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ダンゴウオの生態解説【ダイビング生物情報】

生物について

ころんと丸く、かわいらしいフォルムが人気のダンゴウオ。
体長10mm以下の幼魚はもちろん、成魚でも20~30mm程度と、小さなサイズ感が大人気です。

伊豆半島や三浦半島では、12〜6月頃に姿を現す冬のアイドル。
一方、東北太平洋沿岸では、通年観察できます。

2017年には、ダンゴウオ科の分類や分布についての研究論文(参考文献中※1。以下2017年の研究論文)が発表されたことで、生物好きダイバーたちの間で話題となりました。

今回解説して頂く播磨先生は、日本ペット&アニマル専門学校講師時代に同校水槽実験で学生が繁殖に成功。それをきっかけに、個体数減少が見られる小田原・早川にて、人工繁殖床を使用しての個体群再生を研究テーマの一つとしてる方です。

現時点(2021年)で最新の研究結果に基づき、ダンゴウオの生態について解説していただきました。

ダンゴウオDATA

標準和名:ダンゴウオ

学名:Lethotremus awae

分類学的位置:スズキ目ダンゴウオ科ダンゴウオ属

種同定法:D Ⅵ~Ⅶ‐8~9 ; A 7~8 ; P120~22 ; P2 20~22 ; C 10~11

分布:水深20m以浅,青森県陸奥湾,青森県~相模湾の太平洋沿岸,三重県,新潟県,兵庫県香住,島根県浜田,山口県日本海沿岸,長崎県野母崎;千島列島南部,渤海(ぼっかい)・黄海・東シナ海北部(?)
 (本記事では、『日本産魚類検索』に従った)

識別方法:
本稿では、近縁種との比較は、通常、『日本産魚類検索』とそれ以降の最新研究にしたがって行う。2017年の研究論文の通り、ダンゴウオを3種に分け、ダンゴウオ属からイボダンゴウオ属への変更を提唱するという研究が発表されている。

しかし、この研究結果を反映してのダンゴウオの学名変更は、2021年現在、神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」でも、採用されていない。

筆者は、魚類生態学が専門になるが、この考え方に賛同する。
魚類生態学の立場からも、3種への細分化には、研究手法も含め疑問が残る。また、ダンゴウオ属からイボダンゴウオ属の変更は、魚類分類学専攻ではないのでコメントは控える。筆者が考える問題点は、コラムにて書きたいと思う。

『日本産魚類検索』による識別では、近縁種、オキフウセンウオ属のナメフウセンウオと比較している。

2015年2月20日、阿部拓三氏を中心とする北海道大学・神戸県立大学の共同研究チームは、ナメフウセンウオ、コブフウセンウオは、コンペイトウと同一種で、形態的特徴が成長段階の違いと性差であることを明らかにした、と発表した。
(この研究は、形態比較だけにとどまらず、初期生活史から明らかにしている点で、生態学からしても素晴らしい研究成果だと関心した。)

オキフウセンウオ属は無くなり、先取権から標準和名はコンペイトウに統一される。
これにより『日本産魚類検索』では、今後、ダンゴウオの比較対象がナメフウセンウオから変わる可能性が高い。
そこで、今回は、ダンゴウオの特徴だけを記載する。

① 体には、皮質小突起がなく、皮膚は円滑
② 第2背鰭は8~9軟条,臀鰭は7~8軟条,胸鰭は20~22軟条

2017年の研究論文では、これまで1種類とされてきたダンゴウオについて、ミトコンドリアDNAの違いから、ダンゴウオ、Eumicrotremus uenoi sp. nov.(サクラダンゴウオ)、Eumicrotremus jindoensis sp. nov.の3種類に分けられると発表されたが、この3種類には、上記のダンゴウオの2点の特徴に差異がない。
ミトコンドリアDNAの違いと、分布地域の差異によって分けている。

しかし、この研究に対しても先取権を認めるならば、日本近海で見られるのは、太平洋に生息するダンゴウオと日本海に生息するサクラダンゴウオの2種類に分けられる事になる。

