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オニダルマオコゼの生態解説【ダイビング生物情報】〜擬態名人は毒を持つ危険生物〜

生物について

岩にそっくりのゴツゴツした体をもち、擬態上手なオニダルマオコゼ。
強力な毒を持つことから、危険生物として挙げられることも多い魚です。

その毒の危険性や擬態名人として、水族館でも取り上げられることの多いオニダルマオコゼをダイビングで観察する方法や注意点を解説します。

【オニダルマオコゼDATA】

標準和名:オニダルマオコゼ 
学名:Synanceia verrucosa 
分類学的位置:スズキ目フサカサゴ科オニダルマオコゼ亜科オニダルマオコゼ属 (魚類学 雑誌44 (2): 97-100にしたがった。)
種同定法 : DXⅡ~XIV,5~7(通常XⅢ,6); AⅢ,5~6(通常5); P1 17~19(通常18); P21,5 ;LLp 11~12
分布:浅海の珊瑚礁、岩礁域。八丈島、小笠原諸島、屋久島、トカラ列島、琉球列島;台湾南部・北部、西沙群島、インド―太平洋(紅海を含み、ツアモツ諸島まで;ハワイ諸島、ライン諸島を除く)
(本記事では、『日本産魚類検索』に従った)

オニダルマオコゼの識別方法:
オニダルマオコゼの属する、フサカサゴ科オニダルマオコゼ亜科は、現在(1994年)世界中で6属10種 が知られている。
そのうち、オニダルマオコゼ属(Synanceia)は、世界で、5種類いる事が確認されている。これまで、そのうちの一種類、オニダルマオコゼの分布のみが日本で確認されていた。

1990年八重山諸島より沖縄県 漁連市場に入荷した個体もとに、日本新記録(世界では、存在の知られた種類だか日本で初めて見つかったもののこと)として、発表された。
このSynanceia korridaは、新たに新名称、標準和名ツノダルマオコゼと命名された。

これにより、日本国内には、オニダルマオコゼと、ツノダルマオコゼの2種類が分布している事になる。

オニダルマオコゼと近縁種のツノダルマオコゼとの見分け方は魚類学雑誌、または、『日本産魚類検索』により、確認して欲しい。

監修・播磨先生によるダイバーのための絵合わせ

水中で砂に潜って生活する生態から、オニダルマオコゼとツノダルマオコゼ、どちらかの種かを確認することは極めて難しいと結論する。
見分けるのであれば、特徴の部分を撮影し、その撮影データを元に識別方法と照らし合わせて、種を判別することが重要である考える。

ちなみに、2021.6.1現在のWikipediaのオニダルマオコゼのページに使われている生態写真の映像を見ても、日本でよく見られているオニダルマオコゼの標準的な個体とは、言い切れない物が使われている。
(東南アジア産のツノダルマカサゴの可能性が高いと考察する)

情報が混同された現在の状況で、一般ダイバーが、オニダルマオコゼとツノダルマオコゼの絵合わせをすることは、水中では不可能であると結論づけたい。

記載論文には、
「ツノダルマオコゼの分布はインド東海岸からジャワ,ニューギニア,オーストラ リア,フィリピン,中国(南シナ海)までの海域(Eschmeyer and Rama Rao,1973;Cheng and Zheng,1987)と日本では八重山諸島が分布に含まれる。」
とあることから、一般ダイバーが国内で観察した場合は、ほとんどがオニダルマオコゼと考えて問題ないだろう。

東南アジアで観察した場合は、どちらなのか十分に、気を付けて特徴を撮影して、判別をする必要がある。
八重山諸島だけは、どちらの種も分布が確認されているので、東南アジア同様に注意が必要となった。

残念ながら、神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」にも、ツノダルマオコゼの映像はデータはない。

