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NAUIフィットプログラムって何?【ダイブマスターになるまで#2】

その他

ダイブマスターになりたい!

そんな方のためにダイブマスターになるまでをご紹介するこの企画。
今回は、ダイブマスターになるための前提条件のお話です。

ダイブマスター講習。
ダイブマスターになりたい人なら誰でも講習を受けられるわけではありません。
当たり前ですが、まずもってダイバーである必要があります。

ただダイバーならいいわけでもなく、ランクや経験などで条件が定められています。
NAUIの場合はこんな感じ。

参加条件
  • NAUIフィットプログラム*修了の有効な資格とNAUIマスタースクーバダイバー*の資格認定(2019年1月以降、新規にNAUIメンバー登録する場合は必要となります。)
  • NAUIリーダーシップコース共通参加条件*を満たしていること。
  • NAUIコアスペシャルティダイバー(NAUIスクーバレスキューを除く)のうち最低3種類の資格を有していること
  • NAUI CPR&First Aidの有効資格

  • NAUIスクーバレスキューダイバーの資格認定
  • 環境、水深、活動内容などが多様な25回以上のスクーバ潜水経験があること

【引用:NAUI】(最終閲覧日2019/11/22)

細かい点は指導団体によって異なりますが、そこまで大きく違う物でもありません。

ただし、2019年から日本のNAUIでも導入された「NAUIフィットプログラム」が独特で、少し混乱を招いてしまう物なので、こちらを改めてご説明したいと思います。

FITプログラムとは

NAUIのホームページによると…

このフィット(Familiarization-Instruction-Testing)プログラムでは、NAUIリーダーシップコースに参加する前に、その準備度合いを確認し実施します。プログラムに参加すると、NAUIメンバーの資格およびリーダーシップトレーニングの準備に必要な情報を得ることができます。
フィットプログラム修了者は、NAUIリーダーシップコースに参加することができます。

NAUIより引用

プロコース準備コースとして新しい物が作られたかのように感じてしまいますが、そういうことではありません。

他の指導団体の場合、ダイブマスター講習中に行っているスキルアップの部分を、独自に分離したものがFITプログラムです。

他の指導団体の場合、プロダイバーになるための前提条件をまとめると以下の様になります。

  • 18歳以上であること
  • アマチュアで最高峰かそれに近いランクであること
  • レスキュートレーニングを受けている事
  • 経験

そして、プロの入り口では以下の事を行います。

  • ガイドを目指した講習
  • プロとしての知識をつける学科講習
  • プロとしてふさわしいスキルを磨く

これがNAUIの場合

  • FITプログラム参加条件
    • 18歳以上であること
    • アマチュアで最高峰かそれに近いランクであること
    • レスキュートレーニングを受けている事
    • 経験
  •  FITプログラム
    • プロとしてふさわしいスキルを磨く
  • プロダイバー講習参加条件
    • FITプログラム修了
  • プロダイバー講習内容
    • ガイドを目指した講習
    • プロとしての知識をつける学科講習

という構造になっているということです。
図にすると少しは分かりやすいでしょうか?

NAUIのホームページなどにも、プロコースの参加条件として様々な条件が記載されているため混乱を招いてしまっているのかもしれません。

NAUIではダイブマスター講習から分離されていますが、他の団体ではダイブマスター講習の中に含まれるものなので、ここからはFITプログラムの内容についてをご説明して行きたいと思います。

FITプログラムの内容

FITプログラムも様々な講習同様

  • クラスルーム(学科)
  • コンファインドウォーター(限定水域/プール)
  • オープンウォーター(海洋)

の3つのセクションに分かれています。

クラスルーム(学科)

学科は大まかに、以下の内容です。

  • プロダイバーとして活動するということ
    プロダイバーとして必要な立ち振る舞いや生じる責任、リーダーシップの取り方について学びます。
  • インストラクションについて
    自ら講習を行うことはありませんが、効果的な講習の方法を学びます。
    インストラクターが何を考えているかを理解することによって、講習のアシスタントについたとき、より良いアシスタントとなるためです。
  • クラスルームプレゼン
    スクーバダイバー講習の学科講習を模擬実施します。
    もちろん、学科講習全てを行うわけではなく、指定されたある一部分を取り扱います。
  • 筆記試験
    この学科で学んだ内容に加え、マスタースクーバダイバーテキストからも出題されます。
    マスタースクーバダイバーの試験をクリアしていれば問題ないはずですが、なかなかの難易度です。

コンファインドウォーター(限定水域/プール)

