最果ての地・与那国島の潜り方徹底解剖
ダイバーなら一度は見てみたい大物。
マンタにジンベエ、ナポレオンフィッシュなど様々な憧れの生物がいますが、ハンマーヘッドの愛称で親しまれるシュモクザメも、誰もが憧れる生物のひとつでは無いでしょうか??
ハンマーと言えば南伊豆の神子元島、日本最西端・沖縄県与那国島が有名ですね!
ということで、今回ははるばる与那国島まで足を延ばし、実際に行ってきた様子をレポートしてみたいと思います!
与那国島の基本情報
与那国島は東京から遥か2100km以上離れた沖縄県八重山諸島に属する離島です。
八重山諸島と言っても、メインの石垣島からも120km以上離れており、絶海の孤島と言えます。
一方で台湾までは110kmと近く、まさに国境の島。
もちろん、小学校の頃習った通り、日本最西端であり、日本の東西南北の端の中で唯一一般人が立ち入り可能な場所でもあります。
人口はおよそ1700人。
周囲30km足らずの島にある、祖納(そない)、久部良(くぶら)、比川(ひがわ)、3つの集落に島民の方々は暮らしています。
ダイビングショップは2018年2月現在で以下の5つが存在します。
与那国島への行き方
与那国島ヘは必ず沖縄本島か石垣島を経由して行くことになります。
なので、みなさんがお住いの場所から沖縄本島や石垣島までは、割愛させてもらいますね!
最もポピュラーなのは石垣島から1日3便出ている飛行機です。
これなら各地から当日中に与那国まで移動することが可能です。
ただし、関西の方なら石垣までLCCが飛んでいますが、関東の人にとっては予算的には最も高くなってしまうかも…
2018年2月現在、ダイヤは以下の通りです。
- 10時35分発
- 12時40分発
- 17時35分発
飛行機の場合、沖縄本島からも1日1本、出ています。
ただし、朝早い便なので、那覇に1泊してから与那国に移動することになるでしょう。
一方で、那覇までは各地からLCCが飛んでいますよね!
なので、時間はあるけど予算を抑えたい!
そんなみなさんに、最もおススメの行き方です!
2018年2月現在、那覇空港を7時20分に離陸する便があります。
尚、石垣からでも那覇からでも、使用されているのは50人乗りのプロペラ機!
プロペラ機に乗ることはそうそう無いと思うので、貴重な経験が出来ますね!
最後の一つとして、石垣島からフェリーという方法もあります。
時間こそ4時間とかかってしまいますが、予算を抑えられてかつ、楽しい(!?)船旅まで出来ちゃいます!
2018年2月現在、毎週火・金曜日の10時に出航します。
与那国島のダイビングスタイル
与那国島のメインシーズンは冬。
一番の見どころであるハンマーのシーズンが冬であることと、もう一つの見どころである海底遺跡が夏場の風と相性が悪く、冬に行きやすいポイントであるためです。
そして、冬の与那国の海をひとことで現すと…
初心者お断り
です(苦笑)
どちらのポイントも波が高い日が多く、さらに完全にドリフトダイビングになります。
さらに、ハンマーのポイントは水底が50m~70mになる場所を常に中性浮力を取りながら進みます。
もちろん初心者であっても受け入れはしてくれると思いますが、生き抜くことに必死で楽しめませんよ!
水深は当たり前に18mを超えるのでアドバンスは必須であることに加え、筆者の主観としては、最低でも経験本数100本以上は欲しいところ。
どんな状況でも誰かの助けを必要とせず、中性浮力も完璧にしてから向かってくださいね!
なので、与那国島に関しては、レベル的にもベストシーズン的にも卒業旅行がおすすめ!
今、1年生や2年生の皆さんは、卒業直前に与那国に行けるレベルになることを目標に、コツコツ潜ると良いと思いますよ!
また、予算的にも海外に匹敵するくらいの予算が必要なので、今のうちからコツコツ貯めておきましょうね!
与那国島に挑む装備
各ポイントの紹介の前に、もう少しだけ事前準備をご紹介させて下さい。
与那国島に向かう際には、以下3つの器材を揃えてから向かうことをお勧めします!
ダイブコンピューター
ハンマー狙いのダイビングは、最大水深30m、平均水深が20m近くなることも。
さらには水底までははるかに距離があるドリフトダイビングです。
こんなハイレベルな環境なので、誰かのダイブコンピューターで窒素管理をするのではなく、1人1台必携でお願いします!
シグナルフロート
使わないに越したことは無い器材ですが、万が一チームからはぐれてしまった時のために、これも1人1つ必携で行きたい器材です。
これがあるのと無いのでは、万が一1人で漂流してしまった場合の発見率が全く違いますよ!!
ボートコート
沖縄とはいえ冬は暖かいとまでは言えません。
また、冬の与那国島は晴れる日が少ないため、ボートコートは持って行った方が吉。
無い人はウインドブレーカーなどでも良いので持っていきましょう!
