水温は2ヶ月遅れでやってくる説って本当?検証してみた-大瀬崎編
まだ学生のとき、仲の良いイントラさん達から時折耳にする言葉がありました。
「水温は2ヶ月遅れでやってくるんだよ」
そうなんだ。だからゴールデンウィークはまだドライじゃないと寒いし、10月でも案外ウエットで潜れるんだなあ。
と当時は深く考えずになんとなく納得していました。
ですが、毎週のように大瀬崎に通う中、一番気温が高い8月に水温も一番高くなることに気づき、常に2ヶ月遅れってわけじゃないのかな?と疑問に思っていました。
いま、”海水温2ヶ月遅れ説”をデータの力で証明してみようではありませんか。
僕がこの説を聞いたのは静岡県西伊豆の大瀬崎だったので、海上保安庁海洋情報部海洋情報課 / 日本海洋データセンター(JODC)から沼津市の海表面水温のデータを、気象庁から沼津市に近い三島市の平均・最高・最低気温のデータをお借りして、仮説を確かめてみようと思います。
※論文ではないので、正確な評価ではありません。あくまで大まかな傾向を把握するためにお読みください。
- 検証方法が気になる人は詳細版もどうぞ
海水温データの取得
まずは海水温のデータを取得します。
上記日本海洋データセンターのリンクからアクセスし、今回、取得したい伊豆のあたりにズームアップ。
大瀬崎に最も近い沼津市をクリックして2002〜2008年のデータをダウンロード。
気温データの取得
次に、気温のデータを取得します。
上記した気象庁のリンクへアクセスし、静岡県をクリック。
沼津市に最も近い観測点は三島市のようなので、2002年1月1日〜2008年12月31日までの三島市の日平均気温・日最高気温・日最低気温をダウンロードします。
これで水温のデータと気温のデータが用意できました。
グラフ化
準備したデータから一年間の水温と気温の推移を表す折れ線グラフを作成します。
日別の水温データの横に、水温を2ヶ月前にずらしたデータを用意します。
そして、1日ごとに2002〜2008年のデータを平均します。
ここから水温と平均気温の推移を表す折れ線グラフを作成するとこのようになります。
なんと5〜9月は2つのグラフがほぼ一致する結果に。
海水温2ヶ月遅れ説が揺らぎます。
海水温だけ2ヶ月ずらしてみる
ではなぜ、長年の経験を持つイントラさん達は「海水温は2ヶ月遅れる」と感じているのでしょうか?
もしかすると、私たちが暖かい・寒いを判断しているのは平均気温ではないのではないか?と考えました。
体感温度を決めているのは大体お昼すぎぐらいではないかなと思います。つまり、カギは最高気温ではないか、と。
そこで水温と最高気温を比べたグラフを作ってみました。
これに水温を2ヶ月前にずらしたグラフ(黄色)を重ねるとこうなります。
4〜6月と12月は面白いほどよく重なります!