限定水域は大まかに、以下の内容です。

  • 水中技能:泳力
  • スキンダイビング技能
  • レガシースキルワークショップ
  • スクーバダイビング技能

少し細かく見て行きましょう。

水中技能:泳力

器材を装着しない状態で以下の内容を実施します。
※オープンウォーター(海洋)での実施でも可

  • 23m水平潜水
    蹴伸び(壁を蹴って進む)や飛び込みをすることなく、23m一度も浮上することなく横に泳ぎます。
    蹴伸びアリであれば、多くの人は苦労しませんが、蹴伸びなしはなかなかキツイです…
  • 400mスイム
    2種類以上の泳ぎ方(平泳ぎとクロール、など)で一度も止まることなく泳ぎ続けます。
    水泳を経験していない人にとって、無理ではないものの、相当にしんどいです…
  • 20分間生存水泳
    立ち泳ぎなどで20分間水面に留まり続けます。
    規準通りであればそこまでツラくないですが、伝統的に(?笑)手を水面上に上げる様に求められることも多く、そうすると一気にハードさが増します。

スキンダイビング技能

ウエットスーツ、適正なウエイト、マスク、スノーケル、フィンを装着して、以下の内容を実施します。
※オープンウォーター(海洋)での実施でも可

  • 800mスイム
    一度も止まることなく泳ぎ続けます。
    フィンの使い方が試されます。水泳経験者であっても、フィンの使い方が悪いと、400mスイムより苦労する人もいます。

スクーバダイビング技能

スキンダイビング技能の器材に加えて、BC、レギュレーターセット等スクーバ器材を装着して、以下の内容を実施します。

  • スクーバダイバーアシスト
    要救助者を想定し、レギュレーターを外した状態のダイバーを、軌道を常に確保しながら水面で91m曳航します。(曳航<えいこう>:引っ張る・押すなどして移動させること)
  • 4分間オクトパスブリージング
    バディのオクトパスを使用して、4分間泳ぎ続けます。
    (2分程度で使用するオクトパスをバディで交代)
    バディのことを思いやりながら進めば、難しくないスキルでしょう。
  • 4分間バディブリージング
    バディで1つのセカンドステージを共有し、2呼吸ずつ交互に呼吸しながら、4分間水平に泳ぎ続けます。(2分程度で使用するセカンドステージをバディで交代)
    焦ってしまうと一気に苦しくなってくるので、焦らず淡々とバディブリージングを行うことがコツです。
  • 器材回収
    水深2.4m(以上)にスクーバ器材をバルブを閉めた状態で沈めます。
    その器材をスキンダイビングの装備で取りに行きます。
    この時、直接垂直に取りに行くのではなく、垂直に潜降したうえで水底を水平に7m泳いだ場所に器材を置いておきます。
    水中で装着した上で、浮上するまでを5分以内に行います。
    スキンダイビングで水深5mまで楽に潜れる人であれば、このスキル自体は問題なく実施できると思います。
  • ベイルアウト
    ウエットスーツ以外の全ての器材を手に持ちます。(タンクのバルブは閉める)
    その状態で水深2.4m(以上)の場所に飛び込み、着底するまでひたすら待ちます。
    着底したらタンクのバルブをあけ呼吸を確保、その後、全ての器材を水底に落とすことなく装着し浮上します。
    浮上後、オーバーウエイトではないことを示すため、BCに空気を入れず、しばらく水面で待機します。
    着底するまでが異様に長く感じ、その時間をいかに耐えるかがキモで、FITプログラムの中でもっとも難しいスキルでしょう。
    ちなみに、着底後一歩も動くことなく、全ての器材を片手で装着するのが正しいお作法だとか…

レガシースキルワークショップ

こちらは必須項目ではなく、チャレンジとして実施する、となっています。

  • スキン脱着
    スキンダイビングの装備で、水深2.4m(以上)まで潜り、その場にマスクとフィンを起き、浮上します。
    呼吸を整え、マスクとフィンがない状態で再び潜り、先ほど置いたマスク、フィンを水底で装着してから浮上します。
    フィンをつけない状態でのスキンダイビングは、正しいフォームでないとなかなか潜って行けないので、こちらも難易度の高いスキルです。
  • 器材交換
    水深2.4m(以上)の場所で、全ての器材を装着した1人が待機します。
    もう1人はウエットスーツとウエイトのみを装着し、水底で待つバディの元へ向かいます。
    水中でバディブリージング(1つのセカンドステージをバディと共有)を行いながら、ウエットスーツとウエイト以外の全ての器材を、元々装着していた人から装着していなかった人へと渡します。
    全ての器材を受け渡し正しく装着した後、水平に23m泳ぎます。
    泳ぎ切ったらオクトパスブリージングに切り替え、2人で浮上します。
    バディブリージング中、無意識のうちに呼吸を肺に溜めてしまいがちになり、浮いてしまうことが難しい点です。
    さらに焦りが最大の敵で、一度出来てしまえば2度目以降は比較的簡単に出来てしまいますが、1回出来るまではかなり苦労するスキルです。