与那国島の潜り方
西崎(いりざき)
与那国島のメインポイント、ハンマー狙いのポイントです。
沖縄の言葉で
- 東:あがり
- 西:いり
- 南:ふぇー
- 北:にし(ややこしいw)
なので、いりざきと読みます。
与那国島最西端の岬で、もちろん日本最西端の場所と言うこと。
つまり、西崎で潜っている時には誰よりも日本の西に居るということですね!
ちなみに与那国島東端の岬は東埼(あがりざき)と言います。
基本的にダイビングショップの船は西崎近くの『久部良港(くぶら)』から出るので、ポイントまでは5分程度とすぐに到着します。
と、ここまでは良いのですが、ここからが超上級者向け。
順を追ってご説明して行きます。
準備
出航前に器材をセッティングし、出航と同時にウエイトの装着やマスクの曇り止めなどの準備を始めます。
ポイント到着間近になると、揺れる船の中で器材を背負います。
この揺れる度合いが半端では無いので、”必ず”座った状態で器材を背負いましょう。
器材の前に膝立ちになり、左手を通す。
その左手でタンクのお尻を持ち上げて背負うとGoodです。
エントリー
全員の準備が完了すると、船尾のラダーに一列に並びます。
この時の緊張感と言ったら…
慣れればワクワクに変わりますが、慣れないうちはただただ張り詰めた空気感です。
ガイドの合図と同時に船尾からジャイアントストライドエントリー。
この時、ボヤボヤとしている暇はなく、自ら水面の安全を確認して、出来るだけ間を開けずにエントリーします。
エントリー直後
エントリー後は水面で集合するなどということは無く、各自すぐさま潜降し、水深10m付近に集合します。
もちろんそれも初心者には大変なことだと思うのですが、気を付けてほしいのはエントリー前から続く緊張感です。
エントリーすると、そこには上下左右全てがただただ青い世界。
水底は、もちろん見えません。
いわゆるブルーウォーターダイビングというやつですね。
慣れればアドレナリンの源になるのですが、慣れないうちはドキドキを増幅させます。
エントリー前からの緊張感とあいまって、大きなストレスになりかねないので、平常心を心がけましょう。
ハンマー探し
水深10m付近に全員が集合したら、水深を一気に20m付近まで落とします。
この時、思っているよりもBCにたくさん給気すると、中性浮力を取りやすいかと思います。
それでも気づくと思っているよりも水深が落ちてしまうことが多いので、常にダイコンの水深はモニタリングするようにしましょう。
場所にもよりますが、多くの場合、水深20m付近まで降りても水底は見えません。
左右に目印となるものも、もちろん無いので、ここで気を付けてほしいのは、めまいです。
目印となるものが無い中でキョロキョロとハンマーを探していると、平衡感覚が狂い、めまいに襲われることがあります。
そうならない様、水面やガイド、他のメンバーを頻繁に見ることで、上下を常に意識するようにしましょう。
ハンマー発見
運よく水深20m程度や、それより浅い場所に出てくることもありますが、基本的にハンマーは自分たちよりも下に出ます。
多くは30m~50m付近でしょうか。
そう。
めちゃめちゃ深いんです。
そして、ハンマーを見つけると、その群れを目がけて一気に潜降します。
潜降という言葉は適切では無いかもしれません。
斜め下に向かってダッシュします。
もちろんここで気を付けてもらいたいのは水深です。
30m以深に出現している場合、深追いしすぎることの無いように気をつけましょう。
そして、ダイコンの示す無減圧限界時間(NDL)にも常に気を付けておきましょうね。
また、出来るだけハンマーの群れに近づくためには、群れが進む方向に並走することがコツですよ!
ハンマーから遠ざかる
ハンマーが遠ざかってしまったり、こちらの時間や窒素的に限界が来たりした場合、水深を上げることになります。
水深30m程度から一気に10m程度浮上することになるので、浮上速度とBC操作には細心の注意を払いましょう。
運よく序盤で出現した場合、再び水深20m付近を流してハンマーを探すことになります。
そして…
もし出現した場合には、再び水深30m付近まで猛ダッシュ!
ん?
教科書で習った、一番ダメなダイビングの合わせ技?
そうなんです。
正直に言います。
与那国島のダイビングは、深く、かつ、箱型&のこぎり型になりやすいダイビングスタイルなんです。
ですが、それを補って余りある感動をお約束します!
ただ、そのリスクをしっかりと理解したうえで向かう、という意味でも初心者お断りの海なんですね。
尚、お分かりかとは思いますが、必ずハンマーの群れに遭遇できるわけではありません。
単体で出現することもあれば、1匹も現れないことも…
さらには、ハンマー以外の魚すら1匹も見ない、ノーフィッシュなんてこともあります。
ハンマー狙いのダイビングが博打ダイビングなのは、認識したうえで潜って下さいね!
ちなみに今回の訪問では…
1日目-2本目:20匹程度
2日目-1本目:単体×5、ペア×1
2日目-3本目:ノーハンマー
3日目-1本目:1匹
3日目-2本目:40匹程度
3匹目-3本目:20匹程度×1回 30匹程度×1回
比較的好成績だったかなと思います!
