知られざる彩りの瀬戸内海・日和佐!期間限定のハナダイパラダイスへ
徳島県、日和佐(ひわさ)の海を知っていますか?
四国といえば、高知県の柏島や愛媛県の愛南といった際立った特徴を持つダイビングスポットが揃っていますね。
そんな四国の中でも密かに人気が出てきているのが、この日和佐。
日和佐と言えば、春先にタカアシガニを狙ってダイビングができることで有名です。
例に漏れず、僕もタアカシガニの撮影を目当てにこの海と出会いました。
2021年に初めて潜った際には、もうタカアシガニにロックオンしていたので、「日和佐の海=タカアシガニ」で頭がいっぱいになっていました。
でも、潜ってみて驚いたんです。
どのダイビングポイントもソフトコーラルが多くカラフルで、魚影も濃い。
え、めちゃくちゃ面白いじゃん……!
瀬戸内海側に位置する徳島県は、黒潮があたる太平洋側の高知県の海とは異なり、透明度こそスコーンと抜けるわけではなかったですが、冷たい潮の混じる独特の雰囲気を持った海でした。
そこからはタカアシガニの撮影もそこそこにソフトコーラルに夢中になったことを覚えています。
そして、日和佐のダイビングショップ・海と遊ぼ屋 海達の代表の森永さんから「夏の期間限定ではあるけど「渡りの瀬」というポイントはサクラダイが群れやハナダイとソフトコーラルがすごいよ!」と教えて頂きました。
そんなの、まさに僕の大好きな光景!!!
ということで改めて、2022年9月に徳島県、日和佐の海にやってきたという訳です。
今回は期間限定ポイント「渡りの瀬」にガッツリ潜ってきた様子を中心に、日和佐の海について紹介していこうと思います。
せっかくなので、タカアシガニについても最後にご紹介しますね!
ソフトコーラルとハナダイの楽園「渡りの瀬」へ
初めて「渡りの瀬」に潜った感想は……
色彩や魚影に溢れていて、賑やかな海!
なんだか魚たちのお祭りの中にいるような感覚でした!
伊豆に似ている雰囲気で、初めて潜った感じがしなかったんですよね。
田子とか伊東とか土肥の飛島に近い感じというか。
正直、伊豆半島を拠点に潜っている僕はちょっと心の奥底ではハナダイといったら、伊豆が1番って気持ちが少しありましたが、そんな思いも蹴散らされてしまうほどに華やかでした!
「渡りの瀬」は、8月1日から9月30日のみの夏季限定ポイントです。
(8月14・15日は除く。6月1日〜のプレオープン期間は、14:00以降のエントリーのみ)
牟岐大島と日和佐の海岸線のちょうど中間位に位置するポイントで水深5〜60mからトップ10mまで伸びる巨大な沈み根で潮通しが抜群で、1ダイブまるまる魚に囲まれるほど魚影の濃い場所です。
ただし水深が深く流れがかかることもあるため、アドバンスで50本以上、半年以内にダイビングをしている人などのルールがしっかり決められています。。
まずは船をブイに係留し、エントリーするとこんな感じに大きな沈み根が見えてきます!
この日は浅瀬の透明度は比較的高く10〜15mくらい!
平均すると10mくらいの透明度が多いそうです。
潮通しの良いポイントのため、少し流れがあります。
でも、ロープがあるので、水深10mの根頭までロープにつかまりながら潜降。
そこからさらに、巨大なアーチのある水深30mまでロープで繋がっています。
まずは渡りの瀬に潜って1番最初に驚いたのは、その魚の多さ!
まだ潜降途中だというのに、イサキの巨大な群れに出くわしました。
カンパチやワラサがエキサイティングにアタックしている!
ちなみに渡りの瀬が期間限定になっている理由は、この魚影。
漁場や釣りでも有名なため、ダイバーは限られた時期しか潜ることができないんだそうです。
納得の魚影。
そして、魚たちの動きがものすごく速い!
まさに捕食者から逃げ惑う光景で、一瞬でイサキに囲まれたかと思うと、
次はもうタカベの群れに移り変わっている!
エントリーした瞬間からもう、その光景に心奪われる。
この群れが次から次へと入れ替わりながら絶えず忙しいのが「渡りの瀬」の特徴。
じっと固まっている群れじゃないだけに撮影には苦戦するかもしれませんが、躍動感や臨場感はものすごく、いい意味で潜っていて心落ち着かない海です。
そして少し深い方に降りていくと、ハナダイの群れが少しずつ出てきました!