オープンウォーター(海洋)

海洋は大まかに、以下の内容です。

  • スクーバダイビング技能
  • スクーバダイバーレスキュー

こちらも細かく見て行きましょう。

スクーバダイビング技能

全ての器材を装着して以下の内容を実施します。

ほとんどのスキルがライセンス(Cカード)取得時に行っているスキルなので「出来る」だけではなく、お手本になれるレベルで実施することが求められます。

  • 水面でウエイトベルトの脱着
  • 水面で重器材の脱着
  • 水底でウエイトベルトの脱着
  • 水底で重器材の脱着
  • 水底でバディブリージング(1つのセカンドステージをバディと共有)
  • 水深4.6m以上の場所からバディでオクトパスを使用しながら浮上
  • 水深4.6m以上の場所から緊急スイミングアセント
  • 水深6m以上の場所から4.5kg以上のウエイトを回収し浮上する
  • 適性ウエイトの調整
  • 適切な中性浮力を取る
  • 水面、水中合計で800m泳ぐ
  • スキンダイビング
  • マスク脱着及びクリア
  • レギュレーターリカバリー及びクリア

 

ちなみに「緊急スイミングアセント」がピンと来ない方はこちらから!

キンスイって何!?エア切れしても浮上中に空気が吸える魔法の方法!?

スクーバダイバーレスキュー

46m先の水深6mの水底に沈んでいる、事故者役をエキジットさせます。
安全な浮上速度で浮上を行った後、必要に応じて器材を取り外しつつ、水面で人工呼吸を行いながら曳航、及びエキジットを行います。

プレゼンテーション

クラスルームのところで学科講習を模擬実施すると言いましたが、限定水域、海洋でもそれぞれ一度、講習を模擬実施します。

こちらも講習全てを行うわけではなく、指定されたある一部分を取り扱います。


冒頭でもご紹介した通り、NAUIはダイブマスター講習中に行っているスキルアップの部分を、FITプログラムとして分離しています。

裏を返せば、NAUIのFITプログラムの内容は、細かな点こそ微妙に異なりますが、どの指導団体でもダイブマスター講習中に実施するものです。

NAUI以外の指導団体でダイブマスターを取得しようと思っている人にも参考になると思うので、是非これを読んでイメージを膨らましてみてもらえればと思います!

最後に、限定水域と海洋で実施するスキルの難易度について、個人的な意見ではありますが、難易度の目安をご紹介したいと思います。

  • 全体として
    基本的なダイビングスキルについては、以下の様なイメージです。
    200本ダイバー:楽勝
    100本ダイバー:物によってはつまずく物も?
    50本ダイバー:多くのスキルが「出来る」だけなので、お手本レベルを目指そう!
    30本ダイバー:スキル自体でつまずいてしまう場合もあるので、しっかりと練習を!
  • スキンダイビング系スキル
    ウエイトに頼ることなく、水深5mまで3キック程度で潜ることが出来る人なら、楽にこなせるでしょう。
    そして、ただ潜るだけでなく、水中でお目当ての魚を探すぐらい活動できれば言うことなしです。
    ウエイトに頼ることなくというのは、体形にもよりますが、5mmワンピースであればノーウエイトでもスキンダイビングを行える程度でしょうか。
    スキンダイビングは意外と普段行う機会が少ないかもしれませんが、練習量に比例してうまくなるので、自信がない人は事前に練習しておきましょう!
  • スイム系スキル
    この記事を読んでいる学生で運動部出身の人であれば、なんとか気合いで乗り切れることと思います。
    高校時代までほとんど身体を動かさなかった人、大人のダイバーの方でこの記事を読んで下さっている方は、日ごろの運動不足が露呈するかも…
    スイムに関してはダイビングプールではなく通常のプールでも練習できるので、少しずつ長い距離を泳ぐ練習をしましょう!
    フィンをつけてのスイムに関してはフィンの使い方が重要なので、日ごろからより少ないフィンキックで移動できるように意識してみましょう!
  • その他
    ベイルアウト、器材交換は特殊なスキルで、普段のダイビングで使うことは絶対にないスキルです(笑)
    水の中で何が起きても焦らない、というためのトレーニングだと思ってもらえればと思います。
    実際、経験の差が最も出るのがこれらのスキルで、水の中にいること自体にストレスを感じず、水の中でレギュレーターやマスクがなくても動じない余裕があることが重要です。
    自主練習できるスキルではありませんが、乗り越えた時には一段と成長できるスキルなので頑張ってトライしましょう!

ダイブマスター取得に向けて、一番しんどいのがNAUIでいうFITプログラムに当たる部分ですが、乗り越えた先には一皮剥けた自分が必ず待っているので、みなさん頑張ってくださいね!!

細谷 拓

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合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

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