「ダイビング業界で働くってどうなの?」
そんな学生ダイバーの疑問に答えていくこの企画も今回で7回目。
今回は今回はみなさんに一番関わりがあるかもしれない都市型ショップから、ダイビングショップリコモの”ペーさん”こと三瓶峻史さんにお話を伺います。
なんと言ってもぺーさんの特殊な経歴。最初から興味津々です。(笑)
拓
ぺーさんと言えば料理のイメージなんですよね。泊まりの講習を手伝っていただく時にBBQで作ってくれる料理がめちゃくちゃおいしくて。
ぺーさん
料理人やってたからね。俺ってだいぶ異色の経歴だよね
拓
料理長をやっていたって話は聞いてましたが、早速生い立ちからいいですか?
ぺーさん
生い立ちって生まれた時からの事話す!?長くなるよーー(笑)
ダイビングショップリコモさんは、おしゃれなレストランバーも併設しています。
そのバーのランチタイムにお昼ご飯を頂きつつ、いつもより和やかな空気でインタビューはスタートしました!
三瓶 峻史
1985年4月8日生まれ。
声楽の専門学校を卒業後、ボイストレーナーとして活動。
並行して、某焼肉チェーン店の店長を務めている最中にダイビングに出会う。
Cカード取得から1年でインストラクターを取得。
携帯電話会社を経て和食レストランで料理長を5年間務める傍らダイビングショップリコモで非常勤として活動する。
その後、30歳にしてダイビングショップリコモの常勤スタッフとなり、現在はチーフインストラクターとして活躍中。
歌だけでなく、料理、イラスト、デザイン、果ては電子機器の修理まで、ダイビング以外にも多彩な才能の持ち主。
スタートは悔しさ
お邪魔したリコモさんの店内
ぺーさん
ダイビングを始めたのは23歳の時だったかな。同級生に誘われたのがキッカケ。
拓
体験ダイビングとかですか?
ぺーさん
ううん。BBQ(笑)同級生が通ってるダイビングショップが、海とは関係なくBBQだけやるから来ないかって誘われて!
拓
ダイビングじゃなくてBBQが先なんですね
ぺーさん
そうそう。だからダイビングする気はあんまり無かったんだよね。
BBQ行ったらちょっと段取りが悪くてねー(笑)
図々しく仕切ってたら、今のボスが話しかけてくれて。「あいつ誰だ?」って。そこから仲良くなって、体験ダイビング、講習って感じで始まったかな。
拓
そうなんですね!あ、ぺーさんってもともと料理人でしたもんね!
料理やってたからBBQの段取りとかが気になっちゃった感じですか?
ぺーさん
確かに料理長とかもやってきたけど、その時はまだ料理始めてないよ(笑)
拓
え??じゃあなんで気になっちゃったんですか?
ぺーさん
その頃は焼き肉屋の副店長やってたから、炭つけるのだけはめちゃくちゃ早かったのよ。だから、炭つけるの遅いなー手際悪いなー…僕やります!って代わっちゃった(笑)
拓
なるほど。
ぺーさん
ダイビング始めることになったのは良いんだけど、そもそも泳げないし、水の中で目も開けれないし、最初はただの”でくの坊”みたいな感じだったなー。
拓
そうだったんですね。ということは、最初からインストラクターになるつもりというわけでもなかったんですね?
ぺーさん
もちろん。好きだった歌が嫌いになりかけてる時にダイビングが現れたから、これから俺の趣味はダイビングにしようって決めてダイビング始めたの!
拓
あ、音楽の専門学校出身でしたっけ!?
ぺーさん
そうそう。給料安かったからボイストレーナーと焼き肉屋と、掛け持ちしながら働いてた。
それで、実際に初めてプールで潜った時、すごい楽しくて。
マスクつけたら目開けれるし、息吸えるし、足動かしたら進むし「なんだこれ!楽しい」ってなった。
だからプール講習終わった次の日に器材全部揃えて、海洋実習までに届くようにして、ウエット3時間選んで…これがダイビングのスタートだね。
拓
そっから順調にライセンスを取り進めて、いつの間にかドはまりして…って感じですね。
ぺーさん
いや、最初は続けていけると思ってなかった。海めっちゃ怖くて、泣きながら講習やってたよ。
拓
プールは楽しかったのに?
