MAGAZINE
  • HOME
  • 海のレポート
  • 神戸でダイビング!?舞子の浜に“春夏冬”潜って観察できた生き物たちの魅力

神戸でダイビング!?舞子の浜に“春夏冬”潜って観察できた生き物たちの魅力

海のレポート

「えっ?神戸の海って潜れるの?」

神戸の海に撮影に行ってきたと話をすれば、多くの方からこんな反応が返ってきます。
神戸市内に住んでいる人ですら、神戸の海でダイビングができるなんて、想像もしていないかもしれません。

兵庫県神戸市といえば、人口約150万人の大都市。
私自身、神戸の美しい夜景やオシャレな街並みを見ながら、ダイビングとはかけ離れた場所と感じるのも無理もないだろうなと思いました。

今回は、そんな神戸市内にあるダイビングスポット・舞子の浜をご紹介していきます。
まだまだ知名度は低く、未知の海と言っても良い舞子の浜ですが、2021年に、春・夏・冬と季節を変えながら、ゲラゲラビーチというダイビングポイントで撮影してきました。

実際に潜ってみると、季節ごとの海の変化が面白く、その特殊な環境に惹かれるばかり。
その様子から、神戸の海の雰囲気を感じていただければと思います。

神戸の海

舞子の浜は大阪湾に面しており、神戸市と淡路島を繋ぐ明石海峡大橋のほど近くにあります。
私が潜ったダイビングポイント・ゲラゲラビーチは、舞子の浜の中でも神戸寄りにある浜です。
ゲラゲラビーチからは、明石海峡大橋が目の前に見えます。

明石海峡大橋と舞子の浜(ゲラゲラビーチ)
明石海峡大橋と舞子の浜(ゲラゲラビーチ)

まずは、舞子の浜・ゲラゲラビーチの環境をご紹介していきましょう。

タンクを背負って歩く距離は比較的短く、ほんの少し歩くだけでエントリーできます。
水中に入ってすぐの浅瀬には小さな岩場が少しあり、さらに、そこから沖に出ると砂地が広がっています。

流れには注意が必要で、時間帯によって強い流れがおきます。
沖に行けば行くほど流れが早いので、基本的に潜るのは沿岸部。
そのため、水深は最大でも3m前後ほどしか取ることができない限られた場所でのダイビングとなるのです。

みなさんが一番気になるのは、透明度ではないでしょうか。
多くの方から、「大阪湾って透明度悪いんじゃないの?」と言われましたが、私が潜った時の感想としては、予想していたよりも透明度が高いと感じました。
撮影に訪れた全てのシーズンを通して、平均6~8mほどは見えていました。

神戸の海の魅力はと聞かれれば、“私は季節ごとの海の変化が面白い場所”と答えます。

大阪湾は瀬戸内海の入口でもある特殊な環境。
黒潮の支流はなかなか入ってきません。
そのためか、舞子の浜で南方種を見かけることはありませんでした。

年間の水温変化も激しい場所なので、温帯種の生き物たちにとっては1年を生き抜くことさえ過酷な環境なのではないでしょうか。

ここまでの話だけでは、水深も取れなさそうなだけでなく、生き物も少ないようなイメージを与えてしまうかもしれませんが、そんなことはありません。
それどころか、舞子の浜は最近になって少しずつ注目を集めているのです。
それにはSO BLUE DIVERS 須磨の松井さんの力がとても大きいと言えるでしょう。

松井さんは太平洋側と日本海側、双方でのガイド経験があり、生き物を見つけたり、生態観察をしたりするのが得意なガイドさんです。
そんな松井さんが神戸市の須磨を拠点に舞子の浜のガイドを始めてから、少しずつ注目を集め始めています。

松井さんは、あまり知られていなかった神戸の海の生き物たちを日々リサーチし、生き物たちの生態行動などの情報を発信。
そして、その情報がお客さんの目に留まり始めており、私も神戸の海を案内してもらう中でたくさんの生き物を教えてもらいました。

では、実際の海の様子をご紹介していきましょう。

モズクガニとイカナゴに出会えた春

私が最初に舞子の浜を訪れたのは、2021年の4月。
この時の水温は13.5℃と、少しずつ水温が上がり始めたばかりの時期でした。

全体的に生物は少な目でしたが、よくよく海藻を見てみるとウミウシの仲間がついていたり、メバルの幼魚が群れていたり。
また、マダコが蛸壺に上手に隠れている姿を見ることもできました。

……とはいえ、日中は生き物が少なく、活発ではないという印象でした。

メバルの幼魚
メバルの幼魚
蛸壺の中にマダコ
蛸壺の中にマダコ

しかし、夜になると変化がありました。
改めて夜の海に潜ってみると、ダンゴイカの仲間やカナガシラの仲間の幼魚など、日中には砂地に潜ったり、上手に海藻などに隠れていたりしために気づかなかった生き物が次々に現れたのです。

