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海流って何?海流が発生する仕組みと日本付近の海流

基礎知識

ダイビングスポットの情報を見ていると「黒潮の恩恵を受けるため」「寒流と暖流がぶつかるために魚が豊富で」などといった表現を見かけることがあります。
また、普段のダイビングでも「黒潮当たって透明度が良くなったね」などといった会話が繰り広げられる場合も。

透明度:水平方向にどれだけ見通すことが出来るかは、正しくは透視度と言いますが、一般的に使用される、透明度に統一しています。

黒潮や寒流、暖流などは全て海流の事を指しています。
海流とは読んで字のごとく海の流れのことですが、普段ダイバーが遭遇する流れの多くは潮汐流(潮流)といって、海流とは概念が異なる物です。

日本語ではそれぞれの海流に黒潮や親潮と「潮」の字を当てていることもあり、海流と潮流はしばしば混同されています。
そこで今回は海流について詳しく解説していきたいと思います。

海流とは

地球規模で発生する海水の流れのことを海流と言います。

海流は原則的に同じ方向に流れ続けます。
一方で潮流は潮汐の周期と連動しているため、半日程度の短い周期で流れる方向がほぼ真逆に変化します。

尚、海流は水平方向の流れのことを指します。
海の中には鉛直方向(上下方向)の流れも存在しますが、水平方向に比べて流れる速さが非常に遅いため、通常鉛直方向の流れの事を海流とは呼びません。

海流が発生する仕組み

地球は太陽によって温められています。
太陽は地球全体を均一に温めているわけではなく、赤道付近の空気がよく温められます。

すると、地球上の空気に温度差ができます。
温度差は気圧の差となり、地球規模の風が吹きこの風は恒常的に吹きます。

偏西風や貿易風という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、この風のうち西向きの物を偏西風、東向きの物を貿易風と呼びます。
この偏西風や貿易風によって海水が常に引きずられることによって、海流が発生するわけですね。

ちなみに、赤道付近の空気が温められて発生する風は、極に向けて南北方向に吹く様に思うかもしれません。
しかし、地球は自転しているため、この影響を受けて風は東西方向に吹きます。

地球の表面は水だけで覆われているわけではありません。
大陸が存在するため、大陸にぶつかった海水は行き場を失います。

この行き場を失った海水が流れの向きを変え、反転する方向に流れることでも海流は発生します。

世界の主な海流を見てみると、水が水平方向に循環している様子がよくわかると思います。

専門的にはこのことを風成循環と言います。

また、温度や塩分濃度などが異なる海水が混ざりあう時、温度、塩分濃度共に、高い方から低い方へと水は流れます。
これによっても海流は発生しています。

専門的にはこのことを熱塩循環と言います。

海流が発生する要因は他にも様々な要素が複雑に絡み合っていますが、概ね以下の様な要素が海流を発生させていると思って良いでしょう。

  • 太陽から受け取る熱
  • 水の循環
  • 温度や濃度の差

暖流と寒流

海流について話をする時、多くの場合で暖流と寒流という2つに大別します。
読んで字のごとく、暖流は暖かい海流で寒流は冷たい海流です。

ただし温度に厳密な定義が存在するわけではなく、南極や北極から赤道方向に冷たい水を運ぶものが寒流、逆に赤道から極方向に温かい水を運ぶものが暖流です。

一般的に寒流には栄養分が豊富で、暖流には栄養分が少ないと言われています。

海の栄養分は河川からの流れ込むか、水底付近に沈殿しているものがかき混ぜられることによって供給されます。
水底付近といっても深海の話なので、その水温は冷たい場所です。

暖流の場合、水底付近との温度差が大きいため、水が層に分かれ、鉛直方向の撹拌が起きづらいと言われています。
そのため、暖流には栄養分が少なくなるのです。

反対に、寒流は水底付近との温度差が少ないために水は層を作らず、鉛直方向の撹拌が起きやすく、栄養分が豊富になります。

日本付近の海流

ここからは日本付近の海流について見てみましょう。

日本付近には黒潮、親潮、対馬海流、リマン海流という4つの海流が流れています。

ダイビングスポットと重ねてみると……

この日本近海を流れる海流によって、生き物の卵や稚魚が本来の分布域から離れた場所まで流され、季節来遊魚として観察することができているということですね。

また、寒流と暖流がぶつかる場所の事を潮目といい、双方の海流に乗った魚が集まり、寒流がもたらす栄養分の影響も相まって好漁場になるとされています。

海流がぶつかる場所以外でも、温度や塩分濃度がことなる海水が接している部分のことも潮目と言います。

特に黒潮と親潮がぶつかる三陸沖は好漁場として有名です。

尚、海流の流れの向きは常に同じ方向ですが、流れる場所(流路)は季節などによって変化するため、必ずしも上の模式図と完全に一致する場所を流れているわけではありません。

海流の流れの速さや幅、深さなども時期によって変化するため一概には言えませんが、それぞれの海流の特徴は以下の通りです。

  • 黒潮
    流速は早いところで時速7.4kmに達します。流れの幅は100kmにも達すると言われています。
  • 親潮
    流速は早いところで時速2.4kmほど、流れの幅は30km程度と考えられています。
  • 対馬海流
    流速は早いところで時速1.8kmほど、黒潮の様に1本の連続した流れになることは稀だと言われています。
  • リマン海流

流速は平均で時速0.9kmほどと言われています。

海流はまだまだ研究が進んでいない部分も多く、全ての海流で全貌が解明されているわけではありません。

また、流速についてはイメージが湧きづらいかもしれませんが、人が歩く速度は時速3km前後です。
水中では水の抵抗を大きく受けるため、同じ時速3km程度といっても、水泳のオリンピック選手でさえ流れに逆らうことは不可能と言われています。

また、足がつく水深の場所で時速1km程度の流れであっても、手で水を掻くだけでは逆らえずに流されてしまいます。

海流についてのまとめ

潮流と異なり、海流が直接ダイビング自体に影響を及ぼすことはあまりありません。
しかし水温や透明度の変化、また、季節来遊魚の出現には大きな影響を及ぼしています。

黒潮や親潮、対馬海流にリマン海流。
日本の海には4本もの海流が流れているからこそ、水中の四季の変化を感じることができます。

海流を知っておくと地域ごとの環境変化が捉えやすくなるかもしれませんね。
時には海流という視点で、海を見つめてみるもの面白いと思いますよ。

細谷 拓

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合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

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