気化熱って何?身体に付着した水は想像以上に体温を奪う!
海から上がった後もラッシュガードを着ていると、気化熱を奪われて体温が下がる…
スキン素材のウエットスーツは撥水性が良いので、気化熱を奪われづらい…
こんな話を以下の記事でご紹介しました。
気化熱という物の存在と、気化熱=熱を奪う、ということを当たり前の様にお話ししてしまいましたが、今回は
そもそも気化熱って?
という疑問にお答えしたいと思います!
物質の三態
まず、そもそもあらゆる物質には3つの状態があることはご存知かと思います。
最もわかりやすいのは水で、氷(固体)、水(液体)、蒸気(気体)、どれも生活に密着していますよね!
普段はどう考えても固体の鉄やアルミは、熱すれば液体になり、さらに熱すれば気体になります。
逆に、普段はどう考えても気体の酸素は、冷やせば液体になり、さらに冷やせば固体になります。
ちなみに…
常温(=通常人間が暮らす温度。概ね25℃)で金属は全て固体と思いきや、有毒性で有名な水銀は常温で液体の珍しい金属です。
話が逸れましたが、まず、大前提として物質には固体、液体、気体、の3つの状態があることを確認しました。
三態のエネルギー
固体、液体、気体、それぞれの状態をミクロな世界で見てみましょう。
固体はそれぞれの分子がカチコチに強く結びつき、動きづらい状態です。
動かないので当然、エネルギーもあまり必要としません。
液体はそれぞれの分子が少しだけ開放的になり、文字通り流動的になった状態です。
固体に比べれば少し動く分、エネルギーが必要です。
気体はそれぞれの分子が自由奔放に動き回る状態です。
自由に動き回るには、それ相応に多くのエネルギーが必要になります。
そして、ここでエネルギー=熱、と思ってもらってOKです。
三態変化
物質の3つの状態は、温度と圧力の影響により変化します。
一旦圧力は出てこないので置いておきましょう。
カップラーメンを食べる時、水をやかんに入れて、ガスコンロで熱しますよね?
(電子ケトルに入れてスイッチON、かもしれませんが。)
つまり、水に外部から無理やり熱を加えてエネルギーを与える。
これによって強制的に気化(気体に変化すること)させています。
こんな生活に密着した現象だからこそ、沸騰させないことには気化しないと思ってしまうかもしれません。
しかし、現実には少し違います。
物質は基本的に、隙あらば動き回りたいと思っています。
みなさんと一緒です。(笑)
コップの水を思い浮かべてみましょう。
コップ内部の水分子は、動き回るためにどこかから熱を貰おうにも、貰う先がありません。
一方で、水面付近やコップ本体付近の水分子は、接する空気やコップ本体から熱を貰うことが出来ます。
そして、この熱の量が十分なものとなった時に、意気揚々と気体となって空気中に飛び出すわけです。
つまり…
水は常に隙あらば外部から熱を貰って、いや、奪って、気体になろうとしているわけですね。
気化熱とは?
ここまでのご説明をダイビング終了後、海から上がったときで考えてみましょう。
ウエットスーツを着たままの状態やびしょびしょのラッシュガードを着たままでいると、身体と水が常に接している状態になります。
この水は周囲の熱を奪って気化しようとします。
もうお分かりかと思いますが、周囲の空気からだけでなく、接する身体からも熱を奪おうとするわけです。
その結果、『寒い』と感じるわけですね。
つまり、海から上がったあと快適に過ごすためには…
身体をシッカリと拭く!!
これに尽きるということですね!
具体的に、どれぐらい冷えるの?
少し数字が出てくるので、数字アレルギーの人は、読み流してもらってもOKです(笑)
身体に水分が付着していると、とにかく驚くほど体温を下げるんです!
水の気化熱は約580cal/g。
※厳密には温度によって異なりますが、25℃~35℃であれば、およそこれぐらいです。
人間の比熱は約0.83とされています。
例えば体重60kgの人の場合
60000g(60kg)×0.83=49800cal
これだけのエネルギーが奪われたとき、体温が1℃低下することになります。
ということは
49800cal÷580cal/g=85.86g
つまり、身体の表面に100ml足らずの水分が付着しているだけで、その水分が全て蒸発したころには体温が1℃下がっているということになります。
体温が1℃、わずかな様ですが、36℃なら平熱、37℃なら微熱、38℃なら動くのも辛くなる、と考えると、とても大きな数字ですよね!
エキジット後、ただでさえ冷えている状態で、身体が濡れたままになっているとどれほど寒くなるか、なんとなくイメージ出来たでしょうか?
ちなみに…
もうお気づきかと思いますが、暑い時に出る汗も、気化熱で身体を冷やすために出ています。
人間の身体、良く出来ていますよね。
汗は、厳密には水では無いので、若干の誤差はあるかと思いますが、体重60kgの人が1g(1ml)の汗をかくと、体温を約0.1℃下げる効果があると言えます。
もちろん、汗をかくだけで体温が下がるのではなく、汗が蒸発した時に体温が下がります。
つまり汗をかいたとき、小まめに身体を拭いてしまうと、どんどん体温が上がってしまい、場合によっては熱中症の引き金になってしまう、ということですね。
まとめ
エキジット後にラッシュガードを着たままや、身体を拭かずにいると、想像以上に身体を冷やすことになってしまいます。
寒いから脱がない、のではなく、一瞬我慢してスーツを脱ぎ、身体をしっかりと拭いて、乾いた格好になりましょうね!
尚、今回の説明は出来るだけイメージを掴みやすくするため、実際の化学的な説明を若干省略しているところがあります。
理学部工学部のみなさん、より厳密なツッコミはナシでお願いします!!(笑)
この記事へのコメントはありません。