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八丈島の海が変化してきている?〜八丈島の魅力と僕の注目シーン〜

海のレポート

ここ数年、追いかけている海があります。
それが、伊豆七島の八丈島です。

透明度の高さと壮大な地形、そして、豊かな生物相。
他の伊豆七島にはない、一面にサンゴが広がる光景。

八丈島の海には様々な魅力がありますが、見方によってガラッとその魅力が変わります。
また、この数年で少しづつ変化が訪れているのです。

この記事では、八丈島の魅力をご紹介しながら、特に僕が注目していることをご紹介していければと思います。
八丈島に行ったことがない方はこれを機にぜひ足を運んでもらいたいですし、何度も行っている方には魅力を再発見してもらえたらと思っています。

八丈富士と夕焼け
八丈富士と夕焼け

外洋に浮かぶ島・八丈島

本州から南に278kmの外洋に浮かぶ島、八丈島。
八丈島へは、竹芝桟橋からフェリーで10時間強かかりますが、羽田空港からであれば飛行機で1時間以内で行けます。

他の伊豆七島にも海底火山が噴火してできた島は多いのですが、八丈島が大きく違うのは、八丈富士と三原山の2つの火山で形成されているところです。
2つの火山があるため、ひょうたん形をしている島で、ひょっこりひょうたん島のモデルになったのでは?とも言われています。

八丈島が位置するのは亜熱帯地域であり、道路には所々にハイビスカスが配置されていて、ここが東京都だとは考えられない光景となっています。
山の中に入っていけばジャングルが広がり、固有の生き物も数多く生息しています。

ダイビングはビーチポイントがメインです。
火山噴火で海から盛り上がってできた島なので、ビーチからも入ってすぐに深場へ移動することができます。
ダイバーがメインで潜るポイントのナズマドは潮通しがよく、まるでボートポイントのような面白さを感じることができます。

ただ、外洋に浮かぶ島のため、黒潮本流の影響を受けやすいことや、地形が複雑でもあることから、時間帯やその時の状況によってはたびたび強い流れが発生することもあります。

火山が生み出した八丈島の地形

八丈島は生き物に注目が集まる場所でもありますが、まず最初に注目して見てもらいたいのはその地形。
アーチや柱状節理など、火山島特有のダイナミックな地形が数多く存在して面白いのです。
また黒潮の影響を受けやすいために透明度は平均的に高く、常に青い海が広がります。

ダイビングポイント・八重根のアーチ
ダイビングポイント・八重根のアーチ
ナズマドの火山島ならではの地形
ナズマドの火山島ならではの地形

八丈島の東海岸にある底土というダイビングポイントではミドリイシの仲間が一面に広がります。
そのサンゴの上をオキザヨリやアオウミガメが気持ちよさそうに泳いでいることもよく見かけます。
これだけサンゴが一面に広がっているところも他の伊豆七島にはない珍しい光景です。

アオウミガメと一面に広がるサンゴ
アオウミガメと一面に広がるサンゴ

南方種が増加する八丈島

生物相が豊かなのも八丈島の特徴の一つです。
島に根付いているようなブダイやニザダイなどの温帯種の魚や、南方からの潮に乗ってきた生き物が数多く見られます。

また八丈島から小笠原諸島方面で見られるナメモンガラや、固有種のユウゼンなどが生息しています。
八丈島の海は、本州と小笠原の生き物がまるでミックスしているような感じの海なのです。

ナメモンガラの群れ
ナメモンガラの群れ
底土で群れるニザダイ
底土で群れるニザダイ

そんな八丈島ではここに来てある変化が起こっています。
この数年、南方種が大きく育ってきているのです。

以前は冷たい潮が深場から上がってくる冷水塊という現象があり、水温が下がることもありました。
しかし、この数年はその現象がほとんどないので、今では水温の低さに負けるということがなく、生き延びる魚たちが増えているのです。

