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花よりダンゴ!兵庫県竹野の海でダンゴウオを撮りまくる

海のレポート

こんにちは!
Under Water Creatorの茂野です。

兵庫県の日本海側にある竹野、関東のダイバーの方には耳なじみがないかもしれませんが、春先にダンゴウオが数多く見られることが有名で、僕もダンゴウオ狙いで行ってきました!

はい。関東ダイバーの皆様から、

「なんでわざわざダンゴ狙いで兵庫県まで行ってるの?」
「神奈川の海で良くない?」

そんな声が聞こえてきそうです……!
お気持ちはお察しします。

しかし、竹野じゃなきゃダメな理由があったんです。

ダンゴウオの抱卵

それがこのシーン!ダンゴウオの抱卵!!!

岩に空いた小さな穴の奥でダンゴウオが卵を守っている様子、そしてその卵の中に小さな天使の輪っかがついた赤ちゃんダンゴが透けて見えているのがわかりますか!?

せっかくダンゴウオを見るなら、このシーンが見たい!
そう思ってダンゴウオの抱卵をコンスタントに観察できている竹野まで足を運ぶことにしました。
※もちろん関東でも葉山の海でダンゴの抱卵が確認されたこともありますし、宮城県の女川に代表されるような東北の海では毎年確認できているポイントもあります。

Dive Resort T-styleのみなさんと

今回の取材ではDive Resort T-styleさんにお世話になりました。
1番左がT-styleのオーナー田中陽介さん、1番右がガイドの美紀さん。

そして真ん中が、いつもその時期に関西で1番いいエリアの紹介や情報提供をしてくれるSO BLUE DIVERs 須磨の松井一真さんです。

須江のレポートにも登場してもらいましたが、実は大瀬崎でのガイドを経て竹野でガイドをしたのち独立した方です。
はい、一真さんは、竹野の海のプロフェッショナル!

関東ダイバーでも楽しめるように伊豆の海との違いや、似てるところなどをピックアップしながら教えてくれます!

ザクザク出てくるダンゴウオたち

ダンゴウオ

竹野の海は、探せば探すほどダンゴウオがどんどん出てくる!

1ダイブ中に次から次へと出てきますし、1人で1匹のダンゴウオを独占して周りを気にせず撮影することができるほど、とにかく個体数が多いんです。

ダンゴウオは体長2〜3mmほどの魚。
この小さくて撮影に時間がかかるダンゴウオをじっくり撮影できるのは嬉しい

特にダンゴウオシーズンの春先はダンゴ狙いで来るゲストが多く、あまり動き回らずにじっくり狭い範囲で潜るので1ダイブで1匹の被写体勝負みたいなことも出来ちゃいます!

僕も「背景が海で抜けるようなシチュエーションのダンゴウオが撮りたいです」なんて欲張ったシチュエーションを出しちゃいました。

ダンゴウオ

水深も浅く、エアも時間も気にせず撮影できるため、難しい小さなダンゴウオの撮影も、自分らしい雰囲気にこだわって撮ることができますよ!

天使の輪を持つダンゴウオ

こんな生まれたばかりの、天使の輪っかがキレイにあるダンゴウオがいたり、

天使の輪っか:生まれたばかりのダンゴウオにしかない頭の白い輪っか模様
ダンゴウオ

少し成長した個体もいたりします。

いろんなシチュエーション、サイズ感のダンゴウオが見られるのもすごくいいですね!

さきほどからダンゴウオと呼んでいますが、ここ、竹野で見られるダンゴウオの種類はサクラダンゴウオ。
2017年6月に日本海側のダンゴウオは太平洋側のダンゴウオとは別種とされ、”サクラダンゴウオ”として新種登録されました。

編集部注:日本海側のダンゴウオはサクラダンゴウオの可能性が高いと考えられていますが、DNA鑑定なしに断定は出来ないことをご留意ください。
ダンゴウオ

子どもだけじゃなく、親ダンゴも見れちゃいます!

この子は穴に身を潜めていたので、もしや抱卵!?と僕は思ったのですが、卵はなし。
T-style田中さんいわく、ダンゴウオが子育てするには穴が大きすぎるから、捕食者から身を守るために一時的に隠れているだけではないかということ。

ダンゴウオはオスが岩に空いた小さな穴を綺麗に掃除してメスを待ちます。
そしてお腹がパンパンのメスが穴を訪れ気に入ったら、その穴の中に卵を産みつけます。
そしてその卵をオスが孵化するまで守り続けます。

ぼくたちがよく観察できるのは、このオスが卵を守っている様子なんですね。

ここからは可愛い赤ちゃんダンゴだけでなく子育てに奮闘する親ダンゴを見ていきます。

子育てに奮闘する親ダンゴたち

子育てをするダンゴウオ

僕が訪れた2021年3月末は4ヶ所で抱卵個体が確認できていました。

それぞれ個体によって卵の成長度が違ったり、見やすい個体と見づらい個体がいたりするので、まずは全部紹介してもらいました。

最初に紹介してもらったのが生まれたばかりの、まだ卵が赤いもの。
ダンゴウオの後ろにある赤いつぶつぶが卵です。

直径1センチくらいの穴から親のダンゴウオが微動だにせず、じっと卵を守っている。
この様子をみると生き物の力強さを感じることができます。

こんな小さな生き物でも命を紡ぐために必死に生きているんだなと。

抱卵するダンゴウオ

2ヶ所目と3か所目では、肉眼で親ダンゴを確認できるもののカメラが入りづらいところだったり、穴が小さすぎて見づらかったりと、少し難しいシチュエーションにありました。

