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田辺のダイビングスポット情報

海について

回遊魚の群れがダイナミックに迫る、田辺(たなべ)の海。
小さな生き物たちも豊富で、ニシキフウライウオやフリソデエビ、ハナタツ、ハナイカなどの人気の生物観察も盛んです。

そんな田辺のダイビングスポット情報をその魅力とともにご紹介します。

ダイビングの基本情報から、季節ごとの見どころをまとめたシーズナリティ、ダイビングポイント紹介まで、海の情報満載でお届け!

田辺の概要

近畿地方最大の面積を誇る和歌山県田辺市。
ダイビングスポットとしての田辺は、和歌山県を横断して広がる田辺市の海側、旧田辺市のエリアに位置しています。

このエリアは、2004年に世界遺産登録された熊野古道のうち、中辺路(なかへち)、大辺路(おおへち)が分岐する地点にあたり、古くから交通の要衝として栄えてきました。

耕作地が乏しい一方、豊富な船の材料と良港に恵まれていたために水軍が発達し、平安時代から室町時代にかけては熊野水軍の本拠地になっていた場所でもあります。

また、源義経の右腕として名高い武蔵坊弁慶の故郷ともされています。

田辺ダイビング基本情報

黒潮の影響を色濃く受け、魚の量も種類も豊富なダイビングスポットです。
カンパチやブリなどの回遊魚からソメワケヤッコやシテンヤッコなどの季節来遊魚まで、大小様々な生物がダイバーを出迎えてくれます。

季節来遊魚:分布地域を離れて流れつく魚のうち、季節性のあるもの。たどり着いた先では、成魚になれず繁殖もできないものをいいます。以前は、死滅回遊魚と呼ばれていたこともあります。
フリソデエビ
フリソデエビ

過去にはクジラやジンベエザメが出現したこともあり、何が現れても不思議ではありません。

お隣のみなべとも程近く、田辺の港からみなべのダイビングポイントへと潜りに行くことも可能。
特に、みなべ町の沖には世界で唯一と言われているオオカワリイソギンチャクの群生があり、田辺からも多くのダイバーが訪れています。

オオカワリギンチャク

ダイビングのシーズナリティ

田辺の海の魅力を春夏秋冬に分けて、ご紹介します。

春の田辺

ハナタツ
ハナタツ

春濁りのシーズンですが、透明度の低さは気にならないほど小さな生き物の観察が楽しい季節です。

春濁り:植物性プランクトンの大量発生などに起因して透明度が落ちること

特にウミウシ好きにはたまらない季節で、観察できるウミウシの種類は春にピークを迎えます。
1日に100種類近くのウミウシが確認できることもあります。

ウミウシ以外にも、アオサハギの幼魚やコケギンポが人気のシーズンで、中でもケヤリとのコラボレーションが大人気です。

また、ハナイカの求愛、産卵、ハッチアウト(孵化)までを見られる季節でもあり、生き物たちの生態観察が楽しい季節。
ハナイカだけでなく、森の様に一面が海藻で覆いつくされた水中ではアオリイカも盛んに産卵を行っています。

夏の田辺

カンパチ

水温の上昇と共に、ヒレナガネジリンボウやネジリンボウ、オニハゼ属1種-3など砂地のハゼたちが活発になるシーズンです。

スズメダイの仲間やハナダイの仲間は産卵をはじめ、水中は一気に賑やかに。

イサキやタカベ、イワシの仲間などが大きな群れを為しはじめ、そこにアタックするブリやカンパチは圧巻。
時にはシイラやスマガツオ(スマ)が小魚を狙って現れることもあります。

また、春に生まれたハナタツが成長してくるシーズンで、遭遇率が上がります。

秋の田辺

南の海から訪れる、季節来遊魚が増えてくるシーズンです。
ニシキフウライウオやフリソデエビといった人気の被写体が数多く出現し、水中撮影を楽しむダイバーにはたまらない季節です。