「渡りの瀬」で見られるハナダイには、サクラダイやアカオビハナダイ、スジハナダイがいます。
この光景は、ホームグランドにしている伊豆の田子や伊東を思わせるような景色。
ソフトコーラルが咲くとこの岩肌が見えないほどのオレンジ色になると聞き楽しみにしていたのですが、残念ながらこの日は咲いていない。。。
まあ仕方ないなあと思いながら撮影していると……
そこにどっと大量のイサキが雪崩れ込んできました!
ハナダイの群れをイサキの群れが押すーー、ものすごい密度の光景に!
さすがにこの時は冷静にシャッターを切ることができないほど興奮しました!
よく伊豆でもこういうシチュエーションを狙うのですが、なかなかうまくはいかないんです。
「さすがに1本目のダイビングでこの光景はうまくいきすぎでしょ」と感じたのですが、その後のダイビングでも毎回のようにハナダイの撮影をしているとイサキやタカベの群れが突っ込んでくるんです。
2本目になると、心の余裕が出てくるのでサクラダイのオスを主役にしようなどと欲張ってみました。
渡りの瀬は期間限定のポイントなのでダイバーの入る数が圧倒的に少ないこと、そして、イサキなどの群れがストロボやダイバー自体に驚いて逃げやすいことや、捕食者が多く常に群れが逃げまっていることが多いことから、このようなシチュエーションが生まれやすいんじゃないかと思います。
「ハナダイの群れなら伊豆でいいじゃん!」って思う方、僕も確かにハナダイだけなら伊豆もすごいのでいいと思います。
でもこんな魚が入り混じった写真が撮りやすいのが、「渡りの瀬」の特徴なんじゃないかなと今回潜っていて思いました!
その後もハナダイとの絡みだけでなく、ソフトコーラルの咲く岩の周りをイサキが流れるように逃げていく、心躍るようなシチュエーションに何度も出会うことができました!
本当に豊かなポイントなんだなと。
そしてダイバーの数が少ない分、そのままの海が残っているような気がします。
すっかり魚に夢中になって忘れていましたが、「渡りの瀬」といえば……
水深45m前後から水深30mまでの高さにまで伸びる巨大なアーチがあるのも見どころの1つ!
ただし、このアーチ、着底して写真を撮ろうとすると深すぎるため、中層から見るような形にはなります。
そしてこのアーチの周辺はこんな巨大なソフトコーラルだらけ!
人の背丈を優に越える大きさのソフトコーラルがたくさん生えています。
僕が潜ったタイミングでは、“ソフトコーラル絶好調”とはいえないダイブが続きましたが、それでもそのカラフルさは伝わってきます。
アーチの横にはこんな巨大なソフトコーラルが左右の壁に群生するポイントも!
とにかく切り取りたい光景が多すぎて困ってしまう!
次に来る時には、全開のソフトコーラルを撮りたい。
同じポイントに潜っても変化に富むし、たぶん僕は10ダイブ連続とかで潜っても飽きないくらい好きなポイントです。
もちろんサクラダイも撮影することができました!
今年はまだ例年ほど集まっていないということでしたが20〜30匹前後のオスの群れが各所に集まってきていて見応えは抜群!
関西エリアではなかなか見られないというサクラダイの群れや、こういったソフトコーラルやキンギョハナダイの群れる光景。
大阪からも3時間半と日帰り圏内の日和佐の海は、もっと関西のダイバーに知られて良いのではと思うほど、ポテンシャルの高い海でした!
定番ポイントも面白い!
今回は午前2本は渡りの瀬、午後は通常エリアでダイビングというパターンで潜っていたのですが、もちろん渡りの瀬以外のエリアも面白いんです!
写真は杓子というポイントのイソバナとネンブツダイ!
このポイントは水路のような地形の側面にイソバナが生えていたり、
ネンブツダイが水路の間に群れていたりします。
水路の上には時折、イサキなどの群れが通るなど、賑やか!