そして最後に紹介してもらったのが、なんと卵の中に透けて天使の輪っかがもう見えるというもの。

孵化寸前のダンゴウオの卵

この場所には奥にもうすぐ産まれそうな、目までくっきりわかる卵があって、手前に比較的新しめの卵があります。

孵化寸前のダンゴウオの卵

ちょっと拡大してみると、奥の卵の中には天使の輪っかを持った赤ちゃんがよく見えるのがわかります!!

ダンゴウオは生まれた瞬間からダンゴウオの形をしていて、そのまま着底をします。

多くの魚は産まれた瞬間からプラントンとして浮遊し、海を漂ったあとに着底するのに、ダンゴウオは他の魚とはちょっと違った不思議な生態をしているんですね!

竹野のダンゴウオのシーズン

竹野のダンゴウオのシーズンは2月末〜5月末くらいまで。
冬の時期の竹野は荒れやすく海況的に潜れないことも多いため、海況が安定する3月からが良いということです。

抱卵を観察できるのは2月末〜4月末くらいまで。
1ヶ所で抱卵を観察できる期間は比較的長く、卵が生まれてから孵化するまでは1ヶ月近くかかるそうです。

オスが卵を守る様子はこの時期に行けば比較的高確率で見ることができるでしょう。

ダンゴウオ以外のマクロも面白い!

スナビクニン

竹野のアイドルは、ダンゴウオだけではありません。
マクロダイビングがめちゃくちゃ面白いんです。

中でも人気なのがスナビクニン!!

3月は少し時期が早いこともあって小さな個体しか見られませんでしたが、メカブの中でじっとしている姿が愛くるしい。

例年8月くらいまで見られるそうなので、ぜひスナビクニンも狙ってみてください!

ギンポの幼魚

港の中のポイントにはアマモ場が広がっていて、ここにもギンポやヒラツノモエビやアナハゼなど様々な生き物が隠れています。

ギンポの幼魚が戯れ合うように2匹見合っている光景に出会ったり、

ヒメイカの交接

なんとヒメイカの交接シーンにも出会えたりしました!!

さすが生態に強いT-styleさんです。
ダンゴウオを撮っていると、「ヒメイカの交接も撮る?」ってサクッと見せてくれました。

豊かなアマモ場で見る小さな生き物の生態行動を生で観察できるのもすごく楽しい。

他にも今回は奥まったところにいて撮影は難しかったですがチャガラやサビハゼが卵を守っている様子も観察できました。

透明度が高くなる夏場は地形でジオダイブも!

夏はダイナミックな地形を楽しむジオダイビングも!

春先の1センチ以下のダンゴウオを狙うダイビングとは真逆に、夏は地球の偉大さを感じるダイナミックなジオダイビングが出来るのも竹野の特徴の1つです

海況が安定し透明度が抜群に良くなる夏は地形が本当に美しい!

日本海側は南風によって表層の水が流される、夏の方が透明度が高くなります。

今回、透明度は良くありませんでしたが、ジオ感も見てみたいということで特別に夏のポイントに連れて行ってもらいました!

確かに透明度は良くありませんでしたが、地形はダイナミックに差し込む光が美しい。

複雑に入り組んだ地形で、途中水面に顔を上げることができるポイントもあったり、めちゃくちゃ面白かった!

無数の岩の亀裂の中には、かなり奥まで泳いでいくことのできる場所も!

改めて夏にもう1度ちゃんと写真を撮りに行きたい。

まとめ

竹野のダイビング、ダンゴウオを観察するには本当に潜りやすい環境が整っていました!

港からボートで2分くらいのところにポイントがあり、移動範囲も狭く水深も浅いため、じっくり粘ることができる環境があります。

T-styleでは、ゲストの方にもよりますが、ダンゴ狙いの時には60分近く海に入っていることもあるので、のんびりダイビングを楽しむには最高です。

しかもダンゴウオも天使の輪っかを持つ赤ちゃんから普通のサイズの個体、さらに抱卵個体まで様々な表情を見ることができますよ!!

そして運が良ければダンゴウオがハッチアウトとするところも狙えるかも!

ぜひ皆さんも竹野でダンゴ合宿をやってみてください。

取材協力:
Dive Resort T-style(http://www.takeno-diving.com/)
SO BLUE DIVERs 須磨(https://www.soblue-divers.com/)

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茂野優太

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Under Water Creator。 1991年、神奈川県生まれ。 海・ダイビングの魅力を写真、映像、文章、ガイドなど、多様なアプローチで発信する。 伊...

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