MAGAZINE

【徹底解説】絵合わせしやすい写真の撮り方〜生物観察を楽しもう!〜

スキルについて

生き物観察に興味を持つと、ダイビングはもっともっと楽しくなる!

そのためにはまず、生き物の名前を知ることが重要です。
その手立てとしておすすめなのが、名前の分からない魚を写真に撮り、図鑑に照らして名前を調べて見つけること。

つまり、絵合わせ!
……ですが、これがなかなか難しい。

  • どうも図鑑の色と違うな。
  • この角度じゃ判断がつかないな。

こういった体験をしたことはないでしょうか?
実は、絵合わせしやすい写真には、コツがあるんです。

構図や明るさ、ボケ感。
みなさん、様々なことに意識を張り巡らせながら水中写真を楽しんでいらっしゃるかと思いますが、絵合わせに適しているのは、「絵合わせに必要な情報が入っている」写真です。

「美しい」「かわいい」「迫力ある」といった軸とは異なる視点が必要となってきます。
というのも、2022年5月末よりスタートした「絵合わせLINE」ですが、幸いなことに、2022年12月31日現在で417件の質問を頂きました。
沢山の方にご利用いただき、嬉しい限りです。

ですが、417件のうち種の名前が特定できたのは333件、逆に言うと、84件は残念ながら種を特定することができませんでした。

中には採集し標本化したうえで調査しなければならない様な物もありましたが、ほとんどは「写真に写っている情報からだけではわからない」というもの。
つまり写真に、絵合わせに必要な情報が入っていれば種を特定できる可能性があったということです。

名前を後から調べようと思った場合は、絵合わせに適した写真を数カットで良いので撮影すると良いでしょう。

ということで今回は、絵合わせしやすい写真の大原則について、ポイントを絞ってお伝えするべく、播磨先生にお話を伺いました!
全般的なことと魚については播磨先生が直接解説してくださっているほか、ウミウシ、甲殻類、軟体動物、それぞれご担当いただいている回答者の方々のお話もまとめて下さいましたよ!

尚、この絵合わせLINE、もちろんベテランさんからマニアックな質問を頂くことも大歓迎なのですが、初心者の方が「うまく撮れている写真じゃないから……。」と質問することをためらってしまうことがないよう、LINEの1対1トークで展開しています。
これからご説明する写真の撮り方に沿っていないと絶対に種の特定はできない、ということではないので、どんな写真でもまずは質問してみて下さいね!

また、絵合わせに適した撮り方であっても、その種の学術的な情報がまだ存在しないため、種まで特定できないことはありますので、ご了承ください。
尚、その様なケースは大発見の可能性もあるので、名前がわからないからといってがっかりせず、新たな発見の可能性を喜んでくださいね!

ここからは、各分野のスペシャリストに教えていただきます。

絵合わせ用写真の大原則

今回の企画「絵合わせLINE」の目的は、「生物に興味があるのに、そばに詳しく答えてくれる人がいないダイバーを助けたい」という事。
それに賛同して、講師陣として参加させてもらっています。

初心者の方が撮影された写真に何とかたくさん回答をしてあげたいと考えているのですが、実際の映像では、それがなかなか叶わないのが現状です。
そこで、どの様な情報が必要なのか、優先順位順に説明させていただきます。

まずは、水中カメラその物に慣れていない方向けから解説したいと思います。

  1. 質問したい生物を驚かさない範囲で、なるべく近づいて撮影する。
  2. 色々な向きから複数枚撮影する。
  3. 小さい種は、なるべく大きく撮影する。大きい種は、複数枚数で全体像が把握できる様に撮影する。
  4. なるべく正確な発色で撮影する。

以上が基本です。

魚をはじめとした海の生き物を絵合わせする際、形や色、模様は非常に重要な情報です。
実際の色と写真に写った色が異なると、それが原因で絵合わせに混乱をきたすこともしばしば起きています。

なるべく、質問したい生物を驚かさない範囲で、近づいて撮影する。

陸上では、冬の晴れた日の朝なら遠くの山々まで見る事が出来ます。
しかし水中では、どんな透明度の良い海でも、たった数十メートル先の物も青と黒の世界にしか見えません。
人間の高性能な眼を使っても、これが現実です。

例えば陸上で、遠くに見える富士山を入れてみんなで記念撮影をしたとしましょう。
皆さんは綺麗に写っていたとしても、バックの富士山は肉眼で感じたよりも霞んで写っている事が多いと思います。
空気でさえも、カメラは被写体との間にあるチリやゴミを正直に写してしまい霞んでしまうのです。

