サイケデリック静浦。駿河湾最奥は不思議の海
こんにちは!
水中写真家、茂野です。
今回は僕にとって最も身近なエリアにある最も変わった不思議な海。
静岡県、駿河湾の最奥部に位置する静浦の海の魅力を紹介したいと思います。
駿河湾奥の案内人といえば、ふらら日和の八木さん!
平沢、淡島、静浦という駿河湾の中で最も湾奥にあるダイビングスポットを拠点とするダイビングガイドです。
一緒に潜ると、八木さんの庭を季節に合わせて、人に合わせて面白い部分を選んで紹介してもらっているという感覚を覚えます。
僕のホームグラウンドは昔から大瀬崎の海だったので、静浦や平沢は毎日のように車で通り過ぎていました。
正直、八木さんと出会うまでは、こんなに近くにいながら湾奥の面白さに気付かなかった……。
「なんてもったいないことをしていたんだろう」という気持ちにさせてくれたガイドです!
ということで!
駿河湾奥の中でも早速、静浦の海を紹介していこうと思います。
魅惑のスナイソギンチャク
静浦の1番の魅力といったら、その独特な環境が生み出す、サイケデリックな色合いのスナイソギンチャクでしょう!!
静浦は、大雨が降り川の水が増水した時にだけ解放される狩野川放水路のすぐ横にあるポイントです。
そのため川の水が入ってくる上に湾の奥なので透明度が低い傾向にあります。
そのため光を避けるようなタイプの蛍光色の強いソフトコーラルやイソギンチャクが多い。
このスナイソギンチャクもその1つ。
そしてその蛍光色の強いスナイソギンチャクには高確率でハクセンアカホシカクレエビが隠れているんです!
こんなシチュエーション、マクロの写真を撮る人だったらテンション上がらないわけないですよね!
そして、この発色はソフトコーラルとも違うスナイソギンチャク独特なもの。
妖艶と呼ぶ人もいれば、僕的にはサイケデリックって表現がピッタリかなと思うような色。
蛍光ペンのインクのような色だな〜と思います。
しかも色は黄色だけじゃなくて、こんな紫のスナイソギンチャクもあったり、
ピンク色もあったりします。
そしてこのスナイソギンチャクは深いところにもありますが、多くが水深15〜20mのあたりにあります。
なのでじっくり撮影することができる!
個人的には背景の青を抜いてスローシャッターで撮るのが好きなので、じっくり粘れる深度なのは本当に嬉しい。
スヌートで狙ってみたいとか、スナイソギンチャク自体の妖艶な動きを表現してみたいとか……、創作意欲が掻き立てられる被写体です。
ただスナイソギンチャクが生えている場所は砂泥底なので、とにかく砂を巻き上げないようにするのが大事!
流れの下手側に位置して撮影をするなど工夫して撮れば、うまくいくんじゃないかなと思います。
その辺のアプローチのコツは、八木さんにバンバン聞いてみて下さいね!
ビーチとは思えないほど豊かなソフトコーラル
静浦のもう1つの面白いポイントとして、ビーチポイントとしては伊豆半島でも随一のソフトコーラルの群生を見られることだと思います。
ここはリトル淡島と呼ばれる水深30mにある根です。
1mを優に超えるエナガトサカが生え、そこにキサンゴやコエダモドキといった砂泥地に生えるソフトコーラルがたくさん群生しています。
田子や伊東の外洋ほど密度濃く群生しているというわけではありませんが、湾奥らしい他では見られないようなソフトコーラルの多様性を持っています。
そして後でも紹介しますが、この静浦は川からの栄養素が入ってくるにも関わらず、放水路という普段は淡水の入ってこないという不思議な環境にあります。
だからこそ冬場はスコーンと透明度が抜ける日も多く、泥地の環境にも関わらず、青い海で撮影ができるという独特の環境をもっているんです。
あと注目して欲しいのが、この写真の下にあるイソギンチャクのようなもの。
これはウチウラタコアシサンゴといって、この周辺の内浦という地名が付いた陰日性のサンゴです。
ぜひこのエリアに潜る時には注目して見てもらいたい生き物の1つです。
他にもリトル淡島の名前の由来の通り、ハナダイも群れる光景が広がっています。
アカオビハナダイが1番多く、次にサクラダイといったかたちで群れ……、ワイド撮影をする人にも最高のビーチポイントでしょう。
ぜひこのリトル淡島も様々な撮り方ができるポイントだと思うので、グリーンの海からスコーンと抜けた青い海までたくさん撮影して欲しいと思います。
湾奥ならではの独特な生き物たち
さて、ここで目線をマクロに戻しましょう。
静浦といえば、駿河湾でも最も泥のエリアが広い砂泥底のポイントの1つでしょう。
だからこそアカタチの仲間や泥地を好む生き物を観察することができます。
写真はカスリハゼという泥地で最も見られるハゼの1つですが、他にもシゲハゼやヒレナガハゼやミホノハゴロモハゼなどを観察することができました!