2021年現在、神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」でも、その様に分けて表記している。

一方、九州でも別の個体群が見つかっているが、現状では、この個体群が、どのグループに属するか不明となる。神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」では、ダンゴウオに分類している。(KPM-NR 38982・KPM-NR 92464・KPM-NR 92465)
ここでは、その個体群を仮に「仮称)ダンゴウオ九州型」として書いて行きたい。

ダンゴウオの分布は、一般に青森県以南、南日本;中国煙台(参考文献※2『改訂版 日本の海水魚』による。)とされてきたが、先述の通り、2017年の研究論文により、ダンゴウオは3種類に分けられると発表されている。

先取権を認めて、日本近海で見られるのは、太平洋に生息するダンゴウオと日本海に生息するサクラダンゴウオの2種類に分けられるのではないかという見解で書くことにすると、千葉県中央研究所フェロー小嶋純一先生がブログで指摘(参考文献※3)されている通り、九州地区のダンゴウオの分布「仮称)ダンゴウオ九州型」に対して、疑問が残る。

筆者の調べた「魚類写真資料データベース」「仮称)ダンゴウオ九州型」の映像、分布的に考察すると、サクラダンゴウオの可能性が高いが、鼻の穴の数が2個しか確認できず、鼻の穴の数で、種分けする方法が2017年の研究論文では提唱されているが、ダンゴウオの可能性が高いとなり、鼻の特徴で、ダンゴウオとサクラダンゴウオを分けるとという手法にも、疑問が残る。

2021年10月現在の入手可能な資料では、研究の余地ありと考察する。

韓国で見られているというEumicrotremus jindoensisも含めてたとしても、日本の論文に先取権があると考えると、これもダンゴウオであると考えられるだろう。

それ以外の2種も、種名ダンゴウオで、他のサクラダンゴウオ、Eumicrotremus jindoensis 共に地域バリエーション、九州系群も、九州型バリエーションと研究結果がまとめられる可能性も捨てきれない。

この問題を解決する研究手法としては、阿部拓三氏の研究の同様、本種のタイプ別に生態行動を研究して、生活史全般を解明して、明確に差異を指し示す事が求められる。

ダンゴウオ科の属する目(もく)も現在は、スズキ目ダンゴウオ科とする考え方が日本では主流だが、以前はカサゴ目カジカ亜目ダンゴウオ科とする考え方も存在していた。

分類学的位置も含めこれからの研究で、まだまだ大きく変わる分類分野であると考察しておきたい。

日本産魚名大辞典によれば、ダンゴウオの地方名には、ゴウゴ(網走)・ゴンコ(男鹿)・コンペイトウ(銚子)が記載されているが、現在のダンゴウオの分布と比較検討すると、水産学的価値が低かった時代背景もあり、コンペイトウなどの同科種とまとめて区別されないで呼ばれていたのではと想定する。

ダイバーのための絵合わせ

識別方法では、これからの研究について興味を持ってほしく、詳しく書いたが、ダイバーが直面する今のレベルの研究で判っている事に則して書きたいと思う。

ダンゴウオ(3タイプを含む)を他のダンゴウオ科の属する他種と区別する方法は、いたって簡単になった。
体表がツルツルならダンゴウオ(3タイプを含む)、ボコボコの突起物が体表にあれば、すべてそれ以外のダンゴウオ科の魚類となる。

3タイプの違いは、魚類生態学の立場からは、現在はまだ明確な差は、発見されていないと考察する。

伊豆半島で、ももいろ(ピンク)体色のダンゴウオ(例:KPM-NR 91879)を発見して、サクラダンゴウオとしているブログを見かけるが、体色では区別できない。

さくら色(ももいろ)のダンゴウオの成魚(早川、撮影者:田中知香)
さくら色(ももいろ)のダンゴウオの成魚(早川、撮影者:田中知香)

分類学者が今のレベルで、サクラダンゴウオだろうと判定している物にも、体色変が見られ、サクラ色(ももいろ)の体色でない物が存在する。(神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」KPM-NR 35364・KPM-NR 35365)
鼻の穴の数も、「仮称)ダンゴウオ九州型」の問題から、判定方法として適当ではないと判断したい。

以上から、日本の研究の方が古いので、2017年のの研究論文が最新と考えるなら、太平洋側に分布するものは、ダンゴウオであると判断して、日本海側、南は山口県までに見られるものは、サクラダンコウオと断定するしかない。

