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冬の屋久島でスミレナガハナダイのコロニーを激写!〜海の変化にも注目〜

海のレポート

2021年12月上旬、私は鹿児島県の屋久島へ撮影に向かいました。

私にとって屋久島は、海も山も、どこへ行っても居心地の良さを感じる場所です。
というのも、プロダイバーとして活動をはじめたのが屋久島でした。

魚の種類がやけに多く、毎ダイブ初めて見る魚との出会いに感動する日々。
ビーチからでも多くの生き物と出会えるので、休みの日でもカメラを持って撮影に行き、何本も潜っていました。
潜っても潜っても、魅力がつきない場所です。

その生物相の豊かさに魅せられ、屋久島を離れてから10年以上経った今でも毎年通い続けています。
訪れるたび、どこか懐かしさも感じる、思い入れのある島です。

自然豊かな屋久島へ

鹿児島市から飛行機で約30分、高速船なら約1時間45分と少し離れた位置にある屋久島。
花崗岩が隆起することでできた急峻な山岳島で、洋上のアルプスと呼ばれることもあります。

実は、屋久島の宮浦岳は、九州最高峰の標高1,936m。
1,592mの阿蘇山よりも高いんです。

また、屋久島といえば、樹齢1000年を超える屋久杉の中でも最大級となる縄文杉や、もののけ姫の舞台のモデルとも言われている白谷雲水峡など、自然の力を感じる神秘的なスポットが有名です。

そして、動物も魅力的。
屋久島に生息する動物の中でも特に印象的なのが、屋久島の固有種とされるヤクザルとヤクシカ。

ヤクザルは、段々と寒くなる季節には森の中へと姿を隠すのかと思いきや、太陽の日差しが降り注ぐ冬晴れの日には路上でのんびりと過ごしている姿を見せてくれます。
そして、その近くには寄り添うようにヤクシカの姿も見ることができます。

陽射しが出ると道路でのんびり毛繕い
陽射しが出ると道路でのんびり毛繕い
ヤクザルと一緒に行動するシカ
ヤクザルと一緒に行動するシカ

このように、屋久島は海というよりも山や森のイメージが強いかもしれません。
しかし、海もとても面白い場所なのです。

屋久島の海はというと、ひとことで言えば温帯と亜熱帯の海が混じり合う様な場所です。
以前開催された全国魚種調査コンテストで3年連続日本一になったほど、魚の種類が豊富な海でもあります。

屋久島のダイビングシーズンは、4~11月ぐらいまで。
なぜかと言うと、メインのダイビングエリアである一湊(いっそう)に入りやすいのが、この時期だからです。

11月頃からは段々と北西の風が吹くことが多くなり、12月ともなると時化てしまって潜れないことが多くなります。

しかし、逆に言えば12月はダイバーも少なくなり、冬ならではの生き物も現れるため、穴場のシーズンとも言えるのです。
今回はそんな、12月の冬の屋久島の海をご紹介していきます。

屋久島の海の変化

豊かな海を持つ屋久島ですが、少し気になる部分もあります。
10年以上屋久島の海を見てきましたが、年々海の様子が変わってきている印象が強いのです。

特に、お宮というダイビングポイントでは変化が大きいように感じています。

私が毎日の様に潜っていた10年以上前は、温帯種のカゴカキダイが沢山いて、その近くに亜熱帯種のヨスジフエダイやベンガルフエダイなどが泳いでいる光景が、当たり前でした。
しかし、カゴカキダイの数が年々減少しているのです。

昔からの光景が頭に焼き付いている私にとっては、少し残念なことです。

カゴカキダイは減ったものの健在
カゴカキダイは減ったものの健在

今後、さらに減ってしまうのではないかと心配なところですが、それでも多種多様な魚たちがギュッと集まるこの場所が、私にとって大好きな場所の1つであり続けています。

お宮の見所、1ヶ所に各種類の魚が群れる
お宮の見所、1ヶ所に各種類の魚が群れる

新発見されたスミレナガハナダイのコロニー

今回の滞在中、お宮に関しては興味深い話もありました。
普段はあまり訪れないような離れたところで面白い場所が見つかったと、屋久島ダイビングショップ・ダイブアンカーのガイド・福山さんが教えてくれました。

移動距離こそ長いもののお宮の沖に、スミレナガハナダイのオスが群れている場所が見つかったと言うのです。

今回私が訪れてみると、30匹前後が群れている様子を見ることができました。

お宮の沖ではスミレナガハナダイのオスが乱舞する
お宮の沖ではスミレナガハナダイのオスが乱舞する

スミレナガハナダイの群れは様々な場所で目にしてきましたが、これほど群れているのを見たのは初めてでした。

ちなみにこの場所は、エバーブルーのガイド・斉藤さんが発見したのだそうです。

お宮は全体的に潮通しが良く、スミレナガハナダイを撮影している時には頭上をイソマグロが回遊し、安全停止中にはタカサゴの群れやもの凄いスピードで横切るスマガツオの群れなどを見ることができました。

猛スピードで移動するスマガツオ
猛スピードで移動するスマガツオ

なんでも揃う「タンク下」

今回の撮影では、お宮以外にも屋久島で一番人気のダイビングポイント・タンク下にも行ってきました。
このダイビングポイントは、様々な生物の生態観察ができる場所なのです。

魚種や水中環境のバリエーションがとても豊富なのがこのダイビングポイントの特徴。
また、アオウミガメに高確率で出会えるダイビングポイントでもあるのです。

タンク下のアオウミガメは、人にもあまり驚かないので、今回私が撮影した時も、微動だにせずのんびりとしていました。

クリーニングされているアオウミガメ
クリーニングされているアオウミガメ
イトヒキベラ。体色が本州にいる個体とは異なる
イトヒキベラ。体色が本州にいる個体とは異なる

今回は冬場ということもあり、ウミウシ類をはじめとする小さな生き物も目にしました。

私も初めて見るようなウミウサギの小さな個体や、シャコガイの仲間と共生している小さな生き物たちは、探せば探すほど出てくるため、じっくりと撮影するのが面白いのです。

冬の一湊の魅力と言えるでしょう。

ソフトコーラルを食べるウミウサギガイ
シャコガイの仲間と共生するウミタケハゼの仲間
シャコガイの仲間と共生するウミタケハゼの仲間

おわりに

今回は運よく一湊エリアのダイビングポイントに潜ることができましたが、冒頭でもお話した通り、冬場は時化てしまうこともあります。
そんな時には、北西の風が当たりづらい南部のダイビングポイントに潜ることが多いようです。

機会があれば、いつかそちらもご紹介して行けたらと思っています。

ダイバーが段々と少なくなる冬の屋久島ですが、そんな時期だからこそ見つからない発見があるものです。

皆さんも、敢えて冬の屋久島の良さを探しに行ってみてはいかがでしょうか。

撮影協力:屋久島ダイビング・ダイブアンカー(https://yakushima-diving-anchor.com/)、エバーブルー屋久島(https://yakushima-diving.com/

堀口和重

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水中カメラマン。 1986年東京生まれ。 日本の海を中心に、水中生物のおもしろい姿や生態、海と人との関わりをテーマに撮影活動を続けている。撮影の際は、海や生...

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