稲積水中鍾乳洞について
水中洞窟の中を探検するというと、テクニカルダイビングの世界の様に思ってしまいますが、この大分県の稲積水中鍾乳洞(いなづみすいちゅうしょうにゅうどう)では、テクニカルダイビングのトレーニングをしていなくても、カヴァーンダイビングの体験をすることが可能です。
なんと体験ダイビングまで開催されていますよ!
淡水での洞窟ダイビングを楽しむことが出来るのは、国内では稲積水中鍾乳洞だけ。
そんな他にはない、冒険心をくすぐるダイビングを楽しむことが出来る稲積水中鍾乳洞のダイビングスポット情報をその魅力とともにご紹介します。
ダイビングの基本情報から、シーズナリティ、ダイビングポイント紹介まで、海の情報満載でお届け!
目次
稲積水中鍾乳洞の概要
稲積水中鍾乳洞は3億年前の古生代に形成されたところから歴史が始まります。
形成後、約8万5千年前に熊本県の阿蘇山が噴火したことによってこの鍾乳洞は水に埋もれしまいました。
その後、1976年からダイバーによる潜水調査が始まり観光化され、現在も調査は続いています。
現在判明しているだけで全長は約1kmで、判明している範囲だけを取っても国内最長の水中鍾乳洞です。
稲積水中鍾乳洞ダイビング基本情報
2019年3月より一般ダイバーにもダイビングが開放されました。
国内では本格的なケーブダイビングを楽しめる場所というだけでも珍しいのですが、淡水でのケーブダイビングを調査目的以外で出来る場所は2021年現在、稲積水中鍾乳洞だけです。
ケーブダイビングが楽しめる洞窟には、海にあるものと地下にあるものがあります。
実は、地下にある洞窟は、記念物や文化遺産などに指定されていることが多く、調査以外の目的で入ることができないことがほとんどです。もちろん、一般のダイバーが潜ることは、なかなか叶いません。
一方、稲積水中鍾乳洞は、国や自治体の所有物ではなかったため、管理している一般企業との交渉の末、一般ダイバーに開放することが叶いました。
2021年にはアニメ・サザエさんのオープニング映像でも、稲積水中鍾乳洞でダイビングを楽しむダイバーの様子が描かれています。
鍾乳洞内は気温水温共に年間を通してほぼ一定で、共に15〜17℃前後。
地底にあるため外気に左右されないこと、また、洞窟を流れる地下水の温度により、保たれています。
透明度が良い日には30mから40mを誇り、神秘的かつ美しい水中の光景を見ることが可能です。
現在判明している稲積水中鍾乳洞の最大水深は46mですが、通常楽しむ範囲は最大水深で18m程度、平均で15m程度です。
比較的浅い水深であることから、テクニカルダイバー向けのダイビングだけではなく、通常のダイバー向けのダイビング、更にはスノーケリングや体験ダイビングも開催されています。
ダイビングのシーズナリティ
外界とは隔離された環境なので、水中の見どころが季節ごとに変わることはありません。
逆に、水温や洞内の気温は年間を通してほぼ一定なので、夏は涼しく、冬は暖かく感じられるところが面白い点でしょう。
春にはたくさんの桜、秋には色とりどりの紅葉、冬には一面真っ白な雪景色と、日本の四季を余すことなく感じられる陸上の風景もあわせて楽しめます。
夏を中心に観光客にも人気の観光スポットなので、ダイバーは観光客の注目の的!
