水中の方が音が早く伝わる理由〜水中での聞こえ方と注意点〜
みなさんコンコルドってご存じですか?
これでピンと来る方は、伊豆に潜りに行きすぎです。(笑)
そうパチンコメーカーのコンコルド!
……ではなく。
超音速旅客機のコンコルドです!!
ほぼ唯一の超音速旅客機として1969年から2003年まで活躍した飛行機です。
機体の独特なフォルムに目を奪われがちですが、最たる特徴は音よりも早いこと。
その飛行速度は、マッハ2!
つまり音速の2倍の速度です。
ところで、音速(=マッハ1)って時速何キロ!?
答えは時速1225kmです。
ちなみに秒速340m。ウサイン・ボルトは秒速約12m。
ボルトの30倍近い速さです。(笑)
でもこれは空気中の話。
水中での音の速さは異なります。
結論から言うと、なんと陸上の4倍!
なんでこんなことが起きるのでしょう?
空気中と水中での音の速さの違い
そもそも音の正体をご存知でしょうか?
音の正体は波です。
波といっても最初にイメージされる横波ではなく縦波です。
~横波~
~縦波(音)~
空気中であれば、気体の分子に縦波が伝わることで、我々は『音』を認識します。
水中も同じで、水分子に縦波が伝わることで、我々は『音』を認識します。
さて、この音の伝わる速度は何が決めるのでしょう?
音の速さは
【弾性率/密度】の平方根(ルート)
です。
この式の導出をご説明しようと思うと沢山の数式と、微分積分いい気分なんて冗談を言い始めなくてはならなくなるので、割愛します。(笑)
※厳密にはもっと複雑な式ですが、ここでは簡略化したものをご紹介します。
式から分かる通り、密度が高ければ高いほど音の速さは遅くなり、弾性率が高ければ高いほど音の速さは早くなります。
弾性率なんて、初めて聞いた方も多いことでしょう。
力を加えた時にどれだけ形が変化しないか……物の硬さと思ってもらってOKです。
空気に比べて水の密度は大きいですが、それを補って余りあるほど水の弾性率は空気より大きいので、水中の方が空気中に比べて音の速さが早くなるのです。
ここで分子をドミノ倒しのドミノに置き換えて考えてみましょう。
スカスカな方は押しつぶした時に、より小さくなるため、弾性率が低いと言えます。
また、使用されているドミノの数が少なく、重量も小さいため、密度は小さいと言えます。
スカスカ:低密度・低弾性率⇒空気
キツキツ:高密度・高弾性率⇒水
となるため、空気はスカスカに並べたドミノ、水はキツキツに並べたドミノと言えます。
百聞は一見に如かずですね。
これと同じことが音でも起こります。
つまり、空気に比べてキツキツの(弾性率が高い)水の方が音が早く伝わるのです。
空気中よりも水中の方が音が早く伝わる理由、感覚的に理解できましたか?
それにしても、何でダイビングの知識として音の速さの違いが重要なのか。
ダイビングの際の注意点は?
少しだけ目を閉じてみて下さい。
今、あなたの周りでは色々な音が鳴っていますね。
さて、目を閉じたとき、どの音がどの方向から鳴っているか、なんとなくは判断出来るのでは無いでしょうか?
わからなかった方はもう一度意識をして目を閉じてみて下さい。
なぜ音の鳴っている方向がわかるかと言うと、音源から発生した音は左右の耳に届くのに微妙な時間差があります。
この時間差を脳が処理をして、音源の方向を判断することが出来るのです。
これが水中の場合、通常よりも速いスピードで音が伝わって来るので、人間の耳には左右の耳に入る時間差が無い様に聞こえてしまうのです。
これによって生じる問題として、具体的には水面を通過するボートの方向がわからない、などといったことが挙げられます。
どこかからボートのエンジンの音が聞こえたとしても、きちんと目視をしないと右から来ているのか、左から来ているのかが全くわかりません。
目視せずにどちらから来ているかを決めつけて浮上してしまい、水面でボートと衝突、といったことが起きてしまうかもしれないのです。
また、水面のボートだけでなく、例えばバディが何らかの方法で音を出したとしても、きちんと目視しないと、どこに居るのかを誤って認識してしまうことになるでしょう。
水中で音が聞こえたら頭で判断せず、かならず周りを見渡すようにしてくださいね!
モデル:SAYU
TOP写真:関戸紀倫
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