弾丸ダイビング旅行が危険なただ1つの理由

安全について

身近な海に定期的に潜り、日本ならでは四季折々の風景を海の中でも感じられることは、日本に生まれたダイバーの特権です。
一方で、北は北海道から南は沖縄、太平洋に日本海、瀬戸内海に南シナ海と多種多様な環境の海が国内にあるのもまた日本の海の素晴らしさ。

日本だけでもめぐり切れないほどのダイビングスポットがあるのに、世界に目を向ければ一生のうちにどれだけ訪れることができるのか……。

ダイバーになるとそんな嬉しい悩みがつきものですが、様々な場所を訪れようと思うと必ず利用するのが飛行機です。
飛行機を使えば、日本国内の大抵の場所は日帰りで訪れることもできるでしょう。

なかなか休みも取れないし、今週末は沖縄で弾丸ダイビング旅行だ!!
金曜日の最終便で那覇に入って、土日でしこたま潜って日曜の最終便で帰る……。

勢い余ってそんなことを考えてしまうかもしれませんが、ちょっと待った!!
ダイビング後の飛行機搭乗には最大限の注意が必要です。

国内への弾丸旅行はもちろん、海外を含めてダイビング旅行を計画する場合には、注意しなくてはならない点があります。
飛行機を使用するダイビング旅行の際は、これからご説明することを必ず念頭に置いて計画してくださいね!

またノンダイバーの方であっても海外や沖縄で、急にやってみたくなって帰る直前に体験ダイビング……というのは危険極まりないので、是非参考にしてみてください。

ダイビング後の飛行機搭乗が引き起こすこと

ずばり、減圧症です。

ダイビングを行う際には高圧の空気を吸うことになりますが、その空気(の中の窒素)は身体に溶け込みます。
そして、陸に帰ってきて圧力から解放された時、身体の中に溶け込み切れなくなった窒素がある場合に減圧症を発症してしまいます。

とはいえ体験ダイビングはもちろん、通常のダイビングを行っている分には浮上するだけで減圧症になるということはありません。

減圧症の仕組みに関して詳しくはこちらから。

先ほど「体験ダイビングはもちろん、通常のダイビングを行っている分には浮上するだけで減圧症になるということはありません。」と言ったのは、陸上に帰る場合の話。

ここで話は変わって飛行機内。
皆さんも耳に違和感や痛みも感じたことがあるのでは無いでしょうか?

ダイバーの皆さんならお分かりかと思いますが、これは圧力が影響しています。
飛行機内の気圧は、最も低い時で約0.8気圧、標高にして2000m(富士山五合目程度)と同等の気圧になっています。

そう、飛行機内は陸上より圧力が低い状態です。
話を減圧症に戻しましょう。

減圧症は極端な話、一生同じ水深で生活をしていれば発症しません。
窒素がなぜ溶け込み切れなくなるかというと、水中にいたときは周囲圧のおかげで溶け込んでいた窒素が、陸上では水中よりも圧力が低いために溶け込んでいられなくなるから、つまり、周囲の圧力が下がることに原因があります。
つまり、水圧がかかった状態から、水面に戻って圧力が下がることで発症します。

ということは、体内に窒素が溜まった状態で飛行機に搭乗してしまうと、地上よりも更に周囲の圧力が下がるため、減圧症発症の可能性を高めてしまうのです。

飛行機搭乗で減圧症にならないためには?

方法はただひとつ。
飛行機搭乗前に、体内の窒素をしっかりと排出することです。

つまり、飛行機に乗るまで、しっかりと時間を空けるということですね。
では具体的にはどの程度空ければ良いのでしょうか??

細かな言い回しは指導団体によって異なりますが、概ね18時間です。

PADIの場合は

  • 単一ダイビング(1日に1本のみ)→12時間
  • 反復ダイビング(1日に2本以上)→18時間
  • 減圧停止が必要になってしまった場合(DECOを出した)→18時間以上

NAUIの場合は

  • 通常のダイビング→18時間
  • 減圧停止が必要になってしまった場合(DECOを出した)→24時間

とされています。

DECOがわからない方はこちらからどうぞ!

※これから体験ダイビングを考えている方はDECOになることは絶対にない(これだけは断言して良いと思います)ので、DECOについては気にしなくてOKです。

通常のファンダイビングで1日1本というのは考えづらいかと思うので、基本的には18時間以上空けましょう、ということですね!

最低でも18時間空けると言うことは……。

土日に東京から1泊2日の沖縄ダイビング旅行に行くとしましょう。

記事執筆時点(2025年4月)で、東京に最も遅く着くのは

ANA478便 那覇空港20:50発 羽田空港23:20着

です。

20:50の18時間前ということは日曜日未明2:50。
金曜日の最終便、ないし土曜日朝イチの便で那覇に訪れ、頑張って2本潜って……。

まぁ可能と言えば可能ですね。
※ちなみに、よく聞かれるのですが飛行機搭乗後のダイビングは、極端な話5分後でもOKです(笑)

ただし、日曜日はどんなに暇だからといっても、日中のダイビングは不可です。

18時間空ければ絶対安全、ではない

18時間というのはあくまで便宜的な線引きであり、身体の窒素が全て排出されていることを保証するものではありません。
あくまで無理の無いダイビングを行った場合、18時間以上空ければ減圧症になる可能性は「かなり低い」という目安です。

体験ダイビングであれば問題ないと思いますが、どんなダイビングを行っても18時間で全ての窒素が体内から排出される、というわけではないのです。

深いダイビングを繰り返したり、連日多くの本数を潜ったりすることで、最後のダイビング終了から18時間経過した時点でも体内に窒素が残っていることはあります。

その状態で飛行機に乗ったら……。
減圧症発症のリスクが高いことは理解できると思います。

ダイブコンピューターをお持ちの場合は、ほぼ全てのダイブコンピューターで体内の窒素があと何時間で全て排出されるかを表示してくれているはずです。

普段はあまり気にしないかもしれませんが、今度潜るときには少し気にしてみましょう。
案外、18時間はおろか、24時間を上回っている場合もあることと思います。

一方で、窒素を溜め過ぎちゃったから飛行機を1日遅らせよう、ということも現実的には難しいでしょう。

飛行機搭乗による減圧症発症リスクは、飛行機搭乗までの時間を空ければ空けるほど下げることができます。

せっかくのダイビングを最大限楽しみつつ、安全に帰るためにも最終日丸々1日は地元の観光地やグルメを楽しむ様なスケジュールで、旅行全体を楽しむことがおすすめですよ!

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