さらにこの時は、これまで私が見たことがない変わった生き物に出会うこともできました。

まずは、モクズガニ。
本来このカニが生活しているのは、海ではなく川です。
春の時期だけ、どこか近くの川から舞子の海へと降りて来る様でした。

海に降りてきたモクズガニは卵を抱えており、幼生の放出を行います。
ベンケイガニやアカテガニなど川から海に降りてくるカニの仲間は他にもいますが、彼らが幼生の放出を行う時は、海水に完全に浸かることはありません。
波打ち際で幼生の放出を行います。

しかし、このモクズガニは違います。
なんと海中で、幼生の放出を行うのです。

そのため、春の舞子の浜では、海でのダイビング中に川のカニを見ることができてしまいます。

卵を持つモクズガニ
卵を持つモクズガニ

もうひとつ驚かされた生き物が、関西では馴染み深い、イカナゴという魚。
釜揚げやくぎ煮など、食用の魚として関西ではとても有名です。
大阪湾では春に漁が行われますが、個体数はかなり多い様です。

そんなイカナゴですが、私が知る限りダイビングで見たという話を聞いたことはありませんでした。
しかし、今回夜の舞子の浜に潜ってみると、そのイカナゴに出会うことができたのです。

観察した時は砂に潜っていましたが、ライトを当てたり近寄ったりすると次々に砂地から飛び出して姿を現しました。
とにかくスピードが速いため、残念ながら体全体を撮影することはできませんでしたが、驚きの出会いとなりました。

顔だけ出しているイカナゴ
顔だけ出しているイカナゴ

春の舞子の浜の海では、モクズガニやイカナゴなど他の海では見かけない生き物との出会いに興奮。
もっとこの海の事を知りたいと思っているうちに、予定していた撮影期間があっという間に終わったのでした。

生き物が活発に動く夏

7月上旬に舞子の浜を訪れた時、春とはガラッと印象が変わった海が私を迎えてくれました。

春に比べて大きくなったメバルの若魚が泳ぎ回り、少し沖に出れば小さなコブダイの幼魚が数個体泳いでいるなど、生き物の数が増えて海の中が盛り上がっていました。
なんだか夏の始まりを感じさせられます。

コブダイの幼魚
コブダイの幼魚
春より大きくなったメバル
春より大きくなったメバル

水温の上昇は、生き物の生態行動にも変化をもたらします。
砂地では、春には見られなかったサイズのマダコが動き回り、ヒメハゼも増えているように感じました。
ヒメハゼの産卵が始まっており、雄が貝殻の下で卵を保護する姿も観察することができました。

移動しているマダコ
移動しているマダコ
貝殻の中に生みつけた卵を守るヒメハゼ
貝殻の中に生みつけた卵を守るヒメハゼ

春とはうってかわって、夏の舞子の浜では、日中から活発な生き物たちの生態行動が見られました。

アイナメの卵輝く冬

本格的な冬に突入した12月。
再び、舞子の浜を訪れました。

水温は下がった一方で、透明度はやや高くなったように感じられます。
夏に比べると、メバルやベラ類の生き物が成長し、大きくなっていました。

冬は、夏とは違う生き物の生態行動を見られるのが楽しみのひとつです。
冬に人気なのがクジメやアイナメといった魚たち。
クジメやアイナメは舞子の浜で通年見られる魚ですが、水温が低くなる12月頃に卵を産みます。

アイナメのオス
アイナメのオス
オス同士縄張り争い中のクジメ
オス同士縄張り争い中のクジメ

この卵を目当てに訪れるダイバーは多く、今回私が撮影に訪れた時も、クジメやアイナメの卵の撮影を狙って、数名の方が潜っていました。
まるで宝石の様に輝く卵は、フォトダイバーにとって、とても魅力的な被写体なのです。

今回は嬉しいことに、エントリーしてすぐの場所で卵を見ることができました。

アイナメは、オスが卵を守ります。
また、卵の色は、産んだメスの個体によって異なるため、様々な色彩のものが見られます。

クジメの卵は紫色で、こちらも美しい卵です。

アイナメの卵
アイナメの卵 拡大
アイナメの卵 拡大
クジメの卵

冬も他の季節とは違った楽しみがあり、通年で海を見て行くには舞子の浜は面白い場所だと感じました。
関西のダイバーにとって、神戸市からすぐに潜れるというのもありがたい点ですね。

私は観察することができませんでしたが、秋にはマダコが卵を抱え、ハッチアウトまで観察することもできるそうです。
それ以外にも、まだまだ知られていない魅力が多そうな舞子の浜。
関西に住んでいる生き物が好きな方、生態観察が好きな方は是非一度潜ってみてもらいたい場所です。

ちなみに舞子の浜のダイビングポイントであるゲラゲラビーチにダイビング専用の施設はありません。
カフェの一部をお借りして拠点にしているのですが、カフェに直接問い合わせても潜ることはできないため、舞子の浜に潜りたい場合は、まず、SO BLUE DIVERS 須磨をはじめとしたダイビングショップに問い合わせをしてみてください。

撮影協力:SO BLUE DIVERS 須磨(https://www.soblue-divers.com/

堀口和重

9,225 views

水中カメラマン。 1986年東京生まれ。 日本の海を中心に、水中生物のおもしろい姿や生態、海と人との関わりをテーマに撮影活動を続けている。撮影の際は、海や生...

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。