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マトウダイ【ダイビング生物情報】〜西伊豆・大瀬崎の冬の風物詩!〜

生物について

特に西伊豆・大瀬崎で冬の風物詩として、ダイバーにお馴染みのマトウダイ。
体の真ん中にあるくろい丸模様が特徴的ですね。

マトウダイの名前の語源や近縁種・カガミダイとの見分け方法、そして、なぜ冬に浅場に移動してくるのか……など、播磨先生に解説していただきました。

マトウダイDATA

標準和名:マトウダイ

学名:Zeus faber

分類学的位置:マトウダイ目マトウダイ科マトウダイ属

種同定法 : D Ⅸ~Ⅺ,22~24 ; A Ⅳ,20~23 ; P113~14 ;P2Ⅰ,6~7;LL約110,Vert13+18.

分布:水深30~400mの大陸棚~大陸斜面上部(160m以浅に多い).北海道~九州南岸の日本海・東シナ海沿岸,北海道~九州南岸の太平洋沿岸,瀬戸内海,東シナ海沿岸;朝鮮半島東岸,釜山,済洲島,台湾,広東省,海南島,オーストラリア沿岸(北西岸を除く)ニュージーランド,モザンビーク,南アフリカ全沿岸,地中海,東大西洋.

※本記事では、『日本産魚類検索』に従った。

マトウダイの識別方法:
マトウダイの属するマトウダイ属には、現在、他種は見つかっていない。
近縁種、カガミダイ属カガミダイとの識別は、頭部背面は凸状で、体側中央に顕著な1大黒斑がある。
標準和名は、古い時代から有用水産物だったため、分類学的な標準和名の命名ルールで付けられてない。
大正2年発刊『日本産魚類目録』の時代頃に由来すると思われる。
その場合、東京魚市場の名称、または、神奈川県三崎などで使われる名称を優先したと言われている。
東京の地方名には、カガミという呼び名があるが、東京・神奈川で広く使われているマトダイを採用したのではないかと考えられる。

標準和名の語源は、下記であると考えられる。
①体側にある円紋を弓の的に見立てたもので、マトダイ(的鯛)
②魚の顔が馬の頭に似ることから、マトウダイ(馬頭鯛)

『日本産魚名大辞典』によれば、地方名には、クルマダイ(石川県から新潟)、マツガネ(新潟)、カガミダイ(茨城県久慈・小名浜、千葉県銚子・小湊)、カガミ(東京)、ウマダイ(富山)、マハギ(三重)、マトウオ(和歌山県太地・辰ヶ浜)、ツキノワ(鳥取)、オオバ(山口県萩)、ワシノイオ(福岡)、モンツキイヲ(熊本)など、多数存在する事から、日本では、古来より有用水産物であった事がうかがえる。
クルマダイ、カガミダイ、カガミの名称は、他種、標準和名と共通名称であるので、識別に注意が必要である。

ダイバーのための絵合わせ

ダイビング中に、マトウダイ目(Zeiformes)に属する魚類で、成魚が見られる可能性があるのは、マトウダイのみである。

からだの中央部に、くろのワンポイント模様があれば、100%マトウダイである。

マトウダイ成魚。30cm(大瀬崎)

神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」によると、マトウダイの幼魚の他に、カガミダイの幼魚も、ごく稀に見られている。

幼魚期のカガミダイは、体にくろのミズタマ模様があるので、判別できるだろう。

マトウダイの幼魚。5cm(大瀬崎、7月)
絵合わせ:見た目の特徴を図鑑と見合わせる事

 マトウダイの観察方法

マトウダイの成魚は、筆者は、大瀬崎の湾内でしか見ていない。

幼魚、近縁種、カガミダイの幼魚は観察した事がない。

観察時期

近年は水温が高いままなので、1月位から4月位まで見られている。
水温の影響が大きいのか、早い年は、11月下旬から6月上旬まで、見られることもある。

個体数も少ない印象がある。

生息場所

大瀬崎の場合は、湾内、東側のエリアの方が、個体数が多い傾向がある。
砂地すれすれを泳いでいるか、水中のロープ・ブイ・漁礁などのそばで、ホバリングしている事が多い。

生態行動

フリー百科事典・Wikipedia(ウィキペディア)では、

日本の近海にも多く、本州中部から東シナ海にかけての沿岸域に生息する。温暖な海の海底付近で暮らす底生魚で、群れは作らず単独で遊泳していることが多い。

通常の食性は魚食性で、ときおり甲殻類や頭足類を捕食する。産卵は冬から春にかけて行われ、具体的な時期は地域によって異なる。卵は分離性浮性卵で、仔魚および稚魚は浅い海で成長した後、次第に水深50-150mの深みに移行する。成長は比較的遅く、性成熟には4年を要することもある。

