ネタが尽きない魚-ホンソメワケベラ
あー!あの他の魚を掃除するやつね!
はい。
そうです。
他の魚の体表についた汚れなどをエサとする、クリーニングフィッシュとして余りにも有名なホンソメワケベラ。
生物の共生、というトピックでも真っ先に出て来る魚です。
※共生とは?→【生きもののフシギ】”共生”ってナニ??
そんなホンソメワケベラですが、実はクリーニングの話だけで終わってしまってはもったいない!
面白い”ネタ”がある魚なんです。
名前の由来
ホンソメワケベラというネーミング。
“ホン”ベラや”ホン”フサアンコウの様に”ホン”=”The”的な意味かと思いますよね。
違うんです。
ここからは”一説によると…”という注釈付きでご紹介しますね。
まず最初に発見されていたのはソメワケベラ。
Photo by Rainer Kretzberg CC BY 3.0
見た目から想像がつくように、南の魚です。
日本では三宅島と和歌山県よりも南の海域に生息しています。
で、このソメワケベラよりも後に、なんか生態とか姿恰好が似ている魚、Labroides dimidiatusが発見されました。
この魚はソメワケベラよりも分布が広く、ほぼ日本全域と言っていいほどに生息しています。
これは和名をつけなきゃいかん!
ということで、どこかの偉い学者さんがつけたんですね。
んー、ソメワケベラっぽくて、ソメワケベラより細いから…
ホソソメワケベラ!
安直。。。笑
というツッコミは置いておいて、字をよく見てください。
ホソソメワケベラだったんです。ほそそめわけべら!
無事に和名も決まったので、次は図鑑への収録。
<学者さん>じゃっ、こいつも載せておいてねー!
<編集者>承知しました!!
ここまでは良かった。
<編集者>この先生、字、汚ねぇなぁ。。。なに?ホ…ホ…んー?ソかな?ンかな?まぁたぶん、ホンソメワケベラだな。その方が言いやすいし!
……数日後
<編集者>完成しました!ご確認をお願いします!
<学者さん>(パラパラパラッ)OK!
あー。。。笑
祝!○○先生監修、『新版・日本の魚大図鑑』
※本当にこんな名前の図鑑だったわけではありません笑
この日から細長いソメワケベラ、ホソソメワケベラの名前はホンソメワケベラになりました…
で、そのまま今日まで定着しています。
繁殖戦略
世の中に登場する段階でコケてしまったホンソメワケベラですが、その繁殖戦略も面白いんです。
魚の世界では、成長に伴い性転換することは珍しくありません。
例えば有名なカクレクマノミもそのひとつ。
クマノミの場合は、♂⇒♀と性転換します。
逆に、キンギョハナダイなどハナダイの仲間は♀⇒♂と性転換します。
~♀→♂の途中と思われるキンギョハナダイ~
Photo by Vin
この様に、魚の世界で性転換は珍しくない、とはいえ、人間と違って(?)自由に性別を選べるわけでは無く、どちらの性からどちらの性へ移行するか、決まっているものがほとんどです。
で、このホンソメワケベラ。
もう想像がついているかもしれませんが、性転換が自由自在!
つい10年ほど前までは♀⇒♂だと考えられていたのですが、近年では雄雌双方への性転換が可能であることがわかってきています。
基本的にホンソメワケベラは♀で生まれてきます。
そして、ある集団の中で最も大きい個体が♂へと変化(性転換)し、繁殖行動を行います。
その集団の♂がなんらかの原因でいなくなってしまうと、次に大きい魚(♀)が♂へと性転換します。
ここまではハナダイの仲間と一緒。
ホンソメワケベラの場合、なんらかの理由で集団から離れた♂が、次に出会った集団に自分より大きい♂がいると、♀に性転換することが出来るのです。
ハナダイの仲間にはこれが出来ません。
したがって、♂同士が出会うとケンカになるわけですが、ホンソメワケベラの場合は、身体の小さい方がすぐに『ごめんなさい!』と♀になっちゃうので、ケンカにはなりません。
同種間の争いが限りなくゼロに近いわけですから、これは種の繁殖戦略としては有利ですね。
双方向への性転換が可能である、と言っても、ウミウシの様に雌雄同体なわけではありません。
性転換の際にはキッチリと生殖器が変化します。
ホンソメワケベラには恋の争いは無縁で、ひたすらに恋をしているわけですね…笑
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