他にも個人的にすごく気に入った場所がこの割れ目。
ここは同じ杓子でも別のブイがある杓子の丘というポイントですが両面からイソバナが生えている美しい光景が。
こんな感じでイソバナが多いのも日和佐の海の特徴かもしれないですね。
他にも港から近い平家というポイントには水深15m前後に洞窟があり、その周りにはマアジやネンブツダイが群れていて、浅くて穏やかな上に初心者でも見に行ける美しい光景があります。
洞窟の下の方や奥部にはイセエビやヒメセミエビ、サクラテンジクダイといった暗がりが好きな生き物がいますが、注目してほしいのが上部のソフトコーラルがたくさん生えている部分。
小さなソフトコーラルが密集していて、華やかな景色を作り上げています。
この日和佐の海、圧倒的な何かがあるわけではないのですが、どことなく美しい光景がところどころに広がっていて、それを拾い集めるのが表現者としてすごく面白かったです。
圧倒的なフォトスポットがあるわけじゃない分、その中から自分なりの目線や、美しさを見つける楽しさがありますね。
またこの平家には水中写真家のむらいさちさんが命名したレインボーウォールという、カラフルなイソバナの群生する壁があります!
ここは見事というしかないほどイソバナが咲き乱れていて、夢中になって撮影したスポットです!
しかも水深も15m前後と浅いので3本目にもいけるし、初心者でもいけるし、港からも近いし、是非潜って見てもらいたい景色ですね!
今回はほとんど撮りませんでしたが、マクロ生物を絡めて撮影しても面白いかもしれません。
春のシーズンは日和佐名物・タカアシガニを狙おう!
さてさて、ここまでハナダイやソフトコーラルをご紹介してきましたが……
日和佐といえばタカアシガニ!!!
ダイビングで狙ってタカアシガニを見れるポイントなんて日本広しといえど、この日和佐だけなのではないでしょうか?
ただ通年見られるわけではなく、毎年3月の下旬から4月上旬にかけて交接のために深場から上がってくるタカアシガニを狙って探します。
僕が訪れた4月は、水深25mくらいの場所で観察することができました。
このタカアシガニはメスのタカアシガニで、オスに比べてハサミが小さいことと、お腹の部分が膨らんでいるのが特徴です。
僕も初めてこの子をみた時は、水中であまりにも目立つし、大きいし、異様なオーラがあり、めちゃくちゃテンション上がったのを覚えています。
大きさは大体1mくらいあり、じっとしているため恐くはありませんが、これで襲ってきたらめちゃくちゃ恐怖ですね!
1本目はびびってあまり近づけませんでした……笑
そして、こちらはオスのタカアシガニ!
やはりメスに比べて大きいしハサミも大きい!
1匹目にはビビって近寄らなかったのですが、基本はじっとしているし、ゆっくり動くという話を聞いていたので……
2匹目はぐっと寄ってみました。
そしたら、めちゃくちゃ襲ってきた!笑
完全に一眼レフカメラを覆うサイズのオスのタカアシガニに驚き、思わずカメラを引いて逃げ出す僕。
この日ガイドをしてくれた海達のガイドの柚木崎さんは、めちゃくちゃ驚いて逃げてる僕を見て大爆笑してました。
「こんなアグレッシブなカニは珍しい」とのこと。
なんだか喜んでいいのか恥ずかしいのかわかりませんが、せっかくだからカニと2ショット撮りましょうと言われるがままに2ショットも!
普段、水中で記念写真ってほぼ撮らないんですが……なぜか、僕のピースに合わせてタカアシガニも全力でピースしてくれました。
襲われても危ないほどではないそうですが、いやいや、普通に恐いって!笑
でも、タカアシガニの方だって自分よりも大きい生き物が近付いて来たらめちゃくちゃ怖いし、威嚇だってするよね。
驚かせてごめんよ。
ちなみにこのタカアシガニを狙った大磯というポイントも大きな根の周りを潜るポイントなのですが、根の周りにはソフトコーラルがたくさん生えいていて美しい。
最初の1本目はなかなかタカアシガニが見つからなかったのですが、それまでにソフトコーラルなどを撮影していたらタカアシガニを忘れていたほど。
普通に潜っても楽しいポイントなんです!
おわりに
今回、徳島県日和佐の海に潜って、改めて日本にはまだまだ知らない光景がたくさんあるし、それぞれの海にそれぞれの良さがあって面白いと思いました!
秋は渡りの瀬でハナダイまみれで春はタカアシガニ!
めちゃくちゃずるい海です。
しかも徳島県というと、なんだかすごく遠いイメージがありましたが、神戸からバスで1本で行けるし、関西のダイバーからすると串本に潜りにいくのと同じくらいの距離感なんですね!
ぜひ皆さんも徳島県・日和佐、潜りに行ってみて下さい!
取材協力:海と遊ぼ屋 海達(https://umitatsu.com/)
■CHECK!■
今回ご紹介した日和佐のダイビングについては、茂野優太さんのYoutubeでも紹介されています。合わせて、お楽しみください。
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