そして僕はまだ撮影できたことはないですが、ゴルゴニアンシュリンプという珍しいエビが定期的に出るのも静浦の特徴です。
甲殻類で言うと、他エリアではあまり見ることができないムギワラエビも!
オルトマンワラエビに似ますが関節部の模様と足に斑点がないのが特徴です。
このエビに静浦で初めて会った時、存在だけは知っていたので驚きと興奮が隠せませんでした。
甲殻類好きの人ならこの気持ちわかりますよね?
他にもテッポウイシモチがスナイソギンチャクに隠れていたりと、めちゃくちゃ珍しいわけじゃないけど、同じ駿河湾で潜ってて、あまり見ないよねといった生き物が多い印象を持ちます。
そして今でこそ、ホカケハナダイは大瀬崎の先端で大群生をなし、繁殖行動を繰り返していますが、最初にまとまってホカケハナダイが出たのも静浦の海でした。
ホカケハナダイは日本各地で発見例はあるも生息域が定まっておらず、いまだ謎が多いと言う魚。
本当に今でこそ普通になってしまいましたが、ホカケハナダイがハーレムを作っているという話を聞いた時は何度も何度も撮影に行ったほどです。
冬は美しい透明度を誇る
太平洋側は冬になると季節風や雨が減ることと、水温低下によるプランクトンの減少から透明度が高くなります。
この湾奥エリアも透明度が高くなります。
そんな時は浅瀬が非常に気持ちいいんです。
冬の斜めからの日差しが入り込み、春には大きく伸びるであろう海藻の芽をスクスクと育てます。
ボートポイントと違いビーチポイントは浅瀬を通って潜るからこそ冬時期の美しい光芒を撮影するにはもってこい。
しかも静浦はエントリーポイント、駐車場、施設が非常に近いのでダイビング自体も楽々なので、ビーチだけどそこまで大変ではないと思います。
静浦港の目印の赤灯台と水中の風景なんか半水面も良い時期ですね!
エダミドリイシの群生
他にも静浦で特徴的なことと言えばエダミドリイシの群生があることです。
ダイバーなら誰でもいける水深8mほどのところにあり、秋は幼魚たちや季節来遊魚の隠れ家となっています。
ゴマハギの幼魚やヤッコの仲間の幼魚、チョウチョウウオの仲間の幼魚などを観察することが出来ます。
サンゴの隙間はこういった季節来遊魚の格好の隠れ家になるので集まってくるのでしょう。
ちなみにホカケハナダイがコロニーを作ってたのも、このエダミドリイシの群生地です。
そしてこのサンゴはなんと過去には産卵まで観察されているんです。
伊豆半島で見るサンゴの産卵なんて貴重な光景です。
おわりに
ここまで静浦の海の魅力を紹介してきましたが……、
やっぱり1番の魅力はこの湾奥独特の陰日性の生き物たちが観察できること。
そしてそれが時にスコーンと抜ける美しい透明度の中で撮影ができる。
一見地味に見えるポイントだけど、光を当てた瞬間に生き物の美しさ、華やぐ色合いに驚く。
そんな海だと思います。
ぜひ、みなさんも静浦を含めた湾奥潜りに来て下さいね!
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