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念願の“一面ホタテ”を求めて北海道・羅臼へ

羅臼のダイビング
海のレポート

ここ数年、西日本を中心として撮影を続けてきましたが、実は前々からどうしても撮影したい被写体がありました。
そして、少し時間が取れた9月中旬、僕は北の大地へと向かいました。

自身初となる北海道の取材撮影、目的地は知床半島の羅臼。
せっかくなので道中に色々見て回りたいと思い、飛行機ではなく茨城県の大洗から出ているフェリーに車を乗せて苫小牧へと移動。

苫小牧からは車で撮影しながら1日かけて知床半島へ入りました。

まず到着して感じたのは、予想以上の暑さです。
例年、9月の中旬だと、もう紅葉が始まっている時期なのですが、木々はその気配すら見せておらず半袖で快適に過ごせる気温でした。

今回お世話になったのは、知床ダイビング企画さん。
さっそく代表の関さんにお話を聞くと、「今の時期は例年ならストーブも使用している頃だよ」とのことでした。

今年の羅臼の水温は高く、例年9月は18度前後のようですが、今年は20度と2度違うそうです。
海から上がるたびに温かいと言っていました。

羅臼・ろうそく岩のエントリーポイント。沖に見えるのは国後島
羅臼・ろうそく岩のエントリーポイント。沖に見えるのは国後島

また、9月は水温が1年でも1番高い時期で、「この時期は常に生き物が少ないよ……」と度々つぶやかれていました。
それでも私にとって、見た事のない生き物に溢れた羅臼の海は新鮮でした。

9月の羅臼

北海道の海といえば、やはり新鮮な魚介類。
海中でも新鮮な海の幸を見ることができます。

所々で目にするのは、エゾバフンウニやキタムラサキウニなどの高級なウニの仲間たちです。

どこを見てもエゾバフンウニだらけ
どこを見てもエゾバフンウニだらけ

千切れている物も多かったですが、浅場に戻るとオニコンブ(通称:羅臼こんぶ)がなびいています。

靡く昆布
なびく昆布

羅臼の海で不思議に感じたのが、カメラを向けて近寄っても魚たちが全く逃げない事です。

黄色い魚はシマゾイ、北海道では道の駅へ寄ると水揚げされて売られている姿も見られます。
この魚はワイドレンズを構えて寄っていっても微動だにしませんでした。

また、エゾメバルというメバルの仲間は撮影をしていると不思議と次から次にカメラの方に寄ってきました。
ワイドマクロの撮影を好む私にとって、第一印象は自分と相性が良く撮影しやすい場所だと感じたのです。

ワイドレンズで寄っても逃げないシマゾイ
ワイドレンズで寄っても逃げないシマゾイ
エゾメバルとアカボヤ
エゾメバルとアカボヤ

一面ホタテ!!

そして、どうしても見たかった光景にも出会えました。
それは、ホタテガイが集まっている光景です。

2019年の「日本の海フォトコンテスト」(日本政府観光局主催)入賞作品で銀賞に入った、一面に広がるホタテガイの写真を見てから、ずっと撮影したいなと思っていました。

フィッシュアイレンズで撮影しても画像が全てホタテガイだらけとなり、収まりきらない……ただただ、色々な角度からシャッターを切りました。

生態は完全にはわかっていないようで、何のために集まるのか気になるところですね。

一面がホタテガイです
一面がホタテガイです

ホタテガイは、その生態行動も見ていて飽きません。
天敵であるニッポンヒトデが来ると危険を察知して飛んで逃げます。
それを見たクロガシラガレイはおこぼれを狙いに次から次へとニッポンヒトデの周りに集まって来ました。
ホタテガイの周りにカレイが集まる行動は、他ではみることのできない面白い光景です。

ニッポンヒトデから逃げるホタテガイ
ニッポンヒトデから逃げるホタテガイ
集まるクロガシラガレイ
集まるクロガシラガレイ

食べられる魚が満載になってしまったのでダイバーに人気な魚も紹介していきます。
しかし最初にお話しした通り、9月は水温が高いためにダイバーに人気の魚が少ないとのことでした。

ダイバーに人気の魚たち

そんな中でも、取材中には独特な姿をしたアツモリウオや北の海では有名な巨大なギンポの仲間、オオカミウオの姿を写真で捉えることができました。
オオカミウオもこれからの季節、繁殖行動のためにオス同士の喧嘩やペアで岩の中にいるところが見られるようです。

アツモリウオ
オオカミウオ
オオカミウオ

海の分解者・イトマキヒトデ

最後に紹介したいのはイトマキヒトデ。

羅臼で撮影していると目に止まるのが、生き物たちの死骸です。
他の場所で撮影をしていても、生き物の死骸を見ると水中で立ち止まってしまうことがしばしばあります。
海は様々な生き物たちが、死骸をあっという間に食して分解していきます。

伊豆で撮影しているときにもよく目にしてたのは、小型の貝が死骸に群がり分解していく様子です。色々な生き物が骨まで分解して命を無駄にしないところが伝わってくるのです。
羅臼でも、その光景が見られたのが印象的でした。
沢山のイトマキヒトデが何かの魚の死骸に群がっていたのです。

毎日、生き物の死骸が転がっているわけでもないので、イトマキヒトデにとってご馳走を負けじと取り合う姿がとても心に残りました。

イトマキヒトデの大群
イトマキヒトデの大群

北海道といえば食

北海道といえばやはり、食も楽しみたいものですよね。
取材中に立ち寄った道の駅ではとれたての魚が売っていました。
新鮮な北の魚や貝・蟹と並べられているので見ているだけでも楽しめます。

もちろん道の駅内の羅臼食堂でも地元の海産物を食べることもできます。
潜りに行くときは是非立ち寄ってもらいたい場所です。

道の駅内にある海鮮工房には取れたての魚介類が並ぶ
道の駅内にある海鮮工房には取れたての魚介類が並ぶ
羅臼食堂の鮭いくら丼
羅臼食堂の鮭いくら丼

関さんの話では約1ヶ月ごとに見られる生き物が変化するそうです。
私も来年また6月に撮影取材に行く予定です。
その時は水温も今回の取材とは10度以上違い、見られる生き物も極端に違うのでまた掲載できたらと思います。

堀口和重

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水中カメラマン。 1986年東京生まれ。 日本の海を中心に、水中生物のおもしろい姿や生態、海と人との関わりをテーマに撮影活動を続けている。撮影の際は、海や生...

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