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サンゴに産卵するアオリイカを目撃!長崎・辰ノ口&伊王島ダイビングで出会った生物たち

海のレポート

2021年7月の中旬、九州は長崎県・香焼町を訪れました。
撮影の目当ては、辰ノ口(たつのくち)と橋を渡ってすぐの伊王島(いおうじま)、2つのダイビングスポットの水中景観!

今回の撮影では、長崎に伝来した“ビードロ”に由来するビイドロカクレエビと出会ったり、サンゴに産卵するアオリイカを観察できたりと長崎らしいシーンを目撃することができました。

その撮影の様子をレポートしていきます。

文化が混じり合う長崎

長崎県といえば、言わずもがな古くから海外との交流の窓口として発展してきた歴史の舞台。
西洋文化を多く取り込んできた街並みは、独特の雰囲気を発しており、お祭りや食文化も特徴的なものが多くなっています。

実は、長崎県の香焼町や伊王島の周辺は私にとって、3年ほど前からダイビング以外の撮影を行なってきた縁の深い場所です。

はじめて撮影した3年前、中国から伝来してきた舟漕ぎ競争・ペーロンの撮影をしましたが、間近で見ると迫力がありました。

また、長崎市の夜景はとても美しく、世界新三大夜景に認定されています。鍋冠山や稲佐山から見下ろす長崎市は絶景です。

鍋冠山から見る長崎市内の夜景

陸上の景色や独特の文化だけでも見るところが多いのですが、今回はそんな長崎市でもダイビングで有名な辰ノ口と、そのすぐ近くにある伊王島、2つのダイビングスポットへ撮影に行ってきました。
その海の中の様子をご紹介します。

辰ノ口のビーチポイント。奥に見えるのが伊王島と伊王島大橋

まずは辰ノ口へ!

私が初めて辰ノ口に水中撮影で訪れたのは、昨年(2020年2月)の冬でした。
水温は14℃と低く、その時は深い場所から上がってきたと思われるマトウダイの姿を確認することができました。

冬場の海のマトウダイ

今回は初夏の撮影ということで水温も27℃と、冬とはガラっと変わった環境での撮影です。
生き物も増えて、まず砂地ではグルグルと泳ぎ回る小型のカンパチの群れに遭遇。

エントリー後すぐに現れたカンパチの群れ

岩場に出るとクマノミやナガサキスズメダイなど、沢山のスズメダイの仲間の生態行動が観察できました。

卵を守るクマノミ

ダイバーに人気のカエルアンコウも確認。
ロープの影にうまく隠れていたところを、辰ノ口ダイビングサービス・ブルーアース21長崎のガイド・平野さんが見つけて教えてくれました。

カエルアンコウ。近くにはハタタテダイの幼魚も泳いでいた

カエルアンコウと同じくダイバー人気の高いミジンベニハゼも生息しています。

また、長崎の海で撮影するのであれば、必ず撮影したいと思っていた生き物も撮影することができました。
それが、ビイドロカクレエビ

辰ノ口で標本が採取され、論文が発表されたということもあり、長崎で有名なビードロ(ガラスを使った細工や器具)に因んで名前が付けられたとされます。
ちなみにポルトガル語でビードロはガラスという意味で、オランダから持ち込まれたようです。

ビイドロカクレエビは、他のカクレエビに比べると一か所に留まることなく動き回るため、海に入る前は平野さんも「見ることができるかどうか……」と言っていましたが、砂地をふらふらと移動していた個体を無事に撮影することができました。

ビイドロカクレエビの抱卵個体

また、辰ノ口のビーチの浅場は海藻で覆われており、クロホシイシモチが大きな群れをなしています。
 

浅場にはクロホシイシモチが群れる

深場に行けばヤギやトサカなどの腔腸動物なども多く、カゴカキダイも小さいながら群れてその周りを泳いでいました。

広がるソフトコーラル

イラやブダイ、マダイなどの温帯種の生き物がとても多く、逆に亜熱帯から熱帯種の生き物は少ない印象でした。

私は普段、伊豆で撮影することが多いのですが、辰ノ口の海に冬と夏に潜ってみて感じたのは、伊豆の海に似たようなイメージだな、ということでした。
 

初めての伊王島ダイビング

夏の撮影では、辰ノ口周辺で潜ることができるもう1箇所のボートポイントにも行って来ました。
伊王島にある赤灯台というダイビングポイントです。

伊王島には、ダイビングスポット・辰ノ口の目の前にある辰ノ口ダイビングサービス・ブルーアース21長崎から伊王島大橋を渡り、港まで行きます。その間、車で5分ぐらいです。

