減圧症の仕組み詳細版-コンパートメント
減圧症の仕組みについて
窒素が体内に溶け込む→浮上時に溢れると減圧症
という大まかな仕組みを以下の記事でご説明しました。
さらに、浮上速度を守れば減圧症にならないのか?という疑問にお答えするべく、M値とハーフタイムという概念をご紹介しつつ、さらに減圧症の仕組みを詳細にご紹介しました。
上記記事の中で
実際には人間の身体は血液や骨など様々な組織で作られており、そのためM値は複数設けて計算します。
なので、ここからがさらに厄介なんですよね…
としましたが、今回はこの厄介な部分についてご紹介したいと思います。
コンパートメントとは
人間を構成するものとして血液や骨、筋肉など、様々な物があります。
当たり前と言えば当たり前なのですが、それぞれに窒素の溶け込むスピードは異なります。
そして…
厄介なことに、それぞれでM値も異なるのです。
この、M値が異なるそれぞれの部位(血液や骨)などをコンパートメントと呼びます。
ダイブコンピューターでは、メーカーやモデルによって異なりますが、人間の身体を~16個のコンパートメントに分けて計算を行っています。
じゃあ、そのコンパートメントの中で、M値が最も小さい(減圧症にならない水深が浅い)数字に合わせて潜れば減圧症にならない…
のですが、それだと水深5mを切ることになってしまいます。
それじゃあ楽しくないですよね??
なので、レジャーダイビングでも、M値を超える範囲でダイビングを行います。
そして、その代償として、減圧症のリスクと闘うことになるわけですね。
DECOには種類がある?
DECOがわからないかたはコチラの記事から要復習ですよ!
DECO=減圧不要限界の逸脱=減圧症のリスクが高まっている状態
なわけですが、そんなDECOにも種類があるんです。
そんなこと言っても、ダイコンにはDECO、以外の表示が出るなんて聞いたこと無い?
ダイコンにはDECOとしか表示されませんが、確かにDECOには種類があるのです。
その種類とは、どのコンパートメントがDECO状態なのか、ということです。
先ほど、人間の身体を~16個のコンパートメントに分けて計算を行っていると言いました。
つまり、それぞれのコンパートメントごとに窒素の溶け込み具合を計算し、いずれかのコンパートメントが限界を超えた時にDECOが表示されるのです。
これは、DECOの表示だけではどのコンパートメントがDECO状態かわからない、ということです。
同じDECOでも以下の様に窒素の溜まり方は様々考えられるわけです。
どれもダイコンは同じDECOという表示が出るわけですが、DECO状態となっているコンパートメントが異なります。
Case1の様にM値が高くハーフタイムが速い組織、つまり窒素の吸排スピードが速い組織がDECO状態の場合。
この組織は排出スピードが速いので、適切な減圧停止を行った後浮上をすれば、みるみる窒素が排出されていきます。
従って、減圧症のリスクは比較的低いと言えます。
※だからといってDECOはDECO!通常のダイビングよりはよっぽど減圧症の危険性は高まっています!
一方で、Case4の様にM値が低くハーフタイムが遅い組織、つまり窒素の吸排スピードが遅い組織がDECO状態の場合。
この組織は排出スピードが遅いので、適切な減圧停止を行った後浮上をしても、なかなか窒素が抜けません。
従って、より減圧症のリスクが高い状態となってしまうのです。
中にはこの様なグラフを直接表示してくれるダイブコンピューターも販売されているので、気になる方はその様なダイブコンピューターを検討してみても良いでしょう。
では、このDECOの種類を見分けるにはどうしたら良いのでしょうか?
ここからは、しつこい様ですが、どのコンパートメントでもDECOはDECOなので絶対に出してはいけないことを前提にお聞きください。
これらを見分けるには、概ねDECOとなった水深から予想することが出来ます。
DECOになってからは遅いので、減圧不要限界まで残り15分くらいの段階で、今自分がどの水深に居るかを意識してみると良いでしょう
減圧不要限界まで残り15分の時
深いところ→M値が高い、ハーフタイムが速いコンパートメントが反応している
浅いところ→M値が低い、ハーフタイムが遅いコンパートメントが反応している→より危険!!
です。
もちろん潜り方によってこれが当てはまらない可能性もありますが、ひとつの目安として覚えておいてください。
高リスクなダイブプロフィールとは
ここまでご説明した通り、M値が低い、ハーフタイムが遅いコンパートメントに窒素を溜め込み過ぎてしまうと、DECOが出ていなくとも減圧症リスクが高まってしまいます。
ではどの様なダイブプロフィールが、より高リスクなのでしょうか?
結論から言うと以下の様な潜り方です。
①通称のこぎり型
②通称箱型
③通称リバース型
④反復潜水・通称リバース型
特に気をつけたいのが②の箱型で、最大水深がエントリーレベルでも到達可能な水深18m程度であっても、その水深にずっととどまり続けるダイビングでは、減圧症のリスクが非常に高いことが指摘されています。
理想的とされるのは以下の潜り方です。
①通称フォワード型
②反復潜水・通称フォワード型
フォワード型の場合、最大水深が箱型より深かったとしても、平均水深が箱型よりも浅ければ、体内の窒素量が箱型より少なくなる場合もあります。
それぞれの潜り方に関して本当にコンパートメントごとの窒素の溜まり方が違うのか、と言われると…
シミュレーター回せば確実になります!!(笑)
現在、公開可能な簡易シミュレーターを構築できないか、試行錯誤していますので、完成したらまたお知らせしますね!
とにかく、最大水深や潜水時間だけでなく、減圧症リスクの低い潜り方(潜水軌跡)を意識することで、より安全に潜ることを心がけて下さいね!
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