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初夏の西伊豆・井田で新たな写真を求めて〜アオリイカの産卵と海藻の迷路〜

井田のダイビングレポート
海のレポート

衝動的に向かった、井田の海。
命の営みに息を潜め、海藻の迷路で木漏れ日を感じる。
初夏、井田、自分への挑戦。
井田は、海も人も、僕に刺激をくれる。

こんにちは!
Under water creatorの茂野です。

6月某日、僕はいてもたってもいられなくなって、西伊豆・井田の海に向かいました。

というのも、井田ダイビングセンターの店長の出竈さんは僕と同い年。
いつも刺激をもらう同世代です。
そんな繋がりもあって、井田ダイビングセンターのブログをちょくちょくチェックしているのですが、ここ最近、毎日のようにアオリイカの産卵や海藻の迷路の写真が上がってきます。

「これは撮りたい!」と思うものの、ブログに並ぶ写真は、どれも素晴らしく、技術的にもレベルが高いものばかり。
こうした写真が多く生まれるのは、井田ダイビングセンターのガイドのおかげということもあるでしょう。
ゲストの写真のレベルが高いのはもちろん、ガイド陣のフォト派へのケアと徹底した魅せ方、そして、ガイド自身も写真の技術が高いことも影響していると思います。

もはや、写真家である自分が新たに井田の海で写真を撮ったとしても、誰かと同じような写真になってしまうのではないか。
期待と裏腹のそんな一抹の不安を覚えながら訪れた、井田の海。

しかし、実際に潜ってしまうと……
あまりの美しい光景に心奪われ、夢中になって撮影している自分がいました。

事前に見ていた写真よりもまだまだ色んな撮り方ができるし、もっともっと潜り込みたい!
わくわくしながら挑戦した、初夏の井田での撮影成果と合わせて、それに留まらない井田の魅力をこれまで撮影した写真を交えながらご紹介します。

大フィーバー!アオリイカの産卵

まずは今回の1番の目的、アオリイカの産卵シーンを狙います。
ここ数年、井田では5〜6月にアオリイカの産卵がフィーバーしていて、この時期は1日のうち必ずどこかのタイミングでフィーバーしているそうです。

井田ではエントリーしてすぐ、水深16mの砂地に産卵床となる木が沈められていて、そこにアオリイカが産卵にやってきます。
ビーチエントリーで水深も18m以内なので、初心者もフォト派もじっくり楽しめます。

僕が潜ったタイミングは10ペア前後のアオリイカが、代わる代わるやってきては産卵をしていました。

最初は自分らしい目線の写真を撮らなきゃと少し気負っていましたが、あまりの迫力に夢中になってしまいました!

アオリイカの澄んだ妖艶な美しさも好きですが、産卵後や警戒した時の色彩の変化も古風で好き。
アオリイカのフォルムも、なんだか太古の昔から生きているような雰囲気があって好きなんです。
そんな雰囲気を表現したくて撮影したのが上の写真です。

僕がこれまで目にしてきた写真は、産卵床の形や砂地での撮影のためか、縦構図の写真が意外に少ない印象でした。
斜め上に逃げていくアオリイカを撮っても面白いのではないかと思って、あえて縦構図で撮影してみました。

アオリイカの大きさや風貌から、画としての美しさに注目しがちですが、一番の見どころは何と言っても産卵シーンです。
そこにはオスメスの関係があり、生命のドラマを垣間見ることができます。
この写真もオスとメスがともにやってきて産卵床に卵を産み付ける直前のシーンです。

アオリイカの撮影は、まずイカの警戒心を解くことから始まります。
じっと砂地で息を潜め待つ。
その先にこんなシーンを間近で見せてもらった瞬間の喜びは、ひとしおです。

僕は結局、1ダイブすべてこのアオリイカの産卵に夢中になって撮影してしまいました。
季節限定での光景にはなりますが、ぜひ皆さんも挑戦してみて下さい。

浅瀬を彩る海藻の森

またアオリイカと時期を同じくして、春から初夏にかけてのもう1つの井田の名物となるのが海藻の迷路です。
井田の浅瀬は春先からホンダワラが生え、初夏をピークに大きく成長します。
その一面ホンダワラの光景を刈りこんで水路を作ったのがこの光景です。

この水路の中を泳いでいると、海の中に潜っているのに森の中にいるような感覚。
海藻の隙間から入る木漏れ日に眩しさを感じる、不思議な光景です。

また、撮影日はちょうど梅雨入り前。
強い日差しが差し込んでいました。

晴れた日の海藻の迷路は本当に美しい。

穏やかな日は水中から空を見上げるなんてのもいいですね!
この海藻の森も通年見られるわけではなく季節限定のものです。
もう少しすると元気がなくなってきて、段々と千切れて流されなくなっていきます。

こんな一面海藻の美しい光景を見れるのもシーズン限定!
水深も浅いためアオリイカの産卵を観察したあと、海藻を見て楽しむワイド撮影のコースは、上級者から初心者まで鉄板だそうです。

本当はもっといろいろ撮影したかったのですが、僕もこの海藻とアオリイカで1ダイブづつ、夢中になってしまいました!