安全停止
ダイビングが終了すると、安全停止です。
この時も、一気に水深が浅くなることになるので、浮上速度とBC操作に注意しましょう。
もちろん安全停止の際に捕まる場所は無いので、ばっちりホバリングをしての安全停止になります。
エキジット
安全停止が終了すると、ガイドの周囲に集まった上で浮上です。
最後の1mまで浮上速度には注意しましょうね。
個人的には、与那国のガイドの方が浮上間際、安全のためにレギュレーターをフリーフローさせる姿が、昔から憧れだったりしています。(笑)
海底遺跡
もしかするとノンダイバーにも有名な海底遺跡。
遺跡なのか自然が形成したのか、実は学者の中では自然形成であるという説が有力だとは言うものの、与那国に訪れたダイバーであれば必見の場所であることは間違いありません。
仮に遺跡だとしたら、そこに暮らす人々は将来ここが遺跡になって、海に沈んで、1ダイブでちょうどよく回れるサイズに作ってくれたのでしょうか…
そのぐらい、ちょうど1ダイブでほとんどの場所を回ることが出来ます。
ちなみに正式には、『与那国島海底地形』と呼ばれています。
島の南側にあるため、久部良港から約20分と、やや遠い場所にあります。
そのため、遺跡に行くときには特にボートコートを忘れずに持って行きたいですね!
島の南側ということは、この遺跡のポイントが日本で一番最初に黒潮が当たる場所なんですよ!
西崎と同じく、順を追ってご紹介して行きたいと思います。
準備
西崎同様、船上で準備を行いますが、ポイントまで時間があるので、余裕を持って準備を行うことが出来ます。
揺れる中で器材を背負うのは同じなので、こちらも倒れない様、膝立ちで背負いましょう。
エントリー
西崎同様、ガイドの合図と同時に船尾からジャイアントストライドエントリー。
出来るだけ間を開けずにエントリーします。
ただ、西崎とは違って水底が見えるので、こちらの方がまだ落ち着いて潜降を開始できると思います。
集合は水深約15m付近の水底となります。
城門(ぐすくもん)
エントリー直後に現れるのがこちら。
人1人がギリギリ通れるくらいの穴があります。
二枚岩
城門を抜けると現れるのがこちら。
二枚の岩が測ったのごとく平行にならんでいます。
ここで頭上を見上げると、まるで雲のような白波が大迫力!
メインテラス
二枚岩から少し泳いだところにあるのがこちら。
よく、写真などで使われる場所ですね。
こちらを形作る岩々は、どれも直角に切り取られたかの様になっています。
階段のような部分も存在し、この場所が遺跡と呼ばれることもうなずけます。
このメインテラス付近に関して、今回はほとんど流れはありませんでしたが、しばしば川のように流れることも。
そうなった時には流れに身を任せ、十数秒で終わってしまうこともあるのであしからず…
水路・柱穴
メインテラスを抜け、遺跡の上部に上がったところにあります。
ただし、水深が浅いので、よほど穏やかな日でないと訪れることは出来ません。
ということで、今回は訪れていないため、割愛させて頂きたいと思います。
拝所
大きく窪んだ小部屋のような空間で、正面の壁には綺麗な十字の亀裂があります。
カメのモニュメント
カメになんか見えない?
それもそのはず、本物のカメでは無く、石版等に見られる象形文字で、亀を表す文字に似ているのだとか。
星型の一部の様な、美しい形をしていますね。
ちなみに今回、このカメのモニュメントの場所で本物のカメが現れました(笑)
安全停止
遺跡を潜り終えたあとの安全停止は、水深5mにとどまるのではなく、水深5mを遺跡から離れる方向に泳ぎながら安全停止を行います。
その後、西崎同様、全員で近くに集まってからエキジットとなります。
いつ行くのがベスト?
ここまででお分かりの様に、魅力満点の与那国島。
実際に行きたい!
でも…
ひとくちに冬、といっても長すぎるのでもう少し掘り下げてみますね。
大前提として、いついってもハンマー探しは博打なので、過度な期待は厳禁です。
年によって傾向は若干違うようですが、最近の傾向は以下の通り。
12月:出始めなので確率は低いが、出るととんでもない大群
1月:最近は一番調子が良い
2月:普通
3月:海は普通。観光客が増えるため、宿の問題でダイバーが減るため、そう言った意味ではねらい目
5月:確率は低いが出るときは水深が浅い。ハンマーが出なくても、マグロやバラクーダが冬より高確率
日程として、潮回りは一長一短なので、あまり気にしなくても良いようです。
強いて言うなら、中潮ぐらいが調子いい気がする…とのことでした。
冒頭でもお伝えした通り、レベル的にもベストシーズン的にも、予算的にも卒業旅行がおすすめ!
今、1年生や2年生の皆さんは、卒業直前に与那国に行けるレベルになることを目標に、コツコツ潜りましょうね!
もちろん今のうちからコツコツ貯金もお忘れなく!
今回お世話になったお店
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