【情報大募集】アオリイカ産卵前線2022!初夏の風物詩を追え!
長い冬を越え、気温が上がる春の終わりから初夏にかけて。
徐々に水温も上がってくるため、本格的なダイビングシーズンのスタートと言っても良いでしょう。
この時期を楽しみに待ち望んでいるダイバーの方も多いはず。
さて、僕らダイバーと同じ様にこの時期を待ち望んでいる(かもしれない!?笑)海の生き物がいます。
それが、アオリイカ。
アオリイカはこの時期に産卵を行い、命を次の世代に繋いでいきます。
そして、産卵が終わると親のアオリイカはその生涯を終えると言われています。
必死に産卵する様子は神秘的かつ感動的。
普段、アオリイカにじっくり近寄ることはできませんが、産卵中のアオリイカは産卵に集中しているため、比較的近くに寄れます。
大きく育ったアオリイカが目の前で産卵する様子は、大迫力。
アオリイカの産卵は、1ダイブ丸々それだけを眺めていられるようなシーンです。
もちろん、急に近寄ったり、近寄りすぎたりしてしまうと、アオリイカは身の危険を感じ逃げてしまいます。
初めは遠くから、徐々に近づきアオリイカがこちらに気づいたそぶりを見せたらすぐに止まる、など、慎重に観察してくださいね。
アオリイカの産卵シーズンにずれがある?
そんなアオリイカの産卵ですが、ダイビングスポットによって少しづつ時期のずれがあります。
ということで、どのダイビングスポットで、どの時期に産卵が行われるのかを明らかにすべく、アオリイカ産卵前線として独自に調査、またみなさんから募集し、随時情報を発表して行きたいと思います。
アオリイカ産卵前線2022
:2022年産卵観察報告あり
アオリイカ産卵前線2022詳細
※2022年5月2日更新
2022年04月21日 福浦 アルバトロス様より
2022年04月25日 江之浦 江之浦ダイビングサービスアクアランド様より
2022年04月26日 大瀬崎 ダイビングショップ河童様より
2022年04月26日 井田 井田ダイビングセンター様より
2022年04月26日 伊豆大島 伊豆大島ダイビングセンター様より
2022年04月28日 川奈 ダイビングショップカルテット様より
2022年05月01日 富戸 takuya@城ヶ崎インディーズ様より
2022年05月03日 城ヶ島 アルバトロス様より
2022年05月12日 葉山 ダイビングショップNANA様より
アオリイカ産卵情報大募集
ダイビングショップの皆様だけでなく、一般ダイバーの皆様からも情報をお待ちしています!
アオリイカの産卵を見たよ、という方は、是非Twitterにてお知らせ下さい!
#アオリイカ産卵前線
をつけ、スポット名と共に呟いて頂ければ、情報として反映させて頂きます!
アオリイカを探しにいこう
東京大学大気海洋研究所でイカの研究をされている笘野哲史博士によると
「アオリイカは日本全国で観察されており、北は北海道から南は沖縄まで、日本全域のダイビングスポットで観察のチャンスはあります。
一方、産卵海域となると話は別です。
北限は、富山・新潟あたりと言われていますが、ダイバーの目撃情報により広がる可能性もあるでしょう」
とのこと。
特に新潟より北のエリアでアオリイカの産卵を目撃した場合は、非常に貴重なシーンの可能性が高いです。
どこに産卵するの?
ホンダワラやマメタワラといった海藻や、死んでしまったサンゴ、海に沈んだ木などに房状に連なった卵を産み付けます。
ダイビングスポットではアオリイカの産卵のために木を沈め、産卵床を人工的に設置している場所も多いです。
産卵床が設置されているダイビングスポットでは、比較的容易に、かつ、多くのアオリイカが集まって産卵する大迫力のシーンを観察することができるでしょう。
また、自然物に産卵している貴重なシーンが見られるダイビングスポットもあります。
アオリイカの分類について
アオリイカは食卓に上る魚介類としても馴染みが深い生き物ですね。
バショウイカやミズイカ、モイカなどと呼ばれることもあります。
呼び名がいくつかあるアオリイカですが、近年の研究で、単一種ではなく複数の種類に細分化できる可能性が指摘されています。
それぞれシロイカ型、アカイカ型、クアイカ型と呼ばれ、生息地や大きさ、卵を産む場所も異なるのだとか。
「もっとアオリイカのことを知りたい!」ということで、東京大学大気海洋研究所でイカの研究をされている笘野哲史博士にアオリイカの分類と産卵環境の注目ポイントを聞くことができました。
笘野哲史プロフィール
1990年、岡山県瀬戸内市生まれ。博士(農学)。
2012年広島大学生物生産学部卒業。2014年広島大学大学院生物圏科学研究科修士課程修了、2017年同博士課程修了。カリフォルニア大学ロサンゼルス校を経て、2019年より東京大学大気海洋研究所に所属。専門は、アオリイカの繁殖生態について。イカの魅力を伝え広める、日本いか連合のメンバー。
