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気化熱って何?身体に付着した水は想像以上に体温を奪う!

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海から上がった後もラッシュガードを着ていると、気化熱を奪われて体温が下がる…

スキン素材のウエットスーツは撥水性が良いので、気化熱を奪われづらい…

 

こんな話を以下の記事でご紹介しました。

【女子必携】ラッシュって何!?

まるで呪文?ウエットスーツ用語17種まとめ

 

気化熱という物の存在と、気化熱=熱を奪う、ということを当たり前の様にお話ししてしまいましたが、今回は

そもそも気化熱って?

という疑問にお答えしたいと思います!

 

物質の三態

 

まず、そもそもあらゆる物質には3つの状態があることはご存知かと思います。

 

最もわかりやすいのは水で、氷(固体)、水(液体)、蒸気(気体)、どれも生活に密着していますよね!

 

普段はどう考えても固体の鉄やアルミは、熱すれば液体になり、さらに熱すれば気体になります。

逆に、普段はどう考えても気体の酸素は、冷やせば液体になり、さらに冷やせば固体になります。

 

ちなみに…

常温(=通常人間が暮らす温度。概ね25℃)で金属は全て固体と思いきや、有毒性で有名な水銀は常温で液体の珍しい金属です。

 

話が逸れましたが、まず、大前提として物質には固体、液体、気体、の3つの状態があることを確認しました。

 

三態のエネルギー

固体、液体、気体、それぞれの状態をミクロな世界で見てみましょう。

固体はそれぞれの分子がカチコチに強く結びつき、動きづらい状態です。

動かないので当然、エネルギーもあまり必要としません。

 

液体はそれぞれの分子が少しだけ開放的になり、文字通り流動的になった状態です。

固体に比べれば少し動く分、エネルギーが必要です。

 

気体はそれぞれの分子が自由奔放に動き回る状態です。

自由に動き回るには、それ相応に多くのエネルギーが必要になります。

 

そして、ここでエネルギー=熱、と思ってもらってOKです。

 

 

三態変化

物質の3つの状態は、温度と圧力の影響により変化します。

一旦圧力は出てこないので置いておきましょう。

 

カップラーメンを食べる時、水をやかんに入れて、ガスコンロで熱しますよね?

(電子ケトルに入れてスイッチON、かもしれませんが。)

 

つまり、水に外部から無理やり熱を加えてエネルギーを与える。

これによって強制的に気化(気体に変化すること)させています。

 

こんな生活に密着した現象だからこそ、沸騰させないことには気化しないと思ってしまうかもしれません。

しかし、現実には少し違います。

 

物質は基本的に、隙あらば動き回りたいと思っています。

みなさんと一緒です。(笑)

 

コップの水を思い浮かべてみましょう。

コップ内部の水分子は、動き回るためにどこかから熱を貰おうにも、貰う先がありません。

一方で、水面付近やコップ本体付近の水分子は、接する空気やコップ本体から熱を貰うことが出来ます。

そして、この熱の量が十分なものとなった時に、意気揚々と気体となって空気中に飛び出すわけです。

つまり…

水は常に隙あらば外部から熱を貰って、いや、奪って、気体になろうとしているわけですね。

 

気化熱とは?

ここまでのご説明をダイビング終了後、海から上がったときで考えてみましょう。

ウエットスーツを着たままの状態やびしょびしょのラッシュガードを着たままでいると、身体と水が常に接している状態になります。

この水は周囲の熱を奪って気化しようとします。

 

 

もうお分かりかと思いますが、周囲の空気からだけでなく、接する身体からも熱を奪おうとするわけです。

その結果、『寒い』と感じるわけですね。

つまり、海から上がったあと快適に過ごすためには…

身体をシッカリと拭く!!

これに尽きるということですね!

 

具体的に、どれぐらい冷えるの?

少し数字が出てくるので、数字アレルギーの人は、読み流してもらってもOKです(笑)

身体に水分が付着していると、とにかく驚くほど体温を下げるんです!

 

水の気化熱は約580cal/g。

※厳密には温度によって異なりますが、25℃~35℃であれば、およそこれぐらいです。

 

人間の比熱は約0.83とされています。

 

例えば体重60kgの人の場合

60000g(60kg)×0.83=49800cal

これだけのエネルギーが奪われたとき、体温が1℃低下することになります。

 

ということは

49800cal÷580cal/g=85.86g

つまり、身体の表面に100ml足らずの水分が付着しているだけで、その水分が全て蒸発したころには体温が1℃下がっているということになります。

 

体温が1℃、わずかな様ですが、36℃なら平熱、37℃なら微熱、38℃なら動くのも辛くなる、と考えると、とても大きな数字ですよね!

エキジット後、ただでさえ冷えている状態で、身体が濡れたままになっているとどれほど寒くなるか、なんとなくイメージ出来たでしょうか?

 

ちなみに…

もうお気づきかと思いますが、暑い時に出る汗も、気化熱で身体を冷やすために出ています。

人間の身体、良く出来ていますよね。

汗は、厳密には水では無いので、若干の誤差はあるかと思いますが、体重60kgの人が1g(1ml)の汗をかくと、体温を約0.1℃下げる効果があると言えます。

 

もちろん、汗をかくだけで体温が下がるのではなく、汗が蒸発した時に体温が下がります。

つまり汗をかいたとき、小まめに身体を拭いてしまうと、どんどん体温が上がってしまい、場合によっては熱中症の引き金になってしまう、ということですね。

 

まとめ

エキジット後にラッシュガードを着たままや、身体を拭かずにいると、想像以上に身体を冷やすことになってしまいます。

寒いから脱がない、のではなく、一瞬我慢してスーツを脱ぎ、身体をしっかりと拭いて、乾いた格好になりましょうね!

 

尚、今回の説明は出来るだけイメージを掴みやすくするため、実際の化学的な説明を若干省略しているところがあります。

理学部工学部のみなさん、より厳密なツッコミはナシでお願いします!!(笑)

細谷 拓

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合同会社すぐもぐ代表社員CEO。 学生時代、大瀬崎でのでっちをきっかけにダイビングにドはまり。 4年間で800本以上潜り、インストラクターを取得。 静岡県三...

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