ウエットスーツの着用の手順とコツ&裏技〜ダイビングスキル詳細解説〜
ダイビング未経験の方や初心者の方が苦戦する場面はいくつかありますが、まず最初に苦戦する場面として挙げられるのが、ウエットスーツの着用ではないでしょうか。
特に、初めてご自身のウエットスーツをフルオーダーで作った時には、その着づらさに驚くことと思います。
ぶかぶかのスーツであれば着やすいですが、それだけ水の入れ替わりがあるということなので、水中では寒いもの。
少し着づらいウエットスーツだからこそ、水中での暖かさを得ることができます。
しかし、無理に力づくで着てしまうとスーツが傷む原因となるので、ゆっくり丁寧に着用しましょう。
ここでは、ウエットスーツ着用の手順と知っておきたいコツや裏技をご紹介していきます。
ウエットスーツを着用する前に
ウエットスーツが濡れていると摩擦が大きくなり、非常に着づらくなります。
極力乾いた状態で着用するようにしましょう。
連日のダイビングの場合、表向きでウエットスーツを干していると、内側がしっかりと乾いてくれません。
裏返して干すことで、肌に触れる側をしっかりと乾かしておくのがポイントです。
ちなみに、表向きで直射日光に当ててしまうと、驚くほどすぐに色褪せしてしまうので、これを防ぐ意味でもウエットスーツを干すときには裏返して干すのがベター。
購入してから時間が経っており、なおかつ長い間ウエットスーツを使用していなかった場合などは、ウエットスーツのゴムが硬くなってしまっています。
が、しかし。
何度も着ているうちにゴムは再び軟らかくなってきます。
いざ、海で手こずらないようにするため、家で何度か脱ぎ着を繰り返すのも良いでしょう。
スキン素材(ゴムが剥き出しになっている素材)のウエットスーツは、より摩擦が強く、そのままでは着用出来ないことがほとんど。
ベビーパウダーやボディーソープなどを活用して、できるだけ摩擦を抑えると良いでしょう。
ただし、スキン素材のスーツは爪を立ててしまったり、どこかにぶつかったりしただけでも破れてしまいます。
しかも、一度破れると修復不能な程に大きく裂けてしまうことが多いです。
陸上での保温性の面でスキン素材は非常に優れているのですが、ウエットスーツの着脱が苦手で今この記事を読んでいるという方は、ほぼ間違いなく裂いてしまうと思われますので、おすすめしません。
通常のジャージ素材(ゴムの表面が布で覆われている素材)のウエットスーツで不自由なく脱ぎ着ができる様になってから、2着目としてスキン素材の物を購入するのが良いでしょう。
足を通す
着用する際にはウエットスーツを表向きにしますが、そのままでは着づらいものです。
上半身は裏側に折り返し、足の入り口が見えている状態で着始めると良いでしょう。
足を通すときはバランスを崩しやすいので、できるだけどこかに座って着る様にしましょう。
嘘みたいな話ですが、慣れないうちは足ではなく腕に足を通そうとしてしまう方も多いので、しっかりと確認してから足を通しましょう。
足首にファスナーがついていない場合、足首まで一気に通り抜けないかもしれません。
その場合は足首から遠いところを引っ張ってしまうと上手く力が伝わらず、余計な力が必要であるだけでなく、スーツを傷める原因となってしまいます。
アキレス腱付近、できるだけ足首に近い位置を引っ張るようにしましょう。
片方の足が足首まで外に出たら、膝まではその足を先に着用すると良いでしょう。
逆に、太腿付近まで着用してしまうと、反対の足を入れることができなくなってしまいます。
スーツを膝まで上げる際、膝パッドの位置がずれてしまうと、非常に不快です。
裏返しになっているスーツを丁寧に戻すように、また、それでもずれてしまった場合には、今のうちに正しい位置に動かしておきましょう。
片方の足が膝まで履けたら、反対の足も同様に膝まで履きましょう。
両足が膝まで履ければ、そのまま裏返っているスーツを戻すようにするだけで、腰まで履けます。
真夏などで気温が高く、水に入るまで時間がある場合にはこの腰履きの状態で器材セッティングやブリーフィングを行うと良いでしょう。
腕を通す
腕を通す際も必ず片腕ずつ行います。
両方の腕を一気に通そうとしてしまうと、手の先が両方ともスーツの中で詰まってしまい、自分では何もできなくなってしまうことに……。
腕の先がスーツの中で詰まったら、反対側の腕で袖口を広げて、外に出してあげましょう。
また、腕を通すときは腕を上に上げることで、スムーズに通りやすくなります。
片方の腕が完全に通ったら、反対側の腕も通しましょう。
足や腕を通す際の裏技
ウエットスーツが濡れている場合など、どうしても足や腕が通りづらい場合には、裏技もあります。
水を利用する
海の中に入ったり、シャワーを活用したりしてウエットスーツを着ます。
水が潤滑油の役割を果たし、驚くほどスルッと着ることができますよ。
水の中で着ることで、無理にウエットスーツを引っ張る機会もほとんどなくなるため、スーツを傷ませない効果もあります。
コツは、スーツと身体の隙間にしっかりと水が行きわたる様、水を掬うようにしてスーツ内に水を入れること。
ただ水に入っただけでは陸上以上に着づらいだけです。
なお、海水浴には不向きな水温の時期は非常に冷たい水が直接身体に当たることになるため、身体の負担にならないよう、要注意。
また、着用の途中は手足の自由が利かなくなる瞬間が存在するため、足が立たない場所や波がある場合には危険が伴います。
安全面にも十分に注意をし、危険がある場合にはシャワーなどを利用する様にしましょう。
ビニール袋を利用する
手先や足先にビニール袋をつけて着用することで、摩擦を抑え、スムーズに着用することができるようになります。
もちろん、使った後のビニール袋は風で飛ばないように、すぐにカバンにしまいましょうね。
ファスナーを閉める
手足が着用できたら、あとはファスナーを閉めるだけです。
ウエットスーツのファスナーは背中側にある場合がほとんどなので、バディや周囲の人に閉めてもらうのが良いでしょう。
この時、少し胸を張るようにすると、スムーズにファスナーを閉めることができます。
1人で閉める場合には、ファスナーについている紐を利用します。
1人でファスナーを閉める場合、必ず腰の部分を押さえる様にしましょう。
ここを押さえずにファスナーを上げてしまうと、腰の部分の生地に負担がかかり、この部分から裂けてしまうことに……。
もちろんお互いにファスナーを閉め合う場合にも抑える必要がありますが、まず間違いなく無意識に反対の手でどこかを抑えているはずなのでOKです。
手首や足首にファスナーがついているタイプのスーツの場合、こちらも忘れずに閉めましょうね。
着方ひとつで寿命が変わる
数あるダイビング器材の中でも、ウエットスーツは取り扱い方によって最も寿命に差が出る器材です。
同じ型のウエットスーツで、同じ程度の使用頻度でも、人によって200本ほどでダメにしてしまう場合もあれば400本以上長持ちする人も。
200本というと途方もない数の様に見えてしまうかもしれませんが、早い場合には100本足らずで傷みが出て来る場合もあるので、ウエットスーツを着用する際は、無理な力を加えず、丁寧かつスムーズに着用するようにしましょうね。
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