これを水中で考えてみると、より一層近づかなければ鮮明には写らないことが想像できると思います。

さらに水の中は空気中よりも密度が高いため、どんなに高性能の外付けストロボを付けても、離れた場所を綺麗に発色させる事はかないません。

また、水中ライトを当てて発色させようとすると、さらに近くの物しか発色させることができません。
テレビで見かけるような水中の風景の写真は、一般的な物の約10倍もの明るさを持つような超大型の水中ライトを使用しているために実現できる写真で、一般的なダイバーの方には用意することも難しいでしょう。

皆さんの手が届く範囲の機材で鮮明に撮影するためには、生物を驚かさない様になるべく近づくこと。

これに気を付けるだけで、写真全体が青く色かぶり(専門用語では、青かぶりと言う)してしまう様な映像から解放される事が多くなります。
十分に近づけば(30cm以内)コンパクトデジタルカメラの内蔵フラッシュでも、絵合わせ用写真が撮影可能です。

色々な向きから複数枚撮影する。

生き物を見分けるためのポイントは種によって様々。
魚であれば、尾ビレにあったり、背ビレにあったり、頭にあったり……。

一部しか写っていないと、大事な部分が写っていないために見分けられないということになってしまうので、全身が1枚の写真に写っていることが基本であり理想です。

しかし水中では、動き回る生物はなかなか思うように写真に収まってはくれません。
そこで、数カット撮影し複数枚で質問して頂けると、全体像が分かり、絵合わせできる可能性が上がります。

イロ・オオモンの区別がつきにくい幼魚
イロ・オオモンの区別がつきにくい幼魚(正面からの撮影だと区別がつきづらい)
横に少し移動しただけで、オオモンカエルアンコウの幼魚期の特徴である第二背鰭のワンポイントが確認できる

どんなところに注目して撮影したら良いか分からないという方も多いかと思います。
その場合は、『フィッシュ・ウォッチング』(林公義ほか著)の「色や模様に強くなろう(p6~15)」を参考にするのも良いでしょう。

また、Scuba Monstersで開催される「魚の“絵合わせ”セミナー」の次回開講時に参加するのも良いかと思います。

小さい種は、なるべく大きく撮影する。大きい種は、複数枚数で全体像が把握できる様に撮影する。

潜っていて見つけた生物が、持って潜ったカメラのレンズの撮影倍率と合わない経験は私にもよくあります。
そんな時はどうしたら良いのでしょうか。

小さい生物の場合で、画面一杯に撮影できない時は、余白を大きくして構わないので、できるだけ被写体に被写体にピントが合うように写します。

最近のカメラは高画素化が進み入門用のコンパクトデシタルカメラでも、以前では考えられないほどの能力になっています。
撮った映像の必要な所だけ切り取り(トリミング)質問してください。

切り取った状態で長辺1200px以上のサイズが理想です。
これだけの画質があれば十分に絵合わせ可能です。

大きい生物の場合は、分割して撮影してください。
特に大事なのは、頭・各鰭・特徴的な模様の部位です。

最近は、オニイトマキエイとナンヨウマンタの様に非常に近い種だけれども別種、ということもあります。

なるべく正確な発色で撮影する。

最も気を付けてほしいのがこの項目です。

Instagramが定着して久しい昨今、インスタ映えを意識してか、より明るい仕上がりの写真が好まれる傾向にあります。
また、デジタルカメラの普及により、各自が自分の好みに合わせて、レトロ調から、インスタントカメラ調まで多彩な加工が可能な画像加工ソフトを使うことが普及しました。

もちろん筆者も、用途に合わせて撮影をして、より表現したい雰囲気に仕上げる為に、画像加工ソフトを駆使します。

しかし、中には撮った後画像加工ソフトでなんでも加工できるから、どの様に撮っても問題ないと勘違いしている方が見受けられる様に思います。
本来、画像加工ソフトは、「ある程度正確な露出で撮影された映像なら」多彩な表現が可能、というものなのですが、今回の絵合わせ用写真では、この勘違いが実際の絵合わせを難しくする結果をまねいています。

上の写真の例の場合、人気のあるヤシャハゼとコトブキテッポウエビのペアであればこの様な写真でも簡単に識別することができますが、2枚目は写真からだけでは「イソハゼ属であろう」までが限界です。
(正体は、オオゴチョウイソハゼのバリ型のカラーバリエーション)