マトウダイ|Wikipedia

となっている。

この項目の元は、海外のウィキペディアの日本語版であるようである。

違和感を覚える点が多いので、少し調べてみた。

日本のマトウダイの記載について調べた結果、『小学館の図鑑Z 日本魚類館: ~精緻な写真と詳しい解説~』が、より正確な情報を書いている様である。

産卵期は東シナ海では2~4月。
産卵場は対馬南岸~西方海域の大陸棚縁辺域である。

卵は球形で、直径 1.9〜2.0 ㎜の分離浮性卵。

ライフサイクル
全長 4 ㎜前後から体高が増加し、頭部が大きくなる。
全長 7〜8 ㎜頃に、各鰭の条数は成魚とほぼ同数になる。
仔稚魚が採集されることが少なく、初期発生については不明な点が多い。
幼魚は浅海の藻場に生息するが、成長するにつれて沖合深部に移動する。
雌は全長30㎝前後になると成熟し始める。全長25㎝以下では性比に大きな差異はないが、成長するにつれて雌の占める割合が高くなり、全長30㎝を超えると全体の90%前後が雌となる。

小学館の図鑑Z 日本魚類館: ~精緻な写真と詳しい解説~
ライフサイクル:正式には、「生活史」という。魚類生態学者はライフサイクルという言葉は使用しないが、一般に分かりやすい言葉に変換されている。

以上と、経験した事を合わせると、大瀬崎の水深の浅い場所で見られるマトウダイは、良く成熟した個体と見られ、良く太っている事から、分離浮性卵を産むのなら、卵の広い拡散を狙って、浅場に移動している産卵個体ではないかと想定できる。

砂浜拡張工事以降、大瀬崎の藻場は、幼魚の生育場所として、安定しているとは言い難いために、観察例が減ってきている可能性があるのではと感じた。

マトウダイの幼魚。5cm(大瀬崎、7月)

成長過程で性別が変わることが書かれているので、マトウダイは、雄性先熟である可能性が高いが、詳しく調べた研究結果を見つける事ができなかった。

雄性先熟(ゆうせいせんじゅく):雄として成熟して繁殖に参加した後、雌に性転換して繁殖に参加すること

マトウダイ目(Zeiformes)には30種あまりが知られており、その多くは大陸棚から大陸斜面にかけて生息する底生性深海魚で、分布範囲の広い種類が多い。

広く雄性先熟の生態が見られるが、その中で、マトウダイだけが産卵期に浅海に現れるのなら、とても面白く興味深い生態行動であろう。

食味

有用水産物に入るので、色々な食べ方をされているが、筆者は、冬場に沼津港にある地魚・深海魚を寿司にして出す店で、寿司になったものしか食べた事がない。

とても、淡白な白身であった。

観察方法

大瀬崎の場合、昼間は、1個体、または、ペアと思われる2個体で行動している事が多い。

砂地から、すれすれの場所から1mほど離れた所を泳いでいる事が多い。

マトウダイ成魚。30cm(大瀬崎)

水中の目標物のある所に、身を寄せている姿を観察する事も多い。

後者の場合の方が、観察をさせてくれる事が多い。

夜間は、寝ぼけて水中ライトに寄って来ることがある。

観察の注意点

筆者の唯一の観察地、大瀬崎に限定すれば、ドライスーツを使い慣れているオープンウォーターレベルのダイバーで、十分に観察できるだろう。

オープンウォーターレベル同士のバディでガイドをつけずに潜るには、成育場所がエントリー口からかなり離れているのでお勧めしない。

現地ガイド、インストラクターの管理下が良いだろう。

観察をしたいのであれば、泳いで追いかけるのは、やめよう。
一定の距離を保って逃げてしまう。
かなり、警戒心の強い生物の様に、感じる。

水中の目標物に身を寄せている時は、驚かさない様に気を付けて近づけば、かなりそばまでよれる。

観察ができるダイビングポイント

筆者は、成魚を大瀬崎でしか見ていない。

神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」のデータからポイントをあげるが、観察例が多いとは、言い難い。

  • 小田原市江之浦
  • 熱海
  • 富戸
  • 伊豆海洋公園
  • 八幡野
  • 大瀬崎
  • 井田
  • 沼津市千本浜
  • 三重県「ポイント不明」
  • 紀伊半島南岸,串本
  • 和歌山県「ポイント不明」

広く日本に分布しているが、ダントツに伊豆半島の生態写真が多い。
それ以外の場所で観察撮影した方は、是非、神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」に応募を希望したい。

過去に幼魚の見られたダイビングポイント

  • 宮城県「ポイント不明」
  • 相模湾「ポイント不明」
  • 伊豆海洋公園
  • 八幡野
  • 大瀬崎
  • 黄金崎公園ビーチ
  • 駿河湾「ポイント不明」
  • 和歌山県「ポイント不明」

生態を撮影するには

被写体の大きさから、35mm換算24mmから28mm程度のレンズが丁度良いだろう。

泳いでいる場合は、一人で追いかけると、ドンドン遠くへ逃げてしまう。

グループでマトウダイを囲む様にして撮影すると比較的撮りやすいが、やり過ぎるとマトウダイが怖がり、不自然な映像になってしまう。

一番のお勧めは、水中の目標物に隠れている所。この場合は、驚かさなければ撮影させてくれる。
それでも、撮影距離が遠くなるので、外付けストロボは必須である。

参考文献

文:播磨伯穂
写真:堀口和重

播磨伯穂

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H.T.M.マリンサービス代表。 元日本ペット&アニマル専門学校講師。 元NAUIインストラクタートレーナー。 1963年東京生まれ。東海大学海洋学部水産学...

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