アオリイカの分類と産卵環境の注目ポイント
アオリイカは、近いうちにシロイカ、アカイカ、クアイカという種類に分かれ、和名も変わる可能性が高いです。別種に分かれる可能性が非常に高いことから、研究者の中では「型」をつけず、シロイカ、アカイカ、クアイカと呼ぶ方向になってきています。この3つは、生息地、大きさ、産卵環境が異なります。
日本での生息地をご紹介すると、シロイカは日本全土。函館〜沖縄、小笠原など、広範囲に分布しています。
アカイカの北限は、和歌山〜三重・尾鷲、そして、九州では五島列島のあたりまで見つかっています。黒潮が当たる暖かい海域にいると思っていただいて構わないと思います。宮崎、鹿児島、種子島、屋久島にもいますね。
クアイカも和歌山から南の黒潮域。小笠原、和歌山、鹿児島では見つかっているけれども、五島列島ではまだ見つかっていません。
次に、大きさ。
シロイカは、いろいろなところに住んでいて、住んでいる地域によってサイズが違うというのが特徴です。沖縄では、200〜300gで成熟しますが、日本海では、最大4kgにもなる。三重県、八丈島、小笠原では5kgも報告されています。普段は1kg程度のものが多く、大きい場合でも大抵は2〜3kgまでといった感じでしょうか。
アカイカは、ものすごく大きいです。最大5kg以上、外套長60cm程度。腕を含めると1mほどになりますよ。
一方、クアイカは小さいんです。成熟しても外套長は15cm程度で、200gほどですね。
てのひらサイズでもう大人なんです。イカの子どもだと思われていることも多いですね。
見分け方についてですが、体色が赤っぽかったらアカイカです。
イカの色って、色素胞と呼ばれる細胞に入っている色が、開いたり閉じたりすることで色が変わるんですが、アカイカは全体的に赤の色素胞の割合が大きいんです。
……ですが、ダイバーの方には目安にならないかもしれません。釣り人にはけっこう分かってもらえるんですけど、海の中だと透明なことも多いでしょうからね。。。水中で見分けるのは、至難の技だと思います。
ちなみに、シロイカは白っぽいから、アカイカは赤っぽいから。クアイカは、沖縄の方言の「小さい」を意味する「くあー」から。実は、クアイカの「くあ」はもう一説ありまして、「くわっと鳴くから」と。僕は聞いたことがないですが。(笑)
アオリイカ類の見分けは非常に難しいですが、僕らは産卵環境で見分けることが多いです。
シロイカは、水深20mより浅いところの海藻や木の枝などに産むと言われています。産卵床が設置されているダイビングスポットで産むのは、ほとんどがシロイカでしょう。
アカイカは、水深30mより深いところで産卵していて、産卵水深は30〜100mと言われていますね。ソフトコーラルやヤギ類、木などに産みます。
そして、特徴的なのがクアイカです。水深10mより浅い、テーブルサンゴの裏に産みます。
この「テーブルサンゴの裏」というのが注目すべきポイントです。
以前、ダイビングショップの方から「普通のアオリイカ(シロイカ)と大きさが違うイカが砂を掘ってた」と聞いて、「それはきっと、クアイカがテーブルサンゴの下に卵を産んでいるところです」と言ったら、驚かれていました。「今まで感じてきた疑問が解決できた」と言っていただけたことがあったので、そういう風に役立てたらうれしいなと思っています。
テーブルサンゴの隙間に卵を生みつけているアオリイカ(クアイカ)(撮影地:八丈島、撮影:堀口和重)
卵を産んでいない若い個体は、もう分からないです。(笑)区別がつかない。すごく難しいんです。
アカイカとシロイカの子どもが同じ群れを作っているのも観察されています。海の中で、アカイカとシロイカの子ども達を見分けるのは、非常に難しい。
その点、産卵環境の観察は、どのイカか見分ける上では非常にポイントとなります。
上記で紹介してきた内容も、過去の限られた情報から推測されているものなので、注目して見る人が増えれば、まったく違うところに卵を生むイカたちが発見されて、今までの常識が変わるかもしれません。
目につきやすいシロイカに関しては、釣り人、ダイバー、研究者が、ありとあらゆる情報を集めてくれていますが、アカイカとクアイカに関しては、あまり情報がなく、とても貴重なんです。
ダイバーが撮影した写真一枚で、分布域が変わったり、図鑑の記述が変わったり、生態が明らかになったりっていうのは、十分にあり得る話です。
ぜひ、興味をもって、観察していただきたいですね。
2022年現在は新たな研究結果が待たれる状況ですが、今後どうなっていくのかが楽しみですね。
ダイバーによる観察例で研究が進む可能性もあり、そういった視点でもこの企画を楽しんで頂ければと思います!
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