ただし夏は、梅雨や台風などの長雨で洞内が増水し、ダイビングが行えなくなる事もあります。
逆に、雨の少ないシーズンは抜群の透明度を期待できます。
観光客が多いシーズンでもダイバー向けのエリアは一般観光客向けの洞入り口より300m奥からのエントリーになるため、昼夜を問わず混雑せずにダイビングを楽しむことが可能です。
水中の鍾乳石、石柱、石筍、つらら石等にライトを当てるとキラキラと光り、ケーブダイビングならではの美しさを堪能することができます。
また、鍾乳洞入り口から外に向けての水路を体験ダイビングエリアとして利用しており、このエリアでは、ウナギやウグイ、オイカワなどの水中生物を観察することができます。
ダイビングポイント紹介
エントリー、エキジットは1ヶ所ですが、ダイビングプランによってエリアが分かれています。
その中から、代表的な3つのエリアをご紹介します。
示現の淵から奥
カヴァーンエリアで、本格的なケーブダイビングから通常のライセンスでのダイビングでも使用されるエリアです。
エントリーポイントは、鍾乳洞入り口から歩いて300m程移動したところにある示現の淵と呼ばれる場所。人が歩いて観光できる範囲の最奥部となる25㎡ほどの空間です。ここから先は、完全に水没(所々に空間はある)しています。
ラダーにて水面へエントリーし、そこから18mまで潜降。頭上閉鎖空間を奥へと進んでいきます。
石筍(せきじゅん)、石柱(せきちゅう)等の鍾乳石が頭上に観られます。
また、古代の水流が石灰岩を削って形成された、独特の美しい地形も必見です。
通常のライセンスやカヴァーンダイバーのファンダイビングの場合、縦(水深)と横(侵入距離)の合計が40mまでのダイビングとなります。
ケーブダイバーなど、専門のトレーニングを積んだダイバーであれば、ライセンスにコースプランで、更に奥まで進むことが出来ます。
【エントリー・スタイル】ビーチ(セッティング場所から10分。ラダーにて水面へエントリー)
【最大水深】18m
【流れが出た場合】流れが出ることはほとんど無い
【ナイトダイビング】○
鍾乳洞入り口付近
主に体験ダイビングで使用するポイントです。
鍾乳洞入り口から歩いて10m程入った位置から、洞の外へ繋がる頭上が閉鎖されていない空間にて体験ダイビングが可能です。
このエリアにも奥へ繋がる水中洞窟が数か所あり、水深は1.5mほどですが閉鎖された空間が縦横無尽に伸びています。
【エントリー・スタイル】ビーチ(セッティング場所から1分。ラダーにて水面へエントリー)
【最大水深】2m
【流れが出た場合】流れが出ることはほとんど無い
【ナイトダイビング】○
示現の淵から手前
洞の広さは二人並んでも通れる程度の広さがあり、所々陸上と繋がっています
大きな石柱が陸上まで伸びる様子や、洞窟特有の地形が最大の見どころ。
水底がシルトのため、カヴァーンダイバー、ケーブダイバー向けのポイントです。
【エントリー・スタイル】ビーチ(セッティング場所から10分。ラダーにて水面へエントリー)
【最大水深】6m
【流れが出た場合】流れによってダイビングを中止する場合がある
【ナイトダイビング】○
稲積水中鍾乳洞へのアクセス情報
車でのアクセス:
大分方面からは、大分より国道10号線を南下し、犬飼町より国道326号線に。
国道326号線をさらに南下し、三重町より県道718号線、ついで45号線を南下し約15km。
大分からの所要時間は約1時間です。
延岡方面からは、延岡より国道326号線を北上し三重町へ。
三重町より県道718号線、ついで45号線を南下し約15km。
延岡からの所要時間も約1時間です。
なお、延岡方面よりカーナビで経路探索を行うと、佐伯市・道の駅 宇目を過ぎたあたりから左(西)へ進む案内が出るケースが多いですが、険しい山道へのルートとなりますので、国道326号線を三重町まで進んだ後に南下するルートの方がスムーズです。
駐車場は大型バス30台分、乗用車300台分が無料で完備されています。
電車でのアクセス:
JR豊肥本線の三重町駅で下車します。
稲積水中鍾乳洞まで直接アクセス可能な公共交通機関は存在しないため、三重町駅からタクシーで約20分です。
稲積水中鍾乳洞の観光情報
稲積水中鍾乳洞の北西約20km、車で約30分のところにある原尻の滝は必見。
東洋のナイアガラともいわれる、幅約120m、高さ約20mの滝は圧巻です。
また、稲積水中鍾乳洞の南東約15km、車で約25分のところには「トトロのバス停」があります。
大分県佐伯市宇目地区内の轟(ととろ)集落に設けられたバス停で、後付けのバス停ではありません。
映画「となりのトトロ」の舞台は、東京都と埼玉県にまたがる狭山丘陵だと言われていますが、このトトロのバス停周辺の風景が劇中と似通っていることもあり、一躍観光地として人気を博しました。
近くの森には訪れた人々が記念に残したトトロ人形が並んでおり、こちらも「トトロの森」として、いつしか観光名所となりました。
情報・写真提供:宮崎ダイビングサービスステーション kanaloa(https://ccrcave-kanaloa.com/)
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