ぺーさん
波怖いし、動けないし、魚見ても怖いし…
拓
最初、海やダイビングは特段好きじゃなかったって言うインストラクター、意外と多いですよね。(笑)
ぺーさん
楽しくなったのは次のライセンス取ったときかな。初めて沖縄行ったとき悔しくてね。
拓
悔しくて?
ぺーさん
沖縄に行ったとき怖くてエントリーできなかったのね。「行ける、行ける」みたいな感じで半分無理やりエントリーさせられて…で、そこでカメがいたのよ。みんなは追いかけていったけど、自分はエアにも自信がなくて、岩につかまってそれを見てるだけ。悔しかったなー
拓
なるほど。
ぺーさん
それで、上手くなりたいって思って次のライセンスを取ろうって思ったのね。
その辺りから怖かったのが楽しいに少し変わって気づいたらハマってた。
で、1年くらいでインストラクターまで取ってた。
拓
すごいですね。1年でどのくらい潜ってたんですか?
ぺーさん
休みは全部海に使ってたから、3か月で50本とかかな。でもまだダイビングを仕事にしたいとは思ってなかった。ただアドバンス講習を担当してくれたインストラクターがめちゃくちゃカッコよくて、こういう仕事もいいなーとは思ってた。
拓
少し意識はし始めたわけですね。
ぺーさん
もともとボイストレーナーやってたから人に教えること自体は好きだったの。
だから同じ、人に何かを教えるインストラクターも面白そうだなと思ってインストラクターを取ったかな。
それで、非常勤として手伝い始めたのがインストラクターとしての始まりだね。
これまでお話を伺ってきた方々同様、ぺーさんもやっぱりダイビングを仕事にしようと思って始めたわけではないんですね。
なんと言っても経験が豊か。このあと料理人やボイストレーナーの話も詳しくお聞きしますが、料理人でボイストレーナーでインストラクターなんて聞いたことありません(笑)
どういった経緯でこのような道のりになったのでしょうか。
やったことないことを仕事に
ぺーさんが修行した屋久島。今でも毎年訪れているそう。
拓
あれ?仕事の時系列が分からなくなってきました…ボイストレーナーの頃にダイビングを始めて、インストラクターになって…料理人はどこに??(笑)
ぺーさん
インストラクターを取ったのが26歳とかの時で、その時はまだボイストレーナーと焼き肉屋の掛け持ちね。非常勤でアシスタントさせてもらったりしてた。
ちょうど同じ時期、一気に仕事変えようと思って、携帯ショップで働いたんだよね。
拓
え、携帯ショップでも働いたんですか?
ぺーさん
そうそう。でも携帯ショップで働き始めたら、海に行けなくなっちゃって。それで、飲食に戻ろうって思ったのね。それが4年前まで働いてた和食屋さん。料理をちゃんとやったのはそこが初めてかな。
拓
潜れないのが嫌で携帯ショップを辞めたなら、そこでそのままダイビングショップとはならなかったんですか?
ぺーさん
そうだねー。まだ自分がどこまで本気かわからなかったからかな。料理を始める時、「30歳になって、まだインストラクターとして働きたいって思ってたらそっちの道に進もう」とは決めてた。
拓
じゃあやっぱり30歳になった時、やりたいなって思ったんですね。
ぺーさん
インストラクターとしてちゃんと独り立ちしてたわけではなかったから、未知のスタートだったけどね。
拓
よく話としてありそうなのが、僕もですが、学生の時に潜りまくるうちに、ダイブマスターとかインストラクターを取るパターンだと思うんですね。
これだと、場数が踏めるからラッキーだなと思うんですが、普通のお店の大人を見てるとインストラクターを取ったはいいけど、結局土日くらいしか潜れなくて、場数を踏めず、あんまり伸びない…そんな人もたくさん見てきました。
そういう所で悩むことってありました?
ぺーさん
そうだね。週休2日もなくて、休みが月に1,2回の時もあったから回数は行けなかったよね。
当時はバディ潜水で無制限に潜れる機会があったから、そこでひたすら経験積んだかな。
今回は自分でしっかり戻って来れるようにしようとか、今回はちょっとだけ行ける範囲を広げようとか。本当に休みを全部海に使ってたね。むしろ、それが楽しかったんだよね。
拓
でも、現場経験とはまた違いますし、仕事にするってときはなかなか大変ですよね?