そこで、さらに踏み込んだレベルとして、図鑑用カットの撮影法を書いていきたいと思います。

何か解らない、超珍しいかもと思われる生物に出会った時ほど疎かになりやすいので、特に気を付けて撮影しましょう。

  1. 正確な露出で撮影
  2. 記録方式
  3. ライティング
  4. 画像加工

正確な露出で撮影

現在、水中写真撮影をする方のほとんどが、陸上ではカメラを趣味にしていなかったと想定して今回は書いていきます。
フィルム時代から水中写真撮影をしていた人には、あまり必要ないかもしれないお話です。

現在、デジタルカメラもスマホのカメラ機能も、明るさの測定は全てカメラ本体内で自動的に行われます。
この仕組みはさておき、通常は、陸上の撮影用に作られています。

その為、水中でその機能がそのまま判断する状況は、薄暗い夕方から夜に撮影していると、カメラが錯覚してしまいます。
そして、薄暗い夕方から夜のシーンで撮影するのに適した組み合わせが自動選択されてしまいます。

残念な事に、コンパクトデジカメの水中シーンモードは、ほとんどのメーカーが水中では崩れるカラーバランスだけを直しているのみである事が多く、一番良くて出来ているOLYMPUS(現OM社)でも、限られた組み合わせのみ可能なレベルです。

よく水中で使われる、INON社やSEA&SEA社の外付けストロボ、またLEDビデオライトの発色までは、コントロールする事は出来ません。

また、水中ではカメラが暗い夜景を撮影していると誤解するために、純正品同士の組み合わせで撮影しても、全て露出オーバー気味に撮影されてしまいます。

これまで水中写真では○○ブルー、とバックの水の色を綺麗に見せるのが、一般的にかっこよいとされてきました。
しかし、今回の絵合わせ用写真では、「現実に忠実に」を心がけてほしいのです。

ではどの様に設定すれば良いのでしょうか。

一番手っ取り早いのは「現実に忠実に」を撮影できる水中カメラマンの基礎的な写真セミナーを受けることです。
筆者がすぐに思いつく水中カメラマンだと、阿倍秀樹氏、峯水亮氏、そして、スクモンでも海のレポートや絵合わせのイカ類の担当してくれている堀口和重氏でしょう。

それ以外にも、思い当たる大御所はいらっしゃいますが、最近は、セミナーの様な活動をされてない様なので控えておきます。

最初にかなりハードルをあげてしまったかもしれません。
ここからは簡単に、最も使用者が多いであろうTGシリーズの中から、2022年12月現在最新モデルのTG-6を例に話すことにします。

① 外付けのストロボを使用する。(LEDビデオライトの調節は難しいので今回はNGとして話を進める。)

外付けストロボについて現行モデルを例に挙げると、AOI社・ウルトラコンパクトストロボRCなら、本体のストロボ設定をRCモードに設定する。
INON社(入門用S-2000は廃版、新モデル発売待ち)・SEA&SEA社なら、TG側をストロボ強制発光に設定する。

ケルビン値(ホワイトバランス調整)は、ストロボの公称値に合わせます。
AOIなら5000ケルビン、INON・SEA&SEAなら5500ケルビンです。

絵合わせ用写真の場合、撮影距離は80cm以内で撮影する。

② 撮影プログラムは、設定があればMモード(X接点のシャッタースピードを選択するモード)を選択すれば良いが、TGシリーズには残念ながらMモードが搭載されていないので、Aモード(絞り優先モード)を選択する。

f値(絞りの値を表す単位)は、なるべくピントの合う範囲を大きくしたいので、数字が大きい方が良いのですが、それだとカメラは水中が暗いので夜景と判断して、シャッタースピードが自動で遅くなってしまいます。
それを防ぐ為に、カメラの露出補正を-2/3に変更して、ISO感度をなるべく小さくします。

ISO感度はカメラによって仕組みが大きく異なるので、付属のマニュアルを熟読して設定してください。今回、詳しくは割愛します。

③ 実際の撮影では、被写体の体色により微調整が必要。

黒色はストロボの調節をプラス側に、白色はマイナス側にする必要があります。
これは簡単に書いた場合です。
実際にはカメラとストロボの組み合わせで何通りもの設定が存在し、複雑な話になってしまいます。

これが自分の機材で出来るようになると、写真表現の範囲が増えて楽しくなるのですが、今回は、絵合わせ用写真の場合ということで、迷ったら少しアンダー(マイナス調節の映像)が色判断に適しています。
TGの場合は、①・②の条件を守ってくれれば、RCモードはそのまま撮影(±0)で、それ以外は-0.5に合わせてください。

カメラをマイナス補正して撮影した写真。模様が確認しやすい画像になった

ここまでに書かれている内容や用語が全く解らないという方は、先に進めた水中カメラマンのセミナーを受講するか、陸上のカメラ入門の本などをお読みになる事をお勧めします。
※「魚の“絵合わせ”セミナー」の海洋実習にご参加いただいた場合は、播磨が設定しますのでご安心くださいね。