道中、伊王島大橋から辰ノ口が見え、さらに、天気が良ければ辰ノ口とは逆方向に軍艦島(2015年に世界文化遺産に登録された、海底炭鉱の島)が遠くに見えます。

伊王島は、かつて潜伏キリシタンが移り住んだ島で、今もカトリック信徒の方が多く住んでいます。
ボートが出る港の裏には、ゴシック様式の教会・馬込教会が見えるのも大きな特徴の一つです。高台にある教会からは、海を望むことができます。

さらに、伊王島の北端に進めば、1871年に点灯された伊王島灯台があります。
日本初となる鉄造六角形の洋式灯台で、長崎に落とされた原子爆弾の被害を受けたものの修復されたという、歴史ある灯台です。

伊王島灯台

灯台までの道中と灯台からの眺めは素晴らしい限り。
ダイビングが終わってゆっくりしたい時にぜひ、寄っていただきたい場所です。

さて、ボートポイントの赤灯台には、港から5分ぐらいで到着します。
ブリーフィング中に赤灯台の海の様子をガイドの平野さんに聞いてみると、浅い場所にはミドリイシの仲間が一面に広がっており、そのミドリイシの仲間の上にアカオビハナダイが群れているのが魅力の一つとのこと。

ミドリイシの仲間の上にアカオビハナダイの群れがいるのは他のダイビングポイントでは珍しいため、そこは絶対に写真に抑えておきたいと考えながらエントリーの準備をしました。
 

ミドリイシ×アカオビハナダイを狙え

 
さて、1本目。
エントリーするやいなや、辰ノ口で出会った個体より3倍以上大きなカンパチの群れに遭遇!圧巻です。
数分間にわたり、群れが自分の周りをぐるぐると回ってくれました。

しかし、ミドリイシの群生にはアカオビハナダイ群れはほとんどなく、アカオビハナダイの群れは岩肌へと移動していました。
潮の時間帯が違ったり、他の生き物がいたりすることで場所を変えたのではないかと考えられます。

アカオビハナダイはいなかったもののミドリイシの上にはクロホシイシモチが群れていた

狙いが外れてしまい残念に思っていましたが、ダイビングの後半になると数匹はミドリイシの上に戻って来ていたので撮影を開始。
 
撮影していると何か違和感を感じました。
「こんな色だったかな?」と写真を再度確認すると、通常のアカオビハナダイよりも濃い色の個体が紛れていたのです。

色の濃いアカオビハナダイ

色の濃い個体はあまり他エリアでは見かけない気がします。
珊瑚礁に群れるアカオビハナダイは見られなかったものの、濃い色の個体に出会えたことはうれしかったです。

アオリイカがサンゴに産卵!?

2本目も同じダイビングポイントの赤灯台で撮影を続けます。
すると、とても珍しい生態シーンに遭遇することができました。
アオリイカの産卵です。

アオリイカの産卵だけで言えば、そんなに珍しい光景ではないのですが、赤灯台で産卵していたアオリイカは、よく見られる産卵礁や海藻などではなく、ミドリイシの仲間の隙間に卵を産んでいたのです。
しかも、10ペア近くいました。

アオリイカの産卵

沖縄や奄美大島などの南方には、クワイカ型に分けられるアオリイカが生息しています。そのクワイカ型もサンゴの根元に卵を産みつけます。
しかし、赤灯台で観察することができたのはシロイカ型と言われるアオリイカだと思われます。
 
クワイカ型以外のアオリイカが、卵を天然のサンゴに生みつけている姿を見たのは私も初めて。
とても珍しい光景でしょう。
ガイドの平野さんも、サンゴに産みつけている姿を見たのは初めてとのことでした。
 
赤灯台は、こんな貴重な瞬間に巡り会うこともあるポイントなのです。

アオリイカの産卵

辰ノ口はダイビングエリアが広く、水深も深くとることもできるのでそれぞれのスキルに合わせてが誰でも楽しめる場所です。
生き物の観察や生態行動を見ていると時間が流れているのを忘れて、いくらでも水中にいられそうな気分になります。
 
長崎市は、水中・陸上とも今後も撮影に力を入れていきたい場所であり、そして皆様にもぜひ、立ち寄ってもらいたい場所です。

取材協力:辰ノ口ダイビングサービス・ブルーアース21長崎(http://be21-nagasaki.com/

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堀口和重

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水中カメラマン。 1986年東京生まれ。 日本の海を中心に、水中生物のおもしろい姿や生態、海と人との関わりをテーマに撮影活動を続けている。撮影の際は、海や生...

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