ニシキフウライウオ
ニシキフウライウオ

キンメモドキやクロホシイシモチの群れの量はこの時季にピークに達し、比較的透明度が高い日が多いこともあり、中層の生物を広角に楽しむことができます。

冬の田辺

クロスジリュウグウウミウシ
クロスジリュウグウウミウシ

水温が下がり始めるとホヤの仲間が増えるほか、ウミウシも徐々に増えてきます。

また、体長1cmにも満たないカエルアンコウの幼魚が多く観察出来る季節でもあります。

イロカエルアンコウ(左)とイガグリウミウシ(右)
イロカエルアンコウ(左)とイガグリウミウシ(右)

比較的空いているシーズンでもあるので、小さな生物をじっくりと探すことが出来るシーズンと言えるでしょう。

ダイビングポイント紹介

田辺の代表的なダイビングポイントを3つご紹介します。

ショウガセ

オオカワリギンチャク
オオカワリギンチャク

水深40mほどの場所から水深13mほどへと一気に立ち上がる大きな根の周りを楽しむダイビングポイントです。

根:岩礁や岩など、水底から大きく隆起した場所のこと

なんといってもオオカワリギンチャクの群生が一番の見どころ。
レモンイエローの蛍光色で、淡く光る様な姿は感動のひとことに尽きます。

オオカワリギンチャクは日本近海の水深35~100mでのみ発見されている希少なイソギンチャクで、通常のダイビングで訪れることができる水深に生息している場所はほとんどありません。
それだけでなく、群生地は現在のところ他に見つかっておらず、オオカワリギンチャクの群生が見られるのは世界でここだけと言って良いでしょう。

もちろんオオカワリギンチャク以外にも見どころは盛りだくさん。
ダイバーに人気のクダゴンベは通年観察できるほか、オオウミウマやニシキフウライウオなども例年登場。
根の上ではキンギョハナダイをはじめとしたハナダイの仲間やクマノミ、ミツボシクロスズメダイなどが賑わいを見せます。

ニシキフウライウオ
ニシキフウライウオ

さらに、イサキにタカベ、イワシなどの群れや、そこにアタックするカンパチやブリなど、上下左右に見どころが溢れているため、大忙し!

【エントリー・スタイル】ボート(港より約15分。エントリー時はアンカーを打つ)
【最大水深】40m
【流れが出た場合】流れによってダイビングを中止する場合がある
【ナイトダイビング】○

田辺、ショウガセのオープン確率
ポイントマップでは南部に属するポイントとしているために表示されていませんが、田辺とも至近のダイビングポイントです。

南部出し

最大水深が比較的浅いため、初心者でも楽しむことが出来るダイビングポイントです。
一方で、ベテランダイバーであっても十二分に楽しむことが出来るダイビングポイントで、田辺で潜るなら外せないダイビングポイント。
根の全体を覆うほどのキンメモドキや、イサキやタカベの群れなど、数多くの魚が根の周りに集まっています。

群れだけではなく、幼魚から成魚まで様々なサイズのハナタツや、ネジリンボウをはじめとした砂地のハゼなどを観察することができます。

春になると色鮮やかな海藻のケヤリが数多く繁茂し、フォトジェニックな姿を見せてくれます。

また、田辺でのナイトダイビングは南部出しがおすすめ。
ハナタツが活発に活動を始めたり、ミミイカや甲殻類がたくさん出たりと見どころが豊富なほか、固定ブイがあるため安心してナイトダイビングが楽しめるのもおすすめの理由です。

【エントリー・スタイル】ボート(港より約10分。エントリー時はブイを取る。またはアンカーを打つ)
【最大水深】19m
【流れが出た場合】流れてもコース取りに影響を与えない程度
【ナイトダイビング】○

田辺、南部出しのオープン確率
ポイントマップでは南部に属するポイントとしているために表示されていませんが、田辺とも至近のダイビングポイントです

中島

様々な海象現象を観測している、田辺中島高潮観測塔を中心にして、ダイナミックな地形が広がっているダイビングポイントです。
田辺のダイビングポイントの中でもソフトコーラルの多さは群を抜いています。