ぺーさん
そうだね。潜ってたとはいえ、仕事として始めた時も200本ぐらいで始めてるから経験値としては凄い少ないスタートだったと思う。
拓
じゃあ、ダイビングを仕事にし始めてからがっつり経験積んだ感じですかね?
ぺーさん
そうだね。特にダイビングを仕事にし始めた年に、ボスが屋久島に1か月行かせてくれたのね。体験ダイビングやらファンダイビングやら経験を積んで来いって言ってくれて。
その経験が大きかったかな。一応非常勤でインストラクターはやってたけど、自分主導でやることもなかったから…
拓
なるほど。
ぺーさん
やっぱり都市型だと、毎週末は海に行けるけど、平日とか毎日いけるわけではないからね。その中で事務仕事とかもしながら覚えるってなると、やっぱりなかなか思う通りに経験できなくて。
別の仕事しながら非常勤インストラクターだとなおさらだよね。飲食じゃなきゃ、まとまった休みで一気に潜って、なんてこともあるかもしれないけど、俺の場合はそういうわけにもいかなくて。
最初はそれが嫌で、インストラクターを仕事にすればもっと潜れるし、成長できるのに!って思ってたかな。
拓
やっぱり集中して経験を積む環境って大事ですよね。
ぺーさん
そうだね。あとは生物が好きとか、地形が好きって訳でもなかったから、海に入るのが好きなのね。だから続けられたってのもあるかも。
拓
というと?
ぺーさん
インストラクターって一緒に潜っても自分は遊べないし、生物に集中できるわけでもないでしょ?最初の俺の楽しみは、「講習した子が成長して、自分で行って帰って来れるようにする」ってことだったからそれができるとすごい楽しくて嬉しかったんだよね。
拓
自分自身が楽しめなくて嫌になる、ということがなかったということですね。
ぺーさん
俺は水の中で自分が思うように動けるようになって楽しくなったから、講習生もそうなってくれるのが嬉しいよね。
だから講習しても楽しいし、寒くて30分しか潜れなくても、その空間が好きだから俺は楽しいんだよね。
まあそもそも水の中に入っていられれば、何もしなくても楽しいんだけど(笑)
拓
あ、それは分ります!プールでも潜れば楽しいですもんね(笑)
ぺーさん
そうそう!楽しい!
拓
じゃあやっぱり、インストラクターになりたいって思った根源には、自分がとにかく潜っていたい、みたいな考えもあったんですか?
ぺーさん
あったと思うよ。仕事にしたらもっと行きたい所も行けるし、もっと上手くなって、知らない海を知りたいとも思ってた。
ただ、インストラクターは「やったことがなかったからやりたい」ってのも大きいかも
拓
というと?
ぺーさん
営業でも、インストラクションでも、自分が経験したことのない仕事だからね。
経験したことない仕事、っていうのが自分が仕事を選ぶ時の基準でもあるんだよね。
拓
普通逆じゃないですか!?今までの経験を活かしたい。みたいな感じで似たような仕事を探す人多いと思いますが…
ぺーさん
そうだよね。けど俺はやったことない仕事をしたいの。焼き肉屋はホールスタッフだったし、携帯ショップは全然違う仕事、和食屋さんでは料理人。
拓
そんな軸があったんですね。あれ、でもだったら接客業以外を経験しようとは思わなかったんですか?
ぺーさん
やったよ(笑)携帯ショップに居た時、デスクワークの部署に行ったことがあったのね。動けないことが苦痛過ぎて、キャスターのついた椅子でゴロゴロ部屋の中動き回ったりしてた。
その時、自分は人と接しているのが好きなんだなってことに気づいたかな。その時から、やるならサービス業、ってのはあったね。
この話を聞いて、5回目のダイバー仕事名鑑でお話を伺った、るこさんの話を思い出しました。
『やりたいことがないのは、できることが少ないから』
ぺーさんも、自分のやったことがないフィールドをあえて選んで、自分のできること、合っているフィールドを探す。
少し勇気がいる行動かもしれませんが、やっぱりチャレンジ精神が大切だということを、お二人を見ているとすごく感じます。
やりたいことのための遠回り
ぺーさん
基本的にやったことがないことを選んでるって話はしたけど、料理やろうと思ったのは、インストラクターになった時に一芸欲しいって思ってたから。っていうのも少しあるかな。
拓
どういうことでしょう?