今回「仮称)ダンゴウオ九州型」として扱った個体群は、不明となるが、神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」を最新研究判断として、ダンゴウオとする。
また、北海道地域で見つかっている個体群も、同様にダンゴウオとするのが良いだろう。

目視でダンゴウオとサクラダンコウオの2種を区別する事は、一般ダイバーレベルはもちろん、専門の教育・トレーニングを受けた筆者でも、識別は不可能なレベルであると考察する。

ダンゴウオの観察方法

ダンゴウオについての正式な生活史を明らかにした研究結果の発表はない。
今の断片的なデータ、筆者の2021年春までの研究結果から考察を含めて書いていきたいと思う。

これを読んで、少しでも、魚類研究の面白さに触れてくれたら幸いである。

観察時期

東北地区では、一年中観察できるようである。
筆者の調査地域である西湘エリアでは、12月下旬から繁殖期に入ったと思われる成魚の個体が観察され始める。体色はまちまちで、多色にわたる。

1月下旬から「天使のリング」と呼ばれる模様を持つステージの幼魚が観察され、その後幼魚の成長観察が可能になり、例年は6月まで成長過程が観察出来る。
ただし、2021年は幼魚から若魚を観察することは出来なかった。

若魚と思われるサイズは、その後、水温上昇と共に観察ができなくなる。

筆者の想定では、水深20m以浅ではなく適水温を求めてもっと深い水深へ向かい、生活成長して水温の低下と共に浅場へ移動して繁殖する、生殖回遊の生態があるのではと考えて調査している。

同じような行動は、過去に、房総半島・三浦半島・伊豆半島東岸でも観察されている。

生息場所

西湘エリア・三浦半島・伊豆半島東岸では、繁殖個体と思われる成魚は、水深の浅い岩場、大きな石が転がる海岸の水深2~5mで見つかっている。

「天使のリング」と呼ばれる模様を持つステージの幼魚も、同じような環境の場所の海藻に隠れている所を発見される事が多い。

天使のリングと言われている模様を持つステージの幼魚(早川、撮影:田中知香)
天使のリングと言われている模様を持つステージの幼魚(早川、撮影:田中知香)
ハッチアウト初期は、ななめじまが透明で透けている(早川、撮影:田中知香)
ハッチアウト初期は、ななめじまが透明で透けている(早川、撮影:田中知香)
成長と共にななめじまはしろいろになる(早川、撮影:田中知香)
成長と共にななめじまはしろいろになる(早川、撮影:田中知香)

成長と共に生息水深が深くなり、海藻類が生える場所に隠れている事が多くなる。

筆者の最深部での観察は、以前、伊豆海洋公園の砂地漁礁へのナチュラルナビゲーション用に作られた飛び石、水深18mの海藻に隠れていた個体である。

生態行動

ダンゴウオの繁殖賞は、下田海中水族館が受賞している。

繁殖賞:日本動物園水族館協会による表彰の1つで、飼育下で日本で初めて繁殖に成功し、6ヶ月間以上飼育に成功した施設へ送られる。

下田水族館で確認されている親魚のサイズは、体長2cmほどで成熟が確認され、西湘エリアで、冬季に観察される繁殖個体と思われる親魚のサイズと変わりない。

下田水族館繁殖個体と同色成魚(早川、撮影:田中知香)
下田水族館繁殖個体と同色成魚(早川、撮影:田中知香)

日本ペット&アニマル専門学院で、水温を管理して維持した水槽内では、体長1cmをやっと超えた位の個体が、巣にする場所を選び、その中に雌が入り産卵、受精、ハッチアウトまでを確認している。
卵を守る映像(神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」KPM-NR 88065・KPM-NR 98223)の模様のステージからして、そのサイズ感に近いと推測している。

水温環境をより彼らの適水温にすると、繁殖個体への成熟を早める効果があるのかもしれないと実験を続けていたが、研究水槽の故障により中断、断念して現在に至る。

水槽実験では産卵したが、人工産卵床では失敗
水槽実験では産卵したが、人工産卵床では失敗

下田水族館発表の映像では、自然界ではフジツボの中などで繁殖していると伝えているが、西湘エリアの観察地周辺からは、その様な環境は発見されていない。

卵を守る映像(神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」KPM-NR 88065・KPM-NR 98223)の様な環境も確認されていない。

