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ミノカサゴの生態解説【ダイビング生物情報】〜海外では移入が問題に〜

ミノカサゴ
生物について

華やかな鰭(ヒレ)でダイバーを虜にするミノカサゴ。

よく似ているハナミノカサゴとの見分け方や注意したい毒のこと、そして、観察して分かった“頭の良さ”など、その生態と観察方法をご紹介します。

監修・播磨伯穂先生による、スペシャルコラム「ミノカサゴ移入によるカリブ海の現状」では、海外で実際に起こっているミノカサゴ移入に関するトラブルを教えていただきました。

【ミノカサゴDATA】

標準和名:ミノカサゴ
学名:Pterois lunulata (Schlegel, 1844)  
分類学的位置:カサゴ目フサカサゴ科ミノカサゴ亜科ミノカサゴ属
分布:南北海道以南,南日本,伊豆・小笠原諸島,琉球列島;朝鮮半島,中国

監修・播磨先生による水族館学的解説

●ミノカサゴの識別方法※1
ミノカサゴ属は、個性的な形多く、最も近縁種と考えられているハナミノカサゴ以外(キミオコゼやネッタイミノカサゴなど他のミノカサゴ属の種)は、写真図鑑との「絵合わせ」※2で簡単に、識別できる。
ハナミノカサゴとはよく似ているが、ミノカサゴはちゃいろの縞模様に鱗紋(りんもん)※3のふちが1枚1枚ハッキリと目立ち、尾鰭(ビレ)にはっきりした斑紋がないことで、簡単に判別がつく。 顎の下のしま模様の有無で判別しているケースも見受けられるが、サイズにより個体差があるため判別方法としては適していない。

※1識別方法:正式には「種同定」ですが、一般的に通りが良い識別方法という言い方で記載します
※2絵合わせ:見た目の特徴を図鑑と見合わせる事
※3鱗紋:ウロコの模様

ミノカサゴの観察方法

ミノカサゴが観察できる時期や生態行動、生息場所、特徴や注意点、そして、見られるダイビングスポットと、撮影方法をご紹介します。

観察時期  

温帯種であるミノカサゴは、太平洋側の九州以北に生息しています。成魚は通年観察する可能です。夏時期に産卵するため、幼魚は秋から冬にかけて見られます。富山県の滑川をはじめとする日本海側では、秋頃に無効分散の幼魚が稀に見られます。 

 ※無効分散:分布地域を離れて流れつくこと。たどり着いた先では、成魚になれず繁殖もできないものをいいます。以前は、死滅回遊魚と呼ばれていたことがあります。季節性がある場合に季節来遊魚と呼びます

生息場所

沿岸の岩礁や砂地で観察されています。岩礁域では岩の上を泳いでいたり、砂地をゆっくり徘徊するように泳いでいます。 

生態行動  

ミノカサゴの特徴の一つとして、背鰭(ビレ)・腹鰭(ビレ)・臀鰭(ビレ)に強力な毒を持っていることが挙げられます。これは、自分を捕食しようとする生き物から身を守るための手段です。
さらに、胸鰭(ビレ)を広げることにより、相手より自分の体を大きく見せようとしているとも考えられています。一方で、その鰭の大きさが不便となることもあり、流れが強い場所で泳ぐのには不向きのようです。実際、流れが強い時に岩の裏側へ隠れてやり過ごしているミノカサゴを観察したこともあります。 

観察方法 

ミノカサゴの捕食

水中で落ち着いていられるスキルがあれば、オープンウォーターのライセンスを持っているダイバーなら、見る事が可能であるばかりか、運が良いと、海洋実習・体験ダイビング中に見る事もできる種です。
ミノカサゴが砂地で捕食するときは頭を下にして、魚の真上にそーっと近づき、一気にバクッと食いつきます。
さらに、観察していると、「砂地で砂を巻き上げているダイバーに後ろからついてくる」「ダイバーがカエルアンコウやカレイの仲間の幼魚、テンジクダイの仲間などの小さな生き物を観察しているところを横から見ている」といった姿が見られ、ダイバーが見つけた小さな生き物を捕食することもあります。とても頭が良い魚であることが見て取れます。
また、毒を持っていますが、ミノカサゴの方から攻撃したり、刺したりしてくることはないので、脅かさないように観察すれば心配は不要でしょう。 

観察の注意点  

毒を持つ危険な生物なので、むやみに追いかけることは絶対にしないで下さい。また、岩の陰や裏側に隠れてることもあるので、着底する時や手をどこかにつける時は、必ず確認しましょう。 
数人のダイバーがミノカサゴに刺されたところを見たことがありますが、ひどい場合は手が倍以上に腫れあがります。
ミノカサゴの毒は、タンパク毒なので、熱を加えることで分解されます。応急処置として有名なのは、「患部を50度のほどのお湯に30分ほど浸けること」です。タンパク質の変性を利用した対応で、卵を茹でると固くなることと同じです。
しかし、アレルギーを起こしやすい体質の場合、重症化しやすく、アナフィラキシーショックを起こして呼吸困難や脳の機能停止などに至り、死にいたる例も報告されているため、早急に医師の診察を受けましょう。 