1〜3月についても、2ヶ月前にずらした水温と最高気温の動き方が良く似ていますね。
大瀬崎で本格的にダイビングシーズンが始まるのはゴールデンウィークごろですから、”海水温2ヶ月遅れ仮説”がささやかれるのも納得です。
平均気温でなく最高気温にぴったりと重なったのは全くの偶然なのですが、人間の感覚というのは案外正確であることがわかり驚いています。
結論
2ヶ月後の水温を表すグラフ(黄色い折れ線)は、
- 4〜6月と12月、最高気温とほぼ同じ値を示す
- 1〜3月、最高気温とよく似た動き方をする
- しかし、7〜9月は最高気温と関係ない動き方をする(7〜9月においては、2ヶ月後ではなく、リアルタイムの水温と平均気温がよく同調する)
したがって、
”海水温2ヶ月遅れ説”は、1〜6・12月は正しく、7〜9月は間違っている。10〜11月はなんともいえない”
という結論に至りました。
夏場は2ヶ月遅れないんですね。
僕の感覚もイントラさん達の感覚もどちらも正しかったことがわかりました。
まとめ
”海水温2ヶ月遅れ仮説”は、あてはまる月もあれば、あてはまらない月もあるということがわかりました。
これで、ドヤ顔で「海水温って4〜6月は2ヶ月分遅れるんだぜ」って言っても大丈夫です。
仮説があてまはったり、あてはまらなかったりする理由として、水の比熱が大きいため夏でも温まりにくく冬でも冷めにくいこと・海流の影響・河川から流れ込む水温のアップダウンなどが考えられますが、今回はそこまで掘り下げられませんでした。
要因が多い上に大量のデータ処理が待っていそうで中々簡単に答えが出るような気がしませんが、ゆくゆく探っていきたいと思います笑
また、静岡県以外でもこの仮説は当てはまるか検証したいと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
↓↓↓以下、検証方法を1ステップずつ説明した詳細版です↓↓↓
海水温データの取得(詳細版)
まずは海水温のデータを取得します。
上記日本海洋データセンターのリンクからアクセスするとこちらの画面になります。
今回、取得したい伊豆のあたりにズームアップ。
イントラさん達から話を聞いたのは西伊豆だったので、最も近い沼津市をクリック。
あわしまマリンパークという水族館で午前9時に取られているデータだとわかります。
年による偏りをなくすため、提供されているデータを全て取得します。沼津市では2002〜2008年のデータが提供されていました。
データ取得をクリック。
zipファイルのダウンロード画面が表示されます。保存をクリック。
ダウンロードできました。
zipファイルを解凍します。
解凍されたフォルダを開くと一年ごとにcsvファイルにまとめられていることがわかります。
2002年のファイルを開いてみます。
月を列、日を行にしてデータが格納されていることがわかります。他の年も同様の形式です。
気温データの取得(詳細版)
次に、気温のデータを取得します。
上記した気象庁のリンクへアクセス。このような画面になります。
静岡県をクリック。
沼津市に最も近い観測点は三島市のようです。三島市をクリック。
画面右手、選択された地点に三島が追加されました。
次にダウンロードしたい気象データを選びます。
画面上部、項目を選ぶをクリックし、データの種類は日別値を選択。項目は日平均気温・日最高気温・日最低気温の3つをチェック。
選択された項目に日平均気温・日最高気温・日最低気温が加わります。
次に取得するデータの期間を決めます。
期間を選ぶをクリック。連続した期間で表示するにチェックをし、水温のデータに合わせて2002年1月1日〜2008年12月31日を選びます。
選択された期間に2002年1月1日から2008年12月31日までと表示されます。
最後に表示オプションを選びます。初期値のままでOKです。
データをダウンロードする前に、意図したデータを選択できているか確かめましょう。
オレンジ色のボタン、画面に表示をクリック。
きちんと選択できているようです。
CSVファイルをダウンロードをクリック。保存します。
ダウンロードできました。
ファイルを開いて中身を確かめます。
一日ごとに平均気温・最高気温・最低気温が記録されています。品質情報、均質番号は関係ないのでスルーして大丈夫です。
これで水温のデータと気温のデータが用意できました。
グラフ化(詳細版)
準備したデータから一年間の水温と気温の推移を表す折れ線グラフを作成したいと思います。
水温のデータは月ごとに分けられていて一年間連続したグラフにしづらいので、Google スプレッドシートにコピペして1月1日から12月31日まで連続した形に直します。
気温はそのままダーッと選択して、コピペ。このような表にします。
日別の水温データの横に、水温を2ヶ月前にずらしたデータを用意します。
そして、1日ごとに2002〜2008年のデータを平均します。
ここでは、気象データの分布を正規分布と考え、代表値として平均値をとっています。
データの分布によっては平均値ではなく、中央値などをとる必要があるかもしれません。
気象学についてはあまり詳しくないのでご容赦ください。
ここから水温と気温の推移を表す折れ線グラフを作成するとこのようになります。
2つのデータがどれほど似た動きをするかを表す相関係数は、0.921でした(1だと完全に同じ動き、-1だと完全に逆の動き)。
水温と気温は非常によく似た動きを示すことがわかりました。
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