ナズマドへ行くと、以前はあまり見かけなかったキヌベラの成魚やハコベラの成魚を数個体見かけました。

キヌベラの成魚
キヌベラの成魚

また、以前は全く見られなかったオニハゲブダイの雌の大きな個体がゆっくりと浅場を泳いでいるところも目撃しました。

オニハゲブダイ
オニハゲブダイ


ガイドの小金沢さんの話ではチョウチョウウオの仲間のヤリカタギの幼魚も毎年流れてきており、数も増えているとのこと。
今回もサンゴの隙間に隠れている幼魚を見かけました。

ヤリカタギの幼魚
ヤリカタギの幼魚

また、1匹出ただけでも大騒ぎであったユウゼンの幼魚は撮影中に各所で見かけました。そんな生き物たちの変化を見ると、より南方の海へ八丈島が近づいているように感じます。

豊富な生き物が織りなす生態行動

生き物が豊富ということは、生態行動も見られる確率が高いということです。
夏から秋にかけては、日中にベラの仲間が産卵するのをそこらじゅうで見かけます。
夕方になるとウミスズメやレンテンヤッコといった生き物の産卵まで観察することができるのです。

生き物が多いということは、まだ見られていない生態行動も沢山あるということ。
3年前に見かけた、アオリイカ(クアイカ型)は底土のサンゴの下に産卵をしていました。

【参考】アオリイカ(クアイカ型)について:【情報大募集】アオリイカ産卵前線2022!初夏の風物詩を追え!
テーブルサンゴの隙間に卵を生みつけているアオリイカ(クアイカ)
テーブルサンゴの隙間に卵を生みつけているアオリイカ(クアイカ)

シュノーケリングや体験ダイビングではよく通る場所ですが、誰もがスルーしてしまうような場所で産卵するとは誰も思ってなかったのではないでしょうか?
このように、ダイバーたちが気がつかないところで生態行動を行なっている場所は沢山あるのだろうと思います。
今後も新しい発見がまだまだありそうなので楽しみですね。

求愛中のアオリイカ(クアイカ型)
求愛中のアオリイカ(クアイカ型)
レンテンヤッコの産卵浮上
レンテンヤッコの産卵浮上

八丈島の夜の海

私が八丈島で特に力を入れている撮影が2つあります。
1つは先ほど紹介した生態行動が見られるサンセットの撮影。
そしてもう1つは夜の海です。

ナイトダイビングは怖いというイメージを持つ人もいるとは思いますが、暗くなると日中とは雰囲気がガラッと変わり、別の世界に来たようにも感じます。

日中は岩の隙間に潜んでたアカマツカサの仲間たちが、自分たちの時間帯になるにつれ元気に泳ぎまわります。
タコの仲間や甲殻類たちも外敵が少なくなった時間帯に食事を求めて行動を開始。
そして今まで見ていた魚たちは逆に岩や珊瑚の隙間に隠れていくのです。

夜にライトを焚いていると沢山の稚魚や幼生が姿を現し、中には珍しい生き物との出会いもあるのです。
夏場にはシイラやトビウオの子供の姿も見られます。
稀に日中ではほとんど見かけないような生き物の稚魚や幼生にも遭遇することができます。

シイラの幼魚
シイラの幼魚
フサカサゴ科の一種
フサカサゴ科の一種

最後に

八丈島の海はいくら撮影しても地形や生き物とネタが尽きることのない飽きない、とても面白い場所です。
まだ行ったことがないという人には是非、訪れて欲しい素敵な海です。
今まで潜った方達には、その魅力を再発見してもらえたらと思います。

この数年間、私自身が訪れて見てまわった八丈島の水中の感想ですが、少しずつ変わっていくことを感じています。
この海の変化がこの先、いい方に傾くのか悪い方に傾くのかはわかりません。

それは今回ご紹介した八丈島だけではなく、他のどの海にも共通していると感じます。
海へ行った時に少しでもいつもと違う目でその違いを見て何か感じ取ってもらえるといいかも知れませんね。

撮影協力:八丈島ダイビングショップアラベスク(http://xn--cck0a3a2j5c.com/

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堀口和重

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水中カメラマン。 1986年東京生まれ。 日本の海を中心に、水中生物のおもしろい姿や生態、海と人との関わりをテーマに撮影活動を続けている。撮影の際は、海や生...

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