また、LEDビデオライトを使ってGoProなどで、絵合わせ用写真を撮影する方法もありますが、これを説明するには相当数のページを割く必要がありますので、今回は画像例だけとさせていただきます。

GoPro10を使用して撮影したミゾレチョウチョウウオの幼魚(使用ライト:BIGBLUE CB10000)

記録方式

デジタルカメラの記録方式には、色々種類があります。
一般的なJPEG(購入時の設定のまま)と、より高度な画像編集が可能なRAWが最も一般的ですが、今回その説明は割愛させていただいて、一般的なJPEGで撮影した画像をお送りください。

もちろん「現実に忠実に」が意識されたRAWの編集画像の方が良いのですが、生物名まで行きつかない画像の中には、「現実に忠実に」がされておらず、絵合わせ不可能になるケースが多くあります。

少々の露出の問題や、青かぶりなら眼の肥えた講師陣は、多分この色だろうと想像できます。

ライティング

写真のライティングは、被写体に向けるのであれば、左斜め45°が基本中の基本です。
絵合わせ用写真であれば、この基本のライティングポジションでかまいません。

2灯撮影なら、主光を左斜め45°、サブ光を水平でかまいません。

ライティングが解らない場合は、カメラの真上(順光)からあててかまいません。
また、ストロボの置き場に悩んだ場合は、内蔵ストロボの延長上に外付けストロボを持ってきてください。

画像加工

画像加工はしないで送ってください。

デジタルカメラや高機能なパソコンソフトの普及により、画像編集ソフトを使い気軽に写真の加工を行うことができるようになりました。
映える写真を目指して写真の加工を行うこともあると思いますが、加工によって色味が変化してしまっていると、正確に絵合わせをすることができません。

絵合わせに使用する写真は、フィルター等で安易な加工はしないようにしましょう。
※実際の色に近づけるRAWの編集画像はその限りではありません。

画像加工され、イロカエルアンコウにしか見えない映像

魚の撮影方法

魚図鑑の最初に各部位の名称というページがあります。
それを参考に、できるだけ同じ角度から撮影しましょう。

魚の種類によって例外はありますが、基本的には真横からです。

必要な情報がすべて揃ったカット(レンテンヤッコ)

ただ、通常なら判別が難しい写真でも、特徴的な部分さえしっかり写っていれば判別が可能となる場合もあります。

絵合わせLINEに投稿いただいた写真を例に解説しますね。

この写真は、残念ながらピントが甘く、露出もオーバーであるため、ここまでご説明してきた絵合わせ用写真の条件をまったく満たしていません。
そのため、通常なら不明という回答をさせて頂くことになります。

しかし、この写真は基本通り真横から撮影されていて、判別に必要な特徴的な鰭を全開で開いています。
その中には、この種の特徴の背鰭としり鰭にある黒い点の模様(正式にはくろいろワンポイント模様)が見受けられる事から、ノドクロベラの幼魚と識別出来ました。

先にお話した絵合わせ用写真のお願いから完璧に外れている画像でも、必要な魚類の特徴が全て撮影されていれば識別できる良い例です。

この様に、普段ヒレを閉じている魚の場合でも、全てのヒレが開いている状態を写真に収められると、見分けられる可能性があがります。
非常に難しいですが、チャレンジしてみましょう。

砂地などで生活するカレイやエイなど平べったい仲間に関しては、真上(俯瞰)から撮影するようにしましょう。

今回、画像例で使ったカエルアンコウの仲間の様に、複数枚送られてきた中から「これは」と言う特徴を拾いだして種を判別する事もあります。
特に、幼魚は判別が難しい場合が多いので複数枚違う角度から撮影することを第一に考えてください。

砂地に顔を出している共生ハゼやウミヘビ類は、できるだけ砂地から全体が出ている横向きの映像を目指してください。
頭部だけでは識別出来ない事が多いです。

尚、テッポウエビ類と共生しているハゼの仲間は、驚かさない撮影距離で撮影して、その画像をトリミングした方が、判明する可能性が高いです。

ウミウシの撮影方法

正面または、横から撮影することが多いウミウシですが、絵合わせのためには基本的に斜め45度ほど上から撮影しましょう。(斜俯瞰)

ウミウシを見分けるためには体色の他に触角と鰓の色が重要な情報です。
触角と二次鰓がハッキリと写るようにこころがけましょう。

しかし、その様な状態で水中で見つかる事は、本当に少ないです。
そんな時は複数のカットに分け、まず全体の模様が解る写真、特に体がゴツゴツしたイメージのウミウシは、真上(俯瞰)から、触覚にピントがあった写真を撮影しましょう。