ぺーさん
インストラクターは一生やれるとは限らないし、怪我でも病気でも何かあったら仕事にならない職業でしょ?もしそうなった時もすぐに働ける自分の武器みたいなものが欲しかった。
言い方は悪いかもしれないけど、料理をやろうとしたきっかけは、保険みたいなもんだったかもしれない。
拓
なるほど。
ぺーさん
自分に基本自信がないのね。
だからインストラクターになった後も「自分にお客さんついてくれるかな」とか「面白くできるかな」とかも全然分からなくて。
正面から勝負してうまくいかなかった時に、料理っていう武器をもってたらなんかしらに使えるんじゃないかなって。
当時からうちのお店はバーもやってたから、
拓
あ、最初からそうだったんですね
ぺーさん
だしBBQもよくやってたから(笑)
拓
スタートがBBQですもんね。
ぺーさん
元々料理は好きだったし、自分がいないと成立しない場を1つは作りたかったのね。
拓
というと?
ぺーさん
料理がめちゃくちゃできるインストラクターってあんまいなくない?(笑)
現場でBBQやるんでも俺がいなきゃできないクオリティみたいなものがあれば、それって価値になるし、その一芸はダイビングにも使えると思えたから頑張ってたかな。
拓
なるほど。僕だったらとっととインストラクターやりたくて、続かない気がします。
ぺーさん
料理人は続かないとも思ったよ。
拓
え?
ぺーさん
本当はキッチンに入りたくなかったの。
バーで働こうと思ってたんだけど、和食はどこでも使えるからちょっと勉強しようと思って入ったのね。
拓
じゃあなんでキッチンに?
ぺーさん
ある日、たまたま「レモン切って」って言われて切ろうとしたら、まな板がめちゃくちゃ汚かったのね。
「このまな板で切りたくないな」って思って、手の上で切ってたら、料理長に「明日からキッチンな」って。
絶対ヤダって思いながら、逃げようとしたんだけど捕まって、カマをかけられて、●●切りしてって言われたのに対して全部「はい」ってやっちゃったんだよ。そっから料理が始まった。
拓
それは趣味の延長線の知識で?
ぺーさん
趣味でもあったけど、親が料理人だから小さい頃からやらされたりはしてたのね。
仕事で料理をやるつもりも店を継ぐ気もなかったけどたまたまバレて、ずっと隠してたのにやらされて。料理を作ること自体は好きだったんだけど、誰かに食べさせるってのはなくて、やってたら楽しくなっちゃって。
拓
あれ、だったら続きそうなような…
ぺーさん
レモンの件のあと「料理長やってみない?」って、いや「半年後から料理長だから」って決まってたな。「ばかいうんじゃねーよ。」って話だよね。
魚さばき始めて2か月のやつに何言ってんだって感じで。そっからめちゃくちゃ厳しくなって、常にラップの芯でお尻たたかれるみたいな。
拓
すごい…
ぺーさん
油をチッてかけられたりとか、盛り箸って言うすげえとがった箸でツンってやられたり。絶対殺すって思いながら働いてた(笑)
拓
それは嫌にもなりますね…(笑)
ぺーさん
でもその中で、もともと負けず嫌いだから「できない」とか言われるとやっちゃうことに気づいたんだよね。
当時、インストラクターやりたいってのと料理やりたいってのが半々ぐらいだったんだけど、やり始めて自分もハマっちゃえば、結構突き詰められるから、インストラクターになるにしても武器を作っておきたいってことを思い出して、今はまずこっちを頑張ろうって思ってやれたかな。
拓
なるほど。やりたいことが目の前にあるのに自分のためにあえて遠回りできるのって凄いですね。僕、すぐ飛びついちゃいます。(笑)
ぺーさん
確かにそういわれると、仕事に関していえば結構「待て」ができるタイプかもしれない。
でもそんなカッコいい物じゃなくて、不安から保険を作りたいだけだよ(笑)
無謀でも動いて、成功する人いるじゃん!あれに憧れたけど昔失敗したこともあるから、「大切な決断には時間をかけたい」って思うかな。
拓
なるほど。
ぺーさん
ただBBQ見てて「あ、ここは俺の戦場だな」って思ったよね(笑)
拓
その時の記憶があったからこそ、インストラクターとして飛び込む前に、料理を身に着けようとなったわけですね。
ぺーさん
料理から始まって、今はお母さんみたいな立ち位置が確立されちゃった(笑)
ツアーに行くとコテージ借りて、朝ご飯作って…本当に寮母さんみたいな時あるからね(笑)
自分の将来やりたいことのために、あえて、遠回りできるのは凄いことです。
みなさんは、目の前にやりたいことが見つかった時に、自分を俯瞰して、『今は違う。成長してからだ』とストップをかけることはできますか?
