MAGAZINE

説明できますか?サンゴを傷つけてはいけない理由

生物について

ダイビングのライセンスを取るとき、サンゴを傷つけないようにしましょうと口酸っぱく言われます。

 

サンゴは1年にほんの数cmしか伸びないから、もし折ってしまったりすると元に戻るのにすごく時間がかかるんだよ。

だから、サンゴを折らないよう着底するときは気をつけてくださいね、と。

 

へー、そうなんだー!サンゴを折らないようにしなきゃいけないんだー!

 

で、なんでサンゴを守らなくちゃいけないの?サンゴはなんで大切なの?

 

後輩ダイバーにこう質問されたら、あなたはきちんと答えられますか?

自分がサンゴを大切にしているのと同じように、後輩にもサンゴを大切にしてもらえますか?

そういえばなんでだろう?と思った人、改めて聞かれるとちょっと……と思った人、ぜひこの記事を読んでサンゴをことを知ってみてください。

サンゴは海の生き物にとって欠かせない存在なんです!

 

サンゴの生態

まずはサンゴがどんな生き物か一緒に知っていきましょう。

サンゴとは、クラゲなどと同じ刺胞動物のうち固い骨格を発達させるもののことを言います。

サンゴには、大きく分けて3種類の仲間がいます。

  1. 宝石サンゴ
  2. ソフトコーラル
  3. テーブルサンゴ

サンゴ礁を形作るのは3.テーブルサンゴと呼ばれるサンゴの仲間です。

 

1. 宝石サンゴ

宝石サンゴはその名の通り、宝石の一種として扱われ、高値で取引されます。

日本近海の深海で多く取れるため日本にとって貴重な資源なのですが、最近は中国の漁船によって密漁され数が減っていると言われています。

 

2. ソフトコーラル

上の写真のような木の枝状の生き物を見たことがある人は多いのではないでしょうか?

実はサンゴの仲間だったって知ってましたか?

ソフトコーラル(軟質サンゴ)は広い範囲に生息していて、種類によってはペットショップや通販などで買うことができるほど身近なサンゴです。

サンゴのイメージとはかなり違う柔らかい体が特徴的ですが、体内に固い骨格がバラバラに入っており、立派なサンゴの一種です。

3つのグループがあり、上の写真はヤギ目の仲間です。他にドデカいイソギンチャクのようなウミトサカ目、魚のエラが砂から直接生えているような見た目のウミエラ目がいます。

 

3. テーブルサンゴ

オーストラリアのグレートバリアリーフのような広大なサンゴ礁を形作るのが、テーブルサンゴの仲間です。

テーブルのように大きな塊となることが名前の由来です。

 

テーブルサンゴの仲間は褐虫藻という植物プランクトンと体内共生しています。

平たく言うと、褐虫藻を体の中に飼っています。

褐虫藻が光合成で作り出したエネルギーをもらう代わりに、テーブルサンゴは安全で心地よい住みかを提供しているという訳です。

サンゴは褐虫藻からもらうエネルギーだけで生きているので、光合成に必要な太陽の光が届く、浅くてキレイな海にだけ生息しています。

 

テーブルサンゴは海の生き物たちにとってお母さんのような大切な存在です。

詳しくはこの次の章で紹介しますね。

 

サンゴが僕たちにくれるもの

サンゴ礁には非常に多くの生き物たちが暮らしており、その多様さは「海の熱帯雨林」と呼ばれるほどです。

僕たちは知らず知らずのうちにたくさんの恩恵にあずかっています。

人間が住む島になる

サンゴは島にもなります。

サンゴ礁は最初、陸地を取り囲むように育ちます。この状態を裾礁(きょしょう)と言います。

沖縄県のサンゴ礁はみな裾礁の状態です。

裾礁

 

地殻変動があったり、海面が上昇したりして陸地が沈むとサンゴも一緒に沈んでしまいピンチです。光合成ができなくなってしまいます。

そこで太陽の光を求め、サンゴは上に上にと成長します。

その結果、海面を飛び出し、元あった陸地との間に大きな水たまりを作ります。この状態を堡礁(ほしょう)と言い、水たまりのことをラグーンと言います。ディ◯ニーシーにあるマー◯イドラグーンの元になった言葉ですね。

堡礁は英語ではバリアリーフと言います。オーストラリアのグレートバリアリーフが有名ですね。

堡礁

 

さらに陸地が沈むと、リング状のサンゴ礁だけが取り残されます。この状態を環礁(かんしょう)と言います。

有名なのは水爆実験が行なわれたビキニ環礁でしょうか。

環礁

環礁の上には人が住むことができます。サンゴだけできた島です。

※堡礁にも住めそうですが、例が確認できませんでした。

マーシャル諸島やキリバス、ツバルといったミクロネシア・ポリネシア・メラネシアの国々がこれにあたります。

これらの国は非常に海抜が低く、マーシャル諸島の海抜はたった4mしかありません。海面が1m上がると国土の80%が海に沈むと言われています。

 

海の生き物の住みかになる

サンゴ礁には9万3000種類の生き物が暮らしていると言われています。

サンゴ礁の複雑に入り組んだ形は海藻や貝にとってぴったりの居場所となり、小魚やエビ・カニの隠れ場所にもなってくれます。

それらを狙って大きな魚もやってきて……という具合に大きな食物連鎖、複雑な生態系ができあがっています。

サンゴがいなくなってしまうと、小さな生き物たちが暮らす場所がなくなり、数を減らしてしまいます。

それらを餌にしていた大きな生き物もつられて少なくなり、生き物の死体を栄養にしていた生き物たちもどんどん減っていく……

まるでドミノ倒しのように生態系が崩れていきます。

サンゴはドミノの最初の1ピースです。

倒さないようにしなければなりません。

 

豊かな漁場・ダイビングスポットとなる

サンゴ礁にはたくさんの魚が集まってくるため、南国の人々は昔から魚を獲って暮らしています。

環礁だけでできた国(環礁国)は陸地が少なく、農業や畜産には向かないため、漁業が盛んです。

美味しい魚介類と言えば北国のイメージがありますが、南国の魚だってとっても美味しいんですよ!