そして、識別に最も重要なのが二次鰓の写真です。
二次鰓にピントがないために、識別不能になった質問が多く歯がゆく思いました。

甲殻類の撮影方法

本当はヤドカリの仲間が専門なので、たくさんの投稿をお待ちしています。
あまりに、出番が少なくさみしいです。

カニの仲間ですが、甲羅側から一枚と、ハサミの形状が分かるように正面からの写真もあると大変有難いです。
カニの場合、甲羅やハサミにある棘や突起が種を同定するのに重要な特徴になります。

良く撮りがちな、斜め前方からの写真は可愛くは撮れますが、これで同定出来る種類は限られてしまいますので、気を付けてください。

同様にカニダマシの仲間も、コシオリエビの仲間も、同じ二枚構成の映像だと特定しやすくなります。

ヤドカリの仲間は、貝の口をカメラに向けて、出てくるのを待って撮影します。
ハサミ脚、歩脚、眼、眼柄が全て写れば、ほぼ種類の同定は可能です。

エビは、魚類同様に真横からで問題ないです。
強いていうならば、左右のハサミの大きさが違う場合、小さいハサミ側から撮影すると、左右のハサミが映ります。

棲んでいる環境によっては、この撮り方が難しくもなります。
その場合は、真上(俯瞰)から撮ります。

ホスト(棲み家とする生物)を持つ甲殻類全般に言える事ですが、ホストの情報は重要な判別情報になりますので、一緒に写し込むと同定の手がかりになります。

イカ・タコの撮影方法

まずタコ類に関しては、残念ながら国内の種以外は判別することが難しいというのが現状です。
これは、長年イカやタコの仲間は、食用として世界中から日本に輸入されているのですが、その影響で細かく分類して分ける事が水産的価値の観点から行われていません。
近年は、イカ類の研究がやっと進み始めたばかりです。

そのうえで、イカ類を中心にお話させてください。

真上(俯瞰)からの全体写真と、真横からの全体写真があれば、通常見られるほとんどの種で判別ができる可能性が高くなります。

ただし、ミミイカ類は吸盤の配列、他のホタルイカの仲間は触腕に付いている鍵爪も同定が必要になりますが撮影が困難です。
全てのパーツの写真を撮らないと同定するのはとても難しいです。

また、最近各地で盛んになっているナイトトラップで見られる、中深海・深海性の浮遊生活をするイカの仲間の場合、下からお腹側の映像が識別に必要になります。
これは、発光器の位置が識別に重要なためです。

しかし、残念ながら浮遊生活をするイカの仲間は、まだ名前も付けられていないもの(未同定種)が、ほとんどで、今はまだその情報を集めている段階に研究があると言えます。

冬は特に、それらを撮影できるチャンスです。
撮影出来たら是非質問してくださいね。

その他の生物の撮影方法

海の生き物にはこれまで挙げたもの以外にも多種多様な仲間がいます。

魚をはじめこれまでに挙げた仲間についても言えることですが、自然界はまだまだわからないことばかり。
名前がついている種、見分け方が確立されている種の方が少ないと言って良いでしょう。

残念ながら、正確に見分けるためには採集して標本にしてみなければ何もわからないということがほとんどです。

多くの物事は研究途上、場合によっては誰も研究していないということもあります。
名前がわからないということにガッカリせず、まだ誰も知らない事を見ているということに対して興味を持ち続けて頂けたら嬉しく思います。

その興味が、やがて新たな事実の発見に役立つ時がくるかもしれませんよ。

おわりに

今回ご紹介した撮影方法を実践することで、ご自身で図鑑と照らし合わせる作業がはかどり、絵合わせ力UPに繋がります。
絵合わせは、やればやるほど加速度的に力がつくので、どんどんご自身で図鑑と照らし合わせてみて下さいね!

そして、わからなかった時はお気軽に絵合わせLINEまで!

冒頭でもお話した通り、絵合わせLINEは珍しい生き物やインスタ映えを目指した様な写真も大歓迎!

「どこにでもいる魚なのに聞いても良いのかな?」
「こんなウミウシの名前もわからないなんて、って思われたらどうしよう……。」
「うまく撮れている写真じゃないから……。」

そんな心配をすることなく、LINEでの1対1トークで、他のダイバーの目を気にせず質問して頂ける場です。

今回ご説明した通りに撮影できていなくとも、まずはお気軽にLINEしてみて下さいね!

細谷 拓

980,038 views

合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。