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試練の先にある命。三重県銚子川で見たナガレヒキガエルとアユの営み

海のレポート

これまで海の生き物の撮影にほとんどの時間を費やしてきましたが、ここ数年、海ではない場所にも力を入れて撮影をすることも出てきました。
そのうちのひとつが三重県紀北町を流れる銚子川です。

きっかけは、尾鷲市の海をメインでガイドをしている、トゥルーカラーのガイド・伊藤さんから「川も是非、撮影してほしい」とお話をいただいたことでした。
銚子川がある紀北町出身の伊藤さんは、地元の魅力をより伝えていきたいという思いがあったのだと思います。

今回は、混み合う夏を除いた春、秋、冬の季節に観察した生き物をご紹介していきます。
そこで私が目にしたのは、川で暮らす生き物たちが数々の試練の先に命を繋いでいく姿でした。

下流の銚子川と電車
下流の銚子川と電車

見たことのない光景

河口付近は過去にも少し撮影したことがありましたが、本格的に上流の撮影を開始したのは2021年の春からです。

尾鷲の海で撮影した後、「面白い光景が見れるから是非!」と伊藤さんに上流へ連れて行ってもらったのがはじまりでした。

銚子川上流
銚子川上流

到着すると、まず目についたのはクマ出没やスズメバチ注意の看板。
クマに関しては稀にしか報告はないようですが、海とは少し違う緊張感があります。

さらに急斜面の崖や、苔が生えてツルツル滑ってしまいそうなところを降りていきます。
やっとのことで崖を下り水中を覗くと、そこには見たことがない光景が広がっていました。

それは大量のオタマジャクシ。

オタマジャクシ
オタマジャクシ

こちらはナガレヒキガエルというカエルのオタマジャクシです。
オタマジャクシといえば、田んぼや水溜りなど水流がない静かな場所に卵が生んである事をイメージすることが多いと思います。
しかし、このナガレヒキガエルのオタマジャクシは大きくなるまで川で生活をするのです。

見てほしいところは、その数です。
岩びっしりにオタマジャクシがついています。
こんなにもびっしりいるのかと興奮しましたが、苦手な人にはお勧めできない光景かもしれませんね……。

岩びっしりのオタマジャクシ
岩びっしりのオタマジャクシ

ワイドポートにまでくっついてくるオタマジャクシ。
潰してしまわないように撮影をしました。

川で一生を過ごすアユ

夏になれば川遊びに来る人で大賑わいする銚子川。
ピーク時は車が止められないほどで、中々撮影は難しいようです。
しかし、季節が変わり秋になると落ち着き始めます。

紅葉が美しくなり、川も海も変化が訪れる季節です。

紅葉と銚子川
紅葉と銚子川
落ち葉も季節の訪れを感じさせる
落ち葉も季節の訪れを感じさせる

この季節に紹介したいのがアユ。
川で生まれ、海で育ち、そして生まれた場所に戻って産卵して、命を落とす。

たった1年という短命で、どれだけの試練を乗り越えてきたのでしょうか?

産卵のため生まれた川に戻ってきたアユ
産卵のため生まれた川に戻ってきたアユ

昨年、アユの撮影調査をさせてもらい、産卵まで撮影が成功したのです。
私も産卵は初めて見たのですが、予想以上の流れの中でアユが力を振り絞っていることに驚きました。
流れが強い場所に卵を生むことによって、外敵から卵を狙われないようにしているのでしょう。
最後の最後まで試練が与えられた魚だと感じました。

秋までに大抵の生き物が姿を消します。
アユのように次の世代に命を託し死んでしまう生き物や冬眠に入る生き物など様々です。

試練の先にある命

ガイドの伊藤さんの話では、冬を越した直後、春先の銚子川では、ほとんど生き物を見かけないようです。
しかし、気温が上昇すると急に生き物達が現れ始めるのだそう。

魚たちが増え、アカハライモリが泳いでいる姿も見受けられます。
ここである生き物も登場します。
最初のお話で出てきた、ナガレヒキガエルです。
春にはオタマジャクシの姿でしたが、春には成体が見られます。

産卵のために山を降りてきたナガレヒキガエルは川に降りていきます。
この時に車に轢かれてしまうカエルもいるようです。

山から降りてきたナガレヒキガエルのペア
山から降りてきたナガレヒキガエルのペア

うまく川まで降りられたカエルたちは産卵を始めるのですが、次の試練が訪れます。
途中で他のオスがメスを奪おうと寄ってくるのです。
その時はメスの上に乗っているオスが、寄ってきたオスを後ろ足で蹴って追い払います。

カエルキック。水中での戦いはスローモーションだ

失敗すると、どんどんオスが積み上がり乗っていきガマ合戦と呼ばれるタワーのような状態になってしまいます。 

そんな数々の試練を掻い潜り、ようやく産卵までたどり着くのです。

産卵場所に到着したペア
産卵場所に到着したペア

産卵後、数日経つとカエルは全く姿を見せなくなります。

どの生き物にも与えられた試練があり、その壁を乗り越えた者達が次の世代に命をつなげることができる。
季節を通してその事をより知ることができました。

最後に

山に入り川辺を歩いていると、木々と生き物に癒されます。
冬は冬眠につき、春から活動して、夏から秋かけて次の世代に託し、冬にまた静かになります。
そして、川からの水は海に流れ、海の生き物の栄養となっていくのでしょう。

山と海。
その両方を繋ぐものがこの銚子川だと心から感じます。

今後もこの素晴らしい銚子川の撮影を続けて皆さまに伝えていきたいと思います。

撮影協力:トゥルーカラー(​​https://truecolor-owase.com/

■■■CHECK!■■■

2022年12月、水中カメラマンの堀口和重さんは、今回ご紹介してくださった三重県銚子川で撮影されたナガレヒキガエルの作品で、オランダのフォトコンテスト「Nature Photographer of the Year 2022」水中部門グランプリを受賞されました。

Nature Photographer of the Year 2022

堀口和重

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水中カメラマン。 1986年東京生まれ。 日本の海を中心に、水中生物のおもしろい姿や生態、海と人との関わりをテーマに撮影活動を続けている。撮影の際は、海や生...

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