その冷静な判断があったからこそ、今のペーさんのスタイルは出来上がっているのでしょう。
僕らもペーさんのおいしいご飯を食べられる日はテンションが上がります(笑)まんまとペーさんの土俵に上がって楽しんでいたんですね(笑)
好きなモノを仕事にすると嫌いになる?
今ではリコモに欠かせない存在のぺーさん
拓
好きなモノを仕事にすると嫌いになっちゃうから仕事にしない方がいい。とかよく言われるじゃないですか?
ペーさんダイビング嫌いになったことありますか?
ぺーさん
あったよー!そもそもボイストレーナーがそれだからね(笑)
拓
そういえばそうですね。
ぺーさん
だからダイビング業界に入る前からダイビングも嫌いになる時がいつか来るんだろうな。と思ってた。
実際に1年目、海も行きたくないし潜りたくない時期があったよ。
拓
何が原因ですかね?その嫌だった時期は。
ぺーさん
なんだろうね。ダイビングの仕事って、全ての事に頭をフル回転させなきゃいけないじゃん?それに疲れちゃってかな。
拓
何がその気持ちを解決させたんですか?
ぺーさん
悩んでる頃に後輩が入ってきたの。歳もダイビング経験もだいぶ自分が上で、「自分がもっとちゃんとしなきゃ」って思った。
あとは、今までただ”好きだった”ダイビングが”仕事”としてしっかり見れるようになったかな。
お客さんが自分についてくれたのもこの頃だった気がする。
「このお客さんをしっかり育ててあげなきゃ」って思って、ダイビングは好きだけど、仕事は仕事って言う良い切り替えができるようになったかな。
拓
なるほど。でもボイストレーナーとの違いってなんだったんでしょう?
ぺーさん
1人をじっくり見る時間かな?お客さんが上手くなってくれて嬉しいのは一緒なんだけど、ボイストレーナーだと毎日見る人数が多いし、1人1人にとれる時間も短いから、作業みたいに感じちゃったのかも。
そもそも24歳とかで若かったから、切り替えも上手くできなかったんだと思う。
拓
そうなんですね。じゃあ今は全く嫌いとかは思わないんですね。
ぺーさん
そうだね。なんて言えばいいか分からないけど、今は”仕事としてのダイビング”が好きだから、もう嫌いになることはないかな。
拓
「”仕事としてのダイビング”が好き」って、共感できます。ぺーさんは具体的にどんなところが好きですか?
ぺーさん
ありきたりになっちゃうけど、自分が講習した子がどんどん上手くなって、自分の意志でどこかに行きたいとか、これしたいあれしたいって言ってくれることが喜びかな。
だから水中でもできないことは絶対できるようにさせるし、なんでできないのか考えさせて、納得して覚えてもらえるようにはしてる。
拓
こればっかりはインストラクターの特権で、やった人間にしかわからない喜びですよね。
ぺーさん
うん。あとは、ダイビングってどうしてもライセンス取ったら終わりっていうイメージになってるからそれをなくしたいかな。
拓
そうですよね。ライセンス取れた!ゴール。みたいな…取ってからがスタートだし、そっからが面白いのに!って思います。
ぺーさん
だからうちに来る子には、こっからがスタートだからね!って絶対言うかな。
それで、泳げない子が泳げるようになったり、ダイビング怖がってた子が毎月のように来てくれたり。
そういう子を見るたびに「やっててよかったな」って思うよね。
拓
じゃあペーさんはガイドするより講習する方が好きですか?
ぺーさん
もちろんファンダイビングはファンダイビングの良さがあるし、講習は講習の良さがあるよね。
でも最初の楽しみは、講習した子が自分で行って帰って来れるようになるのがすげえ楽しかったし嬉しかったかな。
けどファンダイビングのあとの、「あの生物何!?」とかいいながら輪になってカメラ見たりしてる空間も好き。
だからこの先はもっとそういう場を提供する機会を増やしていきたい!
拓
というと?