この様な不安定なエリアでも、繁殖して子孫を残せる適応力を持っているのかもしれないと、産卵場所の存在を調べていたが、現在も特定できていない。

同一時期に複数個体の幼魚が観察される事から、近い場所でハッチアウトしたことが推測される(早川、撮影:田中知香)
同一時期に複数個体の幼魚が観察される事から、近い場所でハッチアウトしたことが推測される。相模湾産で1箇所にハッチアウトしたての幼魚が撮影された初画像である可能性が高い(早川、撮影:田中知香)

産卵からハッチアウトまでの所要日数は、下田水族館のデータと当方の実験と差異は、ほとんどない。
「天使のリング」と呼ばれる頭部に輪の模様がある幼魚としてハッチアウトする。(神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」KPM-NR 87676・KPM-NR 98212)

成長過程でなくなる途中の生態写真(神奈川県立生命の星・地球博物館「魚類写真資料データベース」KPM-NR 87697)は少ない。

下田水族館の情報によると、水温によって上下するが、10日間ほど輪の模様が確認できるそうである。

それぞれの生活環境に合わせてか、西湘エリア、伊豆半島東岸では、赤茶色の体色になる個体が多く、三浦半島では、みどりの体色が多いという。
北緯が上がるにつれ、成長過程の体色のバリエーションが増える事から、水温の低い環境を好み、環境に合わせた多様な適応力を持っているものと推測している。
調べた資料によると、これらの情報は全て、「天使のリング」の幼魚時期を過ぎた幼魚から成長する過程のダンゴウオについて語られていると思われる。(メインカット参照のこと)

西湘エリアでは2cm前後の成魚サイズが突然現れる事から、北緯の高いエリアから流れ着いたと考えるのには、ダンゴウオの遊泳能力を考えると考えづらい。
若魚から成熟個体まで、生活可能な適水温の環境にて成長しているのではないかと推測している。

共同調査をしてくれている早川ダイビングセンター田中知香さんの観察撮影によると、成熟した個体は、濃い赤茶の若魚と違い、多様な色からなる複雑な体色をしている。(今回の研究での新情報)

早川で最も多数確認されている成魚カラータイプ(早川、撮影:田中知香)
早川で最も多数確認されている成魚カラータイプ(早川、撮影:田中知香)
赤茶系の成魚(早川、撮影:田中知香)
早川で2番目に観察例が多い赤茶系の成魚(早川、撮影:田中知香)

その様な複雑な体色で、迷彩服の様に機能している可能性がある。
そのため、複雑な体色が保護色になる環境化で成長するのだろうと考えている。

2021年の繁殖シーズンには、1個体の成魚に出逢う事が出来た。

2021年最後に確認した成魚
2021年最後に確認した成魚

下田水族館で繁殖に成功したサイズの塩ビ管を、樹脂パテを使い石に固定して見つかったエリアに置いたところ、一瞬で中に隠れた。

人工産卵床に入った成魚
人工産卵床に入った成魚
人工産卵床のそばに陣取って他の個体を待つのか
人工産卵床のそばに陣取って他の個体を待つのか
陣取っている個体のおなかは大きい
陣取っている個体のおなかは大きい

繁殖サイズにこの人工産卵床が適しているかもしれないと歓喜した。

翌日には見られなくなったため、最後の確認画像となる
翌日には見られなくなったため、最後の確認画像となる

しかしその後、人工産卵床を放棄してしまった。

何が適合していないかの研究をしたいのだが、残念ながら2021年は、それ以外に成熟個体と思われるサイズを発見することができず、その後の幼魚期から若魚期の個体も、一切、確認できなかった。