尚、WEB魚図鑑「ツノダルマオコゼ」のページには、ほぼツノダルマオコゼと思われる画像があった。

琉球列島の沖縄諸島以北で観察されるものは、現在、ほとんどがオニダルマオコゼと考えて良いだろう。
しかし、無効分散で流れてくること可能性も捨てきれないので、注意は必要である。

このエリアでツノダルマオコゼを見つけた場合は、北限の更新となる。
注意して、観察すると新発見となるかもしれない。

無効分散:分布地域を離れて流れつくこと。たどり着いた先では、成魚になれず繁殖もできないものをいいます。以前は、死滅回遊魚と呼ばれていたことがあります。季節性がある場合に季節来遊魚と呼びます

オニダルマオコゼの観察方法

オニダルマオコゼが観察できる時期や生態行動、生息場所、特徴や注意点、そして、見られるダイビングスポットと、撮影方法をご紹介します。

観察時期  

分布域では、成魚は1年を通して見られる魚です。

生息場所  

浅い珊瑚礁や岩礁域に広く生息しており、足が立つほどの浅い岩礁域やタイドプールにも生息していることがあります。
ダイビング中で一番見つけやすいのは、オニダルマオコゼの餌になりそうな小さな魚が群れるような根の周りに岩のように擬態している時です。

生態行動  

周囲の岩に擬態しているので、見分けるのは困難な魚です。
じっと動かず、周囲の岩や砂地にポツンと一個落ちている岩に擬態して、隠れられる岩と間違えた生物や、岩と思い油断した生物を周りの海水ごと吸い込んで捕食します。

タンパク質由来の神経毒を持つこと、擬態して捕食することについては有名ですが、残念なことにそれ以外の生態は、まったく不明のままです。

私は食べたことがありませんが、沖縄県では高級魚として高価で取引されています。
この原稿を書くのにあたり、監修の播磨先生に質問したところ、下記の返事をいただきました。

『食べた事がある。30年前に久米島で、海人(うみんちゅ)の先輩インストラクターが捕まえてくれて、食べたのが初めてだった。
マース煮(沖縄のしお味の煮つけ)と味噌汁で食べたが、出汁がとても美味しく、胸鰭の付け根の肉は、カニの身の様な風味があって美味しく、皮の内側のゼラチン質はトロトロで何とも言い難い味であった。
しかし、マレーシアのコタキナバルの高級中華海鮮料理屋で、生け簀に入っていた物を「中華酒蒸し」で食べた時は、硬く、煮汁も味がなくまったく美味しくなかった。
捕ってからの鮮度(日数)が大事な魚かもしれないと思ったよ。
どちらにしても、高級で美味しいと知っているので、捕獲に失敗して刺される被害が絶えないと聞いている。』

観察方法 

岩に擬態して、あまり動かない魚なので、触れたりしなければかなり近寄って観察できます。
しかし、観察する前に探すまでが難しい魚です。

水族館では、岩が入った水槽にオニダルマオコゼを入れ、「どれがオニダルマオコゼでしょうか?」と探して楽しんでもらう展示方法をとっていることがあります。
オニダルマオコゼがいると分かってるにもかかわらず、岩と見分けがつかず、探しても探しても見つけづらいものです。

 自然界になればフィールドがより広いので、探そうと思っても見つけるのが難しい魚です。

もし探すのであれば、砂場に見られる根や離礁などを探せば、稀に捕食を狙うオニダルマオコゼを見つけられる可能性があります。

根:岩礁や岩など、水底から大きく隆起した場所の事
離礁:陸上から孤立している岩礁帯やサンゴの根などの環境の事。ダイビング・釣り業界などでは、トビ根と呼ぶことが多い。“トビ”は、飛び地・飛び石(日本庭園)から語源と思われる

観察の注意点  

オニダルマオコゼは、非常に擬態が上手なので、岩を触るときやビーチダイビングでのエントリー、エキジット時に水中を歩くときは十分な注意が必要です。

背鰭(ビレ)には13本の棘(毒針)があり、強い神経毒が仕込まれています。
オニダルマオコゼの毒は魚の中でも特出して強く、日本に分布している生物上最も毒性が強い種の一つと言われています。