ぺーさん
今ってショップ側がツアーを企画するのが当たり前なんだけど、お客さん側から「ここに行きたい!」みたいなツアー組んでもらって連れていく。
リコモはバーもやってるから、飲みながら、ここ行きたいねーみたいなツアープランを考えられる場にできたら最高だよね!俺らも考えること減るし。(笑)冗談だよ!
仕事としてのダイビングを好きなる。
凄く深い言葉のような気がします。ダイビングに限ったことではなく、好きなモノを仕事にしている人は多くいます。
その方達は、もともと好きだったモノと仕事としての好きなモノを別物として、両方好きになれているのではないでしょうか?
僕も、遊びのダイビングも、仕事としてのダイビング両方好きです。幸せ者です(笑)
学生に伝えたいこと
インタビュー中は終始爆笑を挟みながら
拓
最近、実はダイビング業界のことが気になっている学生も結構いるんじゃないかと思い始めたのですが、その辺り、どう思いますか?
ぺーさん
やりたきゃやってみればいいんだよ(笑)
一般企業への就職しか選択肢がないわけじゃないし。
拓
一回やってみるというのは大事ですね。
ぺーさん
そうそう。まあ無茶が利くのが若い頃のいい所だからね!
ダイビングに限らず、ちょっとでもやりたいって気持ちがあれば試すのが一番だと思う。
別に、普通の企業に就職しながら非常勤からでもいいと思う。大事なのはとにかくやってみて決めることだと思う。
拓
やっぱり若いうちこそ挑戦、でしょうか。
ぺーさん
若い方が無茶は効くけど、無理にこだわらなくても良いとは思うよ。
俺みたいに保険かけながらじっくり選んでも良いわけだし。
拓
なるほど。
ぺーさん
もっと早く始めてたらもっと楽だったかもしれないけど、自分の中の踏ん切りもついてなかったからね。
「インストラクターって月いくらもらえるんだろう。」とか「どういう仕事するんだろう。」とか分からなかったし。
そんな時に今のボスが独立して、1人でお店始めたからちょっと非常勤でお手伝いさせてもらって様子を伺わせてもらえたのはラッキーだったけどね。
拓
そういう感じでも全然OKなわけですもんね。
ぺーさん
非常勤でもしんどいかしんどくないかで言ったらしんどいし、大変だとは思うけど、でもそれに勝るくらいのやりがいはあると思った。
拓
やりたい気持ちと、自分だけの武器と、出来るという経験が揃ったわけですね。
ぺーさん
やってみてなんか違うなって思って辞めたとしても、別に悪いことではないから、辞めちゃえばいいと思うんだよね。
拓
それでいうと、ダイビングショップってやることめちゃくちゃ多いじゃないですか。
ダイビング業界で何やってたの?って聞かれたとき、他の業界の会社にいるより、普通にやってきたことを話すだけでも相当武器になると思うんですよね。
ぺーさん
そうだね。インストラクターってちょっと特殊な仕事だからね。
めちゃくちゃ考えること多いし、ずっと気抜けないし。でもだから楽しいこともあるし、それを経験しただけで、次の仕事はもっと頑張れると思う。
拓
ダイビング屋さんやってると、割と何でもできる気がしますよね(笑)
ぺーさん
何でもできる気がする。なんなら大抵の事は「はっ(笑)」て言えるもん。
拓
ただでさえ今の若者は仕事が続かない。みたいなこと言われるじゃないですか。例えば、普通に就職して3年以内に辞めたとして、何も残らない気がするんですよね。
転職活動する時に「前の会社で何やってたの?」って言われて、「名刺交換の仕方と、メールの書き方と…」みたいな。営業でしたって言いながらやってたことは「電話かけては行って。だけ。」みたいな。
みんなが同じような話をする中で、1人だけ「ダイビング屋にいて、しんどくて辞めちゃったんですけど」って言ったときに「じゃあダイビング屋で何やってたの?」って聞かれたのに対して、あんなことやこんなことっていうだけでも、相当武器になるとは思うんですよね。
ぺーさん
うん、今自分は辞める気はないけど、もし辞めることになったとしても、ダイビングショップでの経験は武器になるね。
だからこそ若い人にもどんどん入って来て欲しいよね。ただ、働くならダイビングに関しては知ってるショップで働いてみるのがいいと思う。
拓
やっぱり自分のレベルを分かってくれてるからですか?