ここ数年続いている、平均水温が高い影響であろうか。
はたまた生息域周辺の公共事業によるテトラポットの入れ替え作業の影響であろうか。

原因は不明であるが、三重の個体群や伊豆半島東岸の個体群と同様に、個体数が急速に激減している可能性が高い。

増殖計画の方針転換期に入っているかもしれないと危惧している。

増殖:個体数を復活させるときに使われる水産学用語。

観察方法

本種の場合、成育エリアによって生活様式に変異があるようなので、そのエリア独特の探し方が必要になると思われる。

一番、簡単に観察するのには、そのエリアに精通したガイドにお願いするのが良いだろう。
研究テーマにしている筆者ですら、研究ポイントの早川でも、現地ガイドの手助けがないと探すことができない。

観察の注意点

成熟個体ですら2cmと小型なので、撮影後、十分に気を付けてほしい。
無意識に水流を送っただけで簡単に吹き飛んでしまうので、注意が必要である。

転石などに隠れていることもあるが、むやみに転石をひっくり返すとダンゴウオが住処を失ってしまうこともある。
ダンゴウオだけでなく、他の生物に影響を及ぼすこともありえるため、その居場所を熟知している現地ガイドに見せてもらうようにしよう。

現地ガイドに頼めば、オープンウォーターダイバー以上のスキルで、ドライスーツを使いこなせれば、十分に見る事が可能だろう。

観察ができるダイビングポイント

ダンゴウオを取り巻く環境の変化はここ数年急激に変化している可能性がある。
研究者として、現在分布しているエリア情報、出現時期、野生下の生存水温などの収集は、重要で急務であると感じている。

急激に変化する環境を鑑み、正しいデータを提示できないので今回はポイント名を挙げる事を控える。

サクラダンコウオ・「仮称)ダンゴウオ九州型」、幻の北海道の分布域の個体群まで、今のダンゴウオ達の現実が判ると良いのだが……。

生態を撮影するには

産卵行動まで考えた場合、ダンゴウオはとても狭い場所に潜んでいる事が多い。
通常のマクロレンズを付けて、アームを使い、外付けストロボを使ったハウジングセットの場合、その場所に近づく前に他の場所にぶつかり、撮影したい距離まで近づく事も、厳しい場面が多い。
アームなどをなるべく短くしてコンパクトにする必要がある。

コンパクトデシタルカメラの場合も、同様でコンパクトにする事が重要だ。

お勧めは、リング型ストロボ・なるべく大光量のリングライト・リングディフューザーなどの使用が、望ましいだろう。
その代わり、ライティングによる映像表現の個性は失われる。

TGシリーズ(OLYMPUS Tough)の場合は、スーパーマクロ(モデルによっては顕微鏡モードという物もある。)を使うと幼魚を撮影するのに便利である半面、通常撮影モードより画質が低下するので、気を付けていただきたい。

SPECIAL COLUMN

研究結果を読み解く能力

今回、ダンゴウオの原稿依頼をもらった時、正直なところ躊躇した。筆者は【ダイビング生物情報】を出筆するにあたり、少なくとも末端の研究者の立場で物を書く事にしているが、流石に、どの研究も一律には扱えないという事実にぶつかったためだ。

筆者は、博物館学の一つである水族館学をはじめ、魚類生態学の中でも生理学を中心に学んだ。
大学在学中には、授業、実習、そして、水族生態研究会という部活動の諸先輩から、水産学の色々な分野の基礎を叩き込まれて、大学卒業後も、研究者の先生方のご指導で現在が成り立っていると考えている。

今も、自然科学全般が大好きで、その様な番組を見ているだけでワクワクするし、自分の調べた事で、撮影した瞬間で、人をワクワクさせたいと心から思っている。

その中で常に自分の心に決めているのは、過去に汚点として残さない足取りだ。

本コラム中は、ダンゴウオの一研究・調査をしているものとして書く。

最初にこの話をもらった時に、ミトコンドリアDNAで、種を区別をするという画期的なイメージの研究結果があり、一般ダイバーレベルが「ダンゴウオか、サクラダンゴウオか、これどっち?」を始めていると聞いた。
ここでの一般ダイバーレベルというのは研究者以外という意味で、残念ながら私の教え子も含むプロダイバーの仕事人達のレベルである。

確かに、DNAまで調べての結果なら、良さそうな印象を持つ。
しかし、この調査は、ミトコンドリアDNAで調べている点で、少し最新の科学情報に興味を持って見聞きしている者であれば、「あれ?」と気が付くだろう。
千葉県中央研究所フェロー小嶋純一先生はブログ内で、やんわりと「判るでしょ」と問題点を並べている。