強い神経毒で危険な魚ではあるものの、自分から攻撃してくることは100%ありません。あくまでオニダルマオコゼが自分の身を守るための防御反応です。

ほんの少しの毒量でも、刺傷直後より激しい痛み、しびれ、知覚麻痺、発熱、嘔吐、関節痛などの症状が出る場合もあります。 
重篤の場合は呼吸困難、心肺機能停止、血圧低下などを起こす事が報告されていて、2回以上刺された場合は、少量でもアナフィラキシーショックを起こして死に至ることが知られています。
刺傷直後に意識障害を起こして、溺れる可能性も高いです。

一番の対処法は、観察例、被害例の多い場所では、単独行動をしないで複数人での行動をすること。
また、同行者が少しでもおかしいと思ったら、直ぐに対処してください。

刺されたときの対処法(監修・播磨先生より)

助かった例は『海の危険生物治療マニュアル』に記載されている。沖永良部徳洲会病院の「オニオコゼの棘刺事故の一例」には、アナフィラキシーショックや毒の成分についての言及もあるため、合わせて参考にして欲しい。

●見た目が岩のような体なので気が付かないで踏んでしまうこともある。 棘(毒針)は長いのでサンダルや薄手のマリンブーツなどの場合、簡単に貫通してしまう。
ミノカサゴの毒と同様にタンパク毒なので、患部を45~50℃ほどのお湯に30分ぐらい浸けると痛みが和らぐことがある。
●必ず救急車を手配し、緊急治療を受けて欲しい。
●刺されたら、命は時間との勝負と心して対処しよう。

観察ができるダイビングポイント   

和歌山県以南の南日本の太平洋側・八丈島・琉球列島などに分布しています。

私がオニダルマオコゼを観察したことがあるのは屋久島のダイビングポイント・栗生(くりお)のタイドプール、新城島(あらぐすくじま)、西表島のダイビングポイントです。

生態を撮影するには  

あまり動かない生き物なので、近寄って撮影することができます。

OLYMPUS TG6などのコンパクトデジタルカメラならワイド側で体全体を撮影することも可能。
ワイドコンバージョンレンズを付けることにより迫力のある写真を撮ることができるので、よりおすすめの撮影方法です。

ワイド側:広角端。焦点距離を最も短くし、広角にした状態のこと。

あまり動かない生きものなので、さらにワイドマクロ撮影ができる水中マイクロ魚眼レンズでも面白い作品作りができる、とても良い練習用の被写体です。

ワイドマクロ撮影:広角での撮影方法のひとつ。最短撮影距離まで寄って撮影することで、被写体とともに後景も写し込む。奥行き感を出しやすい

フルサイズ(35mm換算)で60mm前後なら体全体を図鑑撮影することができ、24~15mmの広角レンズを使えば生物や環境まで入れることが可能です。  

具体的にカメラメーカー・レンズ機種を挙げるとすれば、以下の様な機種がおすすめです。

Nikon D500、D7500、上位機種の場合D810以上
Nikon マクロレンズ 60mm (35mm換算) 
Nikon 広角レンズ 24~15mm (35mm換算) 
OLYMPUS Tough TG-6シリーズ
INON 水中マイクロ魚眼レンズ UFL-M150 ZM80

参考文献 

文・写真:堀口和重
監修:播磨伯穂

堀口和重

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水中カメラマン。 1986年東京生まれ。 日本の海を中心に、水中生物のおもしろい姿や生態、海と人との関わりをテーマに撮影活動を続けている。撮影の際は、海や生...

プロフィール

播磨伯穂

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H.T.M.マリンサービス代表。 元日本ペット&アニマル専門学校講師。 元NAUIインストラクタートレーナー。 1963年東京生まれ。東海大学海洋学部水産学...

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