生態シーズンの始まり

ダイビングスポット井田で観察されたイチモンジハゼ

初夏の伊豆半島といえば、魚たちの活性が上がり、生態シーンが面白くなる時期です。
井田の海も様々なところで生き物たちが繁殖、子育てをする光景を見ることができます。

僕が訪れたタイミングで見せてもらったのは、井田では定番のイチモンジハゼが二枚貝の貝殻の中で卵を守っている様子。
井田にはイチモンジハゼやオキナワベニハゼが多いんです。
しかも、様々なシチュエーションで見られるだけではなく、こういった卵を守るシーンも多く観察することができます。

ダイビングスポット井田で観察されたアカイソハゼ

ちなみにこのすぐ近くでは同じく二枚貝の貝殻の中でアカイソハゼが卵を守っているシーンも見せてもらいました。
まだ産みたてのため、卵がツヤツヤで美しい!

個人的にもアカイソハゼが卵を守っているシーンは初めて観察、撮影したので嬉しかったです。
井田ダイビングセンターのスタッフは生態にも詳しく、他のシーズンにはアナハゼの卵を紹介してもらったことも!

ダイビングスポット井田で観察されたアナハゼのタマゴとザラカイメンカクレエビ

井田の潜水エリアは南北に200mと、海岸線の非常に限られたエリアだからこそ、ガイドの方々がそのエリア内を熟知しています。
どこにいてもその時の旬のものを魅せてくれる、本当に飽きないダイビングポイントです。

色彩豊かな井田を切り取るマクロ

ダイビングスポット井田で観察されたオルトマンワラエビとクダゴンベ

この記事では井田の初夏の魅力をレポートしてきましたが、個人的には井田の1番の魅力は、季節を問わず伊豆で良く見る生き物たちを様々なシチュエーションで切り取るマクロ撮影だと思います。
ここからは過去に撮影したデータも用いていますが、井田らしい色彩豊かなシチュエーションのマクロ写真を紹介します。

ダイビングスポット井田で観察されたガラスハゼ

ガラスハゼといえば伊豆半島ならどこにでもいる被写体ですが、井田の海では様々な環境で撮ることができます。
これも井田ダイビングセンターのスタッフのフォトガイドのレベルの高さを物語っています。
こういうシチュエーションを本当にたくさん把握しているのです。

ダイビングスポット井田で観察されたガラスハゼ
ダイビングスポット井田で観察されたガラスハゼ

その日のソフトコーラルの咲き具合や僕らの使っているカメラを見て撮りやすい被写体、旬の被写体を紹介してくれるんです。

ダイビングスポット井田で観察されたアカスジウミタケハゼ

井田にはものすごく巨大なソフトコーラルがあったり、大きなサンゴがあったりというわけではないのですが、程良い距離感に様々なサンゴやソフトコーラル、カイメンなど、多様な環境があります。
そしてそこに生き物が絡んでくる。
マクロ撮影が好きなダイバーには最高の環境が整っているんです。

正直、このバリエーションの豊富さと普通種の多さは、隣の大瀬崎をホームグラウンドにしている僕も羨ましく感じるし、いつも感動するところです!

爽やかな井田ブルーでワイドの写真も!

ダイビングスポット井田で観察されたタカベの群れ

井田の海と言えば井田ブルーという言葉がある通り、青い海が特徴です!
井田の海水浴場は環境省が認定する水質が良好な場所にも指定されるほど。

もちろん伊豆半島の海なので毎日真っ青な海が広がるわけではないですが、良い潮が入り透明度が抜群の井田の海は潜っているだけで気持ちがいいほど美しいんです!

井田はビーチポイントにも関わらず魚影も濃い。
特に多いなと思うのが初夏から秋にかけてのタカベの群れ。
降り注いでくるタカベのシャワーを見ていると、井田の海に潜っているな、という気分になります。

また個人的に好きなのが冬の井田の早朝にだけ見られる浅瀬の光芒が美しい光景です。
この光景は太陽の位置が低い時期の朝のタイミングだけ太陽が松の木に被り、その木漏れ日が水中に入り込んでできる光景です。

さらに海が荒れた次の日などは浅瀬の砂紋が綺麗にできていて、伊豆半島では井田でしか見られないような光景が広がっています。

終わりに

ダイビングスポット井田で観察されたキリンミノ

井田の海は狭いエリアだからこそ、そのエリアを熟知したガイド陣がゲストに合わせてその時に旬なものを紹介してくれるのが1番の魅力です。

さあ、僕も刺激をもらったし!
次はどこの海に行こうかな。

取材協力:井田ダイビングセンター(https://www.itadc.com/

■CHECK!■

今回ご紹介した井田のダイビングについては、茂野優太さんのYoutubeでも紹介されています。合わせて、お楽しみください。

茂野優太

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Under Water Creator。 1991年、神奈川県生まれ。 海・ダイビングの魅力を写真、映像、文章、ガイドなど、多様なアプローチで発信する。 伊...

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