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【南国からの贈り物】季節来遊魚とは!?

生物について

梅雨が明けると夏本番。

本格的なダイビングシーズンが到来しますが、海の中でも変化が起きます。

 

特に伊豆などの場合にはその変化が顕著で、ちょっと潜るだけでも

あれ?なんだかカラフルな生物が増えた??

と感じるほど。

 

そんなカラフルな生物たち、当然ですが寒い時期はクマの様に冬眠していたわけでもなく、見た目通り、南国から流れ着いた生物たちです。

 

ダイバー達の間では

季節来遊魚

と呼ばれる魚たちですね。

 

ではそもそもこの季節来遊魚とはどんな魚たちなのでしょうか?

 

季節来遊魚とは

季節来遊魚、もしくは死滅回遊魚とも呼ばれます。

以前は死滅回遊魚と呼ばれることが一般的でしたが、死滅、という言葉の響きの悪さと、本質的に回遊では無い点から、最近では季節来遊魚と呼ばれることが多いですね。

 

生物には一生のうちに様々な海域を回遊するものと、特定の場所に定着して過ごすものがいます。

我々ダイバーが多く目にするのは後者の方なわけですが、これがありがたいことに、本来の生息域を逸脱することがあるんですね!

 

本来の生息域を逸脱する理由としては大きく2つ。

潮流(主に黒潮)と台風です。

 

多くの生物は卵の頃、水面を漂流する生活を送ります。

通常であればそのまま同じ海域に着底し、そこで一生を過ごします。

ところが、何らかの理由で潮流に乗ったり、台風のうねりに乗ったりすることで、本来の生息域から大きく逸脱するんですね。

 

そんなヤンチャな(?)卵が、本来の生息域からは遠く離れた場所で孵化します。

南国の魚であれば当然、高い水温でないと生きていけないわけですが、真夏であれば伊豆などの水温も十分生息に適した水温となっています。

その結果、孵化した卵はその場所で成長しはじめる、というわけですね。

 

ただし、そんな季節来遊魚には悲しい運命も待っています。

冬になれば水温が下がるので、生きていくことが出来ません。

かといって、元々大きく動き回る力を持った生物ではないので、本来の生息域に戻ることも出来ない…

その結果、遠く離れた地で、多くは成魚にもなれないまま、一生を終える運命にあるのです…

 

死滅回遊魚、と呼ばれていた理由はここにあります。

 

学術的には無効分散と呼ばれる現象、全くの無駄死にかというとそうでもありません。

海の環境は長い目で見れば刻々と変化しています。

首尾よく複数の魚たちが越冬することが出来れば、本来の生息域からは遠く離れた地で新たな生息域を形成することが出来ます。

つまり、種の存続にとって重要な役割を担っているわけですね。

 

さらに、遠く離れた地で、同種では無く近縁種とまかり間違って繁殖行動が成功してしまった場合、新たな種の発生のキッカケになる可能性があります。

つまり、生物の進化にも一定の役割を担っているのでは無いか、と考えられています。

 

季節来遊魚は夏だけのもの?

本来の生息域を超えて現れる

その場所では継続的に暮らすことが出来ない

これが季節来遊魚の定義です。

 

つまり、どの種が季節来遊魚か、という明確な線引きは存在しません。

 

例えば、伊豆ではおなじみにソラスズメダイが日本海では季節来遊魚として扱われます。

 

また、以前は伊豆の季節来遊魚の代表格だったクマノミも、越冬することが増え、最近はあまり季節来遊魚と呼ばない気がします。

さらに、冬にだってもちろん季節来遊魚は存在します。

伊豆のダンゴウオやスナビクニンは、冬の季節来遊魚と言えるでしょう。

 

まとめると

季節来遊魚の範疇は場所によって異なる

夏だけでなく、冬も存在する

ということですね。

 

さらに言えば、沖縄でのダイビングも非常に楽しいのですが、1年を通して大きく水温が変化する地域、簡単に言えば本州のダイビングスポットの楽しさは、ここにあると言っても過言ではありません。

 

季節来遊魚の例

ここまでのお話でおわかりの通り、季節来遊魚の例を挙げる、といっても場所によるのでなんとも言えません。

簡単に言えば

ある特定の季節だけ見かけ、幼魚しか見たことが無い

生物であれば季節来遊魚だと思ってもらって間違いありません(笑)

 

さておきここでは、伊豆における主な夏の季節来遊魚を挙げてみたいと思います!

 

ウミテング

 

カミソリウオ

 

ニシキフウライウオ

 

タテジマキンチャクダイ

 

サザナミヤッコ

 

各種チョウチョウウオ

Theチョウチョウウオ以外は季節来遊魚だと思ってOKかなと。

だからTheチョウチョウウオは”ナミ(並み)チョウ”なんて呼ばれちゃうんですが…(笑)

 

イロブダイ

 

ツユベラ

 

カンムリベラ

ベラの仲間は多すぎて、他にも挙げたらキリがないぐらいの季節来遊ベラがいます。

 

各種ハタタテダイ

 

ツノダシ

 

クマノミ

先述の通り、最近は越冬するものも多いです。

 

ハタタテハゼ

 

ミナミハコフグ

 

フリソデエビ

魚だけでなく、エビやカニにだって季節来遊性のものは存在します。

 

ウミウシカクレエビ

 

スズメダイ系

伊豆の場合、ソラ、ナガサキ、コガネ、The、あたり以外のスズメダイは季節来遊魚でしょう。

 

ミツボシクロスズメダイ

スズメダイ系ですがポピュラーなので特別扱いしてみました(笑)

 

ネッタイミノカサゴ

 

オビテンスモドキ

 

クマドリカエルアンコウ

 

ネジリンボウ


ここに挙げた以外にももちろんたくさんの季節来遊魚(エビ・カニ・ウミウシなども含め)がいます!

みなさんも、夏ならではの海の姿を全力で楽しんでくださいね!

 

細谷 拓

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合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

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