ぺーさん
それももちろんだけど、俺も新しい仕事を探すときって、今までは、知り合いがいたり、知ってる店とかでは絶対働かなかったのね。甘えちゃうかもしれないし、頼っちゃうかもしれないし。
けどダイビング、海に関しては絶対的な信頼関係がないと、仕事にならないと思うんだ。
拓
確かにダイビングは仕事を任す側も任される側も責任ある業界ですもんね。
ぺーさん
そうそう。それにそのお店の楽しみ方をその子はお客さんとして知っているわけだから、ショップ側としてもすごくプラスになると思う。
インストラクターにとってお客さんがこうして欲しいって思ってることに気づけたり、細かい所にも目が届くってのが大切なんだなってこの年になって凄く思う。
そういう事を考えてくれる若者が増えれば、ダイビング業界がもっといい方向に進むかもしれないね。
拓
確かにそうですね。みんなやってみれば良いのに。
少し逸れますが、なんでダイビング業界って必要以上に蔑まれているというか、道を外れたみたいに思われるんですかね。
ぺーさん
都市型も現地型も、ダイビングショップって、勘違いされちゃってる部分があると思うんだよね。当然お店だから、販売はあるし、仕事だからさ。
仕事だからやってるんだけど、この仕事を遊びでやってるって思ってる人もいる。
拓
そうかもしれませんね。
ぺーさん
別に販売するのって悪いことではないわけよ。それがちゃんとしている物なら売るべきだし。なのに、友達からお金取るの?みたいなテンションで来られても困っちゃうよね。
拓
その通りだと思います。
ぺーさん
このご時世だからかもしれないけど、”高い定価は悪”みたいな、よくわからないことになってるしね。そこに「友達だと思ってたのに」みたいな思考が入っちゃって、悪いイメージになっちゃてるのかなとは思う。
拓
確かに、そもそも仕事として見られてないという面があるのかもしれませんね。
ぺーさん
ダイビングショップだって立派な仕事のひとつだと思うよ。
拓
そうですよね。しかも、誰もやったこともないのにきつそう。とか給料やすそう。とか。
それこそ僕が三島で昔、店長を始めたばかりのころ、すごく楽に感じたんですよ。毎日朝7時に起きればいいし、8時30にお客さんと会って、お客さん5時半くらいには帰るから6時にはビール飲める。みたいな。
給料も良かったので、「ダイビング現地型、楽勝じゃん」って思っちゃってました。
ぺーさん
(笑)
拓
都市型の経験で4時起き、23時帰宅、みたいな生活に慣れていたのもありますが(笑)
もちろんやっていくうちに大変なことも出てきたのですが、思ってるほど体力的に辛いわけでもない。それなのに、ツライ、危険、給料安い、みたいな言われ方もしますよね。
ぺーさん
多分、途中で辞めた子たちが悪い印象で辞めてる子が多いんだろうね。
拓
そうなのかもしれないですね。その辺を今回の企画でどこまでできるか分からないですが、少しでも払拭できれば嬉しいです。
ぺーさん
そうだね。やっぱりどうしても、年配が多くて若い子が少ないからさ。
もっと若い子が入って来てくれると、ダイビング業界も凄い変わるんじゃないかなって。
拓
本当にここまで何人ものお話聞いていて、この企画をやってて僕が一番楽しくなってるんですよね。本当に、面白いなって。
今日のぺーさんの話もそうですし、これを学生の子たちが全部読んでくれれば、なんか変わるんじゃないかな、って思います。期待したいな。って
ぺーさん
そうだね。
拓
今日は本当にありがとうございました。
色々経験してきたからこそ、ペーさんの言葉は説得力があります。
るこさんのインタビューでも出てきましたが、やっぱりまずはやってみることが大切なんだと思います。
自分の知らない世界に一歩出すのは不安も多いかもしれません。しかし、その足をそっと元いた世界に戻すこともできる。
だからこそ、挑戦してみてほしいです。
ぺーさんのことをもっと知りたい方はこちらから!
fa-facebook-official:https://www.facebook.com/sanping004325ow
fa-instagram:https://www.instagram.com/pee_inst/
ぺーさんが働くダイビングショップリコモはこちらから!
https://divinglikklemore.com/
併設のダイニングバーリコモはこちらから!
https://likklemore.owst.jp/
~次回予告~
次回は平塚のダイビングショップ、ホクレア湘南の丸菱奈保子さんにお話を伺います!
~バックナンバー~
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