ミトコンドリアDNAは、人間を例に挙げると、女性から子孫へ、女性側の遺伝情報を伝えた中身が判る物だ。

日本人なら、明治以降の国際化によりそれ以前に日本人タイプに現存していなかったタイプの女性の遺伝子を受け継いでいなければ、7通りのグループに分けられる。
この事は、NHKの特集でも、犯罪者の洗い出しの特集でも、取り上げられている事実である。
そうなると日本人は、この研究の通りにあてはめると7種の種類の別の動物となる。
世界に広げて考えたら大変な事だ。
場合によっては、人種差別になりかねない。

7種類のグループが異なるとしても、何世代も子孫を残せるし、日本人型以外のグループの人種とも、それが可能である。

現生人類は、ホモサピエンス(Homo sapiens)一種である。
この科学者的常識から考えただけでも、ダンゴウオを3タイプに分けるというのは、十分おかしな主張である。

この様な研究に必要なサンプル数(各地から集めた標本数ということ)が統計学上の有効数を超えているのか。
この調査で見出した違いは、それぞれの生態行動まで、鑑みているのか。
混合が考えられる分布地域では生殖分離が確認出来ているのか。
研究サンプルに、「仮称)ダンゴウオ九州型」とした個体群はまったく含まれていないのは何故か。

筆者は、そんなに昔から、「伊豆のダンゴウオ再生」にたずさわっている訳ではない。
それでも、気が付く「つっこみどころ」満載ではないか。

日本の魚類分類学は、世界的に見てもトップクラスのレベルであると、違う分野の研究者である筆者から見ても言える。いや、世界ナンバー1である。
その中で、細かく分類を分けるという手法から、必要なら統合して、さらに不明な点は細かく精査することで、学問としての水準を高めている。

だからこそ、標準和名の命名ルールも紳士協定ルールで進められてきた。
今回本文に引用した阿部 拓三氏の研究グループの研究成果が良い例の一つと思う。

末端の研究者の立場で言う事ではないが、近年、その場の勢いなのか、そうでなければ何が理由なのか、思わず驚いてしまう様な事例が、複数目立つ様になった印象がある。
もう一度、読み取る側に、そして、研究者自身に、過去に汚点として残さない足取りを考えていただきたい。

この研究論文について、これだけ高額の研究費がかかる研究が、なぜ、有用水産魚でもない本種にできたのか。その費用は、どこから出た、何のためのものなのか。さらに、研究成果の発表に期限を設けられてはいなかっただろうか。心配になる。

ミトコンドリアDNAの研究を否定するわけではない。
その研究のおかげで、私たち人類の遺伝子の中に、ネアンデルタール人由来の遺伝子が含まれている事がわかったり、化石としては、一部しか出土していないデニソワ人由来の遺伝子が発見されたりもしている。

また、日本人に含まれる縄文人型のDNAが、現生人類のタイプのなかで、他のアジア人タイプ(東アジア型)に無い特徴で、白色人種(ヨーロッパ型)より、古い形質を持つ事が判り始めいる。

現生人類の成り立ちの研究に多大なる功績を残している。
正しい使い方を模索する事のできる最先端の考え方も大事である。

以上が、博物館学水族館学の学系員資格者としての見解と解説である。

「伊豆のダンゴウオ再生」を目指す魚類生態学の立場としては、明確な差異が見出せないなら、1種類で、地域によってバリェーションが存在する範囲ではと考え、再調査の必要な研究レベルとなるだろう。
ダンゴウオの一研究者としては、参考研究データとして、信用価値が低いと判断する。

生物好きなダイバーなら、そんな事は一切関係なく、毎年逢いたい、カワイイ野生動物で良いのではないか。
細かい差まで必要であるだろうか。

それよりも、ダンゴウオの不思議にふれて喜んでほしいと心より思う。

参考文献

播磨伯穂

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H.T.M.マリンサービス代表。 元日本ペット&アニマル専門学校講師。 元NAUIインストラクタートレーナー。 1963年東京生まれ。東海大学海洋学部水産学...

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