ソフトコーラル:サンゴの仲間の中で柔らかい骨格を持つもの。ヤギやトサカ、イソバナなど。

そして、そのソフトコーラルには数多くの魚が集まり、一年を通して安定して魚の数が多いダイビングポイントです。

ソフトコーラルの周りで、サクラダイやアカオビハナダイ、スジハナダイが乱舞する様子は必見です。

【エントリー・スタイル】ボート(港より約10分。エントリー時はアンカーを打つ)
【最大水深】35m
【流れが出た場合】流れてもコース取りに影響を与えない程度
【ナイトダイビング】○

田辺、中島のオープン確率

その他のダイビングポイント

ミサチ、高島、南部出しアーチ、南部出しsp.、コーラルガーデン、コーラルシティ、マッタケ、ロングアーチ、沈船、タカホ、セトガセ、ビーロック、沖ノ島、灘島、西島、天神崎ビーチ

田辺へのアクセス情報

飛行機でのアクセス:
最寄りの空港は南紀白浜空港です。
羽田空港からは直行便が1日3便就航しており、所要時間は約1時間15分です。

車でのアクセス:
阪和自動車道と紀勢自動車道が接続する、南紀田辺インターチェンジが最寄りのインターチェンジです。
インターからは南へ向かい、約10分ほどで到着します。

東京・新宿と田辺とを結ぶ高速バスも運行されており往路、復路、共に夜行バスでアクセスすることも可能です。

電車でのアクセス:
JR紀勢本線、紀伊田辺駅が最寄り駅です。
紀伊田辺駅や、お隣の芳養駅から送迎を行っているダイビングショップもあるため、事前に確認してみましょう。

田辺の観光情報

田辺の絶景スポットといえば、天神崎(てんじんざき)です。
潮位の条件が合うと、水面に周囲の景色が水面に映り込む、ウユニ塩湖のような景色が広がります。

天神崎は、田辺湾の北側に突き出る峠で、緑豊かな海岸自然林と暖流の影響を受ける海、干潮時には岩礁広がる磯、それぞれを住処とする豊富な動植物が観察できます。

また、天神崎は、1970年代の市民地主運動により、日本全国にナショナルトラスト運動(自然や歴史的建造物を市民の寄付で買収・保全する運動)が広がる契機となった場所でもあります。

▶︎天神崎(https://www.tanabe-kanko.jp/view/sizen/tenjinzaki/

2016年に世界遺産に追加登録された鬪雞神社も必見です。
先述の通り、田辺は熊野古道の交通の要衝。熊野三山の別宮的存在と言われる鬪雞神社の荘厳な社殿にお参りしましょう。

また、鬪雞神社の名の由来となったのは、平家物語壇ノ浦合戦の鶏合せの故事。社務所には、武蔵坊弁慶ゆかりのとされている宝物も展示されています。

▶︎鬪雞神社(https://www.tanabe-kanko.jp/view/kumano-kodo/toukei-jinja/

世界的な博物学者・南方熊楠(みなかたくまぐす)は、実は田辺ゆかりの人物。
生前暮らした邸宅の隣に建てられた南方熊楠顕彰館は、南方熊楠熊楠が残した蔵書や資料などを見ることができる資料館です。
田辺の三偉人のひとりに数えられる彼の足跡をたどってみては?

▶︎南方熊楠顕彰館(南方熊楠邸)(https://www.minakata.org/

ランチは、手軽にラーメンを食べたり、焼き立てパンをテイクアウトして海辺で食べたりするダイバーが多いです。
また、紀伊田辺ICの近くにあり、移動の際に立ち寄りやすいレストラン・LOCAL(ローカル)もおすすめです。

情報・写真提供:田辺ダイビングサービス(http://tanabedivingservice.jp/

ScubaMonsters編集部

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