち着く。
でも、1人でポツンと迷子になってしまえば、誰だって生きた心地がしないぐらい不安になりますよね。

仮に2人でだったら…

それだけで少しは落ち着けるでしょうし、もしどちらかが思いっきりテンパってしまったとしたら、逆にもう1人は落ち着こうと心がけることでしょう。

バディで潜る場合はロスト=1人ですが、チームで潜る場合には、ガイドとはぐれてもバディとだけは、それこそ死んでもはぐれない様にすることで、万一ロストした場合にも安全に対処できることでしょう!

バディってなんだ!?バディで守るべき鉄則2点

流れがあるポイントの場合、ロストの次に待ち受けているのは漂流の危険性です。

波がある場合は特に、水面のダイバーはボートから非常にみにくくなってしまいます。

万が一の場合に備えて、ボートに見つけてもらいやすくなるシグナルフロート(SMB=サーフェスマーカーブイ)を持っていると良いですね!

また太陽光を反射させてボートに気づいてもらうためのミラーや、音で合図を送るためのホイッスルやホーンなども、万一の場合に活躍してくれるでしょう。

ロストの予防法

ここまではロストへの対処法をご紹介して来ましたが、もちろんロストしないことが一番。
バディ同士がロストしないためには、お互いの位置を常に確認をするという、意識の問題でロストを防ぐことは出来ます。

一方、ダイビング部やダイビングサークルの場合、複数のバディが1チームとして潜ることがほとんどだと思います。

ここでは透明度が悪い時にバディとバディがはぐれない様にするための方法をお伝えしようと思います。

ライトを使う

透明度が悪く、人影が見えない場合でもライトの光はより遠くまで届きます。

チーム全員がライトを持っていればベストですし、先頭のバディと最後尾のバディがライトを持ち、最後尾のバディはライトを持っていない人を自分より後ろに行かせないという約束を作ることで、ロストを防ぐことが出来ます。

方向がわかりやすい場所で潜る

もしガイドロープがあれば、必ずガイドロープ沿いに潜る、ゴロタ(砂利止めの大きな岩)やテトラポット、大きな根(岩)がある場合には、必ずそれに沿ってに潜ることで、仮に一瞬見えなくなっても、少し引き返すだけで合流することが出来ますよね。

ライトと併用すれば、更に安全性は増しますね!

そもそも、それほどの透明度の日に潜るべきか否かという議論もありますが…(笑)

まとめ

ロストは緊急事態ですが、ロストそのものが大事故に直結するわけではありません。

万が一ロストしてしまっても

慌てない!

水面で待つ!

この2つを徹底することで、よっぽど流れが強く漂流の危険性がある様な海で無い限り、無事に帰ることが出来ますよ!

細谷 拓

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合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

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