沖縄の市場に行くとカラフルで目を引く魚が並んでいて、一見、「イロモノ」扱いしてしまいますが、イラブチャーは酢味噌和えにするとガンガン箸が進むし、高級魚アカジンミーバイの煮付けなんてほっぺたが落ちそうなほど絶品ですから。

魚は貴重なタンパク源なんですよ。

 

魚がたくさん取れるポイントは、僕たちダイバーにとって魅力的なダイビングスポットになりますね。

人を集める名物となって観光業が潤うというのもサンゴ礁が僕たちに与えてくれる恵みの一つです。

これは決していやしい話ではなく、自然にどれだけ経済的な価値があるかも考えなければ環境問題は解決しません。

もし、グレートバリアリーフのサンゴが全部いなくなったら?

オーストラリアを訪れるダイバーは激減して、地元のダイビングショップは立ち行かなくなりますよね。

ホテルやレストランにも少なくない影響がありそうです。

何より、すごいダイビングスポットが消えてしまうのは悲しいです。

生活や趣味のためにもサンゴを守る必要があります。

 

 

サンゴが減っている原因

海の生き物にとっても人間にとっても欠かすことのできないサンゴですが、環境の変化によって急激に数が減っています。

その原因はいずれも人間と関係のあるものです。

土砂の流出

土壌開発

森や山が大規模に開発されると土砂が大量に川へ流れ込みます。

粒の大きな土は川に沈殿しますが、細かい砂や泥は沈殿せず、そのまま海に流れ出して海の透明度をずんと落としてしまいます。

すると褐虫藻は光合成をすることができず、死んだりサンゴを出ていったりしてしまい、サンゴは栄養を得られなくなって死んでしまいます。

また、河川がコンクリートで護岸されていることも海の透明度の悪化につながります。

僕たちとしては洪水が防げる上に見た目もよくなるし、お散歩やサイクリングにぴったりの場所ができて嬉しいことが多いのですが、コンクリートは川を流れる土砂をキャッチしてはくれません。

田んぼや畑から流れ込む少しの土砂は、護岸された川ではうまく沈殿せず、海へ一直線に流れ出して汚してしまいます。

護岸されていなければ問題にはならない量の土砂でも、です。

 

オニヒトデの増加

オニヒトデ

出典:Open Cage

オニヒトデはサンゴを餌にしているヒトデの仲間です。

原因ははっきりしていませんが、近年、オニヒトデが急増しサンゴが被害を受けています。

駆除のため、地元の漁師さんたちはオニヒトデが網にかかったらバラバラに切り刻んで捨てていたのですが、オニヒトデは再生能力が非常に高く、その欠片一つ一つが丸一匹に戻ってしまい、実際はオニヒトデを増やしてしまっていたという話はとてもショッキングです。

最近は駆除のしかたを見直し、水中でダイバーが酢酸(お酢)を注射するようになりました。

 

高水温による白化現象

サンゴと共生する褐虫藻は、水温30℃を超える日が何週間も続くと死んでしまいます。

地球温暖化によって、今までちょうどいい水温だったところがサンゴが住めない高水温の海域に変わりつつあります。

褐虫藻がいなくなったサンゴは色が抜け落ちて真っ白になってしまいます。

鳥やウサギのように素早く移動できる動物なら住む場所を変えればいいだけですが、サンゴはほとんど移動できないので今ある環境が壊れることがそのまま絶滅へとつながりかねません。同じことは植物にも言えますね。

 

サンゴを守るためにできることは?

僕たちがすぐにできることはスキルアップです。

どのようなスキルを身につければいいかご紹介します。

中性浮力を取る

どーんと着底してサンゴをべきべきっと折ってしまわないように中性浮力をしっかり取れるようになりましょう!

 

フィンの動かし方に気を配る

中性浮力がしっかり取れていたとしてもフィンがぶつかってしまいサンゴが折れてしまうことがあります。

フィン先がどう動くかまで予想してこそ上級者です!

 

これだけです。簡単でしょ。

でも、意識していないと意外にできないんですよ。

つい、適当に着底してしまったりします。

サンゴ礁のポイントで潜るときは少しだけ気を配ってみてください!

壊さないようにするだけでなく、サンゴを回復させてあげたいと思った方は↓のようなボランティアに参加してみてください!

  • サンゴの移植
  • オニヒトデの駆除活動

NPO法人美ら海振興会さんやチーム美らサンゴさんなどからボランティアに参加できます。

 

まとめ

サンゴを傷つけてはいけない理由は海の生き物にとっても人間にとっても大切な存在だからでした。

それにも関わらず、サンゴは数を減らしており、人間もどうにかしないといけないと手を打っています。

「自分ひとりくらい平気でしょ」と思うか、「自分だけでも始めよう」と思うかで50年後、100年後の未来は変わります。

サンゴ礁でのダイビングを楽しみ続けるために、その大切さを伝えていってあげてくださいね。

ピックアップ記事

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。