観察ができるダイビングポイント

ミノカサゴ

ミノカサゴは、温帯種と考えられるため、太平洋沿岸の千葉県以南から九州までの広い範囲のダイビングポイントで、通年、観察できます。それより南部のエリアでは、ミノカサゴよりもハナミノカサゴの方が、観察される個体数が増えます。

生態を撮影するには

コンパクトデジタルカメラの場合、広角端 (ワイド側)でミノカサゴの体全体を撮影することも可能です。一眼レフであれば、フルサイズ(35mm換算)で60mm前後のカメラだと体も1部を切り取って撮影したり、体全体を撮影することも可能となります。
幼魚の場合は、100mm相当のレンズなど画角が狭いレンズも効果的です。マクロレンズ以外でも、24~15mmの広角レンズを使うことにより、ミノカサゴと合わせて生息する環境も一緒に撮影することができます。 
  
撮影した写真の撮影機材は下記です。
生物写真を撮影する際の参考にしてみてください。
  
カメラ:Nikon D500、D7500(上位機種の場合 D810以上 )
レンズ:Nikon マクロレンズ 50~100mm (35mm換算) 
レンズ:Nikon 広角レンズ 24~15mm (35mm換算) 

SPECIAL COLUMN

ミノカサゴは、日本では普通に見られる種だが、世界的に見ると非常に珍しいといえる魚です。海外では、「ライオンフィッシュ」という英名で呼ばれ、アクアリストを中心に絶大な人気を誇っています。それゆえに、移入に関するトラブルが起こってしまっていることはご存知でしょうか?
監修・播磨先生に、ミノカサゴの移入に関する現実を教えていただきました。

ミノカサゴ移入によるカリブ海の現状

最初にミノカサゴが本来の生息地と異なる場所で目撃されたのは、1980年代中頃。場所は、フロリダ州沿岸だった。現在では、ミノカサゴの個体群は東海岸に沿って8,000キロメートル以上、北はアメリカのロードアイランド州から南はブラジルのサンパウロまで広がってしまったという。

これは、飼い切れなくなったミノカサゴを海に逃がしたことから、定着して繁殖しているという説が有力である。(現在では違法放流にあたる)

他には、水族館からの流失したという説もある。

筆者は、ミノカサゴ移入に関する他の記事全般において、特に駆除された後の写真を確認したが、ミノカサゴとハナミノカサゴの画像の混同が見られた。

どちらにしても、移入がおきて、爆発的に増えている事は間違いない。

当初、ダイバーは人気のある種を間近な場所で見られると喜んでいたが、現在、ミノカサゴが激しい勢いで海洋生物たちを捕食することで、急速な環境破壊がおきている。

高温の水温が維持された場所では、ミノカサゴは年間を通じて毎月複数回産卵し、驚くべき速度で繁殖する事が、確認されている。その増えるスピードは、色々な対策を講じても、弱まることがない。

今後、地球温暖化の影響による水温上昇に助けられて、その勢いがさらに増す恐れも新たに生まれているだろう。

生息地外への移入は、どのようなリスクを伴うか「野に放す前」には分からないことが多い。(遺伝情報の違う同種を放すことも同様のリスクを伴う)

実際、上記のミノカサゴのように、本当に定着してしまった事例もある。

例え法律違反ではなくても、少なくとも海をフィールドにするダイバー、ダイビング事業者は行うべきではないと考える。

本来の自然の海を残す上でも、生息地外への移入はあってはならないと提案したい。

参考文献

●『改訂版 日本の海水魚』(写真・解説:吉野雄輔、監修:瀬能宏、発行:山と渓谷社、発行年:2018年)
●神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」  
●『デジタルカメラによる 水中撮影テクニック』(著者:峯水亮、発行:誠文堂新光社、発行年:2013年)
●『海辺で出遭うこわい生きもの』(著者:山本典暎、発行:幻冬舎コミックス、発行年:2009年)
●NHK「ダーウィンが来た!〜美魚ミノカサゴ 超キケンな素顔〜」
●NATIONAL GEOGRAPHIC「大繁殖のミノカサゴ、サメで外来魚駆除」(2011年4月5日)
●NATIONAL GEOGRAPHIC「食用キャンペーン、サメで外来魚駆除」(2011年4月5日)
●THE WORLD BANK「ミノカサゴ:新たなカリブの海賊」(2017年1月4日)

播磨伯穂プロフィール写真

監修:播磨 伯穂
H.T.M.マリンサービス代表。
元日本ペット&アニマル専門学校講師。
元NAUIインストラクタートレーナー。
1963年東京生まれ。東海大学海洋学部水産学科卒業後、東海大学海洋科学博物館水族課にて研究生となる。水中生物調査のため、スキューバダイビング、水中撮影、標本撮影を習得。その後、ダイビングショップに就職し、水中写真の普及にも尽力。書籍、雑誌などに水中生態写真を提供した。ダイビングリゾート開発の現地調査員を経て、現職。

堀口和重

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水中カメラマン。 1986年東京生まれ。 日本の海を中心に、水中生物のおもしろい姿や生態、海と人との関わりをテーマに撮影活動を